主文
1 岡山県知事が,申立人に対し,平成20年1月21日付けでした,Aについて,指定居宅サービス事業者及び指定介護予防サービス事業者に係る介護保険 法41条1項本文及び同法53条1項本文の指定を同月31日をもって取り消 す処分は,本案判決が確定するまで,その効力を停止する。2 岡山県知事が,申立人に対し,平成20年1月21日付けでした,Bについ て,指定居宅サービス事業者及び指定介護予防サービス事業者に係る介護保険 法41条1項本文及び同法53条1項本文の指定を同月31日をもって取り消 す処分は,本案判決が確定するまで,その効力を停止する。3 申立費用は相手方の負担とする。
 理由
第1 申立ての趣旨及び主張 申立人の本件申立ての趣旨及び理由は,別紙「執行停止申立書」のとおりであり,相手方の意見は,別紙「意見書」のとおりである。
 第2 当裁判所の判断1 疎明資料によると,申立人は,平成14年10月24日に成立した介護保険 法(以下「法」という。)に基づく通所介護の居宅サービス事業等を目的とする 会社であるところ,平成18年10月1日,その運営に係る事業所であるAに ついて,法41条1項本文及び53条1項本文に基づき,岡山県知事から,指 定居宅サービス(通所介護)事業者及び指定介護予防サービス(介護予防通所 介護)事業者の指定を受けるとともに,同日,その運営に係る事業所であるB について,法41条1項本文及び53条1項本文に基づき,岡山県知事から, 指定居宅サービス(短期入所生活介護)事業者及び指定介護予防サービス(介 護予防短期入所生活介護)事業者の指定を受けたこと,岡山県知事は,申立人 に対し,平成20年1月21日,上記両事業所(以下「両事業所」という。)に ついて,指定居宅サービス事業者及び指定介護予防サービス事業者としての指定を同月31日をもって取り消す処分(以下「本件各処分」という。)を行った こと,申立人は,相手方を被告として,本件各処分の取消しを求める訴えを提 起したことが認められる。2 そこで,まず,申立人に,本件各処分により生じる「重大な損害を避けるた め緊急の必要がある」か否かについて検討する。介護サービスを提供する事業は,その性質上,利用者との信頼関係に基づい て成り立つものであり,その信頼関係を維持するには,継続的にサービスの提 供を行うことが重要であることは容易に推測し得るところであって,本件各処 分に伴い,いったん両事業所が閉鎖されることとなれば,利用者は当然にほか の施設に移動することとなり,仮に本案判決によって本件各処分が取り消され たとしても,申立人が再び利用者の信頼を回復し,利用登録者を再び獲得する ことが困難となることが予想される。また,両事業所の閉鎖により,申立人は, 両事業所の登録利用者に対して介護サービスを提供することができなくなり, 申立人の経営に少なからぬ影響を及ぼすばかりでなく,介護サービスを受ける ことができなくなる登録利用者の日常生活や健康状態に悪影響が及ぶことは容 易に推測し得るところである。よって,申立人には,本件各処分により,事後的に回復し難い損害が生じる 恐れがあり,「重大な損害を避けるため緊急の必要がある」と認められる。3 次に,本件申立てを認容することが,「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそ れがある」か否かについて検討する。本件各処分の理由には,不正の手段により指定居宅サービス事業者及び指定 介護予防サービス事業者としての指定を受けたこと,人員基準違反及び居宅介 護サービス費及び介護予防サービス費の請求に関し不正があったことが挙げら れているところ,疎明資料によると,人員基準違反に関しては,Aについては, 平成19年5月16日,Cを配置することにより看護職員の人員不足が解消さ れていること,Bについては,平成18年10月17日,Dを配置することにより看護職員の人員不足が解消されており,平成19年7月1日,看護職員の Eに機能訓練指導員を兼務させることにより機能訓練指導員の人員不足が解消 されていることが認められる。よって,本案判決が確定するまでの間,申立人 が介護サービスを継続することとなっても,登録利用者の日常生活や健康状態 に重大な支障をもたらすことは防止し得るものと思われる。したがって,本件申立てを認容することは,「公共の福祉に重大な影響を及ぼ すおそれがあるとき」に当たるということはできない。4 さらに,本件申立てが「本案について理由がないとみえるとき」に該当する か否かについて検討する。申立人は,不正の手段により指定を受けたとの事実認定には誤りがあると主 張しており,また,仮に,形式的に取消処分の根拠規定に該当する事実が認め られるとしても,申立人は,本件各処分の内容が明らかに重きに失すると主張 しているのであるから,事実誤認の有無及び本件各処分内容についての裁量権 逸脱の有無については,今後の主張・立証を経て判断をしなければ決し得ない というべきである。そうだとすれば,本件は現段階において「本案について理 由がないとみえるとき」に該当するとはいえない。5 結論 よって,申立人の本件申立ては理由があるから認容することとし,申立費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条をそれぞれ適用して, 主文のとおり決定する。平成20年1月30日 岡山地方裁判所第2民事部
裁判長裁判官 廣永伸行
裁判官 芹澤俊明
裁判官 山中洋美
判例本文

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