平成19年9月28日判決言渡
平成19年(レ)第18号 給水加入権利金請求控訴事件(原審・東金簡易裁判所平 成18年(ハ)第336号)口頭弁論終結の日 平成19年7月23日
判決
主文
 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は,控訴人の負担とする。
 事実及び理由
第1 当事者の求める裁判
 1 控訴の趣旨
(1) 原判決を取り消す。
(2) 被控訴人は,控訴人に対し,金16万5000円及びこれに対する平成18年10月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 (3) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。2 控訴の趣旨に対する答弁 主文同旨
第2 事案の概要 本件は,控訴人及びAが,千葉県東金市a所在の別紙物件目録記載の土地及び建物(以下「本件不動産」という。)を購入して同所に居住するにあたり, 水道使用のために山武郡市広域水道企業団(以下「水道企業団」という。)に 対して納付した給水申込加入金(以下「給水加入金」という。)につき,控訴 人が,本件不動産を競落した被控訴人に対し,被控訴人が控訴人に対して給水 加入金相当額を支払わないまま本件不動産に設置された給水装置ないし量水器 の使用を続けているのは不当であるなどと主張して,不当利得に基づき,控訴人が支払った給水加入金相当額の支払を求めた事案である。
 原審は,控訴人の請求を棄却したところ,控訴人がこれを不服として控訴を提起した。
1 前提事実(証拠摘示のない事実は当事者間に争いがない事実である。)(1) 当事者等
ア 控訴人は,被控訴人が本件不動産を競落するまで,Aとともに本件不動産を所有し,Aと離婚後は,子供と本件不動産に居住していた者である。
 イ 被控訴人は,不動産の売買,賃貸等を業とし,肩書地に本店を有し,会 社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の適用を受ける特例有限会社である。
(2) 控訴人及びAは,平成6年12月27日,Bから本件不動産を購入し,平成7年5月25日,控訴人及びAの共有名義で,土地につき所有権移転登記,建物(以下「本件建物」という。)につき所有権保存登記がなされた。
 (3) 控訴人及びAは,平成7年5月25日,Bに対し,本件不動産における上水道の負担金として,16万5000円を支払った。
(4) 被控訴人は,平成18年8月21日,水道企業団企業長(以下「企業長」という。)に対し,給水装置所有者変更届を提出し,同日受理された。
 (5) 被控訴人は,同月23日,競売により本件不動産を取得した。(6) 控訴人は,Aとの連名で,同年9月19日,企業長に対して給水装置廃止届を提出したが,既に被控訴人からの給水装置所有者変更届が受理されていたため,控訴人の給水装置廃止届は受理されなかった。
(7) 被控訴人は,現在,水道企業団が敷設して配水管から分岐して本件不動 産に設置された配水管及びこれに直結する給水用具を使用し,給水を受けている。
 2 争点
本件の争点は,被控訴人が給水加入金相当額を不当に利得したか否かであるが,この点に係る当事者の主張は次のとおりである。
 (1) 控訴人ア 給水装置とは,控訴人が給水加入金の納付と引換えに貸与ないし所有権 を得た上水の使用量を計測する量水器である。この量水器を使用する権利 ないし所有権は,配水管などの給水設備とは異なり,本件不動産の所有権 が被控訴人に移転されたとしても,被控訴人には移転しない。控訴人は, 本件不動産を購入した際,購入代金とは別に給水加入金を支払っており, 給水装置に上水の供給を受ける権利を有する者であるから,給水装置の所 有者である。イ 控訴人は,平成18年9月19日,水道企業団に位置替えのため給水装 置廃止届を提出したところ,被控訴人が先に給水装置の所有者変更届を提 出してしまったため,控訴人の給水装置廃止届は受理されなかった。しか し,給水装置を使用する権利ないし所有権は,本件不動産の所有権の移転 には付随せず,仮に控訴人の給水装置廃止届が受理されていれば,被控訴 人は,本件不動産において新規に給水装置を設置するための給水加入金を 支払わなければならなかったものである。そして,控訴人は,山武郡広域 水道企業団水道事業給水条例(以下,単に「条例」という。)34条2項 に基づき,移転先において新規に給水装置を設置するに当たり,必要な給 水加入金と控訴人がBに支払った16万5000円との差額を水道企業団 に支払えば足りることになる。ウ したがって,控訴人は,本来支払わなくてもよい給水加入金相当額を支 払わなければ新規に給水装置を設置することができないという損害が生じ ており,被控訴人は,控訴人の上記損失において,給水加入金相当額を法 律上の原因なくして不当に利得しているものである。(2) 被控訴人の主張
ア 給水装置とは,「需要者に水を供給するため企業団が施設した配水管から分岐して設けられた給水管及びこれに直結する給水用具をいう」のであ り,給水装置を新設しようとする者は,企業長に給水加入金を納付しなけ ればならない。したがって,給水加入金を納付した者は,その所有する建 物に給水装置の設置をしてもらい,施設完了後は,給水装置の所有権は, 建物に付合し,建物の所有権の移転に伴い移転されるものである。したがって,本件不動産に係る給水装置の所有権は,本件不動産の所有 権の移転に伴って移転するのであるから,給水装置の現在の所有者は,本 件不動産を競落した被控訴人である。イ 被控訴人は,本件不動産を競売手続により取得し,裁判所の代金納付命 令により命じられた金額を納付しているところ,当該競売手続における評 価書においては,本件不動産の供給処理施設として「上水道有」とされて おり,給水装置の代金は本件不動産の取得代金額に含まれているものであ る。さらに,給水装置が本件不動産に付随しているからこそ,水道企業団は 新所有者(被控訴人)による単独の給水装置所有者変更届を認め,これを 受理しているのである。ウ 控訴人は,給水設備と給水装置を分けて,給水装置とは量水器のことで あると主張しているが,条例上,給水設備と給水装置とが分けて規定され ているわけではない。エ 以上によると,被控訴人が給水加入金相当額を不当に利得したことはな い。第3 争点に対する判断
1 前記前提事実及び証拠によると次の事実を認めることができる。(1) 条例の定め等
ア 給水装置とは,需要者に水を供給するため水道企業団が施設した配水管から分岐して設けられた給水管及びこれに直結する給水用具をいい(条例2条1項),給水管並びにこれに直結する分水栓,止水栓及び給水栓をも って構成される(条例施行規程5条1項)。給水装置工事に要する費用は, 原則として,給水装置を新設し,増設し,改造し,又は修繕しようとする 者の負担である(条例7条)。イ 量水器とは,給水装置に備えられる付属用具の一つである(条例施行規 程5条2項)。企業長は,原則として,使用水量を計算するため,給水装 置に水道企業団の量水器を設置する(条例19条1項)。給水装置に設置 された量水器は,給水を受ける者又は給水装置の所有者が適切に管理しな ければならない(条例20条1項)。ウ 給水装置を新設しようとする者は,企業長に給水加入金を納付しなけれ ばならず(条例34条1項),給水装置の所有者が,その給水装置を廃止 し,新規に給水装置を設置する場合の給水加入金の額は,廃止する給水装 置に係る給水加入金の額と新設する給水装置に係る加入金の額との差額と され(同条2項),既納の給水加入金は原則として還付しないものとする (同条7項)とされている。エ 給水装置の所有者は,給水装置の所有権を譲り渡したり,給水装置を廃 止しようとするなどの場合には,企業長に届け出なければならない(条例 21条2項)。給水装置所有者変更届の届出は,原則として給水装置の旧 所有者(譲渡人)が行うこととされているが,新所有者(譲受人)から届 出があった場合,水道企業団は,不動産登記簿謄本その他その所有を推定 できる書類等を提示させて所有関係を確認した上,当該届出を受理する取 扱いとされている(条例21条2項,条例施行規程23条3号,4号,給 水装置所有者変更届に関する事務処理要領)。なお,企業長は,給水装置の所有者について,当該給水装置に上水の供 給を受ける権利を有する者をいうと回答している。(2) 本件不動産に係る給水装置の設置,変更
ア Bは,本件不動産について,平成6年3月24日付けで企業長に対して 給水装置の工事を申し込み,同年7月28日,給水加入金として15万5 000円,手数料として1万円を水道企業団に支払った。給水装置の施設 工事は,同年8月1日に行われ,同日,量水器も取付けられた。なお,Bの上記給水装置工事の申込みについて,給水装置として,配水 管,水栓等の記載があるが,量水器については,その筐のみが工事の対象 となっており,量水器自体は,申込工事の対象となっていない。イ 控訴人及びAは,同年12月27日,Bから本件不動産を購入し,平 成7年5月25日,控訴人及びAの共有名義で,土地につき所有権移転 登記,本件建物につき所有権保存登記がなされた。なお,上記売買契約の売買代金には,給水加入金相当額は含まれてい なかった。ウ 控訴人及びAは,同日,Bに対し,本件不動産における上水道の負担 金として,16万5000円を支払い,本件不動産に係る給水装置につ いて,平成8年3月4日付けで,水道企業団に対し,BからAへの所有 者変更届が提出され,受理された。エ 本件不動産は,抵当権者により,千葉地方裁判所八日市場支部に不動 産競売の申立てがされ,同裁判所により,平成18年1月4日,競売開 始決定がなされた。オ 被控訴人は,同年8月21日,企業長に対し,給水装置所有者変更届を 提出し,同日受理された。カ 被控訴人は,同月23日,上記競売手続により本件不動産の所有権を取 得したが,この競売手続における本件不動産の評価書には,本件不動産の 概況として,「供給処理施設」欄に「上水道有」と記載された。キ 控訴人は,同年9月19日,本件不動産について,引渡命令の執行を受 けたが,同日,Aとの連名で,企業長に対して位置替えを理由とする給水装置廃止届を提出した。しかし,既に被控訴人からの給水装置所有者変更届が受理されていたため,控訴人の給水装置廃止届は受理されなかった。
 2 上記認定の事実に基づき検討する。(1) 控訴人は,給水装置とは量水器を指し,量水器を使用する権利ないし所 有権は,被控訴人には移転していない旨主張する。しかしながら,給水装置は,配水管から分岐して設けられた給水管並びに これに直結する分水栓,止水栓及び給水栓をもって構成されており,量水器 とは,給水装置に備えられる付属用具の一つにすぎない。そして,一般的に, 給水管は,建物内部にあっては床下や壁の間に設置されるものであり,建物 を損傷することなく容易に取り外すことはできず,物理的に建物と一体とな っていること,また,建物及び敷地内の給水栓に上水を供給するための必須 の設備であり,機能的にも建物と一体となっているものであって,本件建物 の場合も同様であると認められることからすると,給水管及びこれと一体と なっている分水栓,止水栓及び給水栓は,本件建物に付合しており,本件建 物の所有者に属していると認めるのが相当である。そして,量水器については,条例の文言からは,企業長が設置し,給水装 置の所有者は管理責任を負っているにすぎないものと認められること,給水 装置申込工事の内容となっていないことからすると,その所有権は,水道企 業団に留保されていると認められる。したがって,給水装置とは量水器を指し,量水器を使用する権利ないし所 有権は,被控訴人には移転していないとの控訴人の主張を採用することはで きない。(2) 控訴人は,被控訴人は,給水加入金相当額を控訴人に対して支払うべき であるのにこれを一切支払わず,本来支払わなくてもよい給水加入金相当額 を支払わなければ新規に給水装置を設置することができないという損害を控 訴人に生じさせており,給水加入金相当額を法律上の原因なくして不当に利得している旨を主張する。 しかしながら,控訴人から給水装置廃止届が提出されたのは競売後の引渡命令の執行を受けた日であること,本件不動産についての競売手続における 評価書には,本件不動産の概況として「上水道有」とされており,給水装置 が使用可能であることが本件不動産の評価額に反映されていると考えられる ことが認められるところ,上記のとおり,被控訴人は本件建物に付合した給 水装置の所有権を競売手続によって適法に取得したものであることなどの事 実も併せ考えれば,被控訴人が控訴人に対して給水加入金相当額を支払うべ き義務は認められず,新旧使用者の負担の公平を図るという給水加入金の趣 旨に鑑みても,被控訴人が給水装置を使用することに法律上の原因がないと はいえない。なお,控訴人及びAは,Bに対し,本件不動産の売買代金とは別に上水道 の負担金として16万5000円を支払っており,被控訴人が控訴人に対し, 上水道の負担金額を支払わないのは財産上の均衡を欠き,公平ではないので はないかとも考えられなくはない。しかし,控訴人及びAがBと売買契約を 締結した際,不動産の売買代金とは別個に上水道の負担金を支払うとの合意 があったと認められるのに対し,被控訴人が競売により本件不動産の所有権 を取得するに際しては,このような格別の合意ないし留保は認められないの であるから,被控訴人が控訴人に対し,上水道負担金16万5000円を支 払わないからといって財産上の均衡を欠き,公平を害するということはでき ない。第4 結論 以上のとおりであるから,控訴人の請求を棄却した原判決は結論において相当であって,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし,控訴費用の 負担につき民訴法67条,61条を適用して,主文のとおり判決する。千葉地方裁判所民事第2部
裁判長裁判官 菅 原 崇
裁判官 城内和昭
裁判官 内藤和道
1. 所在地 地 番 地 目 地 積
2. 所在地 地 番 地 目 地 積
3. 所在地 地 番 地 目 地 積
4. 所在地 地 番 地 目 地 積
5. 所在地 家屋番号 種 類 構 造 床面積
物件目録
東金市a字b 373番48
宅地 3.98平方メートル
東金市a字b 373番56
宅地 58.50平方メートル
東金市a字b 373番62
宅地 75.10平方メートル
東金市a字b 373番85
宅地 2.43平方メートル
東金市a字b373番地56,373番地62 373番56
居宅
木造スレート葺き2階建
1階 48.85平方メートル 2階 44.71平方メートル
以上
判例本文

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