平成17年1月27日宣告 平成14年(わ)第243号,第266号,第292号主文 被告人を死刑に処する。
理由
(罪となるへき事実) 被告人は,
第1 Aの指示のもと,B,C及ひDと共謀の上,Eか富山県高岡市a町(以下省略)b ヒル地下1階において経営するクラフ「c」の営業を妨害しようと企て,同店内の 設備等を損壊する目的て,平成11年8月4日午前3時ころ,Eか看守する同店 内に同店出入口から押し入って侵入し,同所において,カッターナイフてソファ ーを切り裂き,ハールて電話機,ウイスキーホトル等をたたき壊すなとして,同 店の営業を困難ならしめ,もって,威力を用いて人の業務を妨害し,第2 F,G及ひHと共謀の上,これらの者との間てかねて準備していたA及ひその 妻I方(以下「A方」という。)への襲撃計画の実行役の中国人らか逮捕された 際,同人らか所持していた写真(A及ひIか写ったカラー写真の切れ端)等の証 拠品か警察に押収されていて,Aらかd警察署に上記証拠品の確認に行くとい う情報を得たことから,A及ひIの口を封して上記計画の発覚を防くなとの目的 て,両名を殺害しようと企て,1 平成12年7月13日午前9時30分ころ,富山県高岡市e(以下省略)のA方1 階8畳和室において,A(当時56歳)に対し,殺意をもって,Gか,あらかしめ準 備して所持していた自動装てん式けん銃て,Aの頭部等を目かけて実弾2発を 発射し,それそれ同人の左鼻孔前縁及ひ右下顎角部に命中させ,よって,即 時同所において,同人を右下顎角部銃創による脳損傷により死亡させて殺害 し,2 上記1の日時ころ,A方1階北東4.5畳和室において,I(当時52歳)に対し, 殺意をもって,Gか,上記自動装てん式けん銃て,Iの後頭部及ひ背部を目か けて実弾2発を発射し,同人の左後頭部及ひ右背部にそれそれ命中させ,よ って,即時同所において,同人を左後頭部銃創による脳損傷により死亡させて 殺害し,3 上記1の日時ころ,A方において,G及ひHか,上記自動装てん式けん銃及ひ 回転式けん銃各1丁を,自動装てん式けん銃に適合する実包8個及ひ回転式 けん銃に適合する実包4個とともに携帯して所持し,第3 いすれも法定の除外事由かないのに,
 1 Jと共謀の上,平成14年10月12日午後8時ころ,長野県北安曇郡(以下省略)ヘンションfにおいて,被告人か,覚せい剤てあるフェニルメチルアミノフロハンの塩類若干量を含有する水溶液をJの腕部に注射し,
 2 上記1の日時場所において,覚せい剤てあるフェニルメチルアミノフロハンの塩類若干量を含有する水溶液を自己の手甲部に注射し, もって,覚せい剤を使用したものてある。
 (事実認定の補足説明) 第1 争点
弁護人は,建造物侵入,威力業務妨害(判示第1),Aに対する殺人及ひけ ん銃加重所持(判示第2の1,3)並ひに覚せい剤使用(判示第3の1,2)の各 事実についてはいすれも争わないものの,Iに対する殺人(判示第2の2)の共 謀の事実について否認し,被告人も,これに沿う供述をするのて,以下,検討 する。第2 関係各証拠によれは,以下の事実か認められる。
 1 A及ひIの身上経歴等Aは,富山県氷見郡g村(現氷見市)て出生し,同県高岡市内の中学校を卒 業後,東京都内及ひ高岡市内等て工員,土木作業員として稼働していたか, 昭和40年代から,暴力団員として活動するようになり,平成12年当時は,有限会社h商事(以下「h商事」という。)の実質的経営者として金融業を営む傍 ら,暴力団五代目i組二代目j会k組l一家の組長をしていた。Aは,昭和48年にI (以下Aと併せて「A夫婦」という。)と婚姻し,長女Kをもうけ,平成12年当時 は,判示第2のA方においてIと2人て暮らしていた。2 被告人の身上経歴等 被告人は,昭和22年に北海道m郡o町て出生し,地元の中学校を卒業後,自動車整備工として働いたものの,昭和37年ころから,少年院,刑務所の入 出所を繰り返した。被告人は,昭和60年ころから,高岡市内に移り住んてハチ ンコ店の店員として稼働するなとしていたか,平成元年ころ,Aと知り合い,平 成9年夏ころ,正式にn会(上記l一家は,n会か平成11年9月に名称を変更し たものてある。以下,時期を問わす「l一家」という。)の構成員となり,さらに,平 成10年春には,l一家の若頭として活動するようになった。3 Aのl一家内ての行動及ひA殺害計画の発端 Fは,被告人かl一家の若頭になる以前に若頭を務め,その後はl一家の会長代行ないし副長の地位にあった。 Aは,気性か荒い一面を有しており,配下の組員に対して厳しく当たることかしはしはあった。Aは,特にFに対しては,配下の若い衆の数かAより多く,ま た,l一家の上部団体てある五代目i組二代目j会k組(以下「k組」という。)の組 長の覚えかAよりもよかったことなとから対抗意識を持っており,事あることに 厳しい仕打ちを加えるなとしていた。Fは,平成10年秋ころ,被告人に対し,高岡市o町(以下省略)l一家事務所 前の焼却炉付近において,「おやし,やっちゃおうか。」なととAの殺害を持ちか けたか,このとき,被告人は,「そんなこと,てきんてしょう。」なとと答えたにと とまった。その後,平成11年7月,FらかAの兄弟分てある暴力団組長に暴行をはた らき,Aかその後始末に追われたため,k組の組長にFの破門を求めたこと,同 年8月ころ,被告人は,日頃利用していた飲食店からの中元か粗末てあること なとに立腹したAから,報復の意味て同店の営業を妨害してくるように指示さ れ,判示第1の建造物侵入,威力業務妨害を敢行させられたこと,同年終わり ころ,飲食店内て暴れた被告人及ひFに対し,その制裁としてAから激しい暴 行を受けたことなとの出来事か重なった。被告人は,FかAから疎んしられてい ることなとに同情したほか,被告人自身もしはしはAから叱責を受けたため,従 前からのFの申出に応してAを殺害することに同調した。被告人及ひFは,Aを 殺害した事後に自分たちの犯行への関与か発覚することを避けるため,第三 者にAの殺害を依頼することにした(なお,この点に関し,被告人は,その後,F とともに,A殺害を外国人マフィアに依頼しようと考え,高岡市周辺の外国人か 集まる地域て聞き込みをしたり,知人てある神戸の暴力団組長に殺人を引き 受ける外国人マフィアの紹介を依頼するなとしたものの,芳しい情報か得られ ないていたと供述している。)。4 A殺害の実行役探し 平成11年3月ころ,当時暴力団五代目i組p組q組r会会長てあったGは,Aか以前所属していた暴力団の関係者との間てけん銃等の保管をめくるトラフル かあり,被告人及ひFは,Aの指示て,l一家事務所において,Gと交渉した。こ の件以来,被告人とGは,携帯電話等て連絡を取り合うようになった。被告人及ひFは,けん銃等の密売に携わっているGてあれは,殺人を請け 負うような外国人マフィアとのつなかりもあるのてはないかと考え,A夫婦の上 京に同行する機会を利用してGから外国人マフィアに関する情報提供を受ける こととし,平成12年1月24日,新宿区(以下省略)tホテルにおいて,Gと面談 した。被告人及ひFは,Gに対し,殺害相手の名前を明らかにすることなく,殺 人を実行する外国人の知合いかいないかなとと相談を持ちかけたか,Gは,被 告人らの依頼する条件て殺人を実行することとなれは,1500万円程度か必 要になる旨告けたにととまった。なお,そのころ,Gは,知人からサイレンサー 付き自動式けん銃か2丁まとめててあれは安く買える旨の話を聞いていたため,被告人らに対し,Gと一緒にけん銃を購入しないかと勧めた。 被告人は,その後も,Gに対し,携帯電話等を通して殺人の実行役紹介の依頼を重ねる一方,上記けん銃の購入話を受けることとし,同年5月上旬こ ろ,Gから,サイレンサー付き自動装てん式けん銃1丁及ひその適合実包16 発を購入した。5 GへのA殺害の依頼 被告人は,同年5月下旬ころ,Fから,「組長やってしまうしかないな。Gは本当に中国マフィアを知っているんたろうな。」,「Gには高岡に来てもらおう。」「そ のとき中国マフィアの件を頼もう。」なとと言われたため,Gを高岡市に呼んて, 中国人マフィアを実行役とするA殺害を依頼することにした。被告人は,同年6月1日,高岡市x町(以下省略)ホテルv1階の喫茶店にお いて,Gと面談した際,被告人及ひFかかねて依頼をしていた殺害対象はAて ある旨告けた。さらに,被告人は,Gに対し,Aかl一家内て組員に対して厳しく 当たることなと,Aに殺意を抱くに至った経緯を説明するなとして,中国人マフ ィアを実行役とするA殺害を依頼した。Gは,知人てあるLか,「チャイニースマ フィア」と呼はれている強盗等の犯罪を敢行する中国人クルーフと親交かあ り,Lからそのクルーフか強盗に押し入る先を探している旨聞かされていたの て,被告人らの依頼につきLを介して中国人らに持ちかけることとし,これを了 承した。被告人は,当日中に,下見のため,Gを自己の運転する車に乗せ,新 湊市にあるAの愛人宅や高岡市内のA方等を案内した。なお,同日中に,被告 人とGとの間てA殺害を強盗の仕業に見せかけるという話はなかった。6 A方襲撃に向けた準備 Gは,帰京後,Lに対し,同人の知人てある中国人マフィアに強盗に見せかけた殺人を依頼したい旨持ちかけ,Lはこれを了承した。そこて,Gは,被告人 らから支払われる約束になっていた1500万円のうち,ます800万円の送金を 依頼し,被告人及ひFはこれに応し,Fにおいて,現金1500万円を用立て被 告人に渡し,被告人は,同月5日ころ,その中から800万円をGに送付した。その後,Gは,Lの仲介て,中国人マフィアの中心人物てあるMらと会い,M に対し,強盗に見せかけてA夫婦を殺害してくるように依頼したか,Mは,殺人 はしないと断った。Gは,Lから,中国人は強盗を敢行すれは家人まて殺害して しまうことか多い旨聞かされたため,A夫婦か殺害されることを期待して中国人 に強盗を行わせることとし,強盗時にAか殺害されなけれは,その後自らか直 接ないし強盗て手に入れた金て別の中国人を雇うなとしてAを殺害するつもり て,Mには強盗のみを依頼して承諾を受け,上記800万円の中から準備金と して200万円を,Lを介してMに交付した。被告人は,そのころ,GからA方付近の地図及ひA夫婦の写った写真の送付 を求められ,また,「中国人は,強盗をやる人間は相当いるか,殺人たけては あまり人かいない。土産か必要た。」なとと言われたため,Gらか,A殺害に際 し,A方に押し入り,強盗に見せかけて金を奪ってくるつもりてあることを察知し たか,自らか依頼したA殺害遂行のためにはやむを得ないと考えてこれを認容 した(以下,このとき被告人らの間に成立した共謀の内容を「A方襲撃計画」と いう。)。被告人は,Gに対し,A夫婦のみか写っている写真(以下「本件写真」 という。)やA方付近の住宅地図のコヒーを送付したほか,A方の隠し金庫の位 置等の説明か付記されているA方内の見取図を送付した。このうち,本件写真 は,コルフ場て,A夫婦をFと被告人か挟み,4人か横一列に並んて写っていた 写真(以下「被告人ら4名の写真」という。)のうち,被告人とFの写っている両 端部分か切り取られ,A夫婦の写っている部分のみか残されたものてあった。Gは,同月11日,埼玉県川口市内のカラオケ店等て,Lとともに,Mら中国 人クルーフとA方襲撃計画について打合せを重ねる一方,自分の養子てある Hにも同計画を打ち明け,中国人を石川県を経由して富山県まて連れていく自 動車運転手役や,宅配便を装ってA方の玄関を開けさせる役をするように申し 向け,Hはこれを了解した。また,同月17日,G,H及ひLは,A方を下見し,A 方に向かうルートやA方の様子をヒテオカメラて撮影し,同月21日,東京都武蔵野市内のホテルの一室てMら中国人クルーフに,この撮影に係るヒテオテ ーフを再生して見せるとともに,被告人から入手した本件写真,見取図及ひ地 図等並ひにGか入手してきた自動装てん式けん銃1丁,サイレンサー1個及ひ 適合実包16発をMら中国人クルーフに渡した。さらに,Gは,ハール等の強盗 の道具や偽造ナンハーフレートを用意したほか,Lか普通乗用自動車の手配 をするなとしてA方襲撃計画の準備を整えていった。なお,被告人らとの間ては,当初,A方襲撃計画は同月25日に実行する予 定てあったか,Aに葬儀参列の予定か入ったため,実行予定日か同月28日に 変更され,Mは,同月27日,実行行為を担当する中国人らを川口市内のカラ オケ店に集めて謀議を行った。しかし,Lか用意してきた自動車の調子か悪か ったため,結局,同月30日に実行する手はすとなった。7 A方襲撃計画の失敗 同月29日午後零時30分ころ,中国人らは,埼玉県草加市内の和食レストラン駐車場て,上記自動装てん式けん銃やハール等か積み込まれた普通乗 用自動車ほか1台の自動車2台に分乗し,同普通乗用自動車をNか運転し,H かもう1台の自動車を運転し,N運転の自動車を先導して石川県経由て富山 県に向かい,同日午後7時前,金沢市に到着した。その後,Hは,中国人らを 引率してA方をもう一度下見し,翌朝に出発することを決めた上,O,N,Pら5 名とH及ひ他の中国人らとに分かれて金沢市内の2つのホテルに宿泊した。しかし,同月30日午前7時12分ころ,Oらか上記自動装てん式けん銃等か 入ったかはんを持ってハール等か積載された普通乗用自動車に乗り込み出発 しようとした際,不審者か宿泊しているという通報を受けて付近に張り込んてい た警察官か,Oらを逮捕し,上記自動装てん式けん銃や本件写真等の証拠品 を押収した。GとLは,L運転の普通乗用自動車(以下「甲車」ともいう。)て石川 県内に来ていたか,Gは,Hからの連絡により中国人らか警察官に検挙された と判断し,当日の計画を中止した。Gは,同日午前,被告人にA方襲撃計画の 失敗を電話て連絡した際,被告人との間て機会をうかかって再度計画を実行 することとする一方,Gか中国人らに渡した本件写真等か押収されていないか なとの捜査に関する情報を教えてもらうよう被告人に依頼した上,GとLは,甲 車に積載されていた偽造ナンハーフレートや脇差しを,石川県羽咋郡(以下省 略)所在のwタム近くの駐車場付近に隠した。その後,Gは,被告人に対し,A 方襲撃計画を再度実行するため中国人らに支払う追加資金の提供を要求し, 被告人はこれに応して,同年7月4日と同月6日の2度に分けて,Gに合計40 0万円を送金した。8 共謀成立状況 被告人は,同月12日午前,Aから,翌日13日に石川県警察d警察署に赴き,逮捕された中国人か所持していた本件写真等の確認をする予定になって いる旨聞かされた。被告人は,本件写真の元となった被告人ら4名の写真か 被告人,F及ひA夫婦しか所持していないものてあったため,本件写真をAか 確認すれは,自己ないしFかA方襲撃計画に関与していたことか発覚し,Aから 厳しい制裁を受けることになり,また,Iか本件写真を確認しても,やはり同計 画への関与か発覚することは避けられないことから,Gにその旨の連絡をする とともに,Fと善後策を協議した。その結果,被告人とFは,Aか本件写真を確 認する前に,A夫婦を殺害するほかはないとの結論に至った。そこて,被告人は,Gに対し,電話てA夫婦を直ちに殺害するよう執拗に依 頼したところ,Gは,Aか警察署に本件写真等を確認に行く予定てあるとの話を 伝えたLからもAの口封しを促されたこともあり,A方襲撃計画の発覚を免れる ためには,A夫婦か本件写真を警察署て確認する前に殺害するほかはないと 考えるに至った。被告人は,同月12日午後,Gからの電話て,A夫婦殺害の要 請に応しる旨の回答を受けたのて,両名を殺害する際に凶器として使用する けん銃2丁を用意しておく旨伝え,A夫婦殺害について合意した。Gは,その直後,Hを連れて東京都内のスホーツ用品店に立ち寄り,A夫婦 殺害を実行する際に使用するシャンハーや帽子を各自購入した。Hは,この際,Gか自分と2人てAを殺害する意図てあることを認識するとともに,A方襲 撃計画か発覚して報復を受けることを避けるためにはAを殺害し,また,Aを殺 害する際にその場に居合わせた家族等に顔を見られた場合,その者も殺害せ さるを得ないと考えた。9 実行準備及ひ実行直前の状況 その後,GとHは,H運転の普通乗用自動車(以下「乙車」という。)に乗り,同日午後8時50分ころ練馬インターから関越自動車道に入り,途中,Lと高坂 サーヒスエリアて合流し,Gか同乗するH運転の乙車及ひL運転の甲車の2台 て,北陸自動車道を経由して高岡市に向かった。Gは,ます,先に偽造ナンハ ーフレート等を隠しておいたwタムに行き,同所てナンハーフレートを取り替え ることとし,被告人との間て,同タムから高岡市方面に向かう道路の途中て被 告人と落ち合い,被告人からけん銃等を受け取ることを決めた。被告人は,そ の旨をFに連絡したところ,同日午後11時24分ころ,Fから呼ひ出しを受けて F宅に赴き,Fの指摘を受けて,Gにけん銃を渡すための待ち合わせ場所を確 認するため,当夜l一家事務所に泊まり込んていたBらに対し,wタムの場所を 電話て問い合わせた。Gは,翌13日午前3時半ころwタムに到着後,Hに指示 して甲車のナンハーフレートを取り替えさせた上,自ら乙車を運転して同タム から高岡市方面に向かい,その途中の道路て被告人と落ち合い,被告人は, 先にGから購入していた自動装てん式けん銃1丁及ひサイレンサー1個,別に 被告人らか入手していた回転式けん銃1丁並ひにこれらの適合実包をGに渡 した。その際,被告人は,Gから「俺たちかやるの。」と聞かれたか,「お願いし ますよ。」なとと重ねて殺害の実行を依頼した。同日午前5時ころ,wタムに戻 ったGは,受け取ったけん銃を試射することとし,H及ひLとともに,s町(以下省 略)の付近て停車し,同所の林道を奥に入った場所て,Gは自動装てん式けん 銃て2発,HはGの指示により回転式けん銃て1発それそれ試射した。被告人は,その後もGと携帯電話て連絡を取り合い,前夜安全確保のため にl一家事務所に泊まっていたA夫婦の動静を伝えるなとして,両名を殺害す る機会をうかかっていた。他方,Gらは,同日午前7時ころ,高岡市xのコンヒニ エンスストアて朝食を購入したか,このとき,Gの指示てカムテーフも購入し た。その後,Gらは,A方近くの駐車場に移動して待機し,この時まてにGやH は,購入した上記シャンハー等を着るなとして犯行の準備をした。同日午前9時前,A夫婦かl一家事務所からいったんA方に戻ることになり, 被告人は,この機会に両名の殺害か実行てきると考え,同日午前8時57分こ ろ,上記駐車場の甲車内て待機していたGにこの旨を連絡した。また,被告人 は,このころ,犬の散歩のためにA方に行くこととなっていたl一家組員に電話 をかけ,l一家事務所にAらか忘れていったハック等を取りに来させてA方に近 つかないようにした。そして,同日午前9時20分過きころ,被告人は,Gに対 し,電話て「今なら大丈夫たから。5分間は絶対誰も来ないから,今すく行って くれ。」なとと言ってA夫婦殺害を指示した。そこて,Gら3名は直ちにA方に向 かい,A方付近て,GかLに対し,数分後に門扉前道路て待機しておくよう指示 した上,Gか自動装てん式けん銃を,Hか回転式けん銃をそれそれ持って甲車 から降り,A方に入って,判示第2の各犯行(以下「殺人等」という。)に及んた。10 殺人等の犯行後の状況 Gらは,犯行直後,同自動車に乗り込んて速やかに逃亡し,犯行に使用したけん銃2丁,連絡に使用した携帯電話,シャンハーや帽子,偽造ナンハーフレ ート等を投棄するなとした。他方,被告人は,殺人等の発覚をてきるたけ遅らせるため,同日夕方になっ てからl一家組員にA方の様子を見に行かせた。被告人は,A方てA夫婦の死 体を発見した同組員からその旨の報告を受けて110番通報し,警察の捜査か 開始された。その後,被告人は,Gとの連絡に使用した携帯電話を投棄したほか,後日G との間て,Gか殺人等について捜査機関から追及を受けた場合には,無関係 の別人の名前を出すことにするなとの口裏を合わせるなとの罪証隠滅工作を行った。 被告人は,A夫婦の葬儀の際にk組の組長から指名を受け,同月中にAの跡を継いて二代目l一家組長に就任した(なお,二代目l一家は,平成14年4月 にy会と名称を改め,被告人か同会会長に就任している。)。また,被告人は,平成12年9月18日,A夫婦殺害犯人の探索資金名目て, A夫婦の唯一の相続人てあるKに銀行口座から3000万円を引き下ろさせてこ れを受け取ったほか,平成13年2月28日,k組に対する上納金名目て再ひK に3000万円を引き下ろさせた。被告人は,上記金員をk組の組長らにいった ん渡したものの,そのうち合計2000万円を再ひ受け取り,l一家の運営資金 等に費消した。さらに,被告人は,Aか2億9000万円の貸付けを行っていた元 ハチンコ店経営者との間て,貸金返済の交渉を行い,貸付金の返済額を減額 するとともに,当該貸付の中からK宛の振込を含めて少なくとも5000万円の 返済を受けたり,組長の経費名目て,h商事から月々30万円程度の金員を得 ていたほか,平成14年7月以降,捜査機関から逃亡している最中にも,h商事 から金員を得ていた。なお,殺人等につき,G及ひHらか逮捕,起訴されたか,その捜査や公判段 階において,Gらは共謀状況等の供述を拒んていた。しかし,平成14年10 月,Gらの公判か一度結審した後,Gか被告人及ひFの関与を供述したことに より,被告人か逮捕され,同年12月16日殺人等につき起訴されるに至った。 被告人は,捜査段階ては関与を否定していたか,同起訴後,同事件に対する 自己及ひFの関与を供述するようになり,その後,Fも逮捕,起訴されるに至っ ている。第3 以上の事実をもとに,争点について検討する(以下,本項において日付は平 成12年のものてある。)。1 ます,被告人かGに高岡市内においてA殺害を依頼した日の翌日てある6月2 日の段階について検討する。Gは,当公判廷において,同日被告人から電話 て,Aに加え,Iをも強盗に見せかけて殺害するよう依頼された旨の供述をし, 検察官は,この供述の信用性か高いとして,これを前提とする主張をする。しかし,上記認定のとおり,Fないし被告人かAに殺意を抱いた発端は,Aの 両名に対する仕打ちにあった。そして,前日てある同月1日には被告人とGと の間てA殺害を強盗の仕業に見せかけるという話は出ておらす,かえってAの 愛人方を下見に行くなとしていたのに,翌2日には強盗に見せかけてIをも殺害 するという計画に変更されるというのはやや唐突と思われる。また,Gの供述 に沿う可能性のある被告人からGへの通話は同日午後8時37分にされたもの のみてあるところ,その通話時間は53秒にすきす,いかに前日に両名の間てI についても話題に上ることかあったとはいえ,殺害する対象を一人加える旨の 依頼としては余りにも短い。さらに,被告人らか強盗の実行者か奪ってきた財 産を受け取るという謀議をした事実は殺人等に至る過程を通して何らうかかえ す,被告人らかわさわさ強盗に見せかけるように指示する理由も乏しい。加え て,被告人は,強盗の話は自分やFから出た話てはなく,Gから,同月中旬こ ろ,殺人たけをする中国人はあまりおらす,一応手配はしてあるか,お土産(現 金のこと)かあると言えはすくに中国人か集まってくるのて,金庫の場所を教え てくれと言われた旨供述しているところ,この供述は,GかかねてLから中国人 マフィアか強盗するのに適当な家等を教えてほしいと言われていたことや,M かそのころ殺人の依頼を拒んていたことと符合し,一応首肯し得る内容てあ る。これらの諸事情に照らすと,被告人への責任転嫁の危険のあるGの供述 をそのまま信用することはてきない。2 しかしなから,被告人は,同月中旬ころ,Gに本件写真を送付していることか 認められるところ,この写真は,上記のとおり,もともとFと被告人かA夫婦を挟 み,この4名か横一列に並んて撮影されたものを,被告人か,Fと被告人の写 っていた両端部分を切り取って送付しているのてあるから,被告人か,Iの写っ ている部分を意図的に残したことは明白てある。そして,仮に,Aのみか殺害 依頼の対象てあれは,わさわさIの撮影されている部分を残して送付する理由はないはすてあるから,遅くとも本件写真を送付した段階ては,被告人におい て,AのみならすIも殺害の対象となっていることを認識していたことか強く推認 される。この点について,被告人は,本件写真をGに送付した経緯について,Gか ら,Iの写真も要求されたのて,IとAの愛人とを区別するために必要てあると思 って送付したたけてあり,殺害を依頼したのはあくまてAのみてある旨弁解して いる。しかし,Aのみを殺害する目的てあれは,Aのみか撮影されている部分を 送付すれは事足りるのてあるし,Iの写真まて必要とする理由について被告人 か細かく確認した様子かないことも,事柄の重要さに照らして不自然てあるか ら,被告人の弁解てはIの撮影されている部分まて送付した理由を十分に説明 てきているとはいえない。そして,その後,被告人は,GにA方の金庫の位置等 をも付記したA方内の見取図を送付しており,この段階てはA殺害時に中国人 マフィアか強盗もしてくることを容認していること,A方襲撃計画かA夫婦か在 宅中の午前中の時間帯を狙って進められていることを知りなから,Iの安全に 配慮した形跡かないことか認められる。これらも併せ考えれは,被告人は,G の提案に応し,A方てAを殺害するに際し,併せて強盗も行わせることとし,G に本件写真及ひA方内の見取図を送付した段階ては,A方襲撃計画におい て,Iか殺害されるに至る可能性かあることを十分に認識しつつ,A殺害のため にはそれもやむを得ないとして,I殺害を未必的に認容したと推認される。3 次に,A夫婦か本件写真等の証拠品を確認に警察署に行くことか判明した殺 人等の前日の段階について検討する。このときGに殺害を依頼した直接の動 機か自己のA方襲撃計画への関与か発覚することを恐れたというものてあるこ とは被告人も自認している。そうてあれは,本件写真の元となった被告人ら4 名の写真と同一の写真を持っていると考えられるIか本件写真を確認すること によっても,被告人か上記計画に関与したことを疑われる結果となるのてある から,その発覚を免れるためにIの殺害をも依頼したと考えるのか自然てある。また,被告人は,Gとの間てけん銃2丁を準備することか決まった段階て,け ん銃を使ってIを見張るという認識を有していて,Iにけん銃を突き付けることに なること,けん銃2丁をGに渡した後Aらの動静をGに伝えていたころには,A殺 害時にIかAの近くにいることをいすれも理解していた旨自認している。そうてあ れは,被告人は,殺害現場の状況次第てはIに向かってけん銃て発砲されてし まう可能性かあることをよく分かっていたというほかない。被告人は,そのよう な認識の下て,Gにけん銃2丁を渡し,しかも,Aとともに行動するIの動静につ いてもそのまま伝え,特段,Iを殺害しないようにするための明確な指示をして いないのてあるから,このことは,被告人かI殺害を容認していたことの現れと 見るのか合理的てある。これらの点について,被告人は,Aについては本件写真を見たら殺されるか も知れないと思ったか,Iについては元になった写真の複製を準備しておけは 大丈夫たと思っていた旨弁解している。しかし,Iか本件写真を確認すれは,被 告人の関与か発覚し,ひいては被告人の立場等か危うくなるのは疑いかなく, 元になった写真の複製を準備したところて,写真を持っていた人物か限られて いる以上,発覚を免れ得るものてはないから,被告人の供述する理由か,直ち にI殺害依頼の有無を左右するものとはいえない。また,被告人は,同日GにI 殺害をも依頼していたということはなく,Iはカムテーフてくるくる巻きにするとG か言っていたことを信していたのてあり,さらに,殺人等の当日未明Gにけん銃 2丁を手渡した際,自分はIを縛るためのカムテーフをGに渡そうと考えて持っ ていったか,Gは既に持っているとして受け取らなかった旨も弁解する。しか し,Gは,被告人供述に係る自己の言動や被告人の行動を否定しており,被告 人の弁解は裏付けを欠く。しかも,Iを緊縛する際にGらの顔を見られた場合の 対応策について被告人かGと協議した様子はうかかわれない。かえってGか同 日朝,高岡市内のコンヒニエンスストアて独自にカムテーフを購入していること なとに照らしても,被告人の弁解は信用てきない。4 そもそも,Gは,G自身にも独自の利益や殺害の必要性かなかったわけてはないか,基本的には,被告人から依頼されて殺害を実行しているのてあるか ら,依頼もないのにIまて殺害するとは考え難いところてある。もっとも,Gは,I 殺害について,当初Iまて殺害する意思はなかったか,Aを殺害した後,命乞い をするIから「お金はないけと。」なととヤクサを馬鹿にするようなことを言われ たため,Aを殺害して生していた興奮状態か高してI殺害に至った旨弁解する。 しかし,A方に押し入る前にけん銃を試射するなと十分に準備し,被告人から の情報によりIの在宅を知っていたGか,このような事情のみて突然Iに対する 殺意を生したとするのは不自然てあるから,この点に関するGの弁解は信用て きない(それ故,同供述を前提として,I殺害は偶発的事件てあるという弁護人 の主張は採用てきない。)。5 以上に加え,殺人等の犯行後,被告人か,Aか組長を務めていた暴力団の組 長となり,これに伴って,種々の経済的利益を容易に得ることかてきたのも,I まて殺害されたからてあることなとを併せ考えると,被告人は,殺人等の前日 の段階ては,I殺害を認識かつ認容し,その旨Gと意思を相通していたことは優 に認定することかてきる。よって,Iに対する殺人の共謀を否認する弁護人の主張は採用てきない。 (累犯前科)被告人は,(1)平成3年9月3日富山地方裁判所高岡支部て覚せい剤取締法違 反罪により懲役1年6月(4年間執行猶予,付保護観察,平成5年7月30日その猶 予取消し)に処せられ,平成9年6月2日その刑の執行を受け終わり,(2)平成5年7 月2日同裁判所同支部て覚せい剤取締法違反,公務執行妨害罪により懲役2年6 月に処せられ,平成7年12月2日その刑の執行を受け終わったものてあって,これ らの事実は,検察事務官作成の前科調書(乙15)によって認める。(法令の適用) 被告人の判示第1の所為のうち,建造物侵入の点は刑法60条,130条前段に,威力業務妨害の点は同法60条,234条,233条に,判示第2の1及ひ第2の2の 各所為はいすれも,行為時においては同法60条,平成16年法律第156号(以下 「新法」という。)による改正前の刑法(以下「旧法」という。)199条に,裁判時にお いては刑法60条,新法による改正後の刑法199条に,判示第2の3の所為は行為 時においては包括して同法60条,銃砲刀剣類所持等取締法31条の3第2項,1 項,3条1項(刑の長期は,行為時においては旧法12条1項に,裁判時においては 新法による改正後の刑法12条1項によることになるか,これは犯罪後の法令によ って刑の変更かあったときに当たるから刑法6条,10条により軽い行為時法の刑に よる。)に,判示第3の各所為はいすれも覚せい剤取締法41条の3第1項1号,19 条(判示第3の1の所為については更に刑法60条)にそれそれ該当するところ,判 示第2の1及ひ2は犯罪後の法令によって刑の変更かあったときに当たるから刑法 6条,10条によりいすれも軽い行為時法の刑によることとし,判示第1の建造物侵 入と威力業務妨害との間には手段結果の関係かあるのて,同法54条1項後段,1 0条により1罪として犯情の重い威力業務妨害罪の刑て処断することとし,各所定 刑中判示第1の罪については懲役刑を,判示第2の1の罪については無期懲役を, 判示第2の2の罪については死刑をそれそれ選択し,被告人には上記の前科かあ るのて同法56条1項,57条により判示第1及ひ第2の3の各罪の刑について,そ れそれ再犯の加重(判示第2の3の罪の刑については同法6条,10条により旧法1 4条の制限内)をし,以上は同法45条前段の併合罪てあるから,同法46条1項本 文により判示第2の2の罪の刑て処断して他の刑を科さないこととして被告人を死 刑に処し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項たたし書を適用して被告人に負担さ せないこととする。(量刑の理由) 第1 量刑事情
本件は,暴力団幹部てあった被告人か,その組長から指示を受け,組員らと 共謀の上,カッターナイフやハールを用いて飲食店のソファーやウイスキーホト ル等を破壊してその営業を妨害した建造物侵入,威力業務妨害(判示第1),幹 部組員及ひ別の暴力団組長らと共謀の上,組長夫妻をけん銃て射殺した殺人2件,銃砲刀剣類所持等取締法違反(判示第2)及ひ逃走中に交際相手の女性と 覚せい剤を使用した覚せい剤取締法違反2件(判示第3)からなる事案てある。このうち,被告人に対する量刑を判断する上て最も重要なものは,殺人等の事 案(以下「本件」という。)てあるから,以下,これを中心に検討する。1 本件に至る経緯及ひ犯行の動機 本件犯行の動機は,A夫婦か本件写真等の証拠品を確認に行くことてA方襲撃計画か発覚することを被告人らか恐れたため,A夫婦の口を封しる目的て 敢行されたものてある。それは,まさに被告人ら自身の違法行為に起因するも のてあって,身勝手極まりなく,およそ正当化の余地かない。この点について,検察官は,本件の動機は被告人及ひFによるl一家の乗っ 取りやl一家に関連する経済的利益の確保てあって,そのためIも初期の段階 から殺害の対象となっていたのてあり,A夫婦か警察署に本件写真を確認に 行くことはその実行を早める契機となったにすきない旨主張する。確かに,被 告人及ひFは,本件当時,l一家の若頭と副長の地位にあって,組長てあるAか 死亡すれは,その地位を承継し得る立場にあった上,実際にも,本件後被告 人か組長の跡目を継いて,種々の経済的利益をその手に収めたことからする と,A殺害の依頼からA夫婦殺害まての間,被告人及ひFにおいて,Aないしl一 家の活動から生しる経済的利益を得る目的かあったことは十分に認められる。
 したかって,本件には利欲的な側面かあることは否定てきす,検察官の主張に も相当な根拠かあるといえる。しかしなから,平成12年6月2日の段階ては, 被告人はGに対してI殺害を依頼しておらす,強盗に見せかけてAを殺害すると いう計画はGの提案てあったこと,Iかl一家の運営やAの営んていた金融業に ある程度関与していたことは認められるものの,被告人及ひFのl一家ての地 位からして,Iまて殺害しなけれは組長の跡目を継くことか困難てあったとは考 えられないことからすると,被告人らか当初から経済的利益の確保を主たる目 的としてA夫婦殺害を企図していたとは認め難い。かえって,本件の発端かA から厳しい仕打ちを受けていたFか被告人に対してA殺害を持ちかけたものて あること,未たAか何らかの攻撃を積極的に仕掛けるような状況にはなかった とはいえ,A夫婦か本件写真を確認すれは,被告人らのA方襲撃計画への関 与か発覚してAから激しい制裁を受けることは容易に想定されること,本件か, A夫婦か本件写真を確認しに警察署へ出向くことを被告人らか知った翌朝に 敢行されていることからすれは,本件の直接の動機は,上記のとおり,被告人 らかA方襲撃計画に関与していることかAに発覚し,制裁を受けることを避ける ためてあったと見るのか自然てある。そうすると,検察官の上記主張は,けん 銃殺人の直接的動機としては採用てきない。もっとも,このことは,自らの犯罪 行為の罪証隠滅を図るという犯行動機の身勝手さや悪質さを何ら減しるもの てはなく,結局,本件の動機に酌量の余地か全くないという点には変わりかな い。2 犯行の態様 本件犯行の態様は,強固な殺意に基つき,高度の殺傷能力を有する自動装てん式けん銃て2発すつ発砲して射殺したという手口の冷酷かつ残忍なも のてあり,とりわけ,必死に命乞いをするIを殺害した点は,無慈悲この上ない というへきてある。実行犯てあるGは,けん銃の扱いに手慣れ,高い射撃能力を有しており,試 射により性能を確認済みの自動装てん式けん銃を所持してA方に押し入って いる。そして,Gは,A方においてAと顔を合わせるや,ためらうことなく至近距 離からAの顔面をけん銃て狙撃し,そのまま後ろに倒れたAにととめを刺す目 的てAの下顎角部を狙撃している。また,Iに対しては,けん銃を突き付け,い わは人質に取った状態てAの居場所へ案内させた上,Iか,その目前てAか射 殺されたのを見て慌てて別室に逃れ,床にひれ伏し金品の提供を申し出るな として必死に命乞いをするのも構わす,至近距離からIの後頭部を狙撃し,そ のまま崩れるようにしてうつふせに倒れたIにやはりととめを刺す目的てその背 部を狙撃している。被害者両名は,いすれもその場て血まみれになって絶命しており,凄惨を極めている。そこには生命の尊厳に対する思いや被害者らに対する憐憫の情か微塵も感しられす,極悪非道な行為態度というほかない。
 3 計画性及ひ被告人の地位ないし役割本件は,A方襲撃計画の段階から謀議を重ね,周到な準備をした上,同計 画失敗後,被告人と共犯者らとか緊密な連絡を取り合いなから,周到な準備 のもとに遂行された計画性の高い犯行てある。ます,A方襲撃計画において,被告人は,Fとの間てA殺害を他人に実行さ せようと謀った上,高岡市内て面談したGに対し,Aへの殺意を抱くに至った経 緯等を訴えるなとしてAの殺害を依頼し,A方やAの立ち寄り先等を案内した 後,その実現に向けて,A夫婦の写真,A方付近等の住宅地図の写し,A方内 の見取図等をGに渡すなとの情報提供をした。その後,Gは,高岡市内のA方 に赴いて下見をし,その様子をヒテオカメラて撮影した上,中国人マフィアらと の間てそのヒテオテーフや写真,地図等を使って綿密な謀議を行い,ハール や脇差し等の犯行道具や,犯行に使用する自動車,犯行発覚を免れるための 偽造ナンハーフレートを用意するなと,共犯者間て役割を分担しなから周到に 準備を進めていたか,A方襲撃計画の実行に向かった中国人らの逮捕により 同計画か失敗に終わった。その後,被告人は,A夫婦か中国人らから押収された写真等を確認するた め警察署に出向くことになると知るや,直ちにこれをFに報告し,Fから口封し のため写真を確認する前にA夫婦を殺害することを提案され,GにA夫婦の殺 害を実行させることを決意し,Gに対してすくに東京から富山に来てA夫婦を殺 害するよう執拗に要請し,GにA夫婦殺害を決心させた。そして,Gらは,犯行 時に着用するためのシャンハーや帽子を購入し,自動車て富山県に向かい, 途中て被告人からけん銃2丁を受領してこれを試射するなとの準備をした上, A方付近に駐車して待機していた。他方,被告人は,前夜l一家事務所に泊ま ったA夫婦の側てその動向を監視して殺害の機会をうかかい,A夫婦かいった ん自宅に戻ることを聞き知るや,Gらに電話て連絡した後,A方にA夫婦を2人 きりにさせて実行を容易にする目的て,犬の散歩のためにA方に向かっていた 組員を2度にわたりl一家事務所に呼ひつけてA方から遠さけた上,Gに対し, 直ちに殺害を実行するよう指示した。そこて,Gらは,現場から即刻離脱てきる よう,あらかしめLに対し,数分後にA方前路上に自動車て待機しておくよう指 示した上,A方に押し入り,A夫婦の殺害に及んた。被告人は,本件において,計画立案から準備,実行に至るまて一貫して主 体的に行動しているのみならす,上記経過のとおり,A夫婦の殺害を実行させ ることとしたGに対し,けん銃2丁を手渡した上,A夫婦の動静について逐一情 報を提供し,殺害の具体的時機を指示するなと,不可欠かつ極めて重要な中 心的役割を果たしなから,本件を推し進めてきた者てある。被告人と実行犯て あるGとは当初から相当高額の報酬の授受を約束する対等の間柄てあり,被 告人の共犯者間における地位は,実行犯の中て主導的な立場にあるGやA殺 害の発案者てあるFと比へても何ら遜色はなく,首謀者の一人といわなけれは ならない。しかも,被告人か犯行の発覚を免れるため,自ら手を下すことなく, Gに依頼してA夫婦殺害の目的を遂けている点は,誠に卑劣て狡猾というへき てある。4 犯行の結果及ひ遺族の処罰感情 2名もの尊い生命か奪われたという結果は,極めて重大てあって,量刑上最も重視すへき事情てあることは詳論するまてもない。自宅て突然の襲撃に遭 い,死の恐怖に直面したA夫婦の驚愕や,A殺害の様子を目の当たりにさせら れた上,床にひれ伏して必死の命乞いをしたときのIの絶望感は,想像に難くな く,非業の死を遂けるに至ったA夫婦の無念さは察するに余りある。遺族の処罰感情は,峻厳を極め,被告人の極刑を求めている。Aは暴力団 組長,Iはその妻てあったとはいえ,その娘,Aの父及ひIの姉ら親族にとってか けかえのない存在てあることはいうまてもない。とりわけ,本件によって一度に 両親を失ったKは,「私からかけかえのない両親を奪った犯人に対しては到底許せるはすはありません。…とうか,私の両親を殺した犯人を死刑にしてほし いと心から願っています。」と峻烈な処罰感情を述へ,Aの配下てあり,また,A 夫婦の死後に相続人てある自分から犯人探索費名目て金を引き出した被告 人やFについて,「結局,裏切られていたと思うと,当然怒りを感します。」としな からも,「QやFかこの事件に関わっていたということを両親か知ったらとのよう に思うてしょうか。こんな苦しい思いをするならは,両親にはそのことを教えな い方かいいのかも知れません。」と亡き両親の心情まて気遣う姿勢には,かけ るへき慰めの言葉も見つからない。なお,遺族に対し損害賠償等の見るへき慰謝の措置は全くとられておらす, 今後そのような措置かとられる見込みも乏しい。5 社会的影響 本件は,複数の暴力団組員らか,共謀の上,白昼,市街地の住宅内において,夫婦2名を一度にけん銃て射殺したという凶悪かつ重大な事件てあり,近 隣住民や地域社会に与えた衝撃は大きく,深刻な不安を招いたことも明らかて あって,その社会的影響は軽視することかてきない。ところて,検察官は,Aか暴力団組長の地位にあったことを被告人に有利な 情状として過大視すへきてなく,Iか暴力団組長の妻てあったことは本件を正当 化する事情にならないと主張する。これに対し,弁護人は,暴力団組長か暴力 団員に殺害された点て,社会的影響は割り引いてよく,A夫婦か億単位の資産 を形成していたことは,Aか暴力団の威力を背景に違法な金利や取立により金 融業を営んていたことの証左てあるから,本件を一般人か殺害された場合と同 列に論しることはてきないと主張する。確かに,本件は,Aか組長を務める暴力 団内部てのAとFとの確執を発端としたものてあるから,Aは暴力団組長てあっ たからこそ殺害されるに至ったという側面かあることは否定てきない。しかし, Aの金融業かたとえ暴力団組長の地位を背景にその威力を利用していたとし ても,被告人らは,A亡き後の組長の地位を承継することてこの金融業をある 程度引き継くことを見込んていたものてあるから,Aの地位や経済活動は,そ れ自体,被告人の刑事責任を相当程度軽減するような事情とはならない。ま た,Aの妻にすきないIは,犯行当日の段階ては,A方襲撃計画の発覚を防く 口封しのために殺害されたのてあるから,本件においては,むしろ一般市民に 近い立場にあったものというへきてある。したかって,この点に関する検察官の 主張には理由かあり,弁護人の主張は採用てきない。6 犯行後の情状 本件犯行後の情状については,罪証隠滅行為のほか,経済的利益の取得に加え,被告人の供述態度等を見ても,甚た芳しくない。 本件犯行直後,Gらは,現場から速やかに逃走し,けん銃2丁,携帯電話,シャンハーや帽子,偽造ナンハーフレート等を順次投棄するなと,入念な罪証 隠滅を行い,被告人も,携帯電話を処分し,さらに,後日Gとの間て口裏を合 わせるなとの罪証隠滅工作を行った。のみならす,被告人は,上部団体の組長の指名を受け,Aの後継者として l一家の組長となった上,Kから犯人探索費名目や上納金名目て6000万円を 受け取り,そのうち2000万円は自ら消費したり,配下の組員に分配して費消 し,また,Aから貸付けを受けた元ハチンコ店経営者から貸金返済の名目て数 千万円を受け取り,その一部を自己の用途に使用するなと,自己の犯罪に起 因する多額の経済的利益を受けている。加えて,被告人は,判示第1の事実て逮捕された後,病気入院のため身柄 拘束を解かれるや,警察から本件等について追及されることを恐れて逃亡し, 本件て逮捕された後も,Gらの供述内容か明らかてない捜査段階においては 本件について否認を続けていた。なお,被告人は,本件起訴後,第2回公判前 にI殺害の共謀を除いて本件を自白してからは,これを維持しているものてある か,公判審理の最終段階に至ってから,けん銃を試射した場所や上部団体の 組長への報告時期等を明らかにするなと,本件に関する全ての事情を包み隠 さすに供述していたものとは認められない。7 被告人の前科等 被告人は,多数の前科を有し,服役を繰り返している上,暴力団員としての生活態度等も芳しくない。 被告人は,少年時代から非行を重ねて少年院に2回送致され,昭和40年12月には恐喝罪等て不定期刑に処せられ,成年後は懲役刑に8回処せられ, いすれも服役し,その期間は通算10年を超えるほか,罰金刑にも2回処せら れているものてあって,前科11犯を有する。比較的近時の前科に限っても,上 記累犯前科のとおり,平成3年9月覚せい剤取締法違反罪て懲役1年6月,4 年間執行猶予,保護観察付きの判決を受けたにもかかわらす,平成5年7月 には覚せい剤取締法違反,公務執行妨害罪て懲役2年6月の実刑判決を受 け,前刑と併せて服役し,その後も,平成10年7月脅迫罪て罰金20万円に処 せられている。のみならす,被告人は,高岡市内て正業に就いていた時期もあるものの, 暴力団員としての活動歴か長くなりつつあり,判示第1の建造物侵入,威力業 務妨害は,暴力団特有の反社会性を顕著に示すものてある。しかも,被告人 は,覚せい剤事犯による同種前科4犯を有するのに,薬物への依存傾向を更 に強めていて,判示第3の覚せい剤使用は,その害悪を他人にも及ほしなから 行われている。したかって,被告人の反社会的な人格態度は,相当強く固着しており,過去 の矯正教育て有意な効果かあったとは認められす,現在57歳という被告人の 年齢等をも併せ考えると,被告人か今後更生する可能性は,極めて乏しいとい わさるを得ない。8 被告人のために斟酌すへき事情 しかしなから,他方,被告人には以下のような酌むへき事情も存在する。 既に述へたように,本件に至る経緯においては,A殺害計画の発案者は,被告人てはなく,当初からIの殺害まて企図していたわけてはないこと,本件の動 機においても,経済的利益の取得か直接の目的てはなかったこと,共犯者と の関係ては,被告人か実行犯てあるGに命令をするような上下関係はなかっ たことか認められる。そして,被告人は,I殺害の共謀の点を除き,各公訴事実をいすれも認め, 自分かA殺害を依頼していなけれはIも命を落とすことはなかったとしてその責 任の一端を自覚するとともに,被害者夫婦の娘ら遺族に対し深い悲しみと苦し みを与えたことを謝罪し,被害者らの冥福を祈り続けていく旨述へるなと,現在 ては反省悔悟の情を示している(弁護人は,被告人か被害者の冥福を祈る気 持ちの強さもいうか,この点は必すしも明確にされているものてはない。)。加えて,被告人は,判示第1の建造物侵入,威力業務妨害については,首 謀者てはなく,被害者に賠償金100万円を支払って示談し,宥恕を得ており, また,判示第3の覚せい剤使用については,30万円の贖罪寄附をしている。 なお,本件発覚後被告人と離婚した妻は,本件後間もなく生まれた被告人の 子を養育している。たたし,以上のような被告人にとって有利な事情や被告人のために斟酌す へき事情は,いすれもその刑責を大幅に軽減するようなものとは認められな い。9 まとめ 本件においては,何よりも2名の生命を奪ったという結果か極めて重大てあり,口封しという動機には酌むへきところか全くないはかりてなく,その態様は, Aに対しては何らのためらいなく,Iに対しては必死の命乞いを無視して,けん 銃て発砲してととめを刺すという冷酷かつ残虐なものてある上,周到かつ綿密 な計画に基つき共犯者らと緊密な連絡を取って極めて冷静に遂行されており, さらに,遺族の処罰感情は峻烈てあって,本件の社会的影響も軽視てきない (なお,被害者らか暴力団組長の夫とその妻てあったことを被告人に有利な情 状として過大に評価することはてきない。)。しかも,被告人は,首謀者の地位 にあって,共犯者らと謀議を重ね,主体的に犯行の準備をし,殺害の機会を捉えてGにその実行を指示するなと,一貫して主導的かつ中心的な役割を果たし ている上,犯行後の情状や前科等も芳しくない。そうすると,被告人のために斟酌すへき事情をてきるたけ有利に考慮して も,被告人の刑事責任は甚た重大てあるといわさるを得ないから,被告人に 対しては厳しい刑罰を科するほかない。第2 死刑選択の当否 検察官は,被告人に対し死刑を求刑しているところ,死刑は,被告人の生命を奪うという究極の峻厳な刑罰てあり,慎重に適用すへきものてあることは疑う余 地かない。しかし,死刑制度を存置する現行法制の下ては,犯罪の罪質,動機, 態様殊に殺害の手段方法の執拗性・残虐性,結果の重大性殊に殺害された被 害者の数,遺族の被害感情,社会的影響,犯人の年齢,前科,犯行後の情状等 を併せ考察したとき,その罪責か誠に重大てあって,罪刑の均衡の見地からも一 般予防の見地からも極刑かやむを得ないと認められる場合には,死刑の選択を するほかないものといわなけれはならない。そこて,被告人に対し極刑を選択せ さるを得ないものかについて,死刑の選択を回避すへき理由かないかという観点 を含めて更に検討する。1 弁護人の主張に対する判断 ます,弁護人は,死刑反対の理由として誤判の可能性を指摘するか,事実認定の問題と刑の量定とを混同する議論てある。 次に,弁護人は,国家の刑罰は遺族の被害感情に左右されるものてあってはならないと主張するか,刑罰権を独占する国家は,遺族の被害感情を十分 に考慮しなけれはならない。また,弁護人は,国家か更生の不可能を宣言する前に,更生への努力をす へきてあると主張するか,被告人の多数の服役前科,暴力団員としての経歴, その年齢等に照らすと,服役による更生は期待てきないといわさるを得ない。加えて,弁護人は,暴力団p組組長かz駅前のホテルの喫茶室においてけん 銃て射殺され,同席していた歯科医も死亡したという著名事件に関し,多数の 共犯者に対する刑は最高ても懲役20年てあったことを指摘し,これとの均衡 を図るへきてあるとも主張する。しかし,当該事件は,暴力団組員によるけん 銃を使用した2名の殺人事件という限度てこそ共通性かあるとはいえ,対立す る暴力団組織の抗争事件という罪質か異なる事案てあって,本件の経緯や動 機とも大きな隔たりかあるから,比較の対象にならない。そうすると,弁護人の上記各主張はいすれも採用てきない。
 2 共犯者に対する刑との均衡なお念のため,共犯者間の刑の実質的均衡の観点からも検討する。
実行犯てあるGは,第一審て死刑の言渡しを受けて現在控訴中てあり,H は,懲役18年の刑か自然確定している(なお,Lは,殺人幇助,強盗予備の罪 て懲役7年の刑か控訴棄却により確定している。)。本件の首謀者てある被告 人の犯情は,これら共犯者と比較してもより重いものといわなけれはならす, 少なくとも実行犯てあるGと同等の刑責を負うへきてあるから,Gの最終的な量 刑の帰すうにかかわらす,この点は死刑の選択を回避する理由にはならな い。
 そうすると,本件の犯情は極めて悪質てあって,被告人の罪責は誠に重大てあるから,当裁判所は,被告人のために斟酌すへき諸事情を最大限有利に考慮 しつつ,慎重に熟慮を重ねたけれとも,極刑を回避すへき理由か見当たらす,罪 刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも,被告人に対する死刑の選択はや むを得ないという結論に達した。 よって,主文のとおり判決する。 平成17年1月27日
富山地方裁判所刑事部 裁判長裁判官 手 﨑 政 人 裁判官 大 多 和 泰 治 裁判官 五 十 嵐 浩 介
判例本文

この判例ページのURL

LINEで送る
Pocket