主文 被告人Aを懲役7年6月に,被告人Bを懲役6年にそれぞれ処する。未決勾留日数中,被告人Aに対しては80日を,被告人Bに対しては60 日を,それぞれその刑に算入する。
 押収してある現金142万1000円のうち139万1000円を被害者 Cに還付する。理由
(罪となるべき事実)
第1 被告人Aは,溶接工としてアルバイトをしていた株式会社aを退職した後,解雇手当名目で受領した金銭からそれまでa社が立替納付していた自己の所 得税額分を差し引かれたことに因縁を付け,a社代表者から金銭を喝取しよ うと企て,平成18年6月17日午後7時30分すぎころ,富山県b市内の a社事務所において,a社代表取締役C(当時64歳)に対し,両手で鋼材 を振りかざし,「お前みたいな者,かたわにしてやろうか。」,「殺してやろ うか,この野郎。」などと語気鋭く申し向けて脅迫し,その顔面を手拳で数 回殴打する暴行を加えた上,「何で金を取った。俺の金を返せ。」などと申 し向けて金銭の交付を要求し,これに応じなければ更にCの生命,身体に危 害を加えるかのような気勢を示してCを畏怖させ,よって,そのころ,同所 において,Cから現金34万3650円を交付させてこれを喝取し,第2 被告人両名は,共謀の上,Cから金品を強取しようと企て,同年10月4 日午後7時35分ころ,a社敷地内において,Cに対し,被告人Bが手拳で その顔面を1回殴打し,被告人Aが粘着テープをその両足及び両手に巻き付 けるなどの暴行を加えるとともに,被告人Bが連結用金具であるネジシャッ クルを振りかざしながら「殺してやろうか。」などと脅迫してその反抗を抑 圧し,C所有又は管理に係る現金約290万円及びセカンドバッグ等11点 (時価合計約5万1000円相当)在中の手提げ袋1袋(時価約500円相当)を強取し,その際,上記一連の暴行により,Cに全治約9日間を要する頚椎椎間板障害の傷害を負わせ たものである。
(法令の適用) 被告人Aの判示第1の所為は刑法249条1項に,被告人両名の判示第2の所為は同法60条,240条前段にそれぞれ該当するところ,判示第2の罪につい て所定刑中有期懲役刑を選択し,被告人Aについては以上は同法45条前段の併 合罪であるから,同法47条本文,10条により重い判示第2の罪の刑に法定の 加重をした刑期の範囲内,被告人Bについてはその所定刑期の範囲内で,被告人 Aを懲役7年6月に,被告人Bを懲役6年にそれぞれ処し,同法21条を適用し て未決勾留日数中被告人Aに対しては80日を,被告人Bに対しては60日をそ れぞれその刑に算入し,押収してある現金142万1000円(以下「本件押収 金」という。)のうち139万1000円は,判示第2の罪の賍物で被害者に還 付すべき理由が明らかであるから,刑事訴訟法347条1項によりこれを被害者 Cに還付することとし,訴訟費用は,同法181条1項ただし書を適用して被告 人両名に負担させないこととする(なお,本件押収金は,判示第2の強盗致傷の 約6時間10分後,被告人Aが警察官に発見された際に使用していた普通乗用自 動車内に存置されていたものである。その存置状況や被害者の供述等に符合し, 信用性の高い被告人Bの供述によれば,強盗致傷における被告人Aの分け前は約 143万6000円であると認められ(これに反する被告人Aの供述は信用でき ない。),他方,被告人Aが強盗致傷前に所持していた金銭は,多くとも3万円 を超えることはない。そこで,本件押収金から上記3万円を差し引いた139万 1000円は強盗致傷の賍物であると認められるから,その範囲で被害者に還付 する。)。(量刑の理由) 判示第2の強盗致傷は,被告人両名が,平素から多額の金銭を所持している被害者を狙い,実行時の役割分担等を決め,粘着テープ等の犯行用具を用意し,被 害者を待ち伏せるなどの準備をした上で敢行した計画的な犯行である。その態様 は,夜間,二人がかりで被害者に襲いかかり,その顔面を殴打し,緊縛するなど しただけでなく,バッグを離さない被害者に対し,金具を振りかざして「殺して やろうか。」等の強烈な脅迫文言を用いており,粗暴かつ執拗である。被害者は, 多額の財産的な損害を被ったのみならず,全治約9日間を要する怪我を負わされ, 著しい恐怖を感じさせられており,その処罰感情が厳しいのは当然であるにもか かわらず,被告人両名とも見るべき慰謝の措置を講じていない。被告人Aは,自己の負担すべき納税額分を退職後に受領した金銭から引かれた ことを逆恨みし,判示第1の恐喝を敢行した上,さらに,被害者を襲い金品を奪 う話を被告人Bに持ちかけ,前の職場に関する種々の情報を提供するなどし,実 行段階でも被害者を緊縛するなど一貫して中心的な役割を果たしている。その結 果,上記の分け前を得ているが,公判廷においても,自己の主張する分け前額3 3万8000円を超えて被害弁償をする意思はない旨明言してはばからない。被告人Bは,被告人Aから本件を持ちかけられるや,多額の分け前を期待して これに参加し,謀議の過程で犯行を具体化するとともに,実行段階では被害者へ の殴打や金品の強取等実行行為の重要な部分を分担し,被告人Aとほぼ同額の分 け前を得ている。以上の点に鑑みると,被告人両名の刑事責任は重大である。
しかしながら,他方,強盗致傷につき,被害者の怪我が幸い重傷には至ってい ないこと,被害金の約半分が被害者に還付される見込みであること,被告人Bは 発案者ではないこと,被告人両名はいずれも本件を認め,反省の態度を示してい ること,被告人Bの古い罰金前科1犯以外には被告人両名とも前科がないこと等, 被告人両名のために酌むべき事情も認められる。そこで,これらの諸事情を総合考慮し,被告人両名をそれぞれ主文の刑に処す るのが相当であると判断した。(求刑 被告人Aにつき懲役10年,被告人Bにつき懲役8年) 平成19年3月6日
富山地方裁判所刑事部
裁判長裁判官 手 崎 政 人
裁判官 大 野 博 隆
裁判官 五十嵐 浩 介
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