主文
被告人を懲役4年に処する。
未決勾留日数中60日をその刑に算入する。
 理 由
(罪となるべき事実) 被告人は,平成15年4月12日午前2時30分ころ,新潟県a市b付近道路において,運 転開始前に飲んだ酒の影響により,意識が朦朧とし前方注視及び運転操作が困難な状態 で,普通乗用自動車を時速約50から60キロメートルで走行させ,もって,アルコールの影 響により正常な運転が困難な状態で自車を走行させたことにより,そのころ,同市c付近道 路において仮眠状態に陥り,折から進路前方の信号機により交通整理が行われている交 差点の停止線手前で赤色灯火信号に従い停止中のA(当時52歳)運転の普通貨物自動 車の後部に自車前部を衝突させ,よって,同人に頸椎骨折の傷害を負わせ,即時同所に おいて,同人を同傷害により死亡させたものである。(証拠の標目)
 略
(法令の適用) 被告人の判示所為は刑法208条の2第1項前段に該当するので,その所定刑期の範囲 内で被告人を懲役4年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中60日をその刑に算 入し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこと とする。(量刑の理由) 本件は,被告人が運転開始前に多量に飲酒し,アルコールの影響により正常な運転が 困難な状態で普通乗用自動車を走行させた上,仮眠状態に陥り,折から進路前方で赤色 灯火信号に従い停止中の被害者運転車両の後部に自車前部を衝突させ,よって,同人に 頸椎骨折の傷害を負わせて死亡させたという危険運転致死の事案である。
 被告人は,前日の夕方から,勤務先の新入社員歓迎会やその後の2次会,3次会に出 席し,さらに,スナックに出掛けて合計約6時間以上の間にビールや水割りのウィスキー及 び焼酎を相当多量に飲酒し,その後駐車場に駐車しておいた自車を代行運転してもらって 自宅に戻り,その際一人で満足に歩くことができないほどに酩酊していたにもかかわらず, 代行運転の運転手から自車の鍵を受け取ると,その運転手から運転しないように注意され たにもかかわらず,その注意を無視し,自己がアルコールの影響で正常な運転が困難で あることを認識しながら直前まで飲酒していたスナックに向けて運転を開始し,その後も自 己の運転がアルコールの影響で正常でないことを認識しながら運転を継続して本件事故を 惹起したものであり,本件は正に起こるべくして起きた交通人身事故であって,被告人が本 件危険運転の犯行に及んだ動機や経緯に酌量の余地は全くない。 被告人が,本件犯行当時,相当程度酒に酔っていたことは,本件後,約2時間後に行わ れた飲酒検知において,被告人の呼気から1リットルにつき約0・8ミリグラムという高濃度 のアルコールが検出されたこと等に照らしても明らかであり,運転の途中で交差点を左折 した際,ハンドル操作が上手くできず,大きくふくらませてしまったことや,その後間もなく意 識が朦朧とし前方注視が困難な状態となり,自己がアルコールの影響で正常に運転でき ないことを十分に認識しながら,早く目的地に着きたいなどと考えて加速しながら運転を継 続し,その挙げ句に仮眠状態に陥り,進路前方の交差点で信号待ちのため停止中の被害 者運転車両に気付かず,時速約95ないし115キロメートルの高速度で追突して本件事故 を惹起したもので,余りにも無謀で危険極まりない運転というほかなく,その犯行態様は極 めて悪質である。 被害者は,本件被害当時,灯火を点灯し,赤色灯火信号に従って自車を停止させていた もので,何らの落ち度がなく,被告人の本件危険運転により,52歳という未だ働き盛りの 年齢で突然その尊い生命を絶たれたもので,その無念さは察するに余りあり,また,一家 の大黒柱を本件により奪われた被害者の遺族の悲しみは深く,被害感情が厳しいのは誠 に当然であり,本件犯行により発生した結果は極めて重大である。 以上の犯情に加え,被告人は,これまでにも飲酒して自動車を運転したことが数回あるこ となどを自認しており,被告人の道路交通法規に対する規範意識は鈍磨していたと言わざ るを得ないこと,本件は,その事案の悪質性と重大性から一般予防の必要性が非常に高 いことなどを考慮すると,被告人の刑事責任は重大である。 他方,被告人は,事実を素直に認めて本件を深く反省し,今後は酒を断つことを誓ってい ること,被告人は,両親と被害者の遺族に対し謝罪に訪れるなどの誠意を示しており,被 害者の遺族に対し,任意保険から5400万円余りの損害賠償金が支払われて示談が成立していること,被告人は,本件で勤務先を懲戒解雇されるなどの厳しい社会的制裁を受け ていること,これまでに道路交通法違反も含めて前科前歴はなく,今回初めて身柄拘束さ れた上で公判請求されたもので,未だ22歳と若年であり,更生の余地が大きいこと,被告 人の両親が今後の被告人に対する一層の指導監督を約束していることなど被告人のため に斟酌すべき諸事情も認められるので,これら諸情状を併せ考慮し,被告人を主文掲記の 刑に処することにした。 よって,主文のとおり判決する。 平成15年9月9日
新潟地方裁判所刑事部 裁判長裁判官 榊 五 十 雄
裁判官 三村 三緒 裁判官 入江 克明
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