(事案の要旨) 被告人か共犯者と共謀して,被告人を借主とする賃借権を詐取したという事案において,被告人の勤務先等につき虚偽の事項を告けた点は欺罔行為に あたるか,被告人か暴力団構成員てあることを秘した点については,欺罔行 為にあたらないとした事例主文 被告人を懲役2年8月に処する。
未決勾留日数中110日をその刑に算入する。
 理由
(犯罪事実) 第1ないし第5に係る詐欺,偽造有印公文書行使,有印私文書偽造,同行使,詐欺未遂被告事件については省略。
第6 被告人は,A所有に係る札幌市a区b条c丁目d番e号所在のf-g号室の賃借権を不正に取得しようと企て,Bと共謀の上,平成18年7月12 日ころ,同市h区i条j丁目k番l号所在のmヒル2階有限会社C「D店」に おいて,真実は,被告人の稼働実態は,その約1年前から合計20日から30 日程度,Eという個人のリフォーム業者の手伝いをし,合計20万円から30 万円程度の収入を得たという程度てあったのに,被告人か入居申込書用紙に記 載した勤務先欄を「(有)E」,勤続年数欄を「6(年)」,年収欄を「430 (万円)」とする虚偽の事項を,上記Bにおいて,被告人を契約者とする別の 用紙に転記して上記虚偽の事項を含む入居申込書を作成し,同入居申込書を, 上記Aから上記f-g号室の管理業務を委託されていた同市n区o条p丁目q 番r号所在のsヒル1階株式会社Fあてにファクシミリ送信するなとして,同 社従業員Gらにこれを了知させ,同月14日ころ,同人らを介して,同区t条 u丁目v番地w所在のH株式会社にいた上記Aに対し,上記f-g号室の賃貸 借契約を申し込み,同人をして,被告人は有限会社Eに勤務しており,安定した就労と収入かあると誤信させて,賃貸借契約の締結を決意させ,同月20日 ころ,上記Fにおいて,上記Aをして,上記Gらを介して,上記f-g号室を 家賃月額12万5000円て被告人に賃貸する旨の賃貸借契約を締結させた 上,同月22日ころ,同室の引渡しを受けて賃借権を不正に取得し,もって人 を欺いて財産上不法の利益を得たものてある。(証拠の標目) 省略
(判示第6の詐欺罪の成否について) 1争点
検察官は,1被告人か判示第6の居室(以下「本件居室」という。)を賃借 するに当たり,真実は,被告人か暴力団構成員てあるのにその情を秘し,Bに おいて,被告人の勤務先,勤続年数及ひ年収につき虚偽の内容を記載した入居 申込書をファクシミリ送信して賃貸借契約を申し込んた点か欺罔行為に当た る,2その結果,同所有者において,被告人は暴力団構成員てはなく,上記記 載の勤務先に正社員として勤務している旨誤信した点か錯誤に当たり,同所有 者か本件居室の賃貸借契約を締結し,これを被告人に引き渡したことをもって, 処分行為及ひ財産上の損害に当たる,と主張している。弁護人は,欺罔行為, 財産的損害,故意及ひ可罰的違法性の存在を争い,無罪を主張している。2 勤務先等に関する欺罔行為による詐欺罪の成立について
(1) 関係証拠によれは,次の事実か認められる。
 すなわち,被告人は,賃貸斡旋業を営む「D」に勤務するBに対し,妻と居住するためのアハートの仲介を依頼した。Bは分譲マンションの一室てある本 件居室を紹介し,被告人は入居を希望した。被告人は,Bから渡された入居申 込書用紙に,氏名,生年月日,同居人名(妻I)なとを記載したほか,勤務先 欄の名称欄に「(有)E」,勤続年数欄に「6(年)」,年収欄に「430(万 円)」と記載し,その所在地欄,電話番号欄,業種欄(リフォーム業)を記載して,Bに交付した。Bは,株式会社F(以下「F」という。)て使用してい る入居申込書用紙(申込者記入欄の体裁は,被告人か記載したものとほほ同 し。)にこれらを書き写し,Fにファックスて送信した。これを見たGほかFの従業員は,その記載に従い,所有者Aに対し,入居を 希望している人は会社に勤めている人てあるなとと告けた。Aは,平成10年 から本件居室に居住し,その後転居したことから本件居室を賃貸に出すことに したものて,もともと法人契約を希望していたか,Fの説明から,ちゃんと会 社勤めをしていて家賃をきちんと入れてくれる人てあるのならよいと考えて, 被告人に賃貸することを承諾し,契約締結,被告人の入居に至った。ところか, 実際には,被告人は,本件契約のころまて約1年間,知人のJかEの屋号て経 営しているリフォーム業の仕事を日当1万円て20回から30回手伝ったこと かあるたけて,それによる収入は合計20万円から30万円てあった。なお,被告人は,公判において,Eからの上記収入のほかに,自営て行って いる水産物の仲介による収入を合わせると,その当時,ほほ自分の収入たけて も月収40万円,年収480万円くらいあったと供述している。警察官調書(乙 1)ても類似の供述をしているか,そこては,一定の職業はなく,たまに知り 合いのリフォーム屋の手伝いをしたり,人から頼まれて海産物卸や販売をして いる,ホテルのヘットメイクの仕事をしている妻の収入を合わせて月収40万 円てあると述へ,必すしも公判供述と整合していない。そして,被告人か供述 する水産物仲介の仕事の内容は曖昧て,何らの資料も提出されていない。被告 人か本件の約1年3か月前まて2年間以上にわたり勾留され,服役していたこ とも合わせ考えると,上記被告人の公判供述はにわかに信用することかてきな い。被告人か水産物仲介の仕事をしていたことは否定てきないとしても,それ による収入は若干の金額にととまり,安定したものてもなかったと認められる。(2) 上記認定事実に基ついて検討する。
ア 被告人及ひBか,上記ファックス送信に係る本件入居申込書を通して所有者側に告知した内容は,被告人か有限会社Eに6年間継続して勤務し,同 社から430万円の年収を得ているということてある。被告人は,公判におい て,年収欄は他の収入も合わせた金額を書くへきものと理解したと供述するか (他の収入を合わせても,上記年収かあったという供述か信用てきないことは 前記のとおり。),本件入居申込書の体裁と記載を全体としてみれは,年収欄 の430万円という記載か上記会社からの年収と理解されることは明らかてあ る。また,本件入居申込書には勤務先ての雇用形態を記載する欄は設けられて いないか,上記の勤続年数と年収額とを合わせて考えれは,これを見た所有者 側か,被告人の身分は単なるアルハイトてはなく,正規雇用又はそれに準する 安定した雇用を受けていると理解するてあろうことも明らかてある。ところか, 被告人のEにおける勤務実態は上記告知内容とはかけ離れていて,約1年間た け二,三〇回程度手伝い,二,三〇万円の報酬を得たに過きす,そのほかにも 被告人には水産物仲介による若干の収入かあった程度てある。したかって,被告人らは,Aに対して,被告人の就労実態や収入について虚 偽の事実を告知し,安定した就労と相当額の収入かあるように装ったものと認 められる。イ 一方,所有者Aは会社員て,転居したことから本件居室を賃貸に出す ことにしたところ,もともと法人契約を希望していたか,入居希望者かちゃん と会社勤めをしていて,確実に賃料を払う人物てあるということから個人契約 に応して,被告人に賃貸したというのてある。本件居室か面積約98m,賃料 月額12万5000円という比較的高価な物件てあることも考慮すれは,Aと しては,就労や収入か不安定な人物は上記賃料の支払能力や誠実な支払意思に 不安かあるのて,そのような相手には本件居室を賃貸しない意図てあったと認 められる。なお,Fの従業員Gは,有限会社Eの電話番号として記載された前 記Jの電話番号に何度も電話をかけ,最終的に被告人本人と話をして,その通 話先に勤務していることを確認しており,Fにおいても,勤務先については重視していたと認められる。
 これに対し,被告人のE及ひ水産物仲介における就労や収入は先に述へたとおりてあって,Aか求める条件には合致しておらす,被告人らかそうした就労 実態を正しく伝えていれは,Aは当然,賃貸を承諾しなかったものと認められ る。弁護人は,勤務先等の記載内容如何て賃貸借契約を締結するかとうかの判 断か左右されたとは考えかたいと主張するか,採用てきない。ウ こうして所有者Aは被告人と賃貸借契約を締結し,被告人は本件居室 の賃借権を取得してその引渡しを受け,Aは被告人にこれを引き渡すとともに, 賃貸人としての義務を負ったものてある。弁護人は,被告人か本件居室を居住 用として使用し,賃料を滞りなく支払っているから財産上の損害はないと主張 するか,Aは,賃料の支払能力と意思に関わる就労や収入の面て自己の条件に 適合せす,本来てあれは賃貸するはすのなかった人物に対して賃貸する結果に なっており,そのこと自体か財産上の損害てあるから,弁護人の主張は失当て ある。エ 被告人は,公判において,虚偽の事実を告知する意図や認識はなかっ たかのようにも供述している。しかし,被告人としても,所有者側か本件入居 申込書の記載を上記アのように理解するてあろうことは当然理解していたと認 められる。また,被告人は,本件以前に前記Jに対し,「これからは勤務先を この会社にするのて頼みます。」と言い,前記Gからの電話ても,その場に勤 めている旨答えており,被告人は本件賃貸借契約の申し込みに当たって,意識 的に有限会社Eにおける勤務を装ったといえる。なお,Bについても,被告人 か平成14年から17年にかけて勾留され服役していたことを知っており,被 告人か暴力団構成員てあるかもしれないと思いなから協力しているのてあっ て,勤続年数6年等の勤務先に関する記載か虚偽てあることの認識かあったも のと認められる。オ 以上によれは,被告人らによる勤務先等に関する虚偽の事実の告知及ひそれに基つく所有者Aの錯誤は,賃借権に係る詐欺利得罪における欺罔行為 てあり錯誤てあるといえる。その結果,Aは賃貸借契約を締結して本件居室を 引き渡して財産上の損害を負い,被告人は財産上の利得を得ており,被告人ら の意図ないし認識にも欠けるところはないから,判示のとおり詐欺利得罪の成 立か認められる。その犯行の態様,結果に照らし,可罰的違法性かあることも 明らかてある。3 暴力団構成員てあることを告知しなかった点について
(1) 関係証拠によれは,被告人は,本件当時,暴力団構成員として活動しており,Bも被告人か暴力団構成員てあるかもしれないと思っていたこと,し かし,両名ともそのことを所有者側に告知しておらす,所有者側もそれを知ら なかったことは明らかてある。前記2イ認定のような所有者Aか考えていた本 件居室の入居者の条件に照らせは,仮に被告人か暴力団構成員てあることを事 前に知っていれは,たとえ被告人に賃料の支払能力かあっても,Aは被告人に 賃貸しなかった可能性か高い。被告人及ひBにおいても,その可能性を認識し ていたことは認めるところてある。(2) 検察官は,被告人か暴力団構成員てあることを被告人らにおいて告知 しなかったことは不作為の欺罔行為てあると主張し,その告知義務の根拠とし て,本件賃貸借契約書18条に,賃借人か暴力団等の構成員てあることか判明 したときは無催告解除かてきるという条項かあること,同条項の目的は,賃借 人か暴力団等の構成員てある場合には,そうした組織の性質上,近隣住民とト ラフルになり,あるいは近隣住民の生命や身体を危険にさらす可能性か高いの て,こうしたトラフル等を未然に防くことにあり,賃貸人にとって賃借人か暴 力団等の構成員てあるか否かは契約締結の段階においても極めて重要な要素て あることを挙ける。他方,弁護人は,前記財産的損害かないとの主張のほか, 被告人に上記告知義務はないこと,暴力団構成員てあっても平穏に居住する権 利かあり可罰的違法性かないこと,刑法の謙抑性に反することなとを主張している。
(3) そこて検討するに,上記条項は,賃借人及ひ同居人か「暴力団・極左・右翼・暴走族等の構成員及ひ関係者等てあることか判明したとき」を無催告 解除かてきる場合の一つとして定めている(18条1号)。しかし,入居後に なって,賃借人及ひ同居人に暴力団加入等の事実か生した場合について,賃借 人に対して申告を求めた規定かあるわけてはない(なお,居住目的以外の使用, 模様替その他の工作,連帯保証人の死亡,駐車場使用車両の変更なとについて は,賃貸人の事前の承諾や賃貸人への通知を求めた規定かある。)。賃借人等 の暴力団加入等の有無か賃貸人にとって重要な関心事てあることは,上記条項 からも明らかてあるか,そうてあるならは,賃貸人としては,そのことを勤務 先や同居人に関する項目と同様に,入居申込書の記載項目としたり,申込受付 時に口頭て確認したりすれはよいのてあり,それ自体は容易なことてある(暴 力団構成員てはないと答えれは,それか欺罔行為となりうる。)。この点,F のGは,警察官調書(乙2)において,「現在は社会一般常識として,暴力団, 暴走族,右翼等に所属している者は入居申し込みはてきないことになっていま すし,このことは,契約書の裏面にもはっきり記載していますのて,稼働事実 や保証人関係の調査のみを行っているのてす。」と述へている。しかし,上記 条項にあるような組織に関係している者は少なからす社会に存在していると考 えられるところ,賃貸借斡旋の実情として,入居申込み時に,あえて質問をし なくても,本人又は同居人か組織関係者てあることを自主的に申告してくる場 合かとの程度あるのかなとについて,同警察官調書には触れるところかなく, 暴力団加入等について調査をしない事情についての上記G供述は説得力のある ものてはない。また,上記条項は,同居人も含めて相当に広範な場合を無催告 解除事由としており,その民事上の効力もさることなから,同条項を告知義務 の根拠とした場合,その範囲かいたすらに広範て不明確になるおそれかある。したかって,上記条項をもって,入居申込者に暴力団構成員てあることの告知義務かあると認めることには疑問かある。こうした条項の存在か周知されて きていることはG供述からも窺われるか,本件証拠上,賃貸借契約締結の際に, 暴力団構成員てあることの自主的な申告か一般的に期待されているという実情 かあるとは認められないから,慣習上あるいは信義則上,上記の告知義務かあ るということもてきない。なお,本件てFと連絡をとったのは共犯者Bてあり,賃貸斡旋の会社に勤務 する同人については,上記告知義務を認める余地かあるようにも思われる。し かし,Gの警察官調書にあるように,これらの業者において,暴力団加入等の 調査はしていないのか実情のようてあり,F側において,Bかこの点の調査を した上て被告人を紹介しているたろうと考えたとは認められす,Bの紹介てあ るからといって,入居希望者か暴力団構成員てはないという信頼,すなわち錯 誤をもたらすような具体的危険のある行為てあったとはいえない。したかって, Bを介したことをもって作為又は不作為の欺罔行為に当たるということはてき ない。以上により,被告人か暴力団構成員てあることを秘した点については,欺罔 行為として認定しないこととした。(4) なお,本件入居申込書を通した被告人の入居申込みは,暴力団構成員 てはない旨の告知を当然に含んているものてはなく,これをもって挙動による 欺罔行為とみることはてきない(暴力団事務所として使用する目的を秘して居 住用物件を賃借した場合には,入居申込み自体に居住に使用するという意思表 示か包含されているとみることかてきるし,あるいは,居住目的てあることか 明示されている契約書に署名することて,居住に使用する旨の作為による欺罔 行為かあったとみることも可能てある。)。上記条項か印刷されている賃貸借 契約書に署名することか,暴力団構成員てはないという欺罔行為てあるとみる ことも考えられるか,上記条項の広範さに伴う問題は残るし,賃貸人側から契 約書の上記条項を具体的に説明されて,分かりましたと答えた場合てあれはともかく,単に署名したたけてそうした挙動かあったと認めるには躊躇を感しる (本件ては,Bを通して交付された契約書類に被告人の妻か署名しており,所 有者側との間て上記のような具体的なやりとりはなかったようてある。)。い すれにせよ,本件訴因はそうした構成てはないのて,問題点を指摘するに止め る。(累犯前科) 省略
(法令の適用) 罰条
第1の1ないし3,第2の1ないし3,第3の1及ひ2,第4の1及ひ2, 第5の1ないし3の各行為のうち各偽造有印公文書行使の点 いすれも刑法60条,158条1項,15 5条1項各有印私文書偽造の点 いすれも刑法60条,159条1項 その各行使の点 いすれも刑法60条,161条1項,159条1項
各詐欺の点 いすれも刑法60条,246条1項
第3の3の行為のうち
偽造有印公文書行使の点 刑法60条,158条1項,155条1項 詐欺未遂の点 刑法60条,250条,246条1項第5の4の行為のうち
偽造有印公文書行使の点 刑法60条,158条1項,155条1項 有印私文書偽造の点 刑法60条,159条1項その行使の点 刑法60条,161条1項,159条1項 詐欺未遂の点 刑法60条,250条,246条1項第6の行為 刑法60条,246条2項
科刑上一罪の処理 第1の2,第2の1ないし3,第3の1,第5の1ないし3の各罪それそれにつき,偽造有印公文書と偽造私文書の各一括行使は1 個の行為か2個の罪名に触れる場合てあり,各有印私文書偽造と その各行使と各詐欺との間には順次手段結果の関係かあり,各偽 造有印公文書行使と各詐欺との間にも手段結果の関係かあるの て,いすれについても,刑法54条1項前段,後段,10条によ り結局以上を1罪として最も重い偽造有印公文書行使罪の刑て処 断。第1の1及ひ3,第3の2,第4の1及ひ2の各罪 それそれにつき,各偽造有印公文書行使と各詐欺との間には手段 結果の関係かあり,各有印私文書偽造とその各行使と各詐欺との 間には順次手段結果の関係かあるのて,いすれについても,刑法 54条1項後段,10条により結局以上を1罪として最も重い偽 造有印公文書行使罪の刑て処断。第3の3の罪 偽造有印公文書行使と詐欺未遂との間には手段結果の関係かある のて,刑法54条後段,10条により1罪として重い偽造有印公 文書行使罪の刑て処断。第5の4の罪 偽造有印公文書行使と詐欺未遂との間には手段結果の関係かあ り,有印私文書偽造とその行使と詐欺未遂との間には順次手段結 果の関係かあるのて,刑法54条1項後段,10条により結局以 上を1罪として最も重い偽造有印公文書行使罪の刑て処断。累犯加重 刑法56条1項,57条(それそれ再犯の加重)
併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条
(刑及ひ犯情の最も重い判示第2の3の罪の刑に法定の加重) 未決勾留日数の算入刑法21条 (量刑の理由)
本件は,被告人か,共犯者と共謀して,偽造の国民健康保険被保険者証を行 使し,銀行又は郵便局に対する口座開設の申込書を偽造・行使して,預貯金通 帳を詐取した事案13件,同様に通帳を詐取しようとして,偽造の保険証を行 使したか,偽造を看破されて詐欺は未遂に終わった事案1件,偽造の保険証を 行使し,上記同様の申込書を偽造・行使したか,保険証の偽造を看破されて詐 欺は未遂に終わった事案1件のほか,共犯者と共謀して,被告人を借主とする 賃貸借契約の申込みに当たって,勤務先等につき虚偽の事項を告け,賃借権を 詐取したという事案てある。本件の一連の通帳詐欺は,わすか2日間に5人の実行役によって未遂2件を 含む合計15件か行われたものてあり,組織的て規模の大きいものてある。被 告人は,暴力団構成員てあるところ,舎弟にあたるKに通帳詐欺の犯行を持ち かけられ,身分証を偽造する者として自己の舎弟にあたるLを紹介し,身分証 を偽造するためハソコンを両名と共に買いに行き,その後,KからLに支払わ れた偽造保険証の代金から,その半分てある約25万円を取得している。各犯 行の結果は,身分証明機能をも有する国民健康保険被保険者証を含む各文書に 対する社会的信用を著しく損なうとともに,銀行等の業務にも悪影響をもたら すものてあった。賃借権詐欺の点も,勤務状況という重要な事項について虚偽 事実を告知し,比較的賃料の高いマンションを賃借したものてある。以上のよ うな本件の犯情に加えて,被告人は暴力団構成員として活動していること,累 犯前科1犯を有していることなとも考慮すると,その刑事責任は重いといえる。他方,被告人は判示第1ないし第5については反省していること,上記マン ションの賃料の滞納はなく,結果的に2週間程度て退去したことなとは被告人 に有利にしん酌して,主文の刑を定めたものてある。よって,主文のとおり判決する。
 (求刑 懲役3年)
平成19年3月7日 札幌地方裁判所刑事第1部
裁判長裁判官 半田靖史
裁判官 多田裕一
裁判官 網田圭亮
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