平成17年(わ)第168号 強盗致傷被告事件 主文
被告人を懲役11年に処する。
 理由
(罪となるべき事実) 被告人は,分離前の共同被告人A,同B,C,D及びEと共謀の上,パチンコ店か ら集金された現金等を強取しようと企て,平成16年3月29日午前11時30分ころ, 富山市内の路上において,F(当時34歳)運転の普通貨物自動車の前後を普通乗 用自動車2台でふさいで停止させた上,Dにおいて,上記貨物自動車の窓ガラスを 所携の脱出用ハンマーでたたき割り,Fに対し,その顔面を同ハンマーで数回殴打 し,「殺されたくなかったら降りれ。」などと語気鋭く申し向け,同車から引きずり出す などの暴行,脅迫を加えてその反抗を抑圧し,同人所有又は管理に係る現金約67 13万5720円在中の集金鞄等7点(時価合計約1万5600円相当),小切手5枚 (額面金額合計1600万7040円)ほか6点在中の鞄1個(時価約1000円相当)ほ か45点(現金合計約6万7525円,時価合計約1万3200円相当)が積載された上 記貨物自動車1台(時価約60万円相当)を強取し,その際,上記暴行により,同人 に対し,加療約3週間を要する顔面裂挫創,鼻骨骨折,左胸部打撲の傷害を負わ せたものである。(法令の適用)
被告人の判示所為は刑法60条,平成16年法律第156号附則3条1項により同 法による改正前の刑法(以下「旧法」という。)240条前段に該当するが,所定刑中 有期懲役刑を選択し,被告人には前科があるので刑法56条1項,57条により同法 6条,10条により旧法14条の制限内で再犯の加重をし,これは確定裁判があった 罪と刑法45条後段の併合罪であるから,同法50条によりまだ確定裁判を経ていな い判示強盗致傷罪について更に処断することとし,上記加重した刑期の範囲内で 被告人を懲役11年に処し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用し て被告人に負担させないこととする。(量刑の理由)
 1 本件は,複数の暴力団組員を含む8名からなる集団が,情報提供役,実行役等の役割を分担し,現金等の輸送車に関する情報を収集・検討し,輸送ルートの下 見をするなど周到な準備の上で敢行したものであり,犯行の組織性,計画性は 顕著である。その態様は,白昼,路上において実行役4名が乗用車2台で輸送車 を挟み撃ちにして停車させた上,その運転手に暴行脅迫を加え,同車ごと現金等 を強奪するという大胆かつ粗暴なものである。輸送車の運転手は,突如として集団に襲われて加療約3週間の怪我を負わさ れ,著しい恐怖を感じさせられており,その処罰感情も厳しい。また,本件では現 金約6700万円を含む合計約8400万円という多額の財産的損害が生じている にもかかわらず,被告人は被害弁償等の見るべき慰謝の措置を講じていない。
 加えて,本件は,白昼堂々,多額の現金が強取された現金輸送車襲撃事件とし て地域社会に深刻な不安を与えたものであり,その社会的影響の大きさも見過 ごせない。2 被告人は,知人から金銭奪取が容易な現金輸送車がある旨の話を聞くや,同車 の集金時間等,更に詳細な情報収集を同人に依頼し,他方で名古屋の暴力団員 である共犯者に同車襲撃の話を持ち掛け,収集された情報を伝えるなどしてい る。このように,被告人は,本件の首謀者の一人として計画段階において中心的 な役割を果たし,分け前として共犯者間では最も多い約2200万円の現金を得て いる。さらに,被告人は,確定裁判及び累犯前科を含む7犯の前科を有し,服役 後,再度暴力団に加入して本件を敢行しており,素行が甚だ芳しくない。 以上の点に鑑みると,被告人の刑事責任は相当重大である。 しかしながら,他方,現金以外の被害品の多くは被害者に還付されていること,本件を認めて反省の態度を示していること,上記確定裁判による刑と併せて服役す ること,養育すべき子がいることなど,被告人のために酌むべき事情も認められる。そこで,これらの諸事情を総合考慮し,被告人を主文の刑に処するのが相当であると判断した。(求刑 懲役12年) 平成17年11月15日
 富山地方裁判所刑事部 裁判長裁判官 手 崎 政 人
裁判官 大 多 和 泰 治
裁判官 五 十 嵐 浩 介
〔参考事項〕
Bは,懲役7年(強盗致傷) Cは,懲役13年(強盗致傷,覚せい剤取締法違反,窃盗,恐喝) Dは,懲役8年(強盗致傷,窃盗) Eは,懲役7年(強盗致傷,窃盗) 他に本件を幇助した2名につき,それぞれ懲役4年6月,同3年 (平成18年1月19日現在で判決宣告済みのもの)
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