主文 被告人を懲役4年に処する。
 理由
(罪となるべき事実) 被告人は,
第1 平成12年5月15日午前8時23分ころ,道路標識によりその最高速度が 80キロメートル毎時と指定されている兵庫県赤穂市A所在の山陽自動車道上 り87.9キロポスト付近道路において,その最高速度を77キロメートル超 える157キロメートル毎時の速度で普通乗用自動車を運転して進行し,第2 同月24日午前1時30分ころ,岡山県玉野市B町C番地所在の甲方2階乙 の居室において,強いて同女を姦淫しようと企て,いきなり同居室の電気を消 した上,同女に対し,「騒ぐな。」,「殺すぞ。」と語気鋭く申し向けて脅迫する とともに,その上に馬乗りとなり,その口を手でふさぐなどの暴行を加え,そ の反抗を抑圧して強いて同女を姦淫し,その際,前記姦淫により,同女に対し, 加療約1週間を要する陰唇後連部皮内傷の傷害を負わせ,第3 同年6月11日午前5時22分ころ,道路標識によりその最高速度が80キ ロメートル毎時と指定されている前記第1記載の場所付近の道路において,そ の最高速度を55キロメートル超える135キロメートル毎時の速度で普通乗 用自動車を運転して進行し,第4 車で走行中の女性に因縁を付け,自動車内に監禁し,人目につかない場所ま で連行して強いて姦淫しようと企て,同年8月30日午前1時30分ころ,岡 山市D所在の丙方付近路上において,丁が運転する普通乗用自動車(軽四)の 進路をふさぐように自己の運転する自動車を停めて,同女の運転する自動車を 停車させ,同女に対し,「なんちゅう運転しょうるんなら。」などと因縁を付 け,同女が運転席の窓ガラスを開けるや,同車のドアロックを開錠し,無理矢 理同女を同車の助手席に押しやって運転席に乗り込み,直ちに同所から同車を発進させて疾走し,同日午前2時ころ,同市E所在の株式会社F店南東約80 0メートル先のG山山中の路上まで同女を連行し,同所に停車した同車内にお いて,同女に対し,「殺しちゃらあ。」などと怒号して脅迫するとともに,そ の首を両手で締め付けたり,車外に逃げ出した同女の髪をつかんでその顔面を 路面に打ち付けたり,仰向けにした同女の上半身の上に座り,体重をかけて尻 で押さえつけたり,同女を仰向けに押し倒して覆い被さるなどの暴行を加え, 同所付近路上において,その反抗を抑圧して強いて同女を姦淫し,その際,前 記暴行により,同女に加療約1週間を要する頚部・顔面擦過創,右肋骨・右肩 打撲等の傷害を負わせるとともに,その後,さらに,同車を同市H所在のI店 前まで疾走させ,同日午前2時40分ころ,同所において,同女が隙を見て同 車から逃げ出すまでの間,同女を同車内又は同車の周辺から脱出することを困 難にして同女を不法に監禁したものである。
 (証拠の標目)
省略 (累犯前科)
被告人は,(1)平成7年5月11日岡山地方裁判所で暴力行為等処罰に関する法 律違反罪により懲役1年2月に処せられ,平成8年8月12日その刑の執行を受け 終わり,(2)その後犯した常習累犯窃盗罪により平成10年8月28日広島高等裁 判所岡山支部で懲役2年8月に処せられ,平成12年4月18日その刑の執行を受 け終わったものであって,これらの事実は検察事務官作成の前科調書(104)及 び(2)の前科に係る判決書謄本(114,115)によって認める。
 (法令の適用)被告人の判示第1及び第3の各所為はいずれも平成13年法律第51号(道路交 通法の一部を改正する法律)附則9条により同法による改正前の道路交通法118 条1項2号,22条1項,4条1項,同法施行令1条の2第1項に該当し,判示第2の所為は刑法181条(177条前段)に,判示第4の所為のうち,強姦致傷の 点は同法181条(177条前段)に,監禁の点は同法220条にそれぞれ該当す るところ,判示第4の強姦致傷と監禁は1個の行為が2個の罪名に触れる場合であ るから,同法54条1項前段,10条により1罪として重い強姦致傷罪の刑で処断 することとし,各所定刑中判示第1及び第3の各罪についてはいずれも懲役刑を, 判示第2及び第4の各罪についてはいずれも有期懲役刑をそれぞれ選択し,前記の 各前科があるので,判示第1ないし第4の各罪について,いずれも同法59条,5 6条1項,57条により3犯の加重をし(ただし判示第2及び第4の各罪について は同法14条の制限に従う。),以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法 47条本文,10条により刑及び犯情の最も重い判示第4の罪の刑に同法14条の 制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役4年に処し,訴訟費用は, 刑訴法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由)本件は,強姦致傷1件,強姦致傷と監禁1件,道路交通法違反(速度制限違反) 2件の事案である。まず,量刑上最も重い判示第4の罪についてみるに,被告人は,面識のない被害 者に対し,何の落ち度もないにもかかわらず因縁を付け,突然,同女の車に無理矢 理乗り込み,同車を勝手に運転して疾走させて同女を監禁し,深夜,人気のない山 中に連れ込み,同女の顔面を地面に打ち付けたり,意識がもうろうとするほど首を 締め付けたりし,下半身の着衣を脱がされたまま必死で逃げようとしていた被害者 を追いかけて姦淫し,膣内で射精に及んだもので,自らの欲望の赴くまま,ほしい ままに敢行した犯行の態様は粗暴かつ執拗である。被害者は,判示の頚部・顔面擦 過傷等の傷害を負った上,精神的にも深く傷つき,被告人の現在の状況を知っても なお,激しい処罰感情を有している。しかるに,被害弁償はなく,その見込みもな い。判示第2の罪についても,被告人は,深夜,面識のない被害者の居室内で,就寝中の同女に対し襲いかかり,陰茎をくわえさせたり,乳首をかんだり,陰部に指を 挿入した後,姦淫に及んで膣内で射精しており,犯行態様は悪質である。これによ り,被害者は加療約1週間を要する判示傷害を負っており,その精神に与えた衝撃 も大きく,同女も被告人の現状を知ってもなお,厳重な処罰を望んでいる。しかる に,被害弁償も,その見込みもないことは同様である。判示第1及び第3の速度制限違反についても,制限速度を毎時55キロないし7 7キロ超過するものである上,常習的に敢行していたことも窺われる。これらに加え,被告人には前記累犯前科を含む前科が8犯あり,そのうち懲役前 科が7犯,粗暴犯の前科が4犯あることからすると,被告人の犯情は悪く,その刑 責は重いといわざるをえない。しかしながら,被告人は,判示第4の罪を敢行した後,自動車で逃走中,自損事 故を起こし,自動車が大破して自らも頭部に重傷を負って生死の境をさまよい,後 に一命を取りとめたものの,判示第2及び第4の各犯行の記憶を全く失っているほ か,知能程度が一時は6歳ないし7歳程度まで低下し,後遺症である低血圧症や突 然の意識障害に見舞われることもあり,両親の生活援助が不可欠の状況になってお り,その性格は別人のように変化して穏やかとなり,今後,犯行以前のような粗暴 で犯罪傾向の高い人格,行動に戻ることはなくなっている。そして,母親が公判廷 に出頭し,今後の監護と援助を約束している。以上の点,ことに被告人の現在の心身の状況等を考慮し,被告人に対しては,主 文の刑に止めるのが相当であると判断した。平成15年3月12日 岡山地方裁判所第2刑事部
裁判長裁判官 榎 本 巧
裁判官 中 川 綾 子
裁判官 足 立 堅 太
判例本文

この判例ページのURL

LINEで送る
Pocket