主文
1 α幼稚園長は,申立人に対し,Aのα幼稚園への就園を仮に許可せよ。2 申立費用は被申立人の負担とする。
 理由
第1 申立ての趣旨
1 主位的申立て
 主文と同旨
2 予備的申立て
 β教育委員会は,申立人に対し,Aのα幼稚園への就園を仮に許可せよ。第2 事案の概要
 本件は,徳島県板野郡β(以下「β」という。)に居住する申立人が,○等の障害のある次女Aを被申立人が設置するα幼稚園に就園させることの許可を求める申請をしたのに対して,β教育委員会(以下「町教育委員会」という。)が就園を不許可とする決定をしたことについて,同不許可決定は違法であり,Aの就園を許可すべきであって,就園の許可がされないことによりAに償うことができない損害が生じるので,これを避ける緊急の必要があると主張し,行政事件訴訟法37条の5に基づき,主位的にα幼稚園長において,予備的に町教育委員会において,上記就園を仮に許可するよう求めた仮の義務付け申立事件である。
1 前提事実(争いのない事実のほか,一件記録により一応認められる事実) (1) 当事者ア 申立人は,その長女及び次女であるA(平成○年○月○日生)とともに,その住所地に居住している者である(甲1,2)。
イ 被申立人は,α幼稚園,γ幼稚園,δ幼稚園及びε幼稚園(これらの幼稚園を併せて「町立幼稚園」という。)を設置している地方公共団体である(β立学校の設置に関する条例2条。乙1)。
(2) Aの障害等 Aは,先天的に,(略)の障害を有し,これによる歩行障害及び○障害があるほか,○に罹患している(甲3,6,7,9,乙3)。
 (3) 就園願 申立人は,平成16年12月20日,その住所地を通園区とするα幼稚園長に対し,Aの就園に係る願書を提出し,その就園の許可を求めた(乙3。以下「本件申請」という。)。
(4) 就園不許可決定 町教育委員会は,本件申請について,平成17年3月8日,以下の理由により,Aの就園を不許可とする決定をした(甲8。以下「本件不許可決定」という。)。
 (不許可理由)
ア 町立幼稚園がいずれも古い施設であるため,バリアフリーに配慮した施設になっていないこと。
イ 5歳児の保育室が2階にあるため,自力歩行をすることができないAの教育環境として適切ではなく,大規模な施設改修が当分見込めない現状では,極めて受入れが困難であること。
ウ Aには重複障害があるため,看護的な補助等が必要であり,これに対応するための専門的な知識を有する教職員の加配措置をすることが困難であること。
(5) 処分取消し及び義務付け訴訟の提起 申立人は,平成17年○月○日,本件不許可決定を取り消し,Aの就園の許可を命じることを求める訴えを徳島地方裁判所に提起した(以下「本案訴訟」という。)。
2 争点 (1) 本案訴訟について理由があるとみえるか否か。
1 町教育委員会が本件不許可決定をする権限を有するか否か,2 本件不許可決定は,町教育委員会がその裁量権を逸脱又は濫用したものとして取り消されるべきであるか否か,α幼稚園長又は町教育委員会において本件申請についてAの就園を許可する決定をしないことが,その裁量権を逸脱又は濫用したものといえるか否か。
(2) 本件申請について就園許可がされないことによる償うことのできない損害 を避けるため,緊急の必要があるか否か。(3) Aのα幼稚園への就園を仮に許可することを義務付けることにより,公共 の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるか否か。3 争点に対する当事者の主張 (1) 本案訴訟について理由があるとみえるか否かについて 【申立人の主張】
ア 幼稚園の就園許可義務
憲法14条,26条1項,学校教育法78条の各規定や,幼稚園教育 要領の「第三章 指導計画作成上の留意事項」の「2 特に留意を要する事項」に おいて「(2) 障害のある幼児の指導に当たっては,家庭及び専門機関との連携を図 りながら集団の中で生活することを通して全体的な発達を促すとともに,障害の種 類,程度に応じて適切に配慮すること」と規定されていることや,児童の権利に関 する条約2条の規定等に基づき,幼児は,幼稚園に就園して適正な保育を受ける権 利を有し,行政機関には,同権利を確保する措置を採る義務がある。現代の福祉社 会においては,ノーマライゼーション(人は,障害等があっても,普通の生活を送 る権利があり,社会にはそれを支える責任がある。)が基本理念である。1994 年のサマランカ宣言以降 には,いわゆるインクルージョンも基本理念となっており,行政機関は,子どもが 一人一人違うのが当たり前であることを前提として,すべての子どもを包み込む教 育システムの中で,一人一人の特別な必要に応じた教育援助をしなければならな い。町立幼稚園においては,幼児の保護者が就園の申請をすれば,ほぼ自動的に就 園が許可されることになっている。そうである以上,Aには,α幼稚園に就園して 適正な教育を受ける権利があり,被申立人には,Aの同権利を確保する措置を採る 義務があるというべきである。イ 裁量権の逸脱又は濫用 (ア) 裁量権の範囲
 行政機関に幼児の就園を許可するか否かについての裁量権があるとしても,幼児が人間性,社会性,自立性を獲得していくためには他者とのかかわりを持つことが不可欠であることや,前記アの各規定に照らすと,行政機関が上記許否の判断をするに当たり,合理的な理由なしに不許可にすることは許されない。(イ) 本件不許可決定に合理的理由がないこと a Aは,○の障害を有するものの,その障害の内容は歩行障害と○障害だけで,そのほかに行動上の障害はない。Aは,0歳時から運動機能を高めるために,ζに通院しており,ζ作成の平成17年1月13日付けの意見書(以下「ζ意見書」という。)や徳島県児童相談所作成の平成16年12月20日付け証明書(以下「県児童相談所証明書」という。)では,Aが幼稚園において集団生活をすることが可能であり,むしろ望ましいと判断されている。Aが体験入園をしているγ幼稚園においては,午前8時15分から午前11時30分まで,ほとんどの時間が自ら選んだ遊びに費やされており,この間,Aは,ドッジ・ボールや鬼ごっこ等はすることができないものの,少人数の園児と共に砂遊びをしたり,絵本を読んだりして過ごしているの
であるから,Aを就園させた場合に,町立幼稚園のカリキュラムを変更する必要はない。Aは,○に罹患しているものの,健常児以上に○部に注意を要する状態ではない。
 本件不許可決定は,α幼稚園がバリアフリーに配慮した施設にな
っていないことを理由に挙げている。しかしながら,Aは,γ幼稚園における体験入園の際には,申立人が自動車でAをγ幼稚園まで送り,Aが(略)。現状の施設のままでも,Aのα幼稚園への登園に支障はなく,1階と5歳児の保育室がある2階との間だけで移動介助が必要なだけである。Aの移動介助をする者を加配(特別の人員の配置)すれば,α幼稚園への就園が可能である。
b 被申立人は,肢体不自由児や自閉症児等の多数の幼児について教職員を加配をしており,Aについてだけ加配をしない合理的理由はない。被申立人は,平成17年度予算において,道路を舗装するためなどに教育施設設備事業積立金を3億2600万円も取り崩して流用しており,被申立人において加配をする気さえあれば,当該積立金を本来の用途に用いて加配をするなどして,Aを就園させることに支障はないはずである。被申立人の財政上の問題を理由としてAの就園が不許可とされるのならば,県内の地方公共団体のすべての障害児が就園を不許可とされることになりかねない。Aは,通園時間中に2回の○をすることが必要であり,これを行う医療資格保持者を加配をすることができないとしても,申立人は,AのためにAに付き添って
α幼稚園に通園する意思があり,申立人においてAの○をすることができる。他の自治体ではそのような方法で保育が実施されており,申立人の付添いを認めないのは余りに形式的,硬直的である。
c Aは,現在γ幼稚園において体験入園を認められているものの,α幼稚園への就園(正式入園)が認められる場合と異なり,通園日が火,水,金の週3日,通園時間が午前9時から午前11時までの2時間に限定されており,隔週でクラスも変わり,クラスごとに配付される帽子や名札もなく,給食の支給もないほか,運動会,遠足等の特別行事への参加も許されていない。Aは,申立人に対し,γ幼稚園への非通園日の前日には,毎日通園したいと訴え,通園日にも,他の園児よりも早く降園する際には,何故降園しなければならないのか,どうしたら給食が食べられるか,などと訴えている。
(ウ) 申立人は,本件申請の際,ζ意見書や県児童相談所証明書を添付 したにもかかわらず,町教育委員会は,これらの専門家の意見を無視して本件不許 可決定をした。被申立人は,自閉症や多動症等の保育上障害が重いといえる園児に ついては教職員を加配をしながら,より障害の軽いAについては加配をせずに通園 を認めないという矛盾した措置を採っている。町教育委員会の委員は,申立人がA のことを思う余り他の園児への影響への配慮やお世話になっている意識が薄いと述 べるなどしており,同委員には,障害者蔑視の発想が根本にあり,障害者も社会に おいて自立する権利があり,健常者も障害者と共生することにより人間的に豊かな 社会を構築することができるという当然の認識を欠いている。(エ) 上に述べたところによれば,本件不許可決定は,町教育委員会が 合理的な理由もなくしたものであることが明らかである。ウ 以上によれば,本件不許可決定は,町教育委員会がその裁量権を逸脱又は濫用した違法なものである。本件不許可決定は取り消されるべきであり,本件申請について許可をせず,Aのα幼稚園への就園を認めないことは,α幼稚園長が,その裁量権を逸脱又は濫用したものというべきであり,仮に,α幼稚園長に上記許可をする権限がないとしても,町教育委員会が,その裁量権を逸脱又は濫用したものというべきであるから,本案訴訟について理由があるとみえるということができる。
 【被申立人の主張】
ア 町教育委員会の権限
 β立幼稚園学則(以下「町立幼稚園学則」という。)17条は,幼児の入園許可の事務を当該幼稚園の園長に行わせているものの,地方教育行政の組織及び運営に関する法律23条4号は,教育委員会が幼児の入学等に関する事務を管理及び執行すると規定しているのであるから,町教育委員会は,Aのα幼稚園への就園の許可を求める本件申請について許否の判断をする権限を有する。イ 幼稚園の就園許可義務の不存在
 憲法14条,26条1項,学校教育法78条,幼稚園教育要領等は,いずれも幼児に幼稚園に就園する権利を保障したものではなく,行政機関に同権利を確保する措置を採る義務を負わせたものではない。むしろ,憲法26条1項,教育基本法,学校教育法等によれば,小学校教育及び中学校教育については義務教育として定められ,これらと高等学校教育とが普通教育として位置づけられているのに対し,幼稚園教育については,義務教育とも,普通教育ともされていないことからすれば,上記の幼児の幼稚園に就園する権利や行政機関の同権利を確保する措置を採る義務が法律上存在しないことは明らかである。町立幼稚園については,保護者が提出した就園願いを受理した幼稚園の園長が,保護者と面接して,必要に応じて資料の提出を受け,町
教育委員会の審議等を経た上で,町立幼稚園学則第24条に定める退園事由の有無等を検討して,就園の許否を決定するのであり,幼児の保護者が就園の申請をすれば,ほぼ自動的に就園が許可されるというものではない。Aは,町立幼稚園に就園する権利を有せず,被申立人には,Aの同権利を確保する措置を採る義務はない。ウ 裁量権の逸脱又は濫用の不存在 (ア) 裁量権の範囲
 幼稚園教育は,義務教育ではない上,町立幼稚園への就園の許可
は,私立幼稚園の場合と同様に幼稚園への利用関係の設定行為にすぎないから,契約自由の原則が支配する私立幼稚園の就園契約における幼稚園設置者と同じように,行政機関も,幼児の就園を許可するか否かについて,広範な裁量権を有するというべきである。
 (イ) 本件不許可決定に合理的理由があることa 町立幼稚園の校舎は,いずれも5歳児の保育室が2階にある上,バリアフリーに配慮した施設になっていない。α幼稚園の園舎については,校舎玄関,保育室や遊戯室の出入口等に段差があるなど,まったくバリアフリーに配慮した施設になっていない。このようなα幼稚園に歩行障害を有するAを就園させるためには,移動の介助だけでは到底足りず,α幼稚園の園舎についてバリアフリー化のための改修工事をすることが必要不可欠である。
b
 1 Aは,歩行障害を有する上,○にも罹患しており,○部への外力が加わることは極めて危険である。幼稚園児は,周囲の状況を考慮して行動することができず,自己の眼前にある関心事にしか注意を向けることができないため,予測不可能な行動をとることも多い。このような園児がいる中でAの安全を確保するためには,A1人のために幼稚園児の行動特性を熟知した教職員を別途配置することが必要である。γ幼稚園にAが体験入園している際,教職員としては,申立人が付き添っていても,Aの安全に非常に気を遣っている。2 Aは,他の園児と同じように行動することができないため,一人では他の園児がしている遊技や活動にとけ込むことができず,一人きりになりがちである。Aのα幼稚園への就園を許可するのであれば,Aに
必要な保育をすべて施すことが必要になるから,Aが他の園児から孤立しないように,Aと他の園児との間を意識的に仲立ちしなければならない上,Aが参加することができない活動的な保育の時間には,Aに別の保育を施さなければならず,このようなことは教育的知識を持つ教職員にしかすることができない。3 Aは,(略)ができず,適切な保育を施すためには,(略)必要があり,そのようなAの手足となる教職員を加配することが不可欠である。4 Aは,○障害を有するため,○をすることが必要である。○は医療行為に当たるため,○をする資格を有する教職員を加配するか,○のためだけに別途有資格者を加配する必要がある。
 これらの事情によれば,Aの移動等の介助に加えて,Aの安全を
確保すること,Aに対して適切な保育を実施すること,Aの手足となること,Aの○をすることなどのため,A1人のために1人の医療資格を有する教職員を加配するか,教職員1人と医療資格保持者1人を加配する必要がある。県児童相談所証明書においても,教職員を加配することがAの就園の条件とされている。
 申立人は,Aのために教職員を加配することができないとして
も,申立人がAに付き添えば足りると主張する。しかしながら,幼稚園は,幼児が母子分離を図って社会性を身につける人生最初の場面であり,これを主たる教育目標としているにもかかわらず,申立人がAに付き添うとすれば,申立人の姿を見た園児らにおいて母親への思いが芽生えてしまい,母子分離を達成することができず,他の園児の自立を阻害することになる。また,申立人がAに付き添うとすれば,A自身も自立することができず,他の園児との共同の態度を育むことも阻害されてしまう。さらに,Aの就園を許可するとすれば,被申立人は,幼稚園の利用関係全般に責任を負わなければならないのであり,重要な園児の健康上の措置についての責任を他者に委ねるような
幼稚園の利用関係を設定することはできないから,申立人がα幼稚園においてAの○をすることも認められない。これらの事情によれば,申立人がAに付き添うことは不適切であり,上記の教職員の加配が不可欠である。
c 被申立人は,平成13年度から平成14年度にかけて実質的に赤字に転じ,平成15年3月,財源を確保するため,財政調整基金について基金目的による制限を解除して必要な行政施策の実施のための財源に充てることができるように条例を改正し,平成17年度には,約3億3658万円の各種基金を取り崩しており,教育施設整備事業積立金の取崩しもその一つである。被申立人は,現状のままで推移すると,2,3年後には財政再建準用団体となる可能性もあるので,平成16年度から,β行財政改革大綱等を策定し,抜本的な行財政改革を進めており,平成17年度予算も,前年度から4億6200万円も縮減し,職員数,給与や手当ての削減にも取り組んでいる。被申立人は,そのような財政の逼迫した状況下,教育行政についても,物
的設備費や人件費の削減をしており,町立学校施設の地震対策,凶悪犯罪対策,パソコン整備等の優先重要課題さえも解決することができていない上,改築が必要とされるα幼稚園やδ幼稚園でさえも修繕修理をするにとどまっており,町立幼稚園の教職員数を抑制するとともに,教職員を臨時職員として採用するなどしている。被申立人は,そのような極めて厳しい財政状況において,何とか行政課題に対応しているのであり,いかなる施策に資金を費やすかは極めて高度な政策的,政治的問題である。
 上記の被申立人の財政状況からすれば,被申立人が上記aの改修
工事を実施することは不可能であり,上記bのとおり,Aのために教職員の加配をするための財政支出をすることも困難である。被申立人の町内には,Aと同じく障害を抱えながら幼稚園に通園していない幼児が少なくとも5人おり,これらの幼児が就園を希望した場合,被申立人としては財政上対応することができない。被申立人における臨時教職員の採用は,毎年10月から12月までの間に臨時教職員候補者名簿への登録者を募集し,その登録者に対して面接等を行って決定しているものの,平成17年度については,上記登録者全員を採用しており,臨時教職員の対象者がいないのであるから,Aのために教職員の加配をすることは不可能であり,しかも,Aの○をすること
ができる医療資格を保有する教職員を採用することはできない。
 これらの事情によれば,α幼稚園では,申立人と被申立人との間
でAについての安全で適正な幼稚園施設の利用関係を構築することはできない。d Aにとって有意義なことの本質は,幼稚園教育を受けることというよりは,その機会を利用して,障害克服の意欲を持続させるために同年齢の幼児と接触する機会を確保することであり,このことはζ意見書からも明らかである。被申立人は,上記のようなAにとって真に必要なことを検討し,Aのために,同年齢の幼児と接触する機会を確保しようと,様々な配慮工夫や負担の下,Aのγ幼稚園への体験入園を許可するというできる限りの代替手段を講じているのであり,決してAを拒否しているわけではない。Aが現在γ幼稚園で体験入園をしているからといって,就園(正式入園)が許可されることにはならない。Aにとっては,幼稚園の責任において幼稚園保育のすべてを施す必要がある正式入園よりも,身体的状況に応じて柔軟に対応す
ることができる体験入園の方が望ましいということができる。γ幼稚園の教職員らは,Aについて運動会や遠足等の特別行事についての参加の意向の有無を確認しており,Aは,現に発表会には参加している。申立人の希望があれば帽子や名札についても提供することもできる。上記体験入園では,Aの通園は週3回で,午前中に限定されており,Aを担当するクラスについても隔週ごとに入れ替えるなどの対応を採っている。Aについて正式入園を許可することになれば,Aを受け入れるクラスがAに保育を施す時間が増大し,上記体験入園においてさえ,Aを担当するクラスが運動的遊びをしないカリキュラムに変更したり,Aの安全に多大な注意を払ったりしている現状では,保育現場に及ぼす影響は大きい。
(ウ) α幼稚園長は,本件申請についての許否の判断を慎重にするた め,町教育委員会に対し,その判断を求めた。町教育委員会は,申立人から判断資 料の提出を受け,β障害児就学指導委員会(以下「町障害児委員会」という。)に 諮った上,町教育委員会での2回の審議を経て,前記(イ)の事情を理由として本件 不許可決定をしたものである。(エ) 上に述べたところによれば,本件不許可決定は,合理的理由に基 づくものであるというべきであり,町教育委員会において,その裁量権を逸脱又は 濫用したものではないことは明らかである。エ 以上によれば,本件不許可決定も,本件申請について許可する決定をしないことも,町教育委員会がその裁量権を逸脱又は濫用したものではないから,本案訴訟について理由があるとみえるとはいえない。
 裁判所がα幼稚園の施設の改修や教職員等の加配を前提として,本件不許可決定を取り消し,本件申請について許可することを義務付けることは,地方公共団体の行政政策に対する司法の干渉となる上,上記改修や加配を前提とせずに,α幼稚園にAが就園し,事故が現実化した場合,被申立人は責任をとることを余儀なくされるのであるから,裁判所が上記義務付けをすることは司法権の範囲を逸脱するものとして許されない。
(2) 本件申請について就園許可がされないことにより償うことのできない損害 を避けるため緊急の必要があるか否か。
 【申立人の主張】
 α幼稚園では,平成17年4月8日から,5歳児の保育が始まっている。本案訴訟の判決を待っていては,Aの心身に重大な損害が生じる上,Aにとって幼稚園で就園することができる期間があと1年もなく,Aが幼稚園で就園することができなくなってしまうことからすれば,本件申請について許可がされないことによりAにとって償うことのできない損害が生じることは明らかであって,このような損害を避けるため緊急の必要がある。
 【被申立人の主張】
 幼稚園教育は,義務教育や普通教育ではなく,実際にも適齢期の幼児のすべてが幼稚園教育を受けているわけではない。前記(1)【被申立人の主張】のとお り,α幼稚園への就園を認めるための物的及び人的な条件を整備することができな い以上,Aが幼稚園に就園することができないとしても,社会通念上不相当である とは到底いえず,そのような条件が整備されない状況においてAの就園を許可する ことは,担任教職員に過大な負担を課す結果となり,他の園児に対する監護の程度 を低下させたり,カリキュラムの変更等により教育の質を低下させたりして,Aだ けでなく,他の幼児の安全や適正な教育の実現を脅かすことになり,被申立人の幼 稚園設置目的を損なうものである。Aは,現在も,γ幼稚園の5歳児学級において 体験入園を継続してい るのであるから,これによりAにとって真に必要な集団生活の体験が一定程度実現 されている。これらの事情からすれば,Aには,他の園児の幼稚園教育に支障をき たしてまで救済しなければならないほどの損害は存在しないことは明らかであり, Aの就園を許可することはAにとっても好ましいことではない。本件申請について 許可がされないことによりAにとって償うことのできない損害を避けるため緊急の 必要があるとはいえない。(3) Aのα幼稚園への就園を仮に許可することを義務付けることにより,公共 の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるか否か。【被申立人の主張】 前記(2)【被申立人の主張】のとおり,Aのα幼稚園への就園を仮に許可することを義務付けるならば,担任教職員の他の園児に対する監護の程度を低下させたり,カリキュラムの変更等により教育の質を低下させたり,Aだけでなく,他の幼児の安全や適正な教育の実現を脅かすことになり,被申立人の幼稚園設置目的を損なうことになるから,公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがある。
 【申立人の主張】
 Aは,被申立人に対し,多少の障害はあるものの,申立人の協力を得ながら努力をするので是非とも就園させて欲しいとお願いしているだけである。被申立人にAのα幼稚園への就園を仮に許可することを義務付けたとしても,公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとはいえない。
第3 当裁判所の判断
1 前記前提事実並びに証拠(個別に記載するもののほか,甲13,15,17,乙10,22ないし24)及び審尋の全趣旨によれば,以下の事実が一応認められる。
(1) 当事者等 ア 申立人は,平成9年6月20日から,α幼稚園の通園区に属する住所地に居住しており,現在長女及び次女であるA(平成○年○月○日生)とともに生活している(甲1,2,乙2,11)。
イ 被申立人は,α幼稚園,γ幼稚園,δ幼稚園及びε幼稚園を設置している地方公共団体である(β立学校の設置に関する条例2条。乙1)。被申立人には,地方教育行政の組織及び運営に関する法律に基づき,町教育委員会が設置されているほか(2条),β障害児就学指導委員会設置規則(乙5)に基づき,障害をもつ幼児等の適正な就学を図るために町教育委員会に町障害児委員会が設置されている。
(2) Aの障害の程度等 ア Aは,先天的に,(略)という障害を有し,これを原因として歩行障害,○障害があるほか,○に罹患している。Aには,これらの障害以外に身体の障害はなく,知的障害もない(甲3,7,乙3)。
イ Aは,現在,歩行障害のため,自力歩行をすることができず,(略)状態である。Aは,自力歩行を可能とするため,週1回程度,ζに通院し,運動療法を受けている(甲4,6,7,18,乙3)。
ウ (略)
エ (略) (3) Aについての専門家の意見
ア ζ意見書では,Aについて,自力歩行の障害を有しているので,ζで自力歩行の獲得を目標に運動療法を実施していること,(略),近い将来自力による歩行が可能となることが予想されること,そのためには運動療法及び日常生活における歩行の取組みが重要であり,障害を克服し,自力歩行を可能にしようとする意欲を持続することが求められ,同年齢の児童と行動を共にすることが効果的であることなどの意見が述べられている(甲6)。
イ 県児童相談所証明書では,Aについて,肢体不自由に対応する設備等の充実化が図られるのであれば,健常児集団の中で対応することができる状態であること,肢体不自由に対する個別的配慮,個別的指導も必要と思われるので,加配教師の配置による加配保育が必要であり,加配教師の配置があれば健常児集団の中で十分に対応することができることなどの意見が述べられている(甲7)。ウ η病院脳神経外科B作成の平成17年2月25日付け診断書(以下「η病院診断書」という。)では,Aの診断名が○及び○であり,それらの症状が落ち着いており,幼稚園での集団生活,行事等において特に制限事項がないと診断されている(甲9)。
(4) 町立幼稚園の概要 ア 園児数と教職員数
(ア) 町立幼稚園では,1つの幼稚園において,園児数については,平成 11年度までは1クラス当たり30人以下と設定していたのに対し,平成12年度 以降には1クラス当たり35人以下に変更し,教職員については,各クラスの担任 教職員のほかに,平成14年度まで,クラスを担当しない教職員(フリー主任)を 各学年ごと1人の計2人と設定していたのに対し,平成15年度以降は同教職員を 1人に変更した。(イ) 町立幼稚園における園児数及び職員数は,以下のとおりである(乙 18)。
 平成16年度 園児数 653人
 教職員数 合計38人
 うち正規教職員 31人
 臨時教職員 7人
 平成17年度 園児数 668人
 教職員数 合計39人
 うち正規教職員 32人
 臨時教職員 7人
(ウ) 被申立人は,臨時教職員の採用について,毎年10月から12月ま での間,臨時教員候補者名簿への登録者を募集し,その登録者から選考して採用を 決定している。被申立人は,平成17年度の臨時教職員の募集において,上記登録 者を全員採用しており,現在採用されていない登録者はいない。イ 障害児の入園状況等 (ア) 被申立人の町内には,平成17年5月の時点で,身体障害者手帳の交付を受けている幼児はAを含めて5歳児が3人おり,そのうち1人(括弧内略)が幼稚園に通園している。療育手帳の交付を受けている幼児は9人おり,そのうち6人が幼稚園に通園している。
(イ) 町立幼稚園には,前記(ア)の各手帳の交付を受けている幼児を含め て合計32人の障害を有する幼児が就園している。徳島県板野郡内の各町における 教職員の加配の状況は,別紙1加配状況一覧表のとおりである(甲10)。(ウ) 町教育委員会は,平成17年1月26日の平成16年度定例委員会 において,全委員の賛同により,Aとは別の障害を有する幼児1人について保護者 の協力を得ながら町立幼稚園で受け入れるとの判断をした(甲11)。ウ 幼稚園の日課等
 町立幼稚園における日課及びγ幼稚園における保育内容は,別紙2日課表のとおりである(乙4,10,20)。
エ α幼稚園の概要
(ア) α幼稚園の園舎は,2階建ての建物であり,1階に4歳児の保育室 3室,遊戯室等があり,2階に5歳児の保育室3室等がある。同園舎には,その出 入口や下駄箱付近に段差がある上,1階から2階への昇降手段としてエレベーター やスロープ等が設置されていないため,階段により昇降しなければならず,2階の 廊下(外廊下)から保育室への出入口にも段差がある構造となっている。同園舎の 遊戯室の出入口は1階と2階にあり,1階の出入口には段差があり,2階の出入口 に行くためには階段により昇降しなければならない構造となっている(乙6の1ないし13,乙8)。
(イ) α幼稚園には,平成17年度において5歳児のクラスが3クラスある。
オ γ幼稚園の概要
(ア) γ幼稚園の園舎は,2階建ての建物であり,2階に5歳児の保育室 がある。同園舎には,玄関に段差があるほか,1階から2階への昇降手段としてエ レベーターやスロープ等が設置されていないため,階段で昇降しなければならない 構造になっている(乙7の1ないし11,乙9)。(イ) γ幼稚園には,平成17年度において,5歳児のクラスとして,θ 組とι組の2クラスがある。園児数については,θ組が35人,ι組が33人であ り,各クラスを,それぞれ1人の教職員が担当している。(5) 本件不許可決定に至る経過等 ア 申立人は,平成15年12月,α幼稚園に対し,Aについて就園の申請をしたところ,平成16年3月,町教育委員会から,同申請について不許可と決定する旨の通知を受けた。申立人は,町教育委員会に対し,同不許可決定の理由について説明を求めた際,町教育委員会から,Aについて,γ幼稚園において申立人の付添いによる体験入園を許可することを伝えられた。
イ γ幼稚園は,4月期には幼稚園生活を開始したばかりの幼児が親や担任に対する依存性が高く,幼稚園生活にも不慣れで行動も落ち着かないことを理由に,Aの体験入園については平成17年5月7日から開始することにした。Aは,同日以降,γ幼稚園において申立人の付添いによる体験入園をしている。ウ 申立人は,α幼稚園長に対し,平成16年12月20日,町立幼稚園学則17条に基づき,Aの就園の願書を提出し,その就園の許可を求める本件申請をした。α幼稚園長は,本件申請についての許否の判断を慎重にするため,町教育委員会に対し,その判断を求めた。同委員会は,申立人に対し,判断資料を提出するよう求め,申立人から,ζ意見書(甲6)及び県児童相談所証明書(甲7)の提出を受けた。同委員会は,上記資料等を踏まえ,町障害児委員会に諮った上,平成17年1月20日と同月26日の平成16年度定例委員会において審議し,その委員全員の賛同により,Aには重複障害があり,現段階では人的・施設設備面等において十分な配慮をすることができないので,Aをα幼稚園に受け入れることが困難であるとの結論に至った
(甲11,乙2,3)。
エ 町教育委員会は,申立人に対し,平成17年3月8日,以下の理由により,本件申請を不許可とする本件不許可決定をした(甲8)。
 (不許可理由)
(ア) 被申立人の町内の幼稚園がいずれも古い施設であるため,バリア フリーに配慮した施設になっていないこと。(イ) 5歳児の保育室が2階にあるため,自力歩行をすることができな いAの教育環境として適切ではなく,大規模な施設改修が当分見込めない現状で は,極めて受け入れが困難であること。(ウ) Aには重複障害があるため,看護的な補助等が必要であり,これ に対応するための専門的な知識を有する教職員の加配措置をすることが困難である こと。オ Aは,現在も,γ幼稚園において,申立人の付添いによる体験入園を継続している。
(6) γ幼稚園における体験入園の状況等 ア Aは,現在,火曜日,水曜日及び金曜日の週3回,午前9時から午前11時までの間,γ幼稚園において体験入園をしている。Aは,申立人が運転する自動車に乗ってγ幼稚園に行き,到着すると,申立人がAを(略)という手順により,γ幼稚園に通園している。
イ Aは,γ幼稚園における体験入園では,隔週ごとに活動をともにするクラスが代わり,午前9時からの自由な活動をする時間帯においては,サッカー,ドッジ・ボール,鬼ごっこ等をすることはできないものの,申立人の付添いの下,少人数の園児とともに,砂遊びをしたり,絵本を読んだりして過ごし,午前11時には,γ幼稚園を降園している。
ウ Aのγ幼稚園における体験入園の状況と正式入園をした場合との相違点については,別紙3正式入園と体験入園との相違点のとおりである。エ Aは,γ幼稚園において体験入園をすることについて体力的に問題はなく,健康に生活している。Aは,γ幼稚園に通園することを大変楽しみにしており,申立人に対し,毎晩明日がγ幼稚園に体験入園に行くことができる日であるか否かを尋ね,申立人が体験入園の日であることを告げると,大変喜ぶ一方で,体験入園の日ではないことを告げると,さびしそうな感情を示している。Aは,γ幼稚園における体験入園では,降園する際,他の園児と異なり,自分一人が給食を食べずに降園することについて,申立人に対し,涙ぐみながら,他の園児とともに給食を食べたいなどと訴えることがあった。Aは,歩行訓練をしたならば幼稚園に正式入園することができると信じて,歩行訓練を続けている。
オ γ幼稚園において,Aを担当するクラスは,Aの登園日には,学級全体の遊びについてできる限り活動的な遊びを控えるなどの対応をしているほか,例年実施されていた2クラス合同で実施する活動を控えている。γ幼稚園の教職員らは,Aの体験入園中,Aの安全を危惧し,Aに対する注意をする必要があることから負担が大きく,他の園児に対する保育や注意の程度がそがれるとか,申立人がAに付き添っていることにより,教育現場の雰囲気等に影響を与え,自然な保育の在り方を阻害し,Aのためにカリキュラムを変更することにより,他の園児に対する保育に少なからず影響を与えているなど,他の園児の保育等にも制約が生じているといった感想を有しているものの,γ幼稚園のAの同学年の園児の父兄からは,Aが体験入園をしているこ
とについての不満等は出ていない。
 (7) 被申立人の財政状況等 被申立人は,平成13年度ころから,財政的に逼迫した状態に陥り,平成16年度から,β行財政改革大綱及びβ行財政改革実施計画を作成し,行財政改革に取り組んでおり,平成17年度予算では,平成16年度と比較して4億6200万円を縮減し,職員数の削減や職員の報酬や手当ての削減(5パーセント)をしている。被申立人は,平成15年3月には,財政調整基金について,基金目的による制限を解除して他の目的にも流用をすることができるように条例を改正し,平成17年度には,道路舗装等のために,教育整備事業積立金のうち3億2600万円を取り崩して流用している。被申立人は,その町立学校について地震対策,犯罪対策等を実施するという行政課題を抱えている(甲14,乙12,13の1及び2,乙15ないし17)。
2 争点(1)(本案訴訟について理由があるとみえるか否か。)について (1) 町教育委員会の本件不許可決定に係る権限について 町立幼稚園学則17条によれば,幼児を町立幼稚園に就園させようとする保護者は,幼稚園長に対して就園願を提出してその許可を受けなければならないとされていることからすれば(乙2),第一次的にはα幼稚園長が本件申請について許否の決定をする権限を有するものと考えられる。もっとも,町教育委員会は,地方教育行政の組織及び運営に関する法律23条4号に基づき,幼児の入学に関することを管理し,及び執行する権限を有する上,前記1の認定事実によれば,α幼稚園長は,申立人による本件申請についての許否の判断を慎重にするために,町教育委員会に対してその判断を求め,町教育委員会は,これを受けて本件不許可決定をしたのであるから,少なくとも本件申請についての許否の決定については,α幼稚園長のほか,町教育委
員会も権限を有するものと一応認められる。
 (2) 裁量権の逸脱又は濫用ア 幼稚園の入園許否の裁量権
 幼稚園教育は,幼児を保育し,適当な環境を与えて,その心身の発達を助成することを目的とするものであり(学校教育法77条),地方公共団体が設置する公立の幼稚園の入園は,幼稚園の設置者と保護者との間で上記幼稚園教育を実施するための教育施設の利用関係を設定する行為である。幼稚園の入園に関する事項については,学校教育法等に規定がないことなどからすれば,幼稚園長又は教育委員会は,公立幼稚園への入園申請を許可するか否かについて裁量権を有するというべきである。
イ 裁量権の範囲 (ア) 子どもには,一人の個人又は市民として,成長,発達し,自己の人格を完成するために必要な教育を受ける権利が憲法上保障されており,子どもに対する教育の制度や条件を整備することは国家の重要な責務であるというべきである(憲法26条等参照)。子どもにとって,幼児期は,その健康かつ安全な生活のために必要な習慣を身につけたり,自主的,自立的な精神を育んだり,集団生活を経験することによって社会生活をしていく上での素養を身につけたりするなどの重要な時期であり,幼稚園教育は,義務教育や普通教育ではないものの,幼児の心身の成長,発達のために重要な教育として位置づけられるべきものということができる。そうだとすれば,地方公共団体としては,幼児の保護者から公立幼稚園への入園の申請があった場合に
は,これを拒否する合理的な理由がない限り,同申請を許可すべきであり,合理的な理由がなく不許可としたような場合には,その裁量権を逸脱又は濫用したものとして,その不許可処分は違法になると解するのが相当である。
(イ) 前記1に認定したとおり,本件不許可決定は,Aのα幼稚園への就 園の申請である本件申請について,Aに身体障害があり,これに対し,人的,物的 に十分な配慮をすることができないことを理由としてされたものである。地方公共 団体にとって幼稚園において障害を有する幼児を受け入れることは,施設面等の物 的な配慮や,教職員等の負担の増大に対する人的な配慮が必要となり,そのために は財政的な措置等を要することなどが想定されることは明らかである。しかしなが ら,障害を有する幼児に対し,一定の人的,物的な配慮をすることは,社会全体の 責務であり,公立幼稚園を設置する地方公共団体においてもこのような配慮をする ことが期待されるものというべきである。心身に障害を有する幼児にとって,社会 の一員として生活する ために成長,発達していくためには,特に,幼少期から,障害の有無にかかわりな く他者とともに社会生活を送り,自主的,自立的な精神を育むことが重要であると 考えられるほか,身体に障害を有する幼児にとっては,その障害を克服する意欲を 持続するためにも,他者との社会生活が重要となる場合もあると考えられる。そう だとすれば,心身に障害を有する幼児の公立幼稚園への就園の申請に対する許否の 決定をするに当たっては,当該幼児に障害があり,就園を困難とする事情があると いうことから,直ちに就園を不許可とすることは許されず,当該幼児の心身の状 況,その就園を困難とする事情の程度等の個別の事情を考慮して,その困難を克服 する手段がないかどうかについて十分に検討を加えた上で,当該幼児の就園を許可 するのが真に困難であ るか否かについて,慎重に検討した上で柔軟に判断する必要があるというべきであ り,そのような観点からみて不許可処分に合理的な理由がないとみられる場合に は,当該不許可処分は,裁量権を逸脱又は濫用したものとして違法となると解すべ きである。ウ 裁量権の逸脱又は濫用の有無 (ア) 前記1の認定事実によれば,Aは,その○という障害を原因として歩行障害や○障害があり,○に罹患しているものの,知的障害はない。Aは,その歩行障害のため,自力歩行をすることができず,(略)には支障があるものの,(略)ことができる上,将来自力歩行を獲得することができると予想されている。Aの○障害については,幼稚園への通園時間中,医療行為である○を2回することが必要である。Aは,○に罹患し,○を受けているものの,医師により,幼稚園での集団生活,行事等において特に制限事項はないと診断されている。(イ) 被申立人は,α幼稚園でのAの就園については,1 α幼稚園がバ リアフリーに配慮した施設になっておらず,そのような施設に改修することは被申 立人の財政上不可能であること,2 Aの移動等のための介助をするほか,○でも あるAの安全を確保するためには,A1人に対して1人の教職員を加配することが 必要不可欠であるものの,これを付することは被申立人の財政上及び採用手続上困 難である上,Aについてはその○障害のために○を行うことが必要であるから,医 療資格保持者による介助が必要であるのに,そのような資格を有する教職員を加配 することは不可能であること,3 Aの就園を許可すると,保育現場において教職 員の負担が増大したり,他の園児に対する教育の質が低下したりするなどの不都合 があること,4 Aに は,現在γ幼稚園における体験入園が認められており,Aに対する教育的配慮が十 分にされている上,Aにとってはむしろ体験入園の方が好ましいと考えられること からすれば,本件不許可決定に裁量権の逸脱又は濫用はない,と主張する。
 前記1の認定事実によれば,α幼稚園の園舎においては,現在5歳児の保育室が2階にあり,1階と2階との間の昇降手段としてエレベーター等が設置されていないほか,教室等の出入口にも段差があるなど,バリアフリーに配慮した施設とはいえないので,少なくともAにおいて1階と2階との間の昇降に支障が生じるほか,上記段差の通過に際して危険があることも否定することができない。α幼稚園にAが就園するためには,α幼稚園の施設面での対応が望ましいということができるものの,前記1に認定した被申立人の財政状況からすると,α幼稚園の園舎に直ちにエレベーターを設置するなどの改修をすることは,被申立人の財政上,困難であると考えられる(もっとも,α幼稚園の園舎内の段差のうちAが頻繁に通過する部分等について何
らかの工夫をして段差を解消する対応を採ることは,多額の費用を要するものとは考え難く,その実施は可能であると考えられる。加えて,γ幼稚園の園舎の方が,α幼稚園の園舎よりも段差が少ないなど,Aにとって適した園舎であるならば,Aのα幼稚園への就園を許可した後,γ幼稚園に転園させる柔軟な措置を採ることも不可能であるとは考え難い。)。
 また,Aは,その歩行障害のために移動等に支障があり,そのような障害を有しない幼児と比較して,自己に対する危険を回避することができない可能性が高いこと,Aが○を受けていることから,他の幼児よりも○部に外力が加わらないように注意をする必要があること,幼児については必ずしも他者の安全に配慮して行動することができない面があること,α幼稚園では,5歳児のクラスが3クラスあり,その1クラス当たりの幼児数が30人を超えていて,多数の園児が就園していることからすれば,Aのα幼稚園への就園を許可した場合には,他の園児やボール等がAにぶつからないようにするなど,Aの身体の安全性を確保するために配慮する必要があるものの,担任教職員1人のみでは十分な配慮をすることが困難であるということができ
る。
 しかしながら,以上に述べたAをα幼稚園に就園させるに当たっての問題点は,Aの移動等の介助,安全の確保等をするため,教職員の加配措置を採ることができれば克服することが可能であるということができる。この点について,本件不許可決定は,Aの障害に対応するための教職員の加配措置を採ることが困難であることを理由の一つに挙げており,被申立人も,財政上の理由等を根拠に加配措置を採ることは困難であると主張する。
(ウ) そこで,Aのα幼稚園への就園を可能とするために教職員の加配措 置を採ることができないとの上記判断が合理的なものであるか否かについて検討す る。a 前記1の認定事実によれば,被申立人は,平成13年ころから,財政的に逼迫した状況に陥り,平成17年度においても,平成16年度と比較して,約4億6000万円の予算を縮減し,職員数や職員の報酬の削減をするなど,行財政改革に取り組んでいるほか,歳入不足を補うため,教育関係の積立金を約3億2600万円取り崩して,他の行政施策のために運用せざるを得ない財政状況であり,教職員等の加配には相当程度の費用を要することからすれば,教職員の加配措置を採ることが容易であるということはできない。
 しかしながら,1 地方公共団体がその財政状況の悪化等を理由として,心身に障害を有する幼児について公立幼稚園への就園を不許可にすることができるとすれば,多くの地方公共団体の財政状況が悪化している現状において,およそ障害を有する幼児のすべてが公立幼稚園へ就園することができないことになりかねない。幼児にとっての幼稚園教育の重要性や,行政機関において障害を有する幼児に対してできる限りの配慮をすることが期待されていることなどにかんがみれば,地方公共団体が,財政上の理由により,安易に障害を有する幼児の就園を不許可にすることは許されないというべきである。2 教職員の加配に要する費用については被申立人の予算全体からみれば多額とはいえないことからすれば,Aのために教職員の加配をするこ
とにより被申立人の財政状況を著しく悪化させるものとは考え難い上,前記1の認定事実によれば,町立幼稚園においては,別紙1加配状況一覧表のとおり,心身に障害を有する幼児のために教職員の加配をしているのであるから,被申立人の財政上の理由だけから,他の園児と異なり,Aについては加配措置を採ることが不可能であるとは直ちに認め難い。3 γ幼稚園においては,○の障害を有する園児1人に対して教職員1人の加配がされていることなどからすれば(別紙1加配状況一覧表),A1人のために教職員の加配措置を採ることについて,被申立人の財政上の理由から不適切であると評価されるものとは考え難い。4 前記1の認定事実によれば,被申立人の町内には,障害を有していて幼稚園に就園していない幼児がAを含めて5人いること
から,被申立人は,A1人のために教職員の加配措置を採ると,他の4人の幼児にも同様の対応策を採らなければならなる可能性があり,そのようなことは被申立人の財政上到底不可能であると主張する。しかしながら,A以外の4人の幼児が町立幼稚園への就園を希望しているか否かも,Aと他の4人の幼児とで就園の諸条件に係る事情が類似するものであるか否かも明らかではないのであるから,Aについて教職員の加配措置を採ったとしても,他の4人の幼児にも同様の措置を採る必要があるということはできない。被申立人の上記主張は,Aについて上記措置を採らない理由となるものとはいえない。5 町教育委員会の会議録(甲11)をみても,町教育委員会等において,本件申請についての許否の判断をするに当たり,A1人のために加配教職員
1人を配置する措置を採ることについて,被申立人の全体的な財政や教育関連予算等に与える影響等を具体的に検討した形跡はなく,上記対応策を実施することが不可能であるとの判断をするに当たり,上記のような財政上の観点を重視していたかは疑わしい。
 これらの事情からすれば,被申立人の財政上の理由を,Aについて教職員の加配措置を採らないとする決定的な理由とすることはできないというべきである。
b 前記1に認定した事実によれば,Aは,○障害のため,幼稚園での通園時間中に,医療資格保持者又は母である申立人による○を受ける必要がある。被申立人は,Aに対する○については,医療資格保持者の介助が必要であるから,加配する教職員は医療資格を有する者でなければならないとし,このような資格を有する教職員の加配措置を採ることは困難である,と主張する。しかしながら,医療資格を有する教職員の加配をすることが現実的に不可能であるとしても,本件においては,Aの母である申立人が幼稚園に待機してAの○をすることを申し出ており,現に,Aが体験入園中のγ幼稚園においても,そのように○がされている。このように,○の点については,申立人の協力を得ることによって十分に対応することができるということ
ができるから,加配する教職員を医療資格を有する者に限定する必要はないというべきである。この点について,被申立人は,Aのα幼稚園への就園を許可した場合には,体験入園の場合と異なり,被申立人がAについて全面的に責任を負うのであるから,Aの健康上の重要な措置である○について他者に委ねることはできない,と主張する。しかしながら,申立人は,日常的にAの○を行うことを認められている者であるから,申立人に○をさせることによってAの健康上の不安があるとはいえない。Aのα幼稚園への就園を許可した場合に,申立人の協力を得てはならないとする合理的な理由は見当たらない。被申立人は,α幼稚園でAが就園する場合に申立人が付き添うことは,A及び他の園児の自立や,Aと他の園児との共同の態度を育むことを阻害し
,教職員に対して心理的影響を与えるなどの弊害があることから,上記対応策を採ることはできない,と主張する。被申立人の上記主張は,幼稚園において園児に母親が付き添うことが教育上好ましくないという一般論としては理解することができる。しかしながら,障害を持つ幼児が就園することによって,教育上,ある程度の制約が生じるとしても,そのような制約は,特段の事情のない限り,障害を有しない幼児や幼稚園において受忍すべきものである。本件においては,仮に,Aに申立人が付き添うことによって,被申立人の主張するような教育上の問題があるとしても,このような問題は,教職員の努力や申立人の配慮等により一定程度対処可能なものであるということができ,これにより幼稚園教育が達成することができないほどの弊害が生じると
は考え難く,これを受忍することができない特段の事情があるとは認められない。被申立人の上記主張はいずれも採用することができない。
c 前記1の認定事実によれば,被申立人は,臨時教職員の採用について,臨時教員候補者名簿の登録者から選考して,採用を決定しているものの,平成17年度において,上記登録者全員を採用しており,現在採用されていない登録者は存在しないことから,被申立人は,Aのために加配する教職員を採用し,配置することは不可能である,と主張する。
 しかしながら,被申立人において,上記名簿の登録者から加配する教職員を採用するのが通常の手続であるとしても,そのような手続に固執する理由があるとは考え難く,被申立人等において,自ら又は関係各機関の協力等を得るなどの努力することが可能であるということができる。本件不許可決定をするに当たり,被申立人等において,そのような努力をしたこともうかがわれない。
 被申立人の上記主張は採用することができない。
d 以上に説示したところによれば,被申立人等において,その財政上の理由,採用手続上の理由等から,Aのために教職員を加配する措置を採ることが不可能ないし著しく困難であるということはできず,○についても申立人がすることが可能であるから,加配する教職員が医療資格を有する者に限定されるということもできない。Aのα幼稚園への就園を可能とするために教職員の加配措置を採ることができないとの判断は合理性を欠くというべきである。
e 仮に,被申立人等において,教職員の加配措置を直ちに採ることが困難であるとしても,前記1の認定事実によれば,Aがγ幼稚園に体験入園をしているときは,申立人がAの移動等の介助をし,保育時間中もAに付き添うことにより対応しており,その際にAの安全等について問題が生じたことはうかがわれず,申立人は,Aがα幼稚園に就園する場合にも,Aに付き添うことを申し出ていることなどからすれば,加配措置が採られるまでの間のAの移動等の介助,安全の確保については,Aの母である申立人がAに付き添うことにより対応することが可能であるというべきである。直ちに加配する措置を採ることができないからといって,加配する措置が講じられるまでの間,Aの就園を認めないとすることは相当ではない。
(エ) 被申立人は,1 Aの就園を認めると,γ幼稚園における体験入園 の場合よりも,Aに対する保育時間が長くなり,Aの安全等に多大な配慮をしてい る教職員の負担に影響を与えること,2 体験入園の場合には,Aが隔週ごとにク ラスを変更し,Aを担当するクラスがAのためにカリキュラムを変更して対応して きたのに対し,上記就園を認めるとすれば,クラスが固定され,当該クラスのカリ キュラムの変更を要し,他の園児に対する適切な保育の実施が困難になることなど の問題が生じる,と主張する。前記1の認定事実によれば,γ幼稚園においては, Aに配慮したカリキュラムに変更しており,γ幼稚園の教職員らも,被申立人の上 記主張に沿う感想を有している。
 しかしながら,Aの安全の確保については,加配された教職員又は申立人が付き添うことにより対応することが可能であることは既に説示したとおりである。
 また,障害を有する幼児がいることによって教育のカリキュラムに制約が生じることがあるとしても,そのような制約は,特段の事情がない限り,障害を有しない幼児や幼稚園において受忍すべきものであるということができる。Aのα幼稚園への就園を許可したとしても,Aを担当するクラスにおいて,できる限り歩行障害等を有するAに配慮したカリキュラムを組めば足りるのであって,すべてのカリキュラムについてAが参加することができるようなものに変更する必要はなく,申立人もそのような変更を望んでいるものでもない。Aにおいて,参加することが困難なカリキュラムを実施する際には,見学等をすることになってもやむを得ないのであって,そうしたとしてもAに対する幼稚園教育を十分に達成することができると考えられる。γ
幼稚園の他の園児の父兄から,Aが体験入園していることによってカリキュラムが制約されていることについて意見や不満等が出されたことはうかがわれない。Aのα幼稚園への就園を許可したとしても,他の園児に対する適切な保育の実施が困難になるなどの弊害が生じるなどの特段の事情があると認めることはできない。被申立人の上記主張は採用することができない。
(オ) 被申立人は,Aについては現在γ幼稚園において体験入園が認めら れており,Aにとって必要なことは達成されている上,α幼稚園に就園するより も,上記体験入園の方がAに配慮した保育をすることができるから,Aにとっては 上記体験入園の方が適切である,と主張する。
 前記1の認定事実によれば,Aは,平成16年5月から,γ幼稚園における体験入園が認められ,γ幼稚園の教職員らの努力等により,ζ意見書において必要性が指摘されているところのAが自力歩行を可能にしようとする意欲を持続するために効果的な同年齢の幼児と行動を共にすることについては,相当程度達成されているということができる。しかしながら,体験入園は,正式入園とは異なり,入園の継続が必ずしも保障されているわけではない上,前記1の認定事実によれば,γ幼稚園における体験入園の場合とα幼稚園への就園(正式入園)の場合との間には別紙3記載のとおりの相違点があり,Aは,正式入園の場合と異なり,登園することができない日が週2日あり,登園時刻も約45分遅く,給食が支給されず,そのために退園時刻も
約2時間20分も早いなどの違いがあり,これらの違いは決してわずかなものということはできない。Aについては,歩行訓練次第で近い将来自力歩行することが可能との見解が示されていることを考慮するならば(ζ意見書),Aにとって,毎日通園し,他の園児と同一の時間生活を共にする機会を持つことは,近い将来における小学校や中学校への進学の可能性を考えた場合に重要な意味を有すると考えられる。さらに,Aは,正式入園をしている園児と上記のような異なる取扱いを受けていることに疑問を抱き,毎日通園したり,他の園児と共に給食を食べることを強く希望しているのであり,このようなAに体験入園しか認めないことは,必要以上にAに差別感を抱かせるものであり,身体に障害を有するAの心身の成長や障害の克服等にとって障害と
なるおそれが十分に考えられる。Aが現在γ幼稚園での体験入園が認められているとしても,α幼稚園への就園を認める必要がないといえるまでの代替措置が採られているということはできない。被申立人の上記主張は採用することができない。(カ) (ア)ないし(オ)に述べたAの心身の状況やその就園を困難とする事 情の程度等,その困難を克服するための手段について慎重かつ柔軟に判断するなら ば,本件不許可決定について,合理的な理由があるということはできない。(3) 以上によれば,本件不許可決定は,町教育委員会がその裁量権を逸脱又は 濫用した違法なものとして取り消されるべきであり,かつ,本件申請を許可する決 定をしないことはα幼稚園長又は町教育委員会の裁量権を逸脱又は濫用したもので あるということができるから,本案訴訟について理由があるとみえると認められ る。3 争点(2)(償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があるか否か)に ついて(1) 前記1の認定事実によれば,Aは,現在満5歳であり,α幼稚園への就園 が許可されたとしても平成18年3月にはα幼稚園を卒園することになる。Aは, 現在,γ幼稚園で体験入園が認められているものの,正式入園が認められた場合と の違いは決してわずかなものといえないことは既に説示したとおりである。
 申立人は,平成17年○月○日に本案訴訟を徳島地方裁判所に提起しているものの,本案訴訟の判決を待っていては,Aは,幼稚園に正式入園して保育を受ける機会を喪失するということができる。また,Aに体験入園しか認めないことは,必要以上にAに差別感を抱かせるものであり,身体に障害を有するAの心身の成長や障害の克服等にとって障害となるおそれが十分に考えられる。このような損害は,後に回復するような性質のものではないことは明らかである。 そうである以上,Aには,α幼稚園に就園の許可がされないことにより生じる償うことのできない損害を避けるため就園を仮に認める緊急の必要があるというべきである。
(2) 被申立人は,Aにとって必要なことは障害克服のための意欲を持続させる ために同年齢の幼児と行動を共にすることであり,Aが現在γ幼稚園において体験 入園し,上記必要なことが実現されているのであるから,Aにとって幼稚園への就 園の許可がされないことにより償うことのできない損害を避けるため緊急の必要が あるとはいえない,と主張する。
 しかしながら,被申立人の主張するとおり,Aに体験入園が認められることにより,Aの心身の成長のために必要な措置が一定程度実現されているということはできるものの,入園の許可がされないことによるAの損害については,被申立人の主張するものにとどまるものではないことは前記のとおりであり,このような損害は決してわずかなものではなく,償うことはできないというべきである。被申立人の上記主張は採用することができない。 (3) 上に述べたところによれば,本件申請について就園許可がされないことにより償うことのできない損害を避けるためAの就園を仮に認める緊急の必要があると認められる。
4 争点(3)(公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるか否か)について 被申立人は,α幼稚園にはAを適正及び安全に利用させる人的・物的配慮を しないままに就園を認めることは,α幼稚園の担任教諭の幼児に対する監護の程度を低下させ,カリキュラム変更などの教育内容の変更等により教育の質を低下させ,他の幼児についての安全及び適正な教育の実現を脅かす状況を生じさせるから,仮にAの就園を許可することを義務付けることは公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがある,と主張する。
 しかしながら,仮にAの就園を許可することを義務付けたとしても,被申立人が主張する状況が生じるおそれがあるとは認められないことは既に説示したところから明らかである。
 被申立人の上記主張は採用することができない。
5 以上のとおりであるから,Aのα幼稚園への就園を仮に許可することを義務付けるのが相当である。前記2(1)に説示したとおり,本件申請についての許否の決 定については,α幼稚園長と町教育委員会のいずれもが権限を有するものというべ きであるから,α幼稚園長に対して上記のとおり仮に義務付けることを求める申立 人の主位的申立てには理由がある。第4 結論
 以上によれば,申立人の主位的申立ては理由があるから認容することとし,申立費用について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり決定する。
平成17年6月7日
 徳島地方裁判所第2民事部
 裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官 大西直樹
裁判官 高橋信慶
判例本文

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