◆ H16.6.24 大分地方裁判所民事第1部 平成13(ワ)565 保険金 請求事件主 文
1 被告は,原告に対し,8446万7216円及ひこれに対する平成13年 6月30日から支払済みまて年6分の割合による金員を支払え。2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを2分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担 とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することかてきる。
事実及ひ理由
第1 請求
 被告は,原告に対し,2億円及ひこれに対する平成13年6月28日から 支払済みまて年6分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は,原告か,別紙物件目録(1)記載9のハチンコ店店舗(なお,1階 か遊技場,2階か従業員寄宿舎となっていた。以下「本件建物」という。) 及ひ店舗内の什器・備品に関し,日産火災海上保険株式会社(以下「日産火 災」という。)との間て店舗総合保険契約(以下「本件保険契約」とい う。)を締結したところ,本件建物及ひ同建物内の什器・備品等か,何者か に破壊されたことから,原告か日産火災を吸収合併した被告に対し,保険金 及ひ商事法定利率年6分の割合による遅延損害金を請求している事案てあ る。被告は,本件保険契約の有効性を争うほか,本件建物の破壊行為か本件 保険契約の約款所定の保険事故に当たらないなとと主張し,原告の保険金請 求を争っている。1 争いのない事実等(末尾に証拠の摘示のない事実は当事者間に争いのない 事実てある。)
(1) 当事者 原告は,遊技場の経営,飲食店の経営,不動産の売買・賃貸・仲介・管 理等を目的とし,大分県臼杵市においてハチンコ店を経営していた有限会 社てある(甲6,原告代表者,弁論の全趣旨)。
 日産火災は,原告との間て,本件保険契約を締結していたか,平成14 年7月1日,吸収合併により解散し,その権利義務は被告か承継した(弁 論の全趣旨)。
(2) 本件に至る経緯 ア 訴外株式会社金宮(以下「訴外会社」という。)は,本件建物並ひにその敷地部分を含む周辺の土地8筆(別紙物件目録(1)記載1ないし8 の土地,以下「本件土地」といい,本件建物と併せて「本件土地建物」という。)を所有し,ハチンコ店を経営していたところ,担保権の実行 により福岡地方裁判所において,平成11年1月13日,競売開始決定 かされた(同裁判所平成11年(ケ)第20号)。同裁判所か,最低売却 価額を本件建物部分について9100万円,本件土地部分について55 77万円と定め,計1億4677万円て特別売却に付したところ,原告 から委任を受けていた訴外有限会社ユーテック(以下「ユーテック」と いう。)か買受けの申出をし,平成13年2月15日に売却され,さら に,同月26日にユーテックから,原告に対し,民法646条2項によ る所有権の移転かなされ,同月28日,その旨登記かされた。(甲3, 乙3ないし5,9,15の1,16)イ 平成13年3月22日,原告は,日産火災との間て,本件建物及ひ同 建物内の什器,備品について,本件保険契約(店舗総合保険,証券番号 6002837787)を締結した。
 本件保険契約の主な内容は,保険証券及ひ店舗総合保険普通保険約款 (以下「本件約款」という。)によれは以下のとおりてある(甲1, 2)。(ア) 保険の目的物 本件建物 (イ) 保険期間 平成13年3月22日から平成14年3月22日午後4時まて
(ウ) 保険金額
 1 建物 1億3000万円
 2 什器,備品等 7000万円(エ) 合計保険料 70万3500円 (オ) 保険金を支払う場合(本件約款1条3項(1),(3),同条4項)1 建物の外部からの物体の落下,飛来,衝突又は倒壊
2 騒しょう及ひこれに類似の集団行動(群衆又は多数の者の集団の 行動によって,数世帯以上又はこれに準する規模にわたり平穏か害 されるか又は被害を生する状態てあって暴動(群衆または多数の者 の集団の行動によって,全国または一部の地区において著しく平穏 か害され,治安維持上重大な事態と認められる状態)に至らないも の)
3 盗難(強盗,窃盗又はこれらの未遂)によって保険の目的物について生した盗取,毀損又は汚損の損害 (カ) 保険の目的の範囲(同3条4項) 建物か保険の目的てある場合には,被保険者の所有する畳,建具そ の他の従物及ひ電気・カス・暖房・冷房設備その他の付属設備は,特 別の約定かない限り保険の目的に含まれる。
(キ) 支払う損害保険金(同4条3項,同条4項)
1 保険金額か保険価額(損害か生した地及ひ時における保険契約の 目的の価額)の80ハーセントに相当する額以上のときは,被告 は,保険金額を限度として損害の額を損害保険金として支払う。
2 保険金額か保険価額の80ハーセントに相当する額より低いとき は,被告は保険金額を限度として,次の算式より算出された金額を 支払う。
 損害の額× = 損害保険金
 保険価額の80ハーセントに相当する額 (ク) 告知義務違反による解除(同16条1項) 保険契約締結当時,保険契約者か,故意又は重過失によって保険契 約申込書の記載事項について,保険会社に知っている事実を告けす又 は不実のことを告けたときは,保険会社は,保険契約を解除すること かてきる。
(ケ) 免責(同26条1項,同条4項) 保険契約者は,保険の目的について損害か生したことを知ったとき は,これを保険会社に遅滞なく通知し,かつ,損害見積書に保険会社 の要求するその他の書類を添えて,損害の発生を通知した日から30 日以内に保険会社に提出しなけれはならない。保険契約者か,正当の 理由かないのに前記規定に違反したとき又は提出書類につき知ってい る事実を表示せす,もしくは不実の表示をしたときは,保険会社は保 険金を支払わない。(コ) 保険金の支払時期(同31条) 保険会社は,保険契約者か所定の手続をした日から30日以内に保 険金を支払う。ウ 平成13年4月末ころまてに,本件建物内に何者かか侵入し,本件建 物内のほほ全体にわたり,トア,天井,屋根,壁,電気設備及ひ空調設 備,備品等を破壊した(以下「本件事件」という。甲4,弁論の全趣 旨)。
エ 原告は,日産火災に対し,平成13年5月28日,本件事件の通知を するとともに,保険金を請求する旨の内容証明郵便を発送し,同内容証 明郵便は同月30日に到達した。
2 争点及ひ争点に関する当事者の主張
 本件の争点は,1 本件保険契約の有効性,2 本件保険契約の解除の適 法性,3 本件事件の本件約款所定の保険事故該当性,4 原告の損害と保 険金額,5 免責の可否てある。
(1) 本件保険契約の有効性 ア 本件建物部分に関し,超過保険による無効 保険金額

 (被告の主張)
 商法631条は,保険金額を実際の保険目的価額より高く約定するこ とを認めないことを前提として,約定保険金額か保険目的価額を超過し たときは,その超過部分を無効としている。そして,物を保険に付した 場合は,転売する利益てはなく,その物について所有者として有する利 益を被保険利益としたものと推定すへきてあるから,不動産の場合は, 取得から時間かかなり経過しているという事情かない限り,取得価額を 保険目的価額とすへきてある。
 原告は,本件建物を,競売により9100万円て取得したものてある にもかかわらす,1億3000万円の保険をつけているものてあって, 9100万円を超過する3900万円の本件保険契約部分は無効てあ る。
 (原告の主張)
 商法631条所定の目的物の価額は,社会通念なとの客観的判断によ り評価される実価を超過しているときをいうのてあって,市場価格より 低く設定された競落代金を基準とするものてはない。福岡地方裁判所の 作成した競売記録の評価書においても本件建物の現存価値は1億460 3万5710円と評価されており,本件保険契約は超過保険てはない。イ 什器・備品等の部分に関し,被保険利益の不存在による無効
 (被告の主張)
 原告か,主物・従物の理論により建物競売て取得したと主張している 設備・什器・備品は,本件約款3条4項の適用により「建物の保険」の 目的に入っているのてあり,「什器・備品の保険」の目的にはなりえな い一方,原告か主物・従物理論により取得していない動産は,未た本件 建物の元所有者てある訴外会社の所有てあり,原告は何らの権利も有し ていないものてある。
 したかって,什器・備品について付された7000万円の保険は,被 保険利益か存在せす無効てある。
 (原告の主張)
 本件建物内部には,1 3000万円相当のハチンコの台を収めてい る列(通称「島」と呼はれるもの)及ひ島還元装置,2 2124万0 450円相当の空調設備,3 3221万6100円相当の電気設備,4 100万円相当のカウンター等,合計8445万6550円相当の 什器,備品かあった。原告は,本件建物を担保権実行に基つく競売によ り取得したものてあるか,本件建物にかかる抵当権の効力は,従物てあ る動産にも及んているのて,訴外会社との話合いの帰趨にかかわらす, 原告は競売により,什器,備品の所有権も取得していた。
ウ 公序良俗違反
(被告の主張) (ア) 保険制度の悪用を許し,いたすらに保険事故によって利益を得よ うとする射倖心を助長することにより,正常な保険制度の維持という 観点から是認てきない契約は,社会的相当性を逸脱するものてあり, 公序良俗違反て無効とされるへきてある。
 前記ア,イ記載のとおり,本件保険契約は,建物部分については超 過保険てあり,かつ什器・備品部分については被保険利益かないこと から明らかなように,原告か,実際の損害額以上の保険金を取得しよ うとした不正目的をもって締結されたというへきてあり,民法90条 により無効てある。
(イ) 本件建物の存在する周辺土地は,都市計画道路・cd線事業関連 用地にかかる計画か具体性を帯ひてきていた状態にあった。原告代表 者の周囲にはかかる情報を知り得る人物かおり,原告代表者もこのよ うな動きを十分熟知して,本件土地建物を取得したものと推認され る。そして,原告は,合計1億8577万円を支出して本件土地建 物,及ひそれに隣接する別紙物件目録(2)記載1の土地(以下「隣接 土地」という。)及ひ同土地上の同目録(2)記載2の建物(以下「隣 接建物」といい,両者を併せて「隣接土地建物」という。)を競売て 取得し,1年も経過しないうちにこれらの土地建物全てを5億300 0万円てd町土地開発公社に売却しており,3億4423万円もの利 益をあけている。このような状況からみれは,原告は,本件建物てハ チンコ店を営業する考えは初めからなく,保険事故によって利益を得 ようとする目的をもって本件保険契約を締結したというへきてある。
 (原告の主張)
 原告は,競売代金を金融機関から借り入れるに際し,保険契約を締結 することか融資の条件とされたために,本件保険契約を締結したものて あり,保険金を取得する意図て締結したものてはない。また,保険金額 は,保険代理店の指示により,原告か大分県臼杵市に保有していたハチ ンコ店の規模を参考として決められたものてある。
(2) 本件保険契約の解除の適法性 (被告の主張)
 原告は,本件保険契約締結当時,日産火災に対し,特別売却により,本 件土地建物を合計1億4677万円て購入したことや,敷地利用権や占有 減価を加味しない本件建物自体の価額は約7600万円てあったこと,本 件建物を第三者か占有していること等,保険金額算定及ひ危険測定に関す る重要な事実を告けす,また,本件建物内の動産か第三者の所有てあるの に,自己の所有てあるように告けた。
 したかって,被告は,原告に対し,本件約款16条1項(告知義務違 反)に基つき,第2回弁論準備手続期日において,本件保険契約を解除す る旨の意思表示をした。
 (原告の主張)
 本件保険契約の保険申込書には,目的建物の購入価格や建物自体の価 格,第三者占有の有無を記載することにはなっておらす,かかる内容か告 知義務の対象となっていたとは認められない。また,原告は,本件保険契 約を締結するに際し,保険代理店に,本件建物を取得するに至った事情な とを説明しており,何ら告知義務に違背していない。
(3) 本件事件の保険事故該当性 ア 本件事件か本件約款所定の保険事故に該当するか。
 (原告の主張)(ア) 「建物の外部からの物体の衝突」 本件事件は,第三者か重機を外部から本件建物の玄関に衝突させる なとして侵入し,破壊行為を行ったものてあり,本件約款に規定され ている「建物の外部からの物体の落下,飛来,衝突又は倒壊」に該当 する。店舗総合保険か店舗の財産的損害に備えて契約されることを考 えるならは,本件のように外部から重機を侵入させ,破壊した行為な とは,「建物外部からの物体の衝突」に該当すへきものと解するのか 相当てある。
(イ) 「騒しょう及ひこれに類似の集団行動」 本件事件は,複数の者によってなされており,保険の目的物たる本 件建物(床面積1423.35平方メートル,約430坪)及ひ隣接 建物(床面積1054.08平方メートル,約318坪)を破壊し, 通常の一世帯の民家か約40坪程度てあることなとを考慮すれは,い わは数世帯以上か破壊されたに等しいものてあり,周辺の平穏は害さ れたのてあるから,本件約款に規定されている「騒しょう及ひこれに 類似の集団行動(群衆又は多数の者の集団の行動によって,数世帯以 上又はこれに準する規模にわたり平穏か害されるか又は被害を生する 状態)」に該当する。
(ウ) 「盗難によって生した盗取,毀損又は汚損」 さらに,本件事件は,第三者か,窃盗破壊を目的に本件建物に重機 を衝突させ,建物内の備品なとを窃取し,破壊しており,約款に規定 されている「盗難(強盗,窃盗又はこれらの未遂)によって保険の目 的物について生した盗取,毀損又は汚損の損害」に該当するものてあ る。(被告の主張)
(ア) 「建物の外部からの物体の衝突」 被告の社員らの現地調査の結果や福岡地方裁判所執行官からの調査 嘱託回答書によると,重機か外部から本件建物に衝突し,そのまま侵 入した痕跡は見当たらす,重機を外部から衝突させたと断定てきるか は疑問か残る。仮に原告主張のように「重機を外部から玄関に衝突さ せた」としても,保険金か支払われるのは,外部から重機等か直接衝 突した瞬間の損害のみてあって,その後の内部ての破壊行為は,本条 項の予定しないものといわさるを得ない。
(イ) 「騒しょう及ひこれに類似の集団行動」 「騒しょう」とは,集団行動かやや大規模になり,群衆又は多数の 者の集団の行動によって数街区以上又はこれに準する規模にわたり平 穏か害されるか,又は被害を生する状態て「暴動」に至らないものを いう。しかし,本件の場合は,このような「騒しょう」の要件に該当 しない。
 また,「騒しょう類似の集団行動」とは,群衆又は多数の者の集団 行動によって数世帯以上又はこれに準する規模にわたって平穏か害さ れるか被害を生する状態て,「暴動」に至らないものをいう。 いすれも集団行動といえるたけの「多数の者」か予定されているの てあって,単に「複数の者」によってなされるたけては足りす,本件 建物破壊行為か重機て破壊されたものてあれは,多数の者によって行 われたと直ちに認定することはてきない。また,本件建物内の破壊行 為について近隣住民か警察に通報した事実もないから,数世帯以上に わたって平穏の侵害や被害の発生かあったとも認められない。(ウ) 「盗難によって生した盗取,毀損又は汚損」 本件ては,原告代表者自身,法廷において「盗まれたものはないと 思う」と述へており,告訴状にも盗難に関する記載かないことから も,本件事件によって盗難された物はなく,盗難によって生した毀損 又は汚損も認められない。イ 本件事件か保険期間内の事故か。
 (原告の主張)
 本件事件は,平成13年4月1日から同月末まての間に発生した。
 (被告の主張)
 本件保険契約締結日は平成13年3月22日て,保険期間も同日から てあるところ,本件告訴状中には,平成13年3月19日ころから同年 4月22日ころまての間に本件事件か発生したと記載されている。とす れは,本件事件か保険期間開始以前に発生していた可能性かある。(4) 損害の発生
 (原告の主張) 本件事件により,原告は,本件建物について1億5000万円以上,本件建物内の什器備品については,前記(1)イ(原告の主張)記載のとお り,合計8445万6550円相当の損害を被った。よって,本件保険契 約所定の受けるへき保険金の金額は,建物につき1億3000万円,什 器・備品等につき7000万円の合計2億円となる。
 原告は,日産火災に対し,平成13年5月28日,保険事故の通知をす るとともに,保険金を請求する旨の内容証明郵便を発送し,同内容証明郵 便は同月30日に到達した。日産火災か保険金を支払うための調査及ひ事 務手続に必要な期間は,平成13年6月28日をもって経過した。
 (被告の主張)
 有限会社福岡損保鑑定事務所鑑定人A作成の鑑定書(乙27,以下「A 鑑定」という。)によれは,什器部品の金額を除いた本件建物の復旧額 は,8892万0289円てあり,新旧交換差益控除を30ハーセント行 い,損害額は6224万4202円となる。
 保険価額は,1億7800万円てあり,その80ハーセントは1億42 40万円て,保険金額は1億3000万円てあるから,本件約款4条4項 の計算式によれは,損害保険金の額は,次の計算式により,5682万4 060円てある。
 6224万4202円×(1億3000万円÷1億4240万円)=56 82万4060円
 また,その余の什器・備品の損害明細は何ら明らかにされていない。(5) 不実申告による免責 (被告の主張)
 原告は,被告に対し,本件建物については1億5000万円,什器・備 品等について7000万円以上の損害を被ったと主張しているか,原告 は,本件土地建物を合計1億4677万円て取得しており,本件保険契約 締結から保険事故発生まて約1か月しかないのてあるから,原告の取得価 額以上の損害は認められないというへきてある。また,原告代表者は,本 件建物の元所有者てある訴外会社との間て,動産買取りの話を行ってお り,原告か動産の所有者になっていないことを十分に認識していたにもか かわらす,これらの動産か損壊されると,原告は,7000万円以上の損 害を被ったとして保険金請求を行っている。原告は,故意又は重過失によ り,これらの重要な事実に不実の申告をなしたものてあって,本件約款第 26条4項の「不実の表示」に該当し,免責されるというへきてある。
 (原告の主張)
 争う。
第3 当裁判所の判断
1 認定事実
 前記「争いのない事実等」に記載した事実,掲記した証拠及ひ弁論の全趣 旨によれは,以下の事実か認められる。
(1) 原告の物件取得 ア ユーテックは,福岡県糟屋郡新宮町に本店を置き,不動産の売買,賃 貸,管理及ひ仲介業等を目的に掲け,原告代表者の実姉のBか取締役を している有限会社てある(乙10)。
イ 訴外会社は,本件土地建物を所有していたか,同土地建物については 根抵当権者株式会社西日本銀行の申立てに基つき,平成11年1月13 日,福岡地方裁判所により競売開始決定かなされた(甲3,乙4,15 の1)。
 なお,本件土地建物は,JR香椎線a駅の南西約700メートル, 「b営業所」ハス停の北東約70メートルに位置し,近隣は,低層店 舗・事務所・営業所・工場等か立ち並ふ商・工混在地域てあった(甲1 0,乙6。)
ウ 同年7月12日,上記競売事件における評価人の作成した評価書によ れは,本件建物の建築費を1平方メートルあたり18万円と査定し,残 存耐用年数を24年程度(平成5年4月築,経年6年),定率法と観察 減価法を併用して,現価率を57%と査定した。さらに35ハーセント の競売市場減価をし,建物価格として18万円×0.57×1423. 35(延床面積)×(1-0.35)≒9492万3000円と査定し た。最終的には敷地利用権(法定地上権)を加味した上て5%の占有減 価をし,本件建物の最低売却価額を約1億1374万9000円と評価 した。そして本件土地部分の最低売却価額を6970万円として一括売 却に付されたか,購入希望者か現れす,本件土地部分につき5577万 円,本件建物部分につき9100万円にそれそれ減額された上,特別売 却に付され,平成13年2月15日,原告から委任を受けたユーテック に対し売却された。その後,同月26日,原告か,ユーテックから,民 法646条2項によって所有権移転を受け,同月28日にその旨の所有 権移転登記を得た(甲3,乙2,3,6,9,15の1,16)。エ 訴外会社の所有する隣接土地建物も同様に競売に付されていたとこ ろ,平成13年2月26日,原告か,3900万円て競落し,所有権を 取得した(甲9の1,13の1ないし4,乙19,20)。
オ 本件土地建物及ひ隣接土地建物を共同担保として,平成13年2月1 5日及ひ同月26日,原告は,朝銀西信用組合に対し極度額2億800 0万円の根抵当権を設定した(甲3,9の1,乙11,19)。
(2) 原告のハチンコ店経営への準備状況
ア 原告代表者は,当初,コールテンウィーク前てある平成13年4月2 0日過きころをハチンコ店の新規開店の目処と考えていた(原告代表者)。
 イ(ア) 原告は,広島県内の業者から,ハチンコ機材を20台買い受け, 平成13年2月19日にその代金として441万円を支払い,クリー ニンクのために,福岡県内の業者のもとて保管していた。そのため, 同ハチンコ台は,本件事件の際には,未た本件建物に搬入はされてい なかった。(甲17の1ないし4,原告代表者)
(イ) 原告は,東京都内の業者から,平成13年3月12日,ハチンコ 機材を20台買い受け,同年4月15日を納品予定日とした。原告 は,同年5月22日に代金105万0000円を支払った。(甲19 の1・2)(ウ) 原告は,岡山県内の業者から,平成13年3月17日,ハチンコ 機材を10台買い受け,同年4月10日を納品予定日とした。その後 同年9月19日まてに代金189万円を支払った。(甲20の1・ 2)(エ) 原告は,東京都内の業者から,平成13年3月22日,ハチンコ 機材を20台買い受け,同年4月15日を納品予定日とした。その 後,同年5月22日に代金57万7500円を支払った。(甲21, 22の各1・2)(オ) 原告は,東京都内の業者から,平成13年3月27日,ハチンコ 機材20台等を買い受け,同年4月15日を納品予定日とした。その 後,代金821万1000円を支払った。(甲23の1・2)ウ 原告は,大分県臼杵市に本店のみを置いていたか,平成13年3月1 日,福岡県粕屋郡d町d6丁目6番1号に支店を設置し,同月13日, 支店設置を登記した(弁論の全趣旨)。
エ 一方,原告は,平成13年4月23日まてに,従業員の募集を行って おらす,営業許可申請のための図面等も作成していなかった(甲26, 原告代表者)。
(3) 本件保険契約の締結 ア 原告は,大分県臼杵市において,既に経営していたハチンコ店につい て,新築オーフンの際から,金剛保険株式会社大分支社(以下「本件代 理店」という。)を代理店として,住友海上火災保険株式会社(現在の 三井住友海上火災保険株式会社)との間て,期間1年,保険金額は建物 1億5000万円,什器・備品5000万円とする火災保険契約を締結 していた。本件代理店の支社長てあったCは,原告代表者の父,兄と付 き合いかあり,原告代表者とも30年来の知人てあったか,原告代表者 から,原告か新たにハチンコ店店舗を競売て購入したという話を聞き, 火災保険契約を付保するなら,本件代理店て行うように勧誘した(甲2 4,証人C)。
イ 原告代表者はかかる勧誘に応し,平成13年3月22日,本件代理店 において,日産火災の担当社員とCの前て,本件保険契約の申込書類の 作成をした。Cは,本件建物か,430坪程度の規模てあることを聞 き,ハチンコ店店舗として坪40万円程度の評価をし,1億6000万 円超の価値かあると判断したか,原告代表者の希望もあり,保険金額を 1億3000万円とした。その際,C及ひ日産火災の担当者は,原告代 表者に対し,落札価格や第三者か占有しているか否か,明渡執行等の状 況についての質問はしなかった。
 設備什器については,原告か,本件建物内にはハチンコ台か,臼杵市 のハチンコ店にあるハチンコ台よりも100台程度多いと申告したた め,臼杵市の店舗のハチンコ台の台数に100台加算した420台に, Cの判断て,20ないし25万円の単価をかけて,8000万円以上の 評価をしたか,原告代表者の希望を入れ,最終的に保険金額を7000 万円とした。
 Cは,ハチンコ店の保険契約を多数取り扱っていたのて,本件保険契 約における建物,什器備品の保険額は,一般的な額よりも安価てあると 感していた。また,隣接建物については,保険契約は締結されておら す,Cと原告代表者か締結の交渉をした形跡は窺えない。
 なお,本件保険契約締結まてに,Cは本件建物及ひその内部を見にい くことはなかった。(証人C)ウ Cは,原告代表者から,融資の関係て,本件保険に朝銀西信用組合の 質権を設定する必要かあるといわれ,所定の手続を行い,日産火災か平 成13年4月5日に質権設定を承認した(乙1,証人C)。
(4) 本件事件の発覚まての状況 ア ユーテックは,本件土地建物を買受後,平成13年2月26日,訴外会社に対し,引渡命令の申立て(福岡地方裁判所平成13年(ヲ)第1 11号)をなし,申立てか認容され,執行文も付与された。そして,同 引渡命令の執行のため,平成13年3月18日,本件建物に関し,福岡 地方裁判所の執行官か,他の執行官の援助を得て現地に赴き(福岡地方 裁判所(執ロ)第138号),引渡執行のため,執行官らは,本件建物 内部に立ち入ったか,異変はなかった。そして,強制執行の申立人てあ る原告か,(ア) 任意履行を期待すること,(イ) 目的外動産の搬出, 運搬等の準備の必要かあることを述へたため,次回期日は同年4月12 日に指定され,後に変更された。(甲11,乙12ないし14)イ 訴外会社は,本件建物内に,ハチンコの玉やコイン等を残置していた のて,原告代表者は,平成13年4月上旬ころ,訴外会社の代表者と2 度にわたって面会した。原告代表者は,立退料という意味も含め,かか る動産類を,1度目は3000万円,2度目は5000万円て買い取る ことを提示したか,訴外会社の代表者は1億円て買い取るように強く要 求し,さらに換金のための交換所の経営権も譲るように求めたため,交 渉は決裂した。その際,原告代表者は,訴外会社の代表者から,本件建 物を壊すとの内容の脅しを受けた。(甲27の3,原告代表者)。ウ 原告から依頼を受けたD不動産を経営するDは,ハチンコ店開店に伴 う駐車場及ひ周辺地域の調査(準備)のため,平成13年4月1日,本 件建物に赴き,同建物の内部に入ったか,特に荒らされた様子はなく, 通常のハチンコ店の状態てあった。(甲7の1・2)
エ 平成13年4月23日,原告代表者は,引渡命令の強制執行のため (なお,隣接土地建物についても,引渡命令か発令されており,同引渡 命令の執行も同時に行われた。福岡地方裁判所平成13年(執ロ)第1 96号),他の執行官の援助を得た福岡地方裁判所の執行官とともに現 地に赴いた。
 本件建物の出入口は,正面玄関のほか,左右に各1か所,裏側に1か 所あり,正面玄関,左側の出入口は施錠されていたか,右側及ひ裏側の 各出入口は無施錠てあった。右側の出入口は,両開きのカラス戸てあっ たか,何らかの物体か衝突してカラスか割れた状態になっており,割れ の大きい部分て約30センチメートル程度の横幅て地面から約80セン チメートル程度の空間か空いていた。その他の出入口,外壁等には,重 機等の物体か衝突し,そこから建物内に侵入した形跡はなかった。
 本件建物の内部は,1階(店舗),2階(従業員宿舎)とも,廊下・ 屋根・内装・電機設備・内部造作材のほとんと全てか破壊されており, 風呂場や調理場,ハルコニーに設置されていた空調の室外機に至るまて 全て破壊されていた。このため,本件建物内部には,破壊された機材等 のおひたたしい残骸か放置されていた。
 また,隣接建物も一部か破壊され,ハチンコ台か持ち去られていた。
 本件建物の中から盗まれた什器・備品は認められなかった。(甲4, 9の2,11,12,29,乙27,平成15年7月11日付及ひ同年 12月15日付各福岡地方裁判所の執行官室に対する調査嘱託の結果, 原告代表者)。
(5) 本件事件の発見後の関係者の行動 ア 原告は,本件事件の発見後も,直ちには警察に通報せす,姉を通し て,平成13年4月25日に原告代理人弁護士らの法律事務所に相談に 赴いた(甲26,27の1,2)。
イ 原告は,株式会社久光に本件建物の改修工事費用の見積りを依頼し, 平成13年5月8日付けて,1億5169万5200円かかかるとの回 答を得た(甲8)。
ウ 原告代理人弁護士らは,原告からの委任を受け,平成13年5月9日 ころ,福岡県粕屋警察署長に対し,下記の内容の告訴状を提出した(以 下「本件告訴状」という。甲6,27の1)。
(ア) 告訴人 原告
(イ) 被疑者(被告訴人)不明
(ウ) 犯罪事実 被疑者は,平成13年3月19日頃から同年4月22日頃まての 間,原告所有にかかる本件建物及ひ隣接建物のトア,天井,屋根, 壁,電気設備及ひ空調設備等の付帯設備,並ひに動産類等を破壊し, その破壊した廃材を同建物内に残置し,もって原告所有の上記各建物 を損壊したものてある。
(エ) 本件に至る経緯 原告は,本件建物及ひ隣接建物を競売により取得したところ,元所 有者てある訴外会社の代表者か,告訴人に対し,残置したハチンコ 台,ハチンコ台を設置する島及ひシステムなとの動産類の買い取りを もちかけた。しかし,金額の折り合いかつかなかった。この間,福岡 地方裁判所は,本件建物について引渡命令を発し,その執行のため に,平成13年3月18日,同裁判所の執行官か本件建物を訪れたと ころ,訴外会社の代表者か,平成13年4月12日まてに任意に明け 渡すことを約した。そこて,同執行官は,同年4月23日を再度の明 渡執行の日と定めた。ところか訴外会社の代表者は,同年4月15日 から同月20日まての間,原告代表者に対し,「俺は全部壊した。俺 はやりたしたら徹底的にやるから,もうハチンコ屋はやめた方かい い。新築するのと同し位金かかかるから,建物を解体して更地にした 方かよい」なとと述へた。これを受けて同年4月23日,原告代表者 か執行官とともに本件建物に赴くと,本件建物内部は全て破壊されて いた。
エ 本件告訴状を提出した帰路,原告代理人弁護士か,原告代表者に対 し,本件建物に対する保険の付保の有無を質問したところ,原告代表者 は,初めて本件保険契約を締結していた事実を述へた。原告代理人弁護 士は,日産火災に対し,2億円の保険金を請求する内容証明郵便を送付 し,平成13年5月30日に日産火災に到達した。(甲5,27の1な いし3)
オ 平成13年6月7日,被告社員,原告代理人弁護士,被告の依頼を受 けたAは,本件建物に赴いた。建物を外部から調査した結果,風除室の 軒まわりのネオン管の損壊と,内部からの損壊による外壁カラスフロッ クの一部の破損か認められたほかには,重機の侵入口は認められなかっ た。(甲31の1,乙22,23,28)
(6) 本件建物等のその後の経緯等
ア 原告は,本件建物の修理を行わす,そのまま放置していた(原告代表者)。
イ 原告代表者は,平成13年9月11日,d町職員と会い,本件土地建 物及ひ隣接土地建物の売却について打診を受けた。買収価格について は,d町の調査て,本件土地建物及ひ隣接土地建物の用地費(鑑定額) か2億5923万8000円,建物補償費(物件等調査鑑定額)か5億 4050万9200円,諸経費(関係支払額)か1億0957万500 0円,総計9億0932万2200円と見積もられた中て,原告による 建物の営業か開始されていない状況等を踏まえて,建物補償費を物件等 調査鑑定額の約半額てある2億7100万円とし,総計5億3000万 円とされた。
 原告は,上記売却を承諾し,平成13年12月25日,d町土地開発 公社との間て,都市計画道路・cd線事業関連用地として,本件土地建 物,隣接土地建物について5億3000万円ての売買契約を締結し,同 月26日には,全額の支払を受けた。同日,本件建物等に設定されてい た訴外朝銀西信用組合の根抵当権は全て抹消された。(乙15の1・ 2,16,19,20,21の1ないし10)
ウ 被告か当裁判所に提出したA鑑定ては,本件建物の1坪当たりの再調 達価額を1階店舗部分につき72万円,2階寮部分につき38万円と し,総額2億5400万円として,築後8年,年3.75%て合計30 %減価償却されたものと計算し,1億7800万円を本件建物の時価額 とみた上て,原告から提出された甲8号証の見積書の金額を適宜検討 し,復旧額を9252万4089円とみて,新旧交換差益控除を30% (保険価額算出根拠と同率)行った6476万6862円を時価損害額 としている(乙27)。
2 争点に対する判断 (1) 本件保険契約の有効性
ア 本件建物部分に関する保険か超過保険てあるか否か。
 被告は,本件建物の保険目的価額は取得価額となるとして,本件保険 契約て保険金額か取得価額を上回る範囲において,商法631条により 無効となる旨主張している。
 しかしなから,保険目的価額は,被保険利益の評価額を指すから,本 件のように,建物の所有権を被保険利益とする場合には,建物の再調達 価額から減価償却額を控除するなとの方法て,時価を算定することにな る。したかって,売買により,当該不動産の所有権を取得して間もない 場合てあっても,取得価額と時価とか必すしも一致するとは限らない し,本件のような競売物件てあれは,競売手続上の制約要因やリスク等 を踏まえ,市場価額よりも大幅な減価かされていることも明らかてあ り,競売て落札した取得価格そのままを当該不動産の時価とみることは 不合理てある。
 また,被告自身か提出したA鑑定ても,保険価額か1億7800万円 にのほることを認めているのてあるから,本件保険金額は保険価額の範 囲内にあり,本件保険契約を超過保険てあるとみることはてきない。よ って被告の主張は採用することかてきない。
イ 什器・備品等の部品に関し,被保険利益の不存在による無効
 被告は,本件建物内にあった動産等については,原告は,未た訴外会 社との間て売買契約の締結に至っておらす,所有権を有していなかった し,抵当権の効力か及ふ範囲の什器・備品については,従物として本件 約款3条4項の適用を受け,本件建物に対する保険に含まれるから,独 立した被保険利益はないと主張している。
 しかしなから,被保険利益は,損害保険契約締結時に現存する利益て なくとも,将来発生することか客観的に予想されるものてあれはよい。
 前記認定事実のとおり,本件においては,原告は,本件保険契約締結 時には,各地の業者から中古のハチンコ台を相当台数購入しており,後 は搬入を待つたけの状態にあったものてあり,また開業準備中てあるの て本件事件かなけれはさらに備品等を購入する可能性はあったと考えら れるのて,被保険利益の発生か相当程度見込まれていたといってよいか ら,本件保険契約を無効とするまての根拠は認められないというへきて ある。この点に関する被告の主張は,採用することかてきない。ウ 公序良俗違反
 前記のとおり,本件保険契約の,建物部分,什器・備品部分のいすれ に関しても,内容自体に特段不合理な点は認められない。
 さらに,被告は,原告か当初から転売を目的としていたと主張してい る。
 確かに,前記認定事実のとおり,本件土地建物及ひ隣接土地建物の買 受後1年も経過しないうちに,本件土地建物及ひ隣接土地建物は,d町 土地開発公社に道路(都市計画道路cd線)用地として高額て買収され ているか,同道路建設の基になる都市計画は,昭和47年(c町),同 48年(d町)に決定され,早期着工に向けて,c町,d町か,平成1 0年,cd線建設促進期生会(以下「期生会」という。)を設立して, 事業費の負担等について,福岡県や国に陳情していたこと(乙21の 1),期生会には,Dか委員となって参加していたか,Dは,不動産事 業を手かけ,原告から依頼を受けて,本件土地建物及ひ隣接土地建物付 近の畑等を,駐車場名目て買収する交渉をしていたこと(乙21の1, 原告代表者),原告も,本件土地を,平成13年3月15日合筆し(目 的は明らかてはないか,道路用地とならない部分の土地も一筆の土地と なれは,買収の必要性か出てくる可能性ある。),さらに,同年5月1 5日分筆したこと(これも目的は明らかてはないか,乙21の1の14 頁の地図によれは,分筆線か計画道路のセンターライン付近を通ること になっている。)(乙15の1・2,乙17,18)なとか認められる から,原告は,本件建物近辺の土地か公共事業の予定地てあることを知 り,近い将来転売(買収)される可能性かあることを見越して本件土地 建物を取得した可能性も十分あるというへきてある。しかしなから,仮 に原告にその意図かあったとしても,それたけて,本件契約か公序良俗 違反になるわけてはなく,また,買収を期待して本件土地建物を買い受 けたことか,故意に保険事故を起こすことによって利益を得ようという 意図を推認させるものてはない(その間には飛躍かある。)。むしろ, 原告は,本件土地建物及ひ隣接土地建物買受後に,支店登記をしたり, ハチンコ台の購入をしたりするなと,ハチンコ店開設の準備をしていた 節もあり(買収価格をより高くするためには,営業の実態か必要てあ り,前記認定のとおり,本件ては,営業していないことかd町土地開発 公社による買収価格の減額事由となっている。),また,本件保険契約 自体は金融機関の融資を受けるために締結されたものてあり,原告主導 て締結されたものとはいえす,本件保険金自体も,Cの勧める金額を下 ける希望を出したり,隣接建物には保険をかけないなと,故意に保険事 故を起こすことによって利益を得ようという意図を有していたとしたら 矛盾するのてはないかと考えられる事実か存在する。さらに,原告か本 件事件の発生に積極的に関与したことを推認させる証拠もない以上(か えって,本件事件に至る経過を鑑みれは,訴外会社か関与したのてはな いかと疑う余地は十分にある。),原告による本件保険契約の締結や保 険金請求か公序良俗違反に当たるとの被告の主張は採用することかてき ない。
(2) 本件保険契約の解除 被告は,原告に告知義務違反かあると主張するか,店舗総合保険契約に おいて,建物の取得価額や第三者の占有の有無,明渡執行の状況等か保険 金額の算定の上て重要な事項てあるとは認め難い上,前記認定事実のとお り,本件保険契約に際し,C及ひ被告の担当者は,これらの事項について 特段質問もしておらす,原告か積極的にかかる事項を申告する義務かあっ たとは認められない。よって被告の主張は採用することかてきない。(3) 本件事件の保険事故該当性 ア 本件事件か本件約款所定の保険事故に該当するか。(ア) 本件事件の態様等の推認 本件事件か,との程度の人数てとのような手段を用いてなされた か,明確に認定することは,本件全証拠によっても困難てある。しか しなから,本件事件は,1階,2階併せて1423平方メートルもの 面積を有する本件建物か,ほほ全面にわたり,内部設備のみならす, 床,天井,壁面,照明器具,配線に至るまて悉く破壊されており,そ の復旧のためには,被告の提出したA鑑定によっても9252万40 89円の費用を要するという大規模なものてある。この規模のほか, 本件建物1階の天井高や天井における傷跡(A鑑定,18頁中央の写 真。引っ掻き傷か見られる。)も考慮すると,本件建物の破壊行為 は,人力のみによって行われたとは考えにくく,何らかの重機を用い て行われた可能性を否定することかてきない。もっとも,本件建物の 2階は,1階とはやや異なる破壊形態てあり(1階は天井か悉くはか された破壊形態てあるか,2階は天井の所々か穴を空けられたような 破壊形態てある。),1階屋外のクーラー室外機も破壊されている か,狭隘な階段や廊下等を含めて重機の移動の形跡は明確てはない (階段を重機かとのように移動てきるかは判然としない。)。また, 隣接建物も,内部か破壊され,多数のハチンコ台か持ち去られてい る。そして,本件全証拠によっても,本件事件及ひ隣接建物の破壊行 為か付近住民によって感知された形跡はないから,これらの破壊行為 は,同一の破壊意思に基ついて,周囲に悟られることなく,てきるた け時間をかけすに行われたとみるのか自然てある(時間をかけて行え は,周囲に察知される可能性か高い。)。
 そうすると,本件事件及ひ隣接建物の破壊行為は,重機のほか,あ る程度の多人数(少なくとも,本件建物1階の破壊行為における重機 の運転手(重機か何台使われたかは不明てあるのて,複数人の可能性 もある。),2階及ひ室外の破壊行為従事者,隣接建物(3階建てて ある。)の各階の破壊従事者,及ひハチンコ台の取り外し,積み込み 従事者等か必要てある。)て行われたとみるのか相当てある。(イ) 本件約款該当性 本件約款1条3項(3)には「騒しょう及ひこれに類似の集団行動 (群衆又は多数の者の集団の行動によって数世帯以上又はこれに準す る規模にわたり平穏か害されるか又は被害を生する状態てあって暴動 (群衆又は多数の者の集団の行動によって,全国又は一部の地区にお いて著しく平穏か害され,治安維持上重大な事態と認められる状態) に至らないもの)又は労働争議に伴う暴力行為もしくは破壊行為」 (以下「本件条項」という。)については保険金を支払う旨規定して いる。
 被告の用いている企業補償保険の約款(乙24)には,本件条項と 区別して,「破壊行為(被保険者に損害を与える目的をもって行われ た第三者による行為てあって,騒しょう及ひこれに類似の集団行動に 至らないものをいい,労働争議に伴う暴力行為または破壊行為を除き ます。)」を規定しているから,本件約款は,第三者による破壊行為 のうち,ある程度の規模の破壊行為を予定しているといえるか(暴動 による暴力行為と破壊行為との中間の保険といわれるようてあ
 る。),刑法における騒乱罪(106条,平成7年法律91号による 改正前は「騒擾罪」)とは,規定の仕方か同一てはなく,「騒しょ う」以外に,「騒しょう類似の集団行動」や労働争議の場合も予定し ている。そして,「騒しょう類似の集団行動」は,本件規定上「群衆 又は多数の者の集団の行動によって数世帯又はこれに準する規模にわ たり平穏か害されるか又は被害を生する状態」と定義され,騒乱罪 (騒擾罪)において「多数とは多数人の集団を指し,一地方における 公共の静謐を害するに足りる暴行強迫をなすに適当な人数てあること を要する(大判大正2年10月3日,録19楫910頁)とされる規 模とは異なるものと解されるし,「労働争議」ては規模等について限 定か一切なされていない。さらに,公共の安全を保護法益として重い 刑罰を科することを目的とする騒乱罪の規定と,建物に対する財産的 損害を填補することを目的とし,保険加入者か保険料を支払った場合 の保険金支払義務を規定する本件規定とを同一の解釈をする必然性ま てはないというへきてある。したかって,本件規定を,昭和27年の いわゆるメーテー事件や,昭和43年の新宿争乱事件のような大規模 の事件にしか該当しないと限定解釈する必要性まてはなく,破壊行為 に参加した人数,破壊の手段,程度,被害額等を総合考慮し,ある程 度の規模の破壊行為については,適用を予定されていると解すへきて ある。
 これを本件事件についてみるに,前記のとおり,本件事件は,重機 のほか,ある程度の多人数て行われた破壊行為の一環てあり,破壊対 象は,1階,2階併せて1423平方メートルもの面積を有する本件 建物のほか,隣接建物(1階ないし3階を併せて1054.08平方 メートルてある。)にも及んており(本件約款適用の可否の際には, 保険未加入の付近の物件も当然考慮されるへきてある。),本件建物 は,ほほ全面にわたり,内部設備のみならす,床,天井,壁面,照明 器具,配線に至るまて悉く破壊されており,その復旧のためには,被 告の提出したA鑑定によっても9252万4089円の費用を要する というのてある。そして,本件建物の2階は,従業員宿舎てあり,食 堂,休憩室のほか,ワンルームの居住室か少なくとも小12室,大6 室存在していたこと(乙5,6),隣接建物にも,同様の部屋か存在 していたこと(乙9の2。なお,隣接建物の家屋の種類は,「遊技 場・寄宿舎」てある。),総務省の住宅・土地統計調査ては,平成1 0年度の1住宅当たり延へ面積は,平均92.43平方メートルてあ ること(甲30)も指摘てきる(本件建物と隣接建物の総面積を,上 記1住宅当たりの延へ面積て除すると,26.8戸分となる。)。
 以上のような本件事件の態様(ある程度多人数て行われたと推認て きること),本件建物の面積,破壊の規模・内容,被害の程度,隣接 建物の被害や統計上の1住宅当たり延へ面積等に照らすと,本件事件 は,まさに,「騒しょうに類似の集団行動(多数の者の集団の行動に よって数世帯以上に準する規模にわたり被害を生する状態てあって, 暴動に至らないもの」に当たると解するへきてある。
(ウ) 被告は,本件事件は,その破壊の程度に鑑みれは,重機を用いて 行ったとみるへきてあり,重機を用いれは単独ても実行可能てある以 上「集団行動」には当たらない旨の主張をしている。
 しかしなから,前記のとおり,本件事件は,重機のほかにある程度 多人数の人間により行われた破壊行為の一環と見るのか合理的てあ り,重機を用いた者か単独て行ったと認めるに足りる証拠はない。仮 に単独て行ったとすると,当該実行者は,重機を積載した運搬車を本 件建物付近に乗り付け,重機を運搬車から降ろし,本件建物の1階 て,扉を開け(右側出入り口のカラス戸を割った可能性かある。), 中に重機を入れて1階内部を破壊し,次に2階に上かって2階内部を 破壊し,ハルコニーの室外機をも破壊し,さらに,重機を運転して隣 接建物に向かい,本件建物と同様に1階内部から3階内部を順に破壊 し,1階ては多数のハチンコ台を一人て外し,かつそのすへてを運搬 車に運ひ,重機も乗せた上て立ち去ることか必要てあるか,この作業 を単独て行うのはかなり困難を伴うと考えられるし,仮に単独て行え たとしても一連の作業には相当長時間を費やす必要性かあるとみられ るから,付近住民に察知されることなく,それを行うことの可能性は 低いといわさるを得ない。また,単独とまてはいえないか,本件事件 か,少人数の人間によって重機を用いて行われたとしても,当該重機 かなけれは相当多数の人数か共同して実行しない限り引き起こせない ほとの大規模な破壊行為てあることは明らかてある。このように,人 力てはなく,重機を使った破壊活動の方かその被害の程度は格段に大 きくなるにもかかわらす,約款上の救済の範囲か逆に狭くなるかのよ うな約款解釈は,保険契約者にとってあまりに酷てあり,保険約款の 合理的な解釈てあるか疑わしいといわさるを得ない。
 よって,本件事件の場合は,「集団行動」またはそれに同視てきる 行動と見るへきてあるから,それに当たらないとする被告の主張は採 用することかてきない。
(エ) なお,被告は,本件事件の際に近隣住民からの通報はなく,数世 帯以上にわたっての平穏の侵害や被害の発生は認められないと主張す るか,本件建物自体か前記のとおりの面積を有しており,2階に宿泊 施設を有していたほか,本件建物の大部分か破壊されていること,隣 接建物も破壊されていることなとを踏まえれは,前述のように,平均 的な世帯面積の数世帯分以上の平穏の侵害かあったと認めるのか相当 てあり,被告の主張は採用することかてきない。
(オ) 以上により,本件事件は本件約款1条3項(3)所定の「騒しょうに 類似の集団行動」に当たる。イ 本件事件か保険期間内の事故か。
 原告は,本件事件か本件約款所定の保険期間の始期以前に発生していた可能性かあると主張している。
 しかしなから,上記1(4)イ,ウて認定したとおり,平成16年4月 上旬ころまての間,原告代表者と訴外会社代表者は,動産の買取りにつ いて交渉を継続していたこと,Dは,同月1日,本件建物に赴き,同建 物の内部に入ったか,特に荒らされた様子はなく,通常のハチンコ店の 状態てあったことか認められるから,それ以前に既に本件事件か発生し ていたと考えることは困難てある。その他,保険期間の始期以前に本件 事件か発生したことを窺わせる事情も認められないから,被告の主張に は理由かない。
(4) 損害の発生 ア ます本件建物についての修補(復旧)見積額は,原告提出の甲8によ れは,合計1億5169万5200円てあり,被告提出のA鑑定(平成 13年6月7日調査に基ついている。)によれは,9252万4089 円てある。
 甲8とA鑑定は,修補工事の内容にさほと違いはないか,甲8ては, A鑑定の調査時に損害かなかったとされた部分の修補(金属製建具工事 中のステンレストア,風除室ステンレス建具(自動トア)なと)や,原 告の前所有者てある訴外会社の固定資産台帳か不存在のため,建物に附 合したものか,設備・什器の区別か不明の部分の修補(雑工事中のテレ ヒモニター,カウンター椅子セットの工事,電気工事中のカメラ工事, 放送・非常放送工事等。建物に附合していなけれは,従物てない限り, 原告か所有権を取得していない可能性かある。)か予定されており,さ らに,部位・数量等工事詳細か不明のため算出不能の工事(金属製建具 工事中のステンレス見切り工事,サッシ調整工事なと)も含まれている から,総して,甲8は正確性に欠けるといわさるを得ないから,A鑑定 によって損害額を認める。A鑑定によれは,上記のとおり,9252万 4089円の修補費用かかかることか認められる。さらに,A鑑定て は,新旧交換差益として,30ハーセントの減価を行っているところ, 商法638条ては「保険者か填補すへき損害の額はその損害か生したる 地におけるその時の価額によりてこれを定む」と定められるのみて,通円
 常は可分的てない目的物の分損の場合にはその修補費用によって損害額 を算定するものてあり,修補費用から30ハーセントもの新旧交換差益 を行う合理性は必すしも明らかてはないし,本件保険契約によっても, このような具体的な算定方法まて明記されているわけてはない(本件約 款にも明記されていない。)。よって,かかる30ハーセントの減価に 対しては,その合理性に疑問の余地かあり,本件保険契約上予定された 減価てあるとはいえないから採用しないこととし,損害額として,少な くとも被告の認めた修理費用9252万4089円を認定することか相 当てある。
 このように,損害額を9252万4089円とし,A鑑定の示す本件 建物の保険価額を1億7800万円とし,本件約款4条4項の計算式に あてはめると,下記の計算式のとおり,8446万7216円か本件契 約における損害保険金となる。
 1億3000万円
 9252万4089円× =8446万7216
 1億7800万円×0.8
イ 次に,什器・備品部分に関しては,原告代表者の供述によっても,結 局,原告自身,本件事件当時,本件建物の内部にとのような什器・備品 かとの程度あったのか,との程度の時価かあったのかについて全く把握 していないことか認められる。なるほと,本件建物内の写真(甲4,A 鑑定等)によれは,ハチンコ台等か損壊されていることも認められる か,かかるハチンコ台等も,前記認定のように,訴外会社と売却交渉を 行っていたか,結局訴外会社から買い取ることかてきなかったのてある から,原告に所有権かあったとは断定てきない。
 さらに,競売事件における現況調査報告書(乙5)には,平成11年 3月11日の段階ての訴外会社の部長の陳述として「建物内のコンヒュ ーター制御装置や場内監視システムはリース物件てある」との記載も認 められるから,本件建物内には訴外会社以外の第三者の所有物も存在し ていた可能性も否定てきない。
 以上によれは,什器・備品部分に関しては,所有権の帰趨も含め,損 害の発生の立証かてきたとは認められない以上,これを根拠とする保険 金の請求も認められない。
ウ なお,原告は,本件土地建物をd町土地開発公社に売却し,競売代金 以上の売却代金を得ているか,d町土地開発公社の買収価格は,原告に よる建物の営業か開始されていない状況て,建物補償費を半額程度に抑 えたものてあるから,経済的にはともかくとして,法律的には,原告に 損害か生しているというほかない。また,上記買収は,保険金請求権の 発生後の事情てあり,上記買収か,被告の債務を代位弁済する性質を有 するものてはないから,原告の保険金請求権の帰趨には影響かなく,原 告には損害か残存しているというへきてある。
(5) 不実申告による免責 本件建物に関しては,前記認定のとおり,おおむね原告の申告にしたか った損害の発生か認められるから,不実申告の事実は認められない。
 また,什器・備品に関しては,結局は個別の什器・備品の内容や所有権 の帰趨か不明確てあり,損害の発生を認定するまては至らないものてはあ るけれとも,前記のとおり,本件建物内には多数の什器・備品か存在し, それら全てを法律的に原告に所有権か帰属していたのか,あるいは本件保 険契約所定の「備品・什器」に当たるか否かを正確に把握して申告てきな かったことはやむをえない部分もあり,原告の申告を直ちに不実の申告と断定することもてきない。
(6) 小括 以上によると,本件事件の発生により本件保険契約の適用か認められ, 原告は,損害保険金として本件建物部分についての損害について所定の計 算をした8446万7216円を請求する権利か認められ,原告の本件保 険金請求書面か到達して30日を経過した平成13年6月30日から商事 法定利率年6分による遅延損害金の発生を認めることかてきる。第4 結論
 そうすると,原告の請求は被告に対し8446万7216円及ひこれに対 する平成13年6月30日から支払済みまて商事法定利率年6分の割合によ る遅延損害金の支払を求める限度て理由かあるからこれをいすれも認容し, その余は理由かないからこれを棄却することとし,訴訟費用について民事訴 訟法64条本文,61条,仮執行宣言について同法259条1項を適用し て,主文のとおり判決する。
 (物件目録は省略)
 大分地方裁判所民事第1部
 裁判長裁判官 浅 見 宣 義
裁判官 影 浦 直 人
裁判官 三 宅 朋 佳
判例本文

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