主文
1 原告の被告都教委及ひ被告都人事委に対する訴えをいすれも却下する。
2 原告の被告都に対する請求を棄却する。
 3 訴訟費用は原告の負担とする。事実及ひ理由
第1 請求
1 被告都教委か平成15年4月1日付けて原告に対して行った転任処分を取り消す。
 2 被告都人事委か平成16年6月15日付けて原告に対して行った裁決を取り消す。
 3 被告都は,原告に対し,金300万円及ひこれに対する平成15年4月1日から支払済みまて年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告か,1被告都教委に対し,同被告により平成15年4月1日付けてさ れた処分てある原告を東京都多摩市立α中学校(以下「α中」という。)から東京都 調布市立β中学校(以下「β中」という。)へ転任させる発令(以下「本件転任処分」 という。)の取消しを求め,2被告都人事委に対し,同被告により同16年6月15 日付けてされた本件転任処分に対する審査請求(以下「本件審査請求」又は「本件審 査請求事件」という。)を却下した裁決(以下「本件裁決」という。)の取消しを求 め,3被告都に対し,本件転任処分及ひ本件裁決か国家賠償法1条1項に照らし違法 てあるとして,精神的損害,経済的損害として300万円及ひこれに対する遅延損害 金の支払を求めた事案てある。1 争いのない事実等(証拠等により認定した事実は,当該証拠等を文中又は文末の括 弧内に掲記した。)(1) 当事者 ア 被告都
被告都は,地方教育行政の組織及ひ運営に関する法律2条に基つき被告都教委 を設置し,地方公務員法7条に基つき被告都人事委を設置している。イ 被告都教委 被告都教委は,被告都の教育行政に関する事務を行っており,中学校教員の人事異動に関する権限を有している。
 ウ 被告都人事委
被告都人事委は,被告都の職員人事に関する事務を行っており,被告都教委な との行政庁かした処分に対する審査請求等の不服申立ての審理を行い,裁決をす る権限を有している。エ 原告 原告は,昭和46年4月,東京都公立学校教員に採用され,江東区立γ中学校教諭に任命され,その後,八王子市立δ小学校,同市立ε小学校を経て,平成1 2年4月1日からα中において家庭科教員として勤務していた(甲34,原告【1 頁】,弁論の全趣旨)。(2) 被告都における教員の定期異動
被告都教委は,平成8年10月1日,東京都区市町村立小・中・養護学校教員の 定期異動について,「東京都区市町村立小・中・養護学校教員の定期異動実施要綱」 (以下「本件異動実施要綱」という。)を定め,同15年4月1日当時,これに基 つき教員の定期異動を行っていた(なお,本件異動実施要綱は,平成15年7月1 0日付けて一部改定されたか,改定内容については,後記第3の2(3)ウ(コ) のとおりてある。)。本件異動実施要綱には,概略,以下の内容か規定されている。
 (甲2)第1 異動の目的
1 適材を適所に配置し,すへての学校の教員組織の充実を図る。
 2 教員の経験を豊かにし,資質の向上を図る。第2 異動の方針 定期異動を促進することにより,経験を豊かにし,地区間及ひ学校間における教員組織の均衡を図る。
1 現任校における勤務か一定期間を越えるものについて,積極的に異動を行う。
2 区市町村,学校における教員組織について,年齢,性別,教職経験及ひ教科の担当等の均衡を図るため,全都的な立場から積極的に異動を行う。
 3 省略第3 異動の対象 異動の方針に基つき,次の者を異動の対象とする。1 現任校における勤務か一定期間を越える者
(1) 現任校に引き続き8年以上勤務する者。たたし,新規採用以来3校以上の経験者については,現任校に引き続き8年から10年以上勤務する者
(2) 新規採用以来,現任校に引き続き4年以上勤務する者
2 過員の解消のため異動を必要とする者
3 区市町村間,学校間及ひ学校における教員組織上の不均衡の是正を図るため異動を必要とする者
4 本人か異動を申し出て,都教委か異動することを必要と認めた者。たたし,現任校の勤務年数か3年未満の者は,原則として異動の対象としない。
5 4月1日(異動の期日)現在,次に該当する者は,原則として異動の対象としない。
(1)ないし(4) 省略
(5) 病気休職の復職後6か月を経過しない者
6 省略
第4 異動の方法
1 地域・地区の指定
(1) 区市町村間の人事の交流を促進するとともに,教員の経験を豊かにするため,教員の通勤圏等を考慮して,全都をA,B,C,Dの4地域に分ける。
 (2)及ひ(3) 省略
 2 各地域と異動との関係教員は,下記の(1)から(5)により,東京都教育委員会の指定する 地域に異動するものとする。(1) 教員は,A,B,C,D地域のうち,異なる3地域にそれそれ3年 以上勤務することを原則とし,その勤務経験のない者は,同一地域内 ての異動を認めない。たたし,校長の具申,各教育委員会の内申に基つき,東京都教育委 員会か認めた者は,この規定によらす異動することかある。(2)ないし(5) 省略
 3 通勤時間
通勤時間については,おおむね60~70分を標準とするか,90分ま ては,通勤可能な時間とする。たたし,他県からの通勤者て著しく長時間 を要する者については,この規定にかかわらす異動を行う。4 異動申告書 異動は,教育職員自己申告書裏面及ひ異動についての校長所見(以下「異動申告書」という。)を用いて行う。異動申告書は,校長か作成し提出する。
 (1)ないし(3) 省略
(3) 定期異動における「過員」と「過員配置」の意義
ア 前記(2)のとおり,本件異動実施要綱第3の2によれは,異動対象者として,「過員の解消のため異動を必要とする者」か挙けられている。ここにいう過員と は次のようなことを意味する。すなわち,被告都教委ては,T・T(チーム・テ ィーチンク,複数教員による協力的指導方法,以下「T・T」という。)実施に 要する教員の加配,少人数加配(少人数編成て実施する授業に要する教員の加配) なと加配か認められる場合を除いて,学級数に応して各学校の校長,教頭,教諭, 養護教諭,事務職員ことの定数(心障学級を除く)を基準表のとおり定め,この 定数を超える教職員かいる場合を本件異動実施要綱上,過員という。イ 過員解消の異動の場合,被告都教委は,従前から,当該教員を欠員か生する学 校に転任させるほか,欠員の生しない学校にも転任させているか,後者を過員配 置と呼んている。具体的には,各学校てその教育計画上,定数を超える教員の配置を必要とし, これを希望する学校に過員教員を転任させている。これは,過員か生した場合, その解消を図る必要かあり,過員教員を転任させる必要かあるか,必すしも転任 先に適した欠員の生する学校かない場合かあり,このような場合には教育計画上, 定数を超えて教員の配置を必要とする学校に転任させ,もって異動の目的てある 「適材を適所に配置し,すへての学校の教員組織の充実を図る」こととしている ものてある。(弁論の全趣旨)(4) 本件転任処分
被告都教委は,平成15年4月1日付けて,原告に対し,α中からβ中への異動 を命する本件転任処分をした。(5) 本件裁決に至る経緯
ア 原告は,平成15年5月26日,被告都人事委に対し,本件転任処分の取消し又は本件異動実施要綱に沿った異動を求める本件審査請求をした(甲1)。イ 被告都教委は,平成16年4月1日付けて,原告に対し,β中から東京都立川 市立ζ中学校(以下「ζ中」という。)への異動を命した(以下「本件第2転任処分」という。)。
ウ 被告都人事委は,平成16年6月15日付けて,本件第2転任処分発令により,本件転任処分か取り消されたとしても原告のα中に勤務する地位か回復するわけ てもなく,したかって,本件転任処分の取消しを求める法律上の利益はないとし て,本件審査請求を却下するとの本件裁決をした。そこて,原告は,前記「事案 の概要」ても述へたように,被告らに対し,本件転任処分及ひ本件裁決の各取消 し並ひに国家賠償請求の本件訴えを提起した。(甲29,弁論の全趣旨)2 争点
(1) 原告は,本件転任処分及ひ本件裁決の各取消しを求める訴えの利益を有しているか(本案前の答弁)。【原告と被告都教委,被告人事委との関係】(2) 本件転任処分に違法な点はあるか。【原告と被告都教委,被告都との関係】ア 目的の違法の存否 本件転任処分は,原告をα中から排除するなと違法な目的て行われたものか,それとも過員解消の目的て行われたものか。
イ 本件異動実施要綱違反の存否
(ア) 本件異動実施要綱には法規範性かあり,教員の異動か当該要綱の条項に違反すれは,当該異動は直ちに違法となるのか。
(イ) 原告の自宅からβ中まての通勤時間は,本件異動実施要綱第4の3に違反するか。仮に違反しているとしたら,本件転任処分は違法となるか。
 ウ 適正手続違反の存否本件転任処分には,告知,聴聞の機会の保障欠如なと適正手続違反の違法かあ るか。(3) 本件裁決に違法な点はあるか。【原告と被告都人事委,被告都との関係】 ア 理由不備の存否本件裁決に理由不備の違法かあるか。 イ 適正手続違反の存否
証人採用後に期日を開かすに本件審査請求を却下した本件裁決に適正手続違反 の違法かあるか。(4) 本件転任処分又は本件裁決に違法か認められる場合に,原告か被った損害額は 幾らか。【原告と被告都との関係】3 争点に対する当事者の主張
(1) 争点(1)(訴えの利益の存否-本案前の答弁)について
【被告都教委及ひ被告都人事委】
ア 本件転任処分について
(ア) 原告ら地方公務員か,地方公務員法(以下「地公法」という。)49条の2に基つき人事委員会に審査請求を行い,更に当該処分の取消訴訟を提起し得 るのは,不利益処分を受けたときに限られる。ところて,本件転任処分は,原 告の身分・俸給・勤務内容に不利益な変動を生するものてはなく,また,勤務 場所も原告か転居を余儀なくされるほと通勤時間か長時間になったわけてはな く,地方公務員として社会通念上受忍すへき範囲を超えるものてはないから不 利益処分に当たらない。したかって,本件転任処分取消訴訟は不適法てある。(イ) 第1次転任処分に対し審査請求・取消訴訟か提起され,その後第2次転任 処分か行われた後,第1次転任処分か取り消されても,これにより第2次転任 処分か遡及的に無効となることはない。原告は,本件転任処分後に本件第2転 任処分を受け,同転任処分については審査請求期間中に審査請求をせすに同処 分か確定しており,本件転任処分か取り消されても,α中の教員に復帰するこ とはない。したかって,原告は,本件転任処分について不服申立てをする訴え の利益かなく,同処分取消訴訟は不適法てある。イ 本件裁決について
(ア) 前記ア(イ)と同様に,原告は,本件転任処分か取り消されても,本件第2転任処分か取り消されない以上,α中の教員に復帰することはない。そうたとすると,本件裁決取消訴訟も訴えの利益かなく,不適法てある。(イ) 処分取消訴訟と裁決取消訴訟か併合提起された場合,裁決庁は仮に手続に 違法かあっても処分取消訴訟の判決に拘束されるから,処分取消訴訟とは別個 に裁決取消訴訟を行う独自の利益はない。また,仮に本件裁決に固有の瑕疵か あり,これにより原告か何らかの損害を被ったというのてあれは,それについ て損害賠償請求をすれは足りるところ,原告は本件裁決の違法を理由に被告都 に対し損害賠償請求をしており,当該損害賠償請求とは別個に本件裁決の取消しを求める訴えの利益はない。したかって,本件裁決取消訴訟は不適法てある。
 【原告】ア 本件転任処分について
(ア) 教員の転任処分は,同一市内中学校間の異動なとて,その身分,俸給等に異動を生せしめす,客観的,実際的見地からみても勤務場所,勤務内容等に何 ら不利益を伴うものてはないと認められる場合を除き,原則として不利益処分 となる。本件転任処分は,多摩市から調布市という市をまたいての異動てあり, これに伴い原告は本件異動実施要綱第4の3に違反する片道90分を超える通 勤を強いられたのてあり,不利益処分に当たる。したかって,原告は本件転任 処分の取消しを求める訴えの利益を有している。(イ) 本件転任処分か取り消されれは,これを前提として行われた本件第2転任 処分も遡及的に無効となり,原告は遡ってα中の教員の地位を回復することに なる。したかって,本件第2転任処分かあっても本件転任処分取消しを求める 訴えの利益は失われない。イ 本件裁決について
行政事件訴訟法10条2項は,「処分の取消しの訴えとその処分についての審 査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することかてきる場合には,裁決 の取消しの訴えにおいては,処分の違法を理由として取消しを求めることかてき ない。」と規定している。しかし,同条項は,原処分の違法性を理由とする処分 取消訴訟のほかに,裁決固有の違法性を理由とする裁決取消訴訟を併合して提起 することを禁止しているとはいえない。原告は,本件裁決について,理由不備, 証人採用後の期日不開催という裁決手続固有の違法を主張しており,本件裁決の 取消しを求めることについても訴えの利益かある。また,本件転任処分取消訴訟 について,棄却判決かされていない現時点において,同判決の拘束力を理由とし て本件裁決取消訴訟に訴えの利益かないとすることは許されない。(2) 争点(2)(本件転任処分の違法性)について 【原告】
ア 目的の違法 本件転任処分は,下記のとおり,違法な目的によるものてあり,裁量権の逸脱・濫用かある。
(ア) 原告は,α中の家庭科の授業において,法律や行政か新たに求めている男女平等教育の先取りとして,「従軍慰安婦」「同性愛」等について授業したと ころ,一部の生徒や保護者から苦情か出るなとした。このため,α中校長てあ ったP1(以下「P1校長」という。),多摩市教育委員会(以下「多摩市教 委」という。)及ひ被告都教委は,原告について授業改善の必要かあるとして 授業観察を繰り返し,改善指導の協議会を強要し,これに出席しなかったとし て原告を減給処分に処した。さらに,P1校長,多摩市教委及ひ被告都教委は, 原告の言動について,保護者や生徒に適切な説明をせすに不信を煽って苦情を 増幅させ,原告を指導力不足等教員にしようとしたか失敗した。このような事 情に照らすと,本件転任処分は,被告都教委らか原告を指導力不足等教員とし て教育現場から排除てきなかったため,その代替手段として原告をα中から排 除する目的て行われたことか明らかてある。(イ) α中ては,平成15年度の家庭科の週受持授業時間数か10時間てあった ため,原告かβ中に異動後,2名の非常勤講師を採用した。また,α中ては, 平成15年ころ,コンヒュータ教育を充実させる計画はなかった。さらに,P 1校長の後任てあるα中のP2校長は,P1校長から原告は保護者から批判を 受けたり,授業内容に問題かあったりして処分を受けたこと,校長の指示に従 わないことなとの引継を受けており,原告の平成15年度の異動申告書の異動 についての校長所見欄に,「個人的な思想・信条による非常識な自己主張なと, 教育公務員としての基本的な自覚の乏しい教員てある。」なとと記載していた。
 他方,β中ては,平成15年度に家庭科のT・Tを計画しておらす,家庭科教 員の過員配置を積極的に希望していなかった。また,β中て平成14年度限り て辞める予定てあった家庭科の非常勤講師の週受持授業時間数は2時間てあ り,当時β中校長てあったP3(以下「P3校長」という。)は,同15年4 月時点ての家庭科の不足時間数については,非常勤講師を充てる予定てあった。ところか,P3校長は,β市教委から原告を受け入れるようにとの強い意向か あったため,1年限定という期限付きの過員配置を渋々承諾した。これらの事 情に照らすと,本件転任処分は,α中の過員解消か目的てはなく,被告都教委 か原告をα中から排除する目的てあったことか明らかてある。イ 本件異動実施要綱違反
(ア) 本件異動実施要綱の法的性格
教育基本法6条2項,教育公務員特例法の趣旨,国際労働機関(ILO)及 ひ国際連合教育科学文化機関(UNESCO)の「教員の地位に関する勧告」 の趣旨に照らすと,本件異動実施要綱第4の3か教員の異動について通勤時間 90分以内との制限を設けた趣旨は,教員の通勤に要する時間的,肉体的負担 を軽減し,当該教員か異動先の学校において充実した指導教育を行うことを可 能にし,もって,教員の教育の自由及ひ最低労働条件を保障するとともに,ひ いては児童・生徒らの教育を受ける権利を制度的に保障することにある。した かって,本件異動実施要綱は,単なる内部準則にととまらす,法規に準した効 力を有するというへきてあり,教員の転任処分か通勤時間の点て不利益処分に 当たるか否か,受忍限度を超えるか否かは,飽くまて本件異動実施要綱に違反 するか否かにより決すへきてある。(イ) 原告は,本件転任処分により,自宅からβ中まての通勤時間か往路平均1 02分,復路平均106分となり,いすれも本件異動実施要綱第4の3所定の 上限片道90分を超えることとなった。被告都教委は,教員について本件異動 実施要綱第4の3に従って転任処分を行う義務かあるところ,これに違反した のてあるから,本件転任処分には違法ないし裁量権の逸脱・濫用かある。なお, 平成14年7月9日付け14教人職第341号「教職員の服務の厳正について」 によれは,「教職員の自家用自動車による通勤については,1遠隔の学校に通 勤するものて,他の交通機関によることか困難な場合,2身体障害者て自動車 により通勤する必要かある場合,3その他,真にやむを得ない事情かある場合 以外は原則として認められない・・・」とされており,電車通勤か可能な原告 か遠隔地てあることを理由に自家用車通勤をすることかてきないのは明らかて ある。ウ 適正手続違反
(ア) 被告都教委は,本件転任処分において,原告に対し,行政手続法に従い,異動の意思確認を行い,異動を行う必要性,異動対象者とした理由,異動先の 希望等につき告知,聴聞の機会を設けるへきてあったのにこれを怠った。仮に, 教員の異動について,行政手続法3条1項9号により同法所定の告知,聴聞手 続等か保障されていないとするならは,転任処分も不利益処分に該当するから, 被告都教委は,地公法49条に基つき,被処分者に対し処分説明書を交付すへ きてある。ところか,被告都教委は,本件転任処分に当たり,原告に対し,処 分説明書を交付しておらす,いすれにしても本件転任処分には手続的違法かあ った。(イ) 教員の転任処分に対する異議については,学校長は市町村教育委員会に対し,同委員会は都道府県教育委員会に対しそれそれ上申を行い,その対応につ いて確認する必要かある。ところか,P2校長及ひ多摩市教委は,本件転任処 分に対する原告ないし多摩島嶼教職員組合の異議について,被告都教委に対し 客観的な資料を提出せす,報告もしておらす,本件転任処分には手続的違法か あった。(ウ) 被告都教委ないし多摩市教委か原告のβ中まての通勤時間を調査した方法 は,地図及ひコンヒュータソフトてある「駅すはあと」を使用した机上のもの てあったり,実測していない部分を含む調査結果をあえて実測結果とするなと 杜撰なものてあった。このような調査結果に基つき原告のβ中まての通勤時間 か90分以内てあると判断してされた本件転任処分には手続的違法かあった。【被告都教委及ひ被告都】
ア 目的の違法の主張に対し
(ア) 本件転任処分は,原告かα中において過員対象となったことによる過員解消を目的に行われた過員配置の異動てある。原告は,α中において過員対象者 となった。そこて,被告都教委は,家庭科教員てある原告の異動先を探したか, 欠員の生している学校はなかった。被告都教委は,区市町村教育委員会(以下 「地教委」という。)を通して学校の希望を聴取したところ,β中か多摩市教 委を介して家庭科教員の過員配置を希望したことから,原告をβ中に転任させ ることにした。(イ) α中のP2校長か授業時間数か一番少ない技術科と家庭科のうち,家庭科 を過員の対象としたのは,平成15年度進路・学習指導部方針において,「ハ ソコン機材・教材の管理・整備に努め,さまさまな教育活動に活用していける ようにします。」と定めたことから,コンヒュータ教育充実のため技術科担当 教員の方か必要性か大きかったからてあり,原告をα中から排除する目的から てはない。また,多摩市教委か原告について授業観察を行ったこと,被告都教 委か原告に対し減給処分をしたこと,P1校長ないし多摩市教委か被告都教委 に対し原告を指導力不足等教員と認定するよう申請したことは,いすれも正当 な理由に基つくものてある。そもそも原告自身,α中から他の学校へ転出する ことについては何ら異議かなく,P2校長に対し,これを承諾し,協力すると の意思表示をしていたのてあり,本件転任処分か原告をα中から排除する目的 て行われたものてないことは明らかてある。イ 本件異動実施要綱違反の主張に対し (ア) 本件異動実施要綱の法的性格教育公務員の異動は,任命権者の自由裁量事項てあり,異動対象者に対し社 会通念上受忍限度を超える不利益を与えるものてなけれは任命権者の裁量の範 囲内にある。本件異動実施要綱は多数の教員を対象とする異動を円滑に実施す るための指針(目安)にすきす,教員の勤務条件を保障したものてはない。本 件異動実施要綱は飽くまて内部準則にすきす,任命権者の裁量事項てある転任 処分か内部準則に違背して行われたとしても,当不当の問題を生するにととま り,違法となるものてはない。したかって,本件転任処分か不利益処分に当たるか否か,更に裁量権の逸脱・濫用かあるか否かは,本件異動実施要綱との適 合性如何によっててはなく,原告に社会通念上受忍限度を超える不利益を与え たか否かによって判断すへきてある。なお,国際労働機関(ILO)及ひ国際 連合教育科学文化機関(UNESCO)の「教員の地位に関する勧告」は,任 命権者てある被告都教委を法的に拘束するものてはない。(イ) 原告の自宅からβ中まての通勤時間は約80分てあり,本件異動実施要綱 に違反しておらす,原告の主張を前提にしても転居を余儀なくされるほとの通 勤時間てはない。また,原告は,α中において自家用車通勤をしており,β中 においても校長から自家用車通勤を勧められていたところ,自家用車て通勤す れは道路混雑時てあっても約65分て通勤することかてきた。したかって,本 件転任処分は,原告に対し,社会通念上受忍限度を超える不利益を与えるもの てはなく,不利益処分に当たらす,裁量権の逸脱・濫用もない。ウ 適正手続違反の主張に対し
(ア) 行政手続法3条1項9号は,国家公務員・地方公務員に対するその職務又は身分に関してなされる処分について,告知・聴聞の機会を付与する旨の規定 の適用を除外しており,その他,市区町村立中学校の教員について任命権者か 不利益処分をする際,事前に告知・聴聞の機会を付与しなけれはならないとの 実定法上の根拠は存在しない。ましてや原則として不利益処分に該当しない転 任処分について,告知・聴聞の機会を付与しなけれはならないという理由はな い。したかって,被告都教委か,本件転任処分の際,原告に対し,告知・聴聞 の機会を付与しなかったからといって,本件転任処分に手続的違法かあったと はいえない。(イ) 多摩市教委は,原告に対し,P2校長を介して,平成15年3月10日に β中まて90分て通勤することかてきる根拠を示し,同月11日に同市教委か 通勤時間の実測をした日を示し,さらに,自己申告書未提出者の異動にかかる 「一任」の範囲か異動地区・学校のことてあることなとを示しており,原告ら の不服申立てに対するP2校長及ひ多摩市教委の対応に問題となる点はなかっ た。(ウ) 被告都教委は,本件転任処分にかかる異動作業において,原告の通勤時間 の検討を地図及ひコンヒュータソフトてある「駅すはあと」により行った結果, 乗換時間等を考慮しても80分台て通勤可能と判断した。被告都教委は,多数 の教員の定期異動を取り扱っており,原告の自宅からηハス停まての所要時間 を実測することなと事実上不可能てある。さらに,多摩市教委は,本件転任処 分に先立ち,原告の自宅の最寄りのハス停てあるηハス停からβ中まての通勤 時間を実測している。したかって,被告都教委ないし多摩市教委の通勤時間の 調査方法か杜撰てあったとはいえす,本件転任処分に手続的違法かあったとは いえない。(3) 争点(3)(本件裁決の違法性)について 【原告】
ア 理由不備
裁決についての不服申立ての利益の存否は,裁決時において当該処分を取り消 すことによって回復される法的利益か存在するか否かにより判断すへきてある。
 この点,本件転任処分か取り消されれは,これを前提とした本件第2転任処分も 遡及的に無効となり,原告は遡ってα中の教員の地位を回復することになるとこ ろ,本件裁決は原告か本件第2転任処分を受けたことにより本件転任処分取消し の法律上の利益を失ったと誤判しており,理由不備の違法かある。イ 証人採用後の期日不開催 被告都人事委は,口頭審理手続継続中,次回期日て尋問する証人を採用し,期日間に次回期日の日程調整を行っていたにもかかわらす,突然,日程調整を中止 し,不服申立ての法律上の利益かないとして本件審査請求を却下した。このよう な被告都人事委の態度は,禁反言の法理に反し,不意打ち的に原告の主張立証の 機会を奪ったものてあり,適正手続に違反する。【被告都人事委及ひ被告都】 ア 理由不備の主張に対し
原告は,本件第2転任処分を適法なものとして是認し,審査請求期間内に審査 請求をしなかった。このため,本件転任処分の取消しを求める法律上の利益かな くなったのてあり,これを理由に本件審査請求を却下した本件裁決に理由不備の 違法はない。イ 証人採用後の期日不開催の主張に対し 本件転任処分の取消しを求める法律上の利益かなくなった以上,証人尋問を実施する必要はなくなった。そこて,被告都人事委は予定していた証人尋問を実施せすに審理を打ち切り本件裁決をしたのてあり,この措置に手続的違法はない。
 (4) 争点(4)(損害額)について【原告】 原告は,本件転任処分及ひ本件裁決により,本件異動実施要綱所定の通勤時間の上限を超える通勤を強いられ,時間を浪費したほか,肉体的疲労か回復しないまま 出勤することとなり,著しい肉体的,精神的損害を被った。また,原告は,上記肉 体的,精神的苦痛を回避するためやむを得す,平成15年6月下旬から同16年3 月下旬まての9か月間,調布市に月額5万4000円の賃料てアハートを借り,1 週間のうち数日は当該アハートに宿泊して通勤をした。原告は,このような二重生 活を強いられたため,家族との共同生活を営む機会を大幅に奪われたほか,家賃, 敷金,礼金,光熱費等の財産的損害を被った。原告の上記肉体的,精神的損害及ひ 財産的損害を金額に換算すれは300万円を下ることはない。【被告都】 原告主張の損害額は争う。原告は,β中に対し,通勤届,住居届について変更届を提出しておらす,従前の住居に基ついて通勤手当,住居手当を受領していたこと, 原告はβ中のP4校長から道路混雑時てあっても片道約65分て通勤することかて きる自家用車通勤を勧められていたにもかかわらす,これを断っていたことからす れは,原告主張の財産的損害かあるとはいえない。第3 争点に対する判断
1 争点(1)(訴えの利益の存否-本案前の答弁)について
(1) 前記争いのない事実等(5)イ及ひ弁論の全趣旨によれは,被告都教委は,本件転任処分後,平成16年4月1日付けて,原告をβ中からζ中に異動させる本件 第2転任処分を行ったこと,原告は同日以降ζ中て勤務していること,原告は本件 第2転任処分について,処分かあったことを知った日の翌日から起算して60日以 内に審査請求ないし異議申立てをしなかったことか認められる。(2) 前記(1)の事実を踏まえ,本件転任処分及ひ本件裁決の各取消しを求める訴 えの利益かあるか否かについて検討する。本件転任処分か地公法49条1項所定の 「不利益な処分」に該当するか否かはさておき,原告か同法49条の3所定の期間 内に不服申立てをしなかったことにより本件第2転任処分は確定していること,本 件転任処分と本件第2転任処分は別個独立の処分てあり,法的にみて本件第2転任 処分は本件転任処分を前提とするものてはないことからすれは,仮に本訴において 本件転任処分か取り消されたとしても,これによって遡及的に本件第2転任処分ま ても無効となるものてはなく,原告は本件転任処分の取消しによりα中に勤務する 地位を回復することはない。そうたとすると,原告は本件転任処分の取消しを求め る訴えの利益かないということになる。また,前記のとおり,原告か本件転任処分 の取消しを求める訴えの利益を有していないとすると,原告は同処分について不服 申立てをする利益も喪失したというへきてあり,同処分に対する不服申立てを却下 した本件裁決の取消しを求める訴えの利益もないということになる。結局のところ, 仮に本件転任処分ないし本件裁決に違法かあり,これにより原告か損害を被ったと いうのてあれは,原告は国家賠償法に基つく損害賠償請求によりその救済を求める のか相当てある。(以上につき,最一小判昭和61年10月23日判例時報121 9号127頁,最二小判平成3年12月20日参照)(3) 以上によれは,本件訴えのうち,原告か被告都教委に対して本件転任処分の取 消しを求める部分及ひ被告都人事委に対して本件裁決の取消しを求める部分は,い すれも,その余の点について判断するまてもなく不適法てあり,却下を免れない。2 争点(2)(本件転任処分の違法性の有無-国家賠償法1条1項の違法の存否)に ついて(1) 原告は,被告都教委の行った本件転任処分は,転任の目的か違法てあり,本件 異動実施要綱に違反し(通勤時間),適正手続違反かあるとして,被告都教委を設 置する被告都に対し国家賠償法1条1項に基つき損害賠償を請求している。そこて, 以下,前記3点について,順次検討することにする。(2) 本件転任処分の目的の違法性の存否
ア 原告は,α中において平成15年度に家庭科を過員とする理由はなく,被告都教委は家庭科教員の過員配置を積極的に希望していないβ中に原告を押し付けた と主張する。すなわち,本件転任処分は,原告を指導力不足等教員にすることに 失敗した被告都教委らか,その代替手段として原告をα中から排除する目的て行 ったものてあり,このような目的による転任処分は裁量権を逸脱・濫用したもの てあると主張する。そこて,以下,上記原告の主張の成否について検討する。イ 認定事実
前記争いのない事実等,証拠(文中又は文末の括弧内に掲記したもの)及ひ弁 論の全趣旨によれは,以下の事実か認められる。(ア) 原告か懲戒処分を受けるに至った経緯
a 原告は,α中の家庭科の授業において,「従軍慰安婦」「同性愛」等を扱ったところ,平成13年2月ころから,α中の生徒,保護者らから苦情か出 されるようになった。多摩市教委は,原告の授業内容について,α中の保護 者ないし一般市民から直接苦情を受けたことなとから,平成13年3月15 日以降,数回にわたり,原告の授業観察を行い,また,同年4月25日以降, 数回にわたり,原告から事情聴取をした。(乙4ないし8,28,42ない し54,56,62,64,65)b α中のP1校長は,平成13年7月7日,原告に対し,口頭て,同月12 日の授業観察終了後,授業について協議をし,指導,助言をするための協議 会に出席するよう命したか,原告はこれを拒否した。また,P1校長は,平 成13年9月1日,同月4日,同月5日及ひ同月6日,原告に対し,口頭及 ひ文書て,同月4日から同月6日まての間,多摩市教委P5指導主事らによ る授業観察終了後に協議会を開催するのてこれに出席するよう命したか,原 告はいすれもこれを拒否した。さらに,P1校長は,平成13年9月12日, 同月13日,同月19日,同月20日及ひ同月25日,原告に対し,口頭な いし文書て,同月13日,同月20日及ひ同月25日,授業観察終了後に協 議会を開催するのてこれに出席するよう命したか,原告はいすれもこれを拒 否した。(乙16,27,30,62,64)c 多摩市教委は,平成14年2月8日,同月12日,原告から前記bの職務 命令違反について,事情聴取をした。多摩市教委は,平成14年2月18日, 原告から事情聴取をしょうとしたか原告はこれを拒否した。そこて,多摩市 教委は,原告に対する事情聴取を打ち切り,平成14年2月19日,被告都 教委に対し,前記bの原告の同13年9月4日,同月5日及ひ同月6日の職 務命令違反について,教員の服務事故として報告した。(乙31なしい34, 64)d 被告都教委は,前記cの多摩市教委からの報告を受け,平成14年2月2 1日,原告から事情聴取をすることとしたか,原告か立会人の同席を求めて 事情聴取会場に入室しなかったため,事情聴取をすることかてきなかった。
 そこて,被告都教委は,平成14年2月21日にα中のP1校長から,同月 26日に同P6教頭から,それそれ事情聴取をした上て,同年3月27日付 けて,原告に対し,減給10分の1,3か月の懲戒処分をした。原告は,平 成14年5月10日付けて,被告都人事委に対し,上記懲戒処分について審 査請求をしたか,被告都人事委は,同16年5月25日,審査請求を棄却す るとの裁決をした。(乙35ないし37,67,70)(イ) 多摩市教委か原告について指導力不足等教員の申請をするに至った経緯 a 被告都教委は,東京都公立学校に勤務する教員のうち,病気・障害等以外の理由て,指導力不足等により児童・生徒を適切に指導てきない者について,指導力不足等教員と決定した上て,学校等において適切な指導者を付けて指 導を行い,また指導力ステッフアッフ研修を受講させるなとの方法により, 指導力等の向上を図っている。東京都区市町村立学校の教員を指導力不足等 教員と決定する手続は,校長か地教委の教育長に申請をし,これを受けて, 同教育長は被告都教委に申請をする。地教委教育長から指導力不足等教員の 申請を受けた被告都教委は,東京都教育庁人事部,指導部及ひ東京都教職員 研修センターの関係部課長等て構成する判定会の審議を経て,指導力不足等 教員か否かを決定するというものてある。(乙67,弁論の全趣旨)b P1校長は,平成13年9月26日,多摩市教委教育長に対し,原告か指 導計画を立てないこと,生徒に対する指導か実態に合わす,生徒やPTAか らの苦情か相次いたことなとを理由に,原告について指導力不足等教員の申 請をした。これを受けて,多摩市教委教育長は,同月27日,被告都教委に 対し同旨の申請をした。被告都教委は,平成14年3月20日,審議の結果, 「原告を指導力不足等教員と決定しない」との判定をした。前記判定の理由 は,原告は,指導方法や指導内容,生徒の理解とそのあり方について,さま さまな課題かあるか,教員としての資質・能力の欠如によって引き起こされ たという事実を証明てきるたけの十分な判断材料かそろっていないというも のてあった。なお,前記判定には,「その他」として,原告について,今回, 指導力不足等教員の決定には至らないか,申請書及ひこれまての授業観察等 の結果から,今後の教育活動を行う上て,改善を要する課題かあると判断さ れるため,多摩市教委及ひα中校長において適切な指導を行うよう通知する との付記かされていた。(甲39の1及ひ2,乙60,63,67,証人P 7【7頁】)(ウ) 被告都における教員の定期異動 被告都教委は,本件異動実施要綱に基つき教員の定期異動を行っている(前記争いのない事実等(2),甲2,乙1)ところ,その具体的手順は以下のと おりてある(乙74,証人P8【1,5頁】)。a 被告都教委は,毎年9月中旬ころ,室課長会議を開催し,翌年4月1日付け定期異動の準備作業を開始する。上記室課長会議ては,管理主事から地教 委の室課長及ひ人事担当者に対し,翌年度の異動について基本的事項の説明 か行われる。b 上記aの室課長会議の後,各地教委は,毎年10月から11月中旬にかけ て,各学校から異動対象者についてのヒヤリンクを実施する。これを受けて, 被告都教委は,11月下旬から12月上旬にかけて,各地教委から異動対象 者についてのヒヤリンクを行い,12月下旬ころ異動対象者を確定する。c その後,被告都教委は,具体的な異動作業を進め,数回に分けて,各地教 委に対し,異動対象者の内示を行う。被告都教委は,上記内示において,過 員配置を除き,異動対象者を各地区に配置し,これを受けて,各地教委は, 異動対象者を地区内のとの学校に配置するかを決定する。なお,被告都教委 は,過員配置については異動対象者の配置校まて決めて転入先地教委に示す。d 被告都教委は,転入先地教委の地区内ての学校配置の作業か終了した後, 配置校交換会議において,転出地教委に対し異動対象者の配置校を示す。e 転出地教委は,翌年3月上旬,異動対象者に対し配置校を内示する。 (エ) 自己申告書東京都教育庁は,教員の能力,適性等の人事情報を的確に把握するため,毎 年教員に校長に宛てた自己申告書を提出させており,教員か自己の異動につい て意見を述へることかてきるようにしている。教員か自己申告書を提出しない 場合,自ら異動について希望を述へる機会を放棄したものとして,異動につい て一任したものと扱われる。具体的には,1現任校における勤務か一定期間を 超える者は異動先を一任したものと扱われ,2過員解消のため異動を必要とす る者は異動希望の有無及ひ異動先を一任したものと扱われる。(甲16の1な いし3,証人P8【25頁】)(オ) 加配措置及ひ過員配置 被告都教委は,原則として,学級数に応して各学校の校長,教頭,教員,養護教員,事務職員毎の定数(心障学級を除く)を定めている。被告都教委ては, 学校に定数を超える教員かいる状況を過員と呼んている。被告都教委は,T・ T実施に要する教員の加配(T・T加配),少人数編制て実施する授業に要す る教員の加配(少人数加配)等について,例外的に過員を認めており,これを 加配措置と呼んている。また,被告都教委ては,異動作業の中て,教員の過不 足等の関係から定数を超えて教員配置を行わさるを得なくなった場合,定数を 超える教員の配置を希望する学校への転任を行っており,これを過員配置と呼 んている。このように,被告都教委は,加配措置及ひ過員配置については欠員 の生しない学校にも教員を異動させている。なお,過員の有無は,学校全体の 教職員数て決められるか,各学校てとの教科を過員とするかは,校長か各学校 の教育上の必要性を考慮して決める。校長によって過員とされた教科の教員は 異動対象となり,当該教員か受け持っていた授業を非常勤講師か担当すること となるため,一般的には,受持授業時間数の一番少ない教科を過員教科とする ことか多い。(前記争いのない事実等(3),甲25,乙74,証人P8【1 ないし5頁】)(カ) 原告か過員対象となった経緯 α中は,平成14年度の教員定期異動において,9学級から8学級への学級減に伴う過員解消として,指導時間数か一番少ない家庭科を過員教科として申 請したか,家庭科は東京都全体て過員状態てあり,異動困難ということて原告 の異動はなかった。さらに,α中は,平成15年度も学級数は変わらす8学級 てあったため,過員解消のため1名を過員対象とすることにした。α中のP2 校長は,同校における平成14年度の各教科の教員1名当たりの週受持授業時 間数は家庭科(教員1名)及ひ技術科(教員1名)かそれそれ9.5時間と最 も少なかったこと,このうち技術科教員は同15年度も同校のコンヒュータ教 育充実のための必要性か高かったことから家庭科を過員教科とした。この結果, 家庭科教員てある原告か過員異動の対象となった。なお,原告は,平成15年4月1日付けて過員により異動することについては特段異議を述へす,P2校 長に対し,これを承諾し,協力すると述へていた。(甲16の8,同25,5 0,乙73,76,原告本人【34頁】,証人P7【1,8頁】)(キ) 原告の転任先かβ中になった経緯
a 多摩市教委は,平成14年10月から同年11月上旬にかけて,同市内の各学校から異動対象者についてヒヤリンクを行ったところ,α中は,前記 (カ)のとおり,原告を過員による異動対象者としていた(甲16の8,乙 71,74,証人P8【1頁】)。b 他方,調布市教委は,平成14年11月中旬ころ,同市内の各学校から異 動対象者についてヒヤリンクを行った。この際,調布市教委は,前年度の異 動作業の後半に被告都教委から過員配置の希望照会かされたことから,上記 ヒヤリンクに併せて各学校から過員配置希望の有無を聴取した。(乙75, 証人P9【8,9頁】)c 被告都教委は,平成15年1月中旬ころから中学校家庭科の異動作業を開 始し,同年2月中旬ころ,人事計画課定数係から過員配置か許可された。こ れを受けて,当時被告都教委管理主事てあったP8(以下「P8管理主事」 という。)は,平成15年2月21日開催の室課長会議において,各地教委 に対し,家庭科教員を含む教員の過員配置の希望調査を依頼した。(乙74, 75,証人P8【6頁】,証人P9【1頁】)d 調布市教委指導室長P9(以下「P9指導室長」という。)は,前記cの 過員配置希望の調査依頼を受けて,前記bのヒヤリンクの際,過員配置を希 望していたθ中学校,ι中学校,κ中学校,λ中学校に対し,それそれ過員 配置希望の確認をした。さらに,P9指導室長は,β中においても平成14 年度限りて家庭科の非常勤講師か辞めると聞いていたことから,同15年2 月21日,前記bのヒヤリンクの際には過員配置の希望をしていなかった同 校に対しても,家庭科教員の過員配置希望の有無を聴取した。この際,β中 のP3校長は,「基本的にはお引き受けしたいけれとも,一定の時間検討さ せていたたいて,その後,正式にお返事したい。」と述へた。P3校長は, 平成15年2月24日,P9指導室長に対し,正式に家庭科教員の過員配置 を希望すると伝えた。P3校長か家庭科教員の過員配置を希望したのは,平 成14年度限りて同校の家庭科非常勤講師か辞めること,家庭科の授業を充 実させることにより生徒間の暴力等の問題解決に資すると考えたこと,選択 教科の家庭科コース増設や家庭科のT・T実施か可能になることなとか理由 てあった。(甲16の11,同25,乙75,証人P9【1ないし3,9な いし11,13頁】)e 調布市教委は,平成15年2月24日,被告都教委に対し,β中及ひλ中 学校は家庭科教員の過員配置か可能てあると報告した。なお,多摩地域ては, 家庭科の過員配置を希望する学校か少なく,調布市,小平市,清瀬市,町田 市等の数校てあった。被告都教委は,原告の自宅から学校まての通勤時間を 地図及ひコンヒュータソフトてある「駅すはあと」により検討した結果,β中てあれは原告の自宅から片道80分台て通勤することかてきると判断し, 原告の異動先をβ中と決定した。被告都教委は,多摩市教委に対し,平成1 5年2月25日,原告の異動地区を調布市と内示し,同月28日開催の配置 校交換会議において,原告の配置校としてβ中を示した。(甲16の4ない し8,14,乙74,証人P8【1頁】,弁論の全趣旨)f 多摩市教委は,前記eのとおり被告都教委から原告の異動先をβ中と示さ れたか,原告の通勤届によれはα中まての通勤時間か90分とされていたこ とから,β中まての通勤時間か90分を超える可能性かあることを危倶し, 後記(3)ウ(ウ)て詳述するとおり,平成15年3月3日,原告のβ中ま ての通勤時間を確認するため実測調査を行った。多摩市教委は,上記実測調 査の結果,原告か90分以内てβ中に通勤可能と判断した。多摩市教委は, 平成15年3月5日,原告に対し,異動先をβ中と内示した。(甲16の8, 乙71,76,証人P7【1ないし3頁】)(ク) 本件転任処分等 被告都教委は,平成15年4月1日付けて,原告に対し,α中からβ中への異動を命する本件転任処分を行った(前記争いのない事実等(4))。なお, 東京都の平成15年4月1日付け中学校教員の定期異動においては,家庭科教 員41名を含む教員合計81名(同年3月18日内示時点)か過員配置として 転任した(甲16の10)。ウ 当裁判所の判断 前記イの認定事実を前提に,以下本件転任処分か違法な目的によるものか検討する。ます,東京都の中学校において過員か生する場合にとの教科を過員の対象 とするかは,原則として校長の裁量に委ねられているところ,α中のP2校長は 同し週受持授業時間数の家庭科と技術科を比較検討し,コンヒュータ教育を充実 させるため技術科は引き続き教員に担当させ,家庭科は非常勤講師に担当させる ことにしたというのてあって,P2校長のこのような判断は合理的な理由を有す るものといえ,原告を意図的にα中から排除するため家庭科を過員の対象にした とは認め難い。確かに,β中は平成15年度の異動について,家庭科教員の過員 配置を積極的に希望していたとまてはいえない。しかし,過員配置は異動作業開 始前から教員の加配を希望する学校に対し行われるものてはなく,被告都教委の 教員の異動作業の中て必要に応して希望の有無を聴取して行われるものてあり, 家庭科教員については東京都全体において原告のほかにも多数の過員か生してい たところ,多摩市教委はβ中の家庭科の非常勤講師か辞めると聞いていたことか ら,β中のP3校長に対し家庭科教員の過員配置を希望するか否かを確認し,こ れを受けてP3校長は家庭科教員の過員配置を希望したのてあるから,被告都教 委ないし多摩市教委か意図的に原告をβ中に押し付けたということはてきない。
 さらに,平成15年度の東京都の中学校教員の異動において,家庭科教員の過員 配置を希望する多摩地域の学校はβ中を含む数校てあったところ,被告都教委は このうちβ中てあれは原告か片道80分台て通勤可能と判断し,原告の異動先を β中と決定したのてあって,本件転任処分にかかる一連の異動作業は,被告都教委における過員異動の対象となった教員の異動先決定方法に則ったものてあった といえる。そもそも,原告は,自己申告書を提出しておらす過員解消による異動 及ひ異動先については一任とされるところ,異動自体について特段異議を述へて おらす,むしろP2校長に対し異動に協力すると述へていた。なお,原告とP1 校長ないし多摩市教委との間には,原告の授業内容,これに対する生徒ないし保 護者からの苦情,原告に対する授業観察,協議会への不参加等を巡って確執かあ ったことかうかかわれないてはない。しかし,指導力不足等教員の決定は,前記 イ(イ)aのとおり,教員を教育現場から排除する目的て行われるものてはない し,被告都教委は,P1校長ないし多摩市教委教育長の原告を指導力不足等教員 とする決定を求める申請について,原告にはさまさまな課題かあるとしつつも, 指導力不足等教員には決定しないとの判定をしており,これらの事情に照らして みると,被告都教委か意図的に原告をα中から排除するためや通勤か長時間にな るようにするため本件転任処分をしたということはてきす,他にこれを認めるに 足りる証拠はない。以上によれは,本件転任処分は,違法な目的によるものてはなく,被告都教委 に裁量権の逸脱・濫用はないというへきてあって,当該判断を覆すに足りる証拠 は存在せす,この点についての原告の主張は理由かない。(3) 本件異動実施要綱(通勤時間)違反の違法性の存否
ア 原告は,本件異動実施要綱か法規に準した効力を有することを前提に,本件転任処分により原告の通勤時間か同要綱第4の3に定める90分を超えることにな った以上,本件転任処分は,違法ないし裁量権の逸脱・濫用になると主張する。
 これに対し,被告都は,本件異動実施要綱は飽くまて内部準則にすきす,任命権 者の裁量事項てある転任処分か内部準則に違背して行われたとしても,当不当の 問題を生することはあっても違法となることはなく,本件転任処分か裁量権を逸 脱したものか,違法なものかは,本件転任処分か原告に対し社会通念上受忍限度 を超える不利益を与えたか否かにより判断すへきてあると反論する。イ 東京都区市町村立中学校等の教員は,被告都教委か任命する地方公務員てある から,その転任処分は,地公法17条1項に基つき,任命権者てある被告都教委 に付与された権限の行使として行われるものてあって,その発令は原則として被 告都教委の裁量に委ねられており,その裁量権の行使に逸脱かあった場合にはし めて違法と評価されると解するのか相当てある。そして,前記争いのない事実等 (2)及ひ弁論の全趣旨によれは,被告都教委は,本件異動実施要綱て,東京都 区市町村立中学校等の教員の定期異動についての指針を定めたものというへきと ころ,本件異動実施要綱に定める基準に合致しない転任処分は,特段の事情のな い限り,裁量権の逸脱かあるものと推認され,国家賠償法1条1項にいうところ の職務の遂行において違法と見られる余地か出てくるというへきてある。当裁判 所としては,以上の判断基準に照らし,本件転任処分か行われた際の諸事情を考 慮し,特段の事情の存否等,本件転任処分に違法性かあるか否かについて検討す ることにする。ウ 認定事実
前記争いのない事実等,証拠(文中又は文末の括弧内に掲記したもの)及ひ弁 論の全趣旨によれは,以下の事実か認められる。(ア) 原告の自宅からβ中まての通勤方法 原告の自宅からβ中まての公共交通機関を利用した通勤方法には,おおむね以下の3方法か考えられる。
 1自宅―(徒歩)―ηハス停―(ハス)―μ駅―(電車)―ν駅―(ハス)―β中学校前ハス停―(徒歩)―β中 2自宅―(徒歩)―ηハス停―(ハス)―μ駅―(電車・ν駅て乗換)―ξ駅―(徒歩)―β中 3自宅―(徒歩)―ηハス停―(ハス)―μ駅―(電車・π駅て乗換)―ξ駅―(徒歩)―β中
(イ) 被告都教委は,本件転任処分にかかる異動作業の過程て,地図及ひコンヒュータソフトてある「駅すはあと」を使用して原告の自宅からβ中まての通勤 に要する時間は幾らてあるか計測した。その結果,被告都教委は,原告か前記 (ア)1の方法て通勤する場合,自宅からηハス停まてか徒歩て約5分,同ハ ス停からμ駅まてかハスて34分,同駅からν駅まてか電車て32分,同駅北 口からβ中まてかハスて9分かかり,これに乗換時間等を考慮しても80分台 て通勤か可能と判断した。(甲16の4ないし7,証人P8【6,7頁】)(ウ) 平成13年4月1日から同16年3月31日まての間多摩市教委学校教育 部次長,指導室長事務取扱てあったP7(以下「P7指導室長」という。)は, 同15年3月3日,多摩市教委の職員にηハス停からβ中まて公共交通機関を 利用した場合の所要時間を実測させたところ,その結果は,以下のとおりてあ った(甲16の8,同17,乙76,証人P7【1ないし3頁】,弁論の全趣 旨)。午前6時32分 ηハス停からハスに乗車(時刻表より2分遅れ) 午前7時5分 μ駅から電車に乗車午前7時36分 ν駅到着,乗換
午前7時45分 ξ駅到着後,徒歩にてβ中に向かう 午前7時59分 β中到着所要時間87分 なお,帰路,β中からν駅まてハスに乗車したところ,所要時間は9分てあ った。(エ) 被告都教委のP10管理主事,P11任用担当係長は,平成15年6月1 7日,ηハス停からβ中学校前ハス停まて公共交通機関を利用した場合の所要 時間を実測したところ,その結果は,以下のとおりてあった(甲16の9)。午前6時43分 ηハス停からハスに乗車(時刻表より1分遅れ) 午前7時11分 μ駅到着午前7時16分 μ駅から電車に乗車
午前7時50分 ν駅到着
午前7時55分 ν駅ハス停からハスに乗車
午前8時7分 β中学校前ハス停到着
所要時間84分
(オ) 被告都教委のP12管理主事,P11任用担当係長は,平成15年10月2日,原告の自宅からηハス停まて徒歩による所要時間を実測したところ,約5分てあった(甲20)。
(カ) 他方,原告は,平成15年3月6日,自宅からβ中まて公共交通機関を利用した場合の所要時間を実測したところ,その結果は,以下のとおりてあった (甲13,34,原告本人【10頁】)。(往路―前記(ア)2の通勤方法)
午前6時35分 自宅発,徒歩にてηハス停に向かう 午前6時41分 ηハス停到着午前6時42分 ηハス停からハスに乗車 午前7時15分 μ駅到着午前7時28分 μ駅から電車に乗車
午前8時 ν駅到着,乗換
午前8時2分 ξ駅到着後,徒歩にてβ中に向かう 午前8時18分 β中到着所要時間103分
(往路―前記(ア)3の通勤方法) 午後5時10分 β中発,徒歩にてξ駅に向かう 午後5時29分 ξ駅から電車に乗車 午後5時41分 π駅到着,乗換 午後5時57分 μ駅到着午後6時8分 μ駅からハスに乗車 午後6時52分 自宅到着
所要時間102分
(キ) また,原告は,平成15年3月7日,前記(ア)1の通勤方法により,自 宅からβ中まての所要時間を実測したところ,105分てあった(甲14,3 4,原告本人【10頁】)。(ク) さらに,原告は,平成15年4月3日から同年7月14日まての間,断続 的に自宅からβ中職員室まての通勤時間を実測したところ(なお,通勤方法は 前記(ア)1ないし3なとか混在している。),往路は最短て92分(前記ア 1の通勤方法),最長て121分(前記ア1の通勤方法)てあり,平均すると 約102分(36日間の平均)てあった。また,復路は最短て100分(前記 ア1の通勤方法),最長て120分(前記ア3の通勤方法)てあり,平均する と約106分(11日間の平均)てあった。なお,上記所要時間は,原告の自 宅からβ中の職員室まての所要時間てあり,β中の正門から職員室まての所要 時間は,約3分てあった。(甲6,11,原告本人【8,36頁】)(ケ) 平成13年度当初の東京都公立小・中学校等の教員の中には,東京都内在 住てあっても通勤時間か90分を超える者か合計407名存在し,このうち26名は120分を超えている(甲19)。
(コ) 本件異動実施要綱は,平成15年7月10日付け15教人職第308号により改定され(同年9月1日施行),通勤時間について,「おおむね60分~ 70分を標準とするか,90分まては,通勤可能な時間とする。」から「おお むね60分から90分を標準とするか,120分まては通勤可能な時間とす る。」へと改定された(乙1)。エ 当裁判所の判断
(ア) 前記争いのない事実等(2)及ひ前記ウ(キ)(ク)によれは,本件異動実施要綱第4の3は,教員の通勤時間は,おおむね60ないし70分を標準と し,90分まては通勤可能な時間とすると規定しているところ,原告の自宅か らβ中まての通勤時間は,原告の実測によれは,往路は平均すると約102分, 復路は約106分かかることか認められ,原告か自宅からβ中まて通勤する場 合,ハス,電車を利用して確実に90分以内て通勤することかてきると認める に足りる的確な証拠は存在しないというへきてある。したかって,α中からβ 中への本件転任処分は,本件異動実施要綱第4の3に抵触しているというへき てある。(イ) 前記イても述へたとおり,転任処分か本件異動実施要綱に定める基準に合 致しないからといって,当該転任処分か直ちに裁量権の逸脱,ひいては国家賠 償法上違法となるのてはなく,当該転任処分かとのような事情の下てされたか を検討し,裁量権の逸脱かあるのかを判断するのか相当てある。これを本件についてみるに,前記(2)イウ,前記(3)ウて認定した事実, 証拠(甲34,48の1ないし5,原告本人)によれは,1本件転任処分は過 員解消のため過員配置の措置として正当な目的を遂行するために行われたもの てあること(前記(2)イ(カ)(キ),ウ),2東京都の平成15年度の教員 異動において,多摩地域て家庭科の過員配置を希望する学校は少なく,調布市, 小平市,清瀬市,町田市等の数校てあったこと(前記(2)イ(キ)e),3 このうち,β中てあれは,コンヒュータソフトてある「駅すはあと」によれは 原告の自宅から80分台て通勤することかてきる結果となっていたこと(前記 (2)イ(キ)e),4実際,原告の自宅からβ中まての通勤時間は,公共交 通機関か時刻表とおり運行されれは前記ウ(ア)1の通勤方法によるのか最も 短時間てあるところ,90分以内て通勤することも可能てあり,道路状況等に よるハスの遅れかあってもおおむね100分前後て通勤することか可能てある こと(前記(3)ウの(ア)ないし(キ)),5平成13年度当初の東京都公 立小・中学校等の教員の中には,東京都内在住てあっても通勤時間か90分を 超える者か407名と少なからすおり,本件異動実施要綱も同15年7月10 日には,通勤可能な時間か90分から120分に改定されていること(前記 (3)ウ(ケ)(コ)),6原告は,α中において自家用車通勤をしており,β 中においてもP4校長から自家用車通勤を勧められていたところ,自家用車通 勤による原告の自宅からβ中まての所要時間は道路混雑時てあっても約65分 てあったこと(なお,被告都教委においては,平成15年7月18日付け通知以降,教員の自家用車による通勤を原則として禁止したものの,本件転任処分 当時は遠隔の学校へ通勤するものて,他の交通機関によることか困難な場合等 には自家用車通勤か許可されていた。甲34,48の1ないし5,原告本人【1, 41ないし43,55頁】。)かそれそれ認められる。以上の認定事実によれは,本件転任処分か,本件異動実施要綱第4の3に抵 触することかあったとしても,前記1ないし6のとおり,本件転任処分の目的 は正当てあること,コンヒュータソフトによれは90分以内て通勤可能てある との結果となっており,90分て通勤てきない日かあるとしても超過時間は1 0分内外てあること,原告は前任のα中ては自家用車通勤をしておりβ中の校 長も原告の自家用車通勤を認めているところ,これによれは余裕をもって90 分以内て通勤てきることなとの諸事情を考慮すると,本件転任処分においては 特段の事情か存在し,被告都教委に裁量権の逸脱,濫用かあるとまてはいえす, ましてや,職務遂行上の違法,換言すれは,国家賠償法1条1項に規定すると ころの違法かあるとは到底いうことはてきない。(ウ) 以上によれは,本件転任処分か本件異動実施要綱(通勤時間)に違反し違 法ないし裁量権の逸脱,濫用かあるとの原告の主張は理由かなく,採用するこ とかてきない。(4) 適正手続違反について
ア 原告は,本件転任処分の際,被告都教委は原告に対し,告知,聴聞の機会を設けるか,処分説明書を交付すへきてあるところ,いすれも履践していないか ら,本件転任処分には手続的違法かあると主張する。しかしなから,行政庁の行う不利益処分について告知,聴聞の機会付与等を 規定している行政手続法は,地方公務員に対するその職務又は身分に関してさ れる処分等について,これらの規定の適用を除外している(同法3条1項9号)。
 また,地公法49条1項は,「任命権者は,職員に対し,懲戒その他その意に 反すると認める不利益な処分を行う場合においては,その際,その職員に対し 処分の事由を記載した説明書を交付しなけれはならない。」と規定するところ, 前記2(3)イのとおり,転任処分は任命権者に付与された権限の行使として 行われるものてあり,それ自体は原則として職員に不利益を課する処分てはな く,地公法は転任につき職員の同意を要するものともしていないから,地方公 務員てある教員の異動について処分説明書の交付を要すると解することはてき ない。したかって,被告都教委か,本件転任処分の際,原告に対し,告知,聴聞の 機会を設けす,処分説明書を交付していないことをもって,本件転任処分に手 続的違法かあるとはいえない。イ 原告は,β中への内示を受けて,原告及ひ多摩島嶼教職員組合かP2校長な いし多摩市教委に対し不服を述へたにもかかわらす,同人らは被告都教委に対 し,客観的な資料を提出せす,報告もしていないから,本件転任処分には手続 的違法かあると主張する。しかしなから,被告都教委の教員の異動に関し,当該教員らの不服を校長ないし地教委か被告都教委に報告しなかったからといって,直ちに当該転任処分 に手続的違法か生すると解することはてきない。また,証拠(甲17,18, 25,34,乙74,76,証人P8【1,8,13,14,16,17,3 0頁】,証人P7【1,3,4,10頁】,原告本人【1頁】,たたし,甲34 については下記認定に反する部分を除く。)及ひ弁論の全趣旨によれは,P2 校長はP7室長に対し,原告かβ中への異動内示について通勤時間か90分を 超えているのて納得てきないと苦情を述へていると連絡したこと,これを受け てP7室長は被告都教委のP8管理主事に対し原告の苦情を伝えたこと,P7 室長は,原告に対し,平成15年3月10日にP2校長を介してβ中まて90 分て通勤することかてきる根拠を示し,同月11日にも同校長を介して多摩市 教委か通勤時間を実測した日を示したことか認められる。そうたとすると,P 2校長ないし多摩市教委は被告都教委に対し原告の実踏検査記録(甲14)を 提出していないものの,P2校長ないし多摩市教委は被告都教委に対し原告ら の本件転任処分に対する不服申立ての内容を報告しており,P2校長ないし多 摩市教委らの対応は本件転任処分か手続的に違法となるようなものてはなかっ たといえる。したかって,原告らの本件転任処分に対する不服申立てについてのP2校長 ないし多摩市教委の対応を理由として本件転任処分に手続的違法かあるとはい えす,この点の原告の主張は理由かない。ウ 原告は,本件転任処分において被告都教委ないし多摩市教委かした原告の通 勤時間の調査は杜撰なものてあり,このような調査に基ついて行われた本件転 任処分には手続的違法かあると主張する。しかしなから,被告都教委の教員の異動に関し,当該教員の通勤時間の調査 に不備かあったからといって直ちに当該転任処分に手続的違法かあると解する ことはてきない。のみならす,本件転任処分において被告都教委ないし多摩市 教委かした原告の通勤時間の調査は,前記2(3)ウ(イ),(ウ)のとおり てあり,被告都教委ないし多摩市教委か同時期に多数の教員の異動作業を行う ことなとを考慮すれは,同調査か杜撰てあったとまていうことは困難てある。したかって,本件転任処分における被告都教委ないし多摩市教委かした原告 の通勤時間の調査を理由として本件転任処分に手続的違法かあるとはいえな い。エ 前記アないしウの検討結果のとおり,本件転任処分の手続的違法に関する原 告の主張はいすれも採用することかてきす,その他本件転任処分に手続的違法 かあるとはいえす,この点の原告の主張は理由かない。(5) 小括 以上検討したとおり,本件転任処分には,転任目的に違法な点はなく,本件異動実施要綱第4の3(通勤時間)に照らし違法ないし裁量権の逸脱,濫用もなく, 適正手続違反も認められない。したかって,これらの違法を前提とする原告の被 告都に対する国家賠償法1条1項に基つく損害賠償請求は,その余の点を判断す るまてもなく理由かない。3 争点(2)(本件裁決の違法性の有無-国家賠償法1条1項の違法の存否)につい て(1) 原告は,本件裁決には,理由不備ないし適正手続違反の違法かあるとして,被 告都に対し,国家賠償法1条1項に基つき損害賠償請求をするのて,その成否につ いて,以下検討することにする。(2) 認定事実 前記争いのない事実等,証拠(文中又は文末の括弧内に掲記したもの)及ひ弁論の全趣旨によれは,以下の事実か認められる。
ア 原告は,平成15年5月26日,被告都人事委に対し,本件転任処分の取消しを求める本件審査請求をした(前記争いのない事実等(5)ア)。
イ 被告都教委は,本件審査請求事件において,平成15年10月23日,被告都 人事委に対し,P3校長,P9指導室長,P8管理主事,P7指導室長を証人と して申請した。他方,原告は,平成15年11月17日,被告都人事委に対し, β中国語教師P13,P2校長,P3校長,P9指導室長,P8管理主事,P7指導室長を証人として申請した。(甲21,22)。
ウ 被告都教委は,平成16年4月1日付けて,原告に対し,β中からζ中への異動を命する本件第2転任処分をした(前記争いのない事実等(5)イ)。エ 被告都教委は,本件審査請求事件の平成16年4月14日付け準備書面(4) において,原告は本件第2転任処分によりβ中からζ中へ異動となり,その通勤 時間は原告の申告ても片道78分となったのてあるから,本件転任処分につき審 査請求を求める利益はなくなったとの主張をした。これに対し,原告は,本件審 査請求事件の平成16年4月26日付け意見書(1)において,本件第2転任処分かあったとしても審理を継続するよう要請した。(甲23,乙2)。オ 被告都人事委は,平成16年4月26日,本件審査請求事件について第1回口 頭審理を開催し,P3校長及ひP2校長の証人尋問を行った。また,被告都人事 委は,上記第1回口頭審理において,次回期日において,P8管理主事及ひP1 3を証人として調へることとし,次回期日は証人らの都合等を調整して後日決定することにした。(甲25,30)カ 被告都人事委は,平成16年5月17日, 原告の代理人に対し,次回期日の候補日を連絡したか調整かつかなかった。さら に,被告都人事委は,平成16年6月3日,原告の代理人に対し,次回期日を検 討しているのて待ってほしいとの連絡をした。(当事者間に争いかない事実)キ 原告は,本件審査請求事件の平成16年6月4日付け第3準備書面において, 本件第2転任処分によっても本件転任処分について審査請求を求める法的利益は なくならないと主張し,前記エの被告都教委の準備書面(4)に対する反論をし た。これに対し,被告都教委は,本件審査請求事件の平成16年6月4日付け準 備書面(5)において,原告か本件第2転任処分について審査請求をせすに審査 請求期間か経過したことにより,本件転任処分について審査請求を求める法的利 益はなくなったと主張し,上記原告の第3準備書面に対する再反論をした。さら に,原告は,被告都人事委に対し,平成16年6月7日付け意見書(2)を提出 し,本件審査請求の審理を続行するよう求めた。(甲26ないし28)ク 被告都人事委は,平成16年6月8日,原告代理人に対し,前記キの原告の第 3準備書面,被告都教委の準備書面(5)等について,慎重に調査,分析し,今 後の審査方針を検討しており,第2回口頭審理の日程調整は保留すると通知した (甲31)。ケ 被告都人事委は,平成16年6月15日,原告は本件第2転任処分を受けたこ とから,本件転任処分の取消しによりα中に勤務する地位を回復するものてはな く,本件転任処分の取消しを求める法律上の利益を有しないとして,本件審査請 求を却下するとの本件裁決をした(前記争いのない事実等(5)ウ,甲29)。(3) 当裁判所の判断
ア 原告は,原告か本件第2転任処分を受けたことにより本件転任処分の取消しを求める法律上の利益を失ったとして本件審査請求を却下した本件裁決には理由不 備の違法かあると主張する。しかしなから,前記1のとおり,原告は,仮に本件転任処分か取り消されたと しても,これにより遡及的に本件第2転任処分まても無効となるものてはなく, 本件転任処分の取消しによりα中に勤務する地位を回復することもないから,本 件転任処分の取消しを求める法律上の利益を有しない。したかって,同様の理由 て本件審査請求を却下した本件裁決に理由不備の違法はない。イ 原告は,被告都人事委か次回期日て尋問する証人を採用し,期日の調整を行っ ていたにもかかわらす,突然,本件転任処分の取消しを求める法律上の利益かな いとして本件審査請求を却下したことは適正手続に違反すると主張する。この点,確かに,前記(2)によれは,被告都人事委は,本件審査請求事件の 審理中に,原告か本件第2転任処分を受け,これについて原告か不服を申し立て すに確定したことから,尋問予定の証人かいたにもかかわらす,審理を打ち切り, 本件審査請求を却下するとの本件裁決をしたことか認められる。しかし,前記ア のとおり,被告都人事委の判断自体には誤りはなく,また,本件審査請求の審理 については,民訴法等に定めるような厳格な手続は定められていないから,被告 都人事委か裁決可能と判断した時点て尋問予定てあった証人について取消等の手 続を要するとまては解されない。なお,前記(2)エ,キのとおり,被告都人事 委は,本件第2転任処分か行われたことにより本件転任処分の取消しを求める法 律上の利益か消滅したか否かについて,原告にも反論の機会を与えており,本件 裁決か不意打ちてあったということもてきない。したかって,被告都人事委か次 回期日て尋問する証人を採用し,期日の調整を行っていたにもかかわらす,本件 審査請求を却下するとの本件裁決をしたことは適正手続に違反するとまてはいえ ない。ウ 以上のとおり,本件裁決に理由不備,適正手続違反の違法かあるとの原告の主 張は理由かなく,採用することかてきす,その他本件裁決に違法かあると認める に足りる証拠は存在しない。したかって,これらの違法を前提とする原告の被告 都に対する国家賠償法1条1項に基つく損害賠償請求は,その余の点を判断する まてもなく理由かない。第4 結語
以上によれは,原告の被告都教委及ひ被告都人事委に対する訴えは,いすれも不適 法てあるからこれを却下することとし,原告の被告都に対する請求は理由かないから これを棄却することとする。東京地方裁判所民事第36部 裁判長裁判官 難 波 孝 一
裁判官 福 島 政 幸 裁判官知野 明
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