平成15年2月26日判決言渡 平成13年(レ)第34号 損害賠償請求事件(原審・佐倉簡易裁判所平成12年 (ハ)第573号)判 決 主 文
 1 原判決を次のとおり変更する。
(1) 被控訴人は,控訴人に対し,10万4035円を支払え。
(2) 控訴人のその余の請求を棄却する。
 2 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを2分し,その1を控訴人 の負担とし,その余を被控訴人の負担とする。 事実
及 び 理 由第1 申立て
1 原判決を取り消す。
 2 被控訴人は,控訴人に対し,20万円を支払え。
 3 訴訟費用は,第1,2審を通じて被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要 本件は,控訴人が,控訴人代表者が控訴人所有の貨物自動車を運転して被控 訴人の管理に係る市道を通過した際,私有地か ら市道上に張り出していた樹木 の枝が上記貨物自動車の車体に接触してその車体に擦過痕が生じ,車体修理費用2 5万672 5円の損害を被った旨主張して,上記市道を管理する被控訴人に対 し,国家賠償法2条1項に基づき,上記貨物自動車の車体 修理費用相当の損害 金25万6725円の一部である20万円の支払を請求した事案である。
 1 前提事実(当事者間に争いのない事実は証拠を掲記しない。)(1) 控訴人は,事業用普通貨物自動車(千葉○○○○○○○。以下「本件車 両」という。)を所有している。 被控訴人は,別紙1記載の市道甲号線(以下「本件道路」という。)を管 理している。(2) 控訴人代表者は,平成12年5月下旬ころ,本件車両を運転して,別紙1 記載の市道乙号線を・方向から・方向に進行 し,別紙1記載のA宅(千葉 県八街市○○○○○番地。以下「A宅」という。)付近のT字路に至り,同T字路 を左折し て,市道乙号線から本件道路に進入し,A宅前を通過して・方向 に進行した(甲9ないし11,15,24,当審における 控訴人代表者尋問 の結果〔第1,2回。以下「控訴人代表者」と表示する。〕。なお,乙3の撮影位 置図参照。)。(3) 本件車両は,いわゆるパネルバン型(トラックの荷台が箱型になったも の)で,幅2.19メートル,高さ3.43メー トル,長さ8.35メート ルの4トントラック(その側面の形状は概ね別紙2のとおり。)であり,車体のう ち箱型の荷台 部分はアルミ製であった(甲3,7,控訴人代表者)。 本件道路は,幅員約4.5メートルの市道であり,両側に幅約0.5メー トルの側溝があり,側溝のうち,別紙図面1の 市道乙号線と本件道路との交 差点から・に向かって右側(以下,別紙図面1の市道乙号線と本件道路との交差点 から・に向 かって右側を単に「右側」と,左側を単に「左側」という。)の 側溝には,一般車両の重量に耐えうる蓋が被されており, 路肩として車両の 通行の用に供されていた。これに対し,左側の側溝には,蓋はされていなかった (乙2,4,7の1,7 の2ないし5の各1,2,8の1ないし4)。そし て,本件道路の通行が許される車両の幅,高さ,長さの最高限度は,そ れぞ れ,幅2.5メートル,高さ3.8メートル,長さ12メートルであり,本件車両 は本件道路の通行を許されていた。 また,A宅敷地内には本件道路左側に沿って樹木が植えられていたが(以 下「本件樹木」という。),本件樹木の枝は, 道路面から植木ばさみ(刈込 ばさみ)を使って手の届く高さまでは,Aの妻によって平成10年ころに剪定され ているが, それより上にあるものについては,平成9年にAにより剪定され てから平成12年9月27日にA及びその家人により剪定 されるまでの間, 剪定はされていなかった(乙14,24,証人A,控訴人代表者)。(4) 控訴人は,前記(2)の本件道路通過の際,A宅敷地内から本件道路上に張り 出していた樹木の枝が本件車両に接触したた めに,本件車両車体に擦過痕が 生じたと主張(以下,原告主張の上記擦過痕を「本件損傷」といい,本件損傷の原因となっ た原告主張の事故を「本件事故」という。)して,平成12年6月20日,Aを相手方として,本件損傷による損害賠償を 求める調停(佐倉簡易裁判所平成12年・第128号。以下「本件調停」という。)を申し立て,同年9月13日,Aとの 間で,1Aが控訴人に対し本件事故に関する損害賠償金として5万円を支払うこと,2Aが控訴人に対し同月末日限り,本 件道路上に張り出した本件樹木の枝を剪定することを確約する旨の内容の調停を成立させた(以下,本件調停において成立 した条項を「本件調停条項」という。甲21,乙9)。
(5) Aは,本件調停条項に従い,控訴人に対して,本件事故の損害賠償金とし て5万円を支払い,かつ,平成12年9月27 日,本件樹木の枝を剪定し た。2 争点 本件の争点は,本件損傷は,本件車両が本件道路を通過するに際し本件樹木 の枝と接触して生じたものか(争点1),被控 訴人に本件道路の管理の瑕疵が あったか(争点2),被控訴人の被った損害額(争点3)及び過失相殺(争点4) である。(1) 争点1(本件損傷は,本件車両が本件道路を通過するに際し本件樹木の枝 に接触して生じたものか。)ア 控訴人の主張 上記1,(2)記載の前提事実のとおり,控訴人代表者は,平成12年5月 下旬ころ,本件車両を運転し,市道乙号線か ら本件道路に進入したとこ ろ,反対方向から普通乗用自動車が2台続いて進行してきたため,市道乙号線と本 件道路が交 差するA宅の角(以下「A宅角」という。)から20メートル ほど進行した位置で,対向車との衝突を避けるため,本件 車両を左側のA 宅側に寄せて対向車とすれ違い進行させた。その際,本件車両左側面と本件道路に 張り出していた本件樹 木の枝が接触し,箱型の荷台部分のおおよそ別紙2 記載の位置に本件損傷が生じたものである。イ 被控訴人の主張
・ 控訴人の主張記載の事実は否認する。
 ・ 本件道路側に張り出していた本件樹木の枝は,道路面から3.5メー トルほどの高さにある。このことは,Aが本件 調停条項に従い,平成1 2年9月27日に本件樹木の枝を剪定した際,A宅角から10メートルほどの範囲 内に,地上 約3.5メートルの高さで約1メートル本件道路上に枝がは み出ているところが2,3か所あったが,人や車の通行に 特別な支障が ない状況であったことに照らし明らかである。 ところで,本件損傷の位置は,道路面から3.15メートル以下の高 さであるから,本件樹木の枝の高さとは一致せ ず,したがって,本件車両 は,本件道路に張り出していた本件樹木との接触により本件損傷を被ったものでは ない。 ・ 控訴人は,本件事故の日時,場所等について,主張を変遷させてお り,また,本件車両が本件損傷を受けたとする前 後に,被控訴人に対 し,本件樹木の枝を剪定するよう要求する電話をかけていながら,本件損傷を受け たという日の後 に電話をかけた際にその事実を被控訴人に告げていない こと,さらに,本件損傷の写真とされる甲2の3ないし8と甲 12の1 とを比べると,ボディデザインの凹凸のつぶれが前者の写真にはないので,後者の 写真に写されている凹凸の つぶれは前者の写真が撮影された後に生じた ものであると推測されること,控訴人主張のように本件車両が本件樹木の 枝と接触しながら低速で走り抜けたとすれば,本件車両は,引っ掻き傷のような 損傷を被るはずであるのに,実際には 横から押されたような本件損傷を 被っていることなどを考慮すると,本件車両が本件樹木の枝と接触して本件損傷を 被 った旨の控訴人の主張には重大な疑念が存する。(2) 争点2(被控訴人に本件道路の管理の瑕疵があったか。)
ア 控訴人の主張 本件事故発生当時,本件樹木の枝は,本件道路の左側沿いにA宅角から 30メートルほど進行したところまでの間,道 路面から約1メートルない し約4メートルの高さにおいて,左側側溝の右端から約1メートルないし約2メー トル本件道 路に張り出していた。本件道路は,以上のとおり,本件事故発 生当時,本件樹木の枝が本件道路に張り出していたため, 本件車両が対向車とすれ違い進行する場合には,本件樹木の枝と接触し,車体に損傷を受ける危険性が極めて高い状態に あった。
 このように,本件樹木の枝は,本件道路の交通の安全を妨害していたところ,被控訴人は,控訴人から,平成12年5 月12日及び同月23日に電話で本件樹木の枝の剪定を要請され,本件樹木の枝により本件道路の交通の安全が妨害され ているのを知ったのであるから,本件樹木の所有者であるAを説得して,本件樹木の枝の剪定をさせるか,それができな いのであれば,標識を設置したり,職員を配置するなどして,本件道路の通行車両に注意喚起をし,もって,本件樹木の 枝と通行車両の接触事故を防止すべきであったにもかかわらず,何らの措置も講じなかった。
 以上を総合すると,本件道路は,道路として通常有すべき安全性を欠いていたというべきであり,被控訴人には,本件 道路の管理の瑕疵が認められる。
イ 被控訴人の主張 本件事故発生当時,本件樹木の枝は,A宅角から約10メートル進行し た地点までの範囲において,道路面から3.5 メートルほどの高さで,左 側側溝の右端から約1メートル本件道路側に張り出していた場所が2,3か所ある にすぎな い。また,控訴人代表者は,本件事故発生当時,対向車と譲り 合うなどして,本件道路側に張り出していた本件樹木の枝 との接触を避け て本件車両を進行させることは十分に可能であった。したがって,本件道路が対向 車とすれ違うことが困 難な状況にあったということはできない。
 なお,被控訴人担当者は,控訴人から,平成12年5月12日に本件樹 木の枝を剪定するよう要請されたため,その 2,3日後に,Aに対し, 本件樹木の剪定を依頼し,さらに,同月23日にも本件樹木の枝を剪定するよう要 請されたの で,同日,現場に赴き本件樹木の枝が本件道路に張り出した状 態を確認したが,車両が本件道路を通行するのに障害はな いと判断したも のである。 そもそも,被控訴人は,幹線市町村道以外の一般市町村道である本件道 路について,すべての車両がすれ違い進行でき るように道路整備しなけれ ばならない義務はない。 したがって,本件道路が,道路として通常有すべき安全性を欠いていた ということはできず,被控訴人に本件道路の管 理の瑕疵は認められない。 (3) 争点3(控訴人の被った損害額)ア 控訴人の主張 控訴人の損害,すなわち,本件損傷による本件車両修理費用は,25万 6725円が相当である。イ 被控訴人の認否
 控訴人の主張記載の事実は否認する。
(4) 争点4(過失相殺)
ア 被控訴人の主張 控訴人の損害額を算定するに当たっては,控訴人には,1控訴人代表者 が本件道路に進入せず迂回することができたの にもかかわらず,あえて本 件道路に進入したこと,2控訴人代表者が本件道路に進入する前,T字路交差点に あるカーブ ミラーで対向車の存在を確認することができたのであるから, 本件道路に進入せずに対向車の通過を待つべきであったの にもかかわらず これをしなかったこと,3控訴人代表者が対向車とすれ違う際,本件車両を一時停 止させて対向車の通過 を待つべきであったのにもかかわらずこれをしなか ったこと,4本件道路には対向車が退避できる場所があるから,退避 場所 に対向車を誘導し危険を回避すべきであったのにこれをしなかったこと,5本件事 故が発生する前にAに本件樹木の 枝を切除するように申し込むべきであっ たのに,これを怠ったことなどの過失が認められるから,過失相殺をすべ きである。イ 控訴人の認否 被控訴人の主張記載の事実は否認し,主張は争う。
 第3 争点に対する判断
 1 証拠(甲1,2の1ないし8,3,4,7ないし11,12の1,2,1 3,14の1,2,15ないし18,19の1な いし9,20,21,22及 び23の各1,2,24,乙2ないし4,5の1,2,6,7の1,2,8の1ないし4,9, 10,11の1,2,12ないし22,23の1,2,24ない し27,証人X,同A,控訴人代表者)及び弁論の全趣旨に よれば,以下の事 実が認められる。 (1)ア 控訴人代表者は,平成12年4月中旬ころから,本件車両を運転して本 件道路を通行するようになったが,本件樹木の 枝が本件道路に張り出して いて,本件道路の通行の障害となっていることを知り,同年5月12日,本件道路 を管理して いる被控訴人道路管理課に電話をかけ,同課担当者Y(以下 「Y」という。)に対し,本件樹木の枝が本件道路の通行の 障害となって いる旨説明し,本件樹木の枝の本件道路に張り出した部分の剪定を依頼した。これ を受けて,Yは,その 2,3日後,A宅に電話をかけ,その家人に対 し,本件樹木の枝を剪定してほしい旨,その趣旨をAに伝えてほしい旨依 頼した。 イ 控訴人代表者は,平成12年5月23日,本件樹木の枝の剪定がなされ ないので,再度,被控訴人道路管理課に電話を かけ,Yに対し,本件樹木 の枝の剪定を依頼した。これを受けて,Yは,同日,A宅に電話をかけたがA及び その家人は 不在であった。 そこで,被控訴人道路管理課担当者Xは,同日,本件道路に赴き,本件 樹木の枝が本件道路に張り出した状態を目測 し,本件樹木の枝が,本件 道路の道路面から約3.5メートルの高さで本件道路左側端から約1メートル本件 道路上には み出ている場所が2,3か所あると判断した。Xは,道路面か ら約2メートルの高さにおいて,本件道路の中ほどまで本 件樹木の枝が覆 い被さっている状態の場合には本件道路の通行に支障がでるが,そこまで出ていな ければ通行に支障が生 じることはないと考え,本件樹木の枝がはみ出して いる程度が上記の程度に留まることから,既にAにより本件樹木の剪 定が され,本件樹木の枝が本件道路の通行の障害となることはなくなったと速断し,そ れ以上に何らの措置も講じないで 引き返した。 (2)ア 控訴人代表者は,その後の平成12年5月下旬ころ,本件車両を運転し てA宅角を左折し,市道乙号線から本件道路に 進入したところ,A宅角か ら約10メートルの地点で本件道路の右側に軽貨物自動車が駐車されているのを確 認した。 控訴人代表者は,その際,上記軽貨物自動車の左側を,本件車両と同じ 方向に自転車が1台進行していたので,この自 転車が上記軽貨物自動車の 脇を通り過ぎるのを待って,本件車両を進行させたところ,反対方向から,普通乗 用自動車が 2台続いて,時速約5キロメートルないし約10キロメートル のスピードで進行してきた。 イ 控訴人代表者は,対向車の運転者に対して,対向車を後退させて本件車 両に道を譲るように求めることにためらいを感 じ,また,本件車両を後退 させて対向車に道を譲ることも後続車が来る可能性があってためらわれたため,本 件車両が本 件樹木の枝に接触する可能性があることを認識していたもの の,対向車との接触を避けるために,A宅角から約20メー トル進行した ところにおいて,本件車両を,本件道路左側のA宅側に寄せて,低速で対向車とす れ違い進行させた。 その際,控訴人代表者は,本件車両の左側面に本件樹木の枝が強く接触 したとの感触を受けた。 ウ 控訴人代表者は,上記イの翌日,本件車両の車体を確認したところ,別 紙2のとおり本件車両の箱型荷台部分の左側面 の道路面からの高さ約2. 2メートルないし約3.15メートルのところに,今までなかった本件損傷が生じ ていること を発見した。 (3)ア 控訴人代表者は,その後も本件樹木の枝の剪定がされていないので,平 成12年6月2日,被控訴人道路管理課に電話 をかけ,同課担当者Zに対 し,本件樹木の枝が通行の障害になっている旨説明した。なお,控訴人代表者は, 本件樹木の 枝を剪定してもらい本件道路の安全な通行を確保することが第 一であると考え,本件事故のことをZに伝えなかった。 Yは,上記電話の内容を伝えられたので,同日,A宅に電話をかけ,再 度,Aの家人に対し,本件樹木の枝を剪定して ほしい旨,このことをAに 伝えてほしい旨依頼した。 イ さらに,控訴人代表者は,平成12年6月9日,被控訴人道路管理課に 電話をかけ,また,同月10日には,Aに直接 話すなどして,本件樹木の枝の剪定を依頼したが,何らの措置も講じられなかった。 ウ そこで,控訴人は,平成12年6月20日,前記第2,1,(4)記載の前 提事実のとおり,Aを相手方として佐倉簡易 裁判所に本件調停を申し立 て,同年9月13日,Aとの間で,1Aが控訴人に対し本件事故の損害賠償金とし て5万円を 支払うこと,2Aが控訴人に対し同月末日限り本件道路上に張 り出した本件樹木の枝を剪定することを確約する旨の内容 の調停を成立さ せた。 なお,控訴人は,本件調停を申し立てるに当たり,司法書士に依頼して 申立書を作成してもらったが,その際,本件事 故の内容を司法書士に十分 説明しなかったため,控訴人代表者が本件車両を運転して本件道路を通行するよう になった平 成12年4月中ころが本件事故の発生時期であると司法書士に 誤解され,その旨記載された申立書が作成された。 エ Aは,本件調停条項に従い,平成12年9月25日,本件樹木の枝を剪 定することとし,被控訴人道路管理課に対し, その協力を依頼した。 そこで,被控訴人道路管理課担当者Xは,同月27日,人の手の届かな い高さの枝を剪定するために重機(ショベルロ ーダ)を用意し,Xが重機 を運転し,Aが重機のバケットに乗って,A宅角から約25メートル進行したとこ ろまでの 間,本件樹木の道路面から約3.5メートルの高さの枝を鋸で 剪定した。なお,Aは,本件樹木の枝を,本件道路の左側 側溝付近の位置 で剪定しており,その付近の高さは上記のとおり約3.5メートルであるが,それ より先端の本件道路に 覆い被さっている部分の高さは,枝の垂れ下がり等 を考慮すると,剪定された部分の高さ約3.5メートルより低かった と推 認できる。
 2 前記第2,1記載の前提事実及び上記1記載の認定事実(以下「認定事実」 という。)を前提に判断する。(1) 争点1(本件損傷は,本件車両が本件道路を通過するに際し本件樹木の枝 に接触して生じたものか。)について 控訴人は,本件損傷は本件道路において,本件車両が本件樹木の枝と接触 したことにより生じたものであると主張し,被 控訴人はこれを否認するの で,この点について判断する。 ア 認定事実,殊に,1控訴人代表者は,平成12年5月下旬ころ,本件道 路において本件車両を対向車とすれ違い進行さ せた際,本件車両の左側面 に本件樹木の枝が強く接触したとの感触を受け,その翌日,本件車両の車体を確認 したとこ ろ,本件車両の箱型の荷台部分の左側面に今までなかった本件 損傷が生じていることを発見したこと,2控訴人代表者が 本件事故の発生 前から,被控訴人道路管理課担当者に対して,本件樹木の枝が本件道路に張り出し ており,本件車両の通 行の障害となっている旨訴え出ていたこと,3本件 樹木の枝については,平成10年にAの妻が植木ばさみ(刈込ばさ み) を使って手の届く高さまでは剪定したが,それ以上の高さについては,平成9年以 降剪定されていなかったこと,4 被控訴人道路管理課担当者Xが平成12 年5月23日当時目測したところによっても,本件樹木の枝は,少なくとも,道 路面から約3.5メートルの高さにおいて,約1メートル本件道路に張り出 している状態であったこと,しかも,本件樹 木の枝は平成12年9月27 日に概ね約3.5メートルの位置で剪定されたが,剪定された位置より先の部分 は,剪定さ れた部分の枝の高さよりもさらに低くなっていると推認される こと,5本件損傷は,別紙2のとおり,本件車両の箱型の 荷台部分の左側 面に地面と平行に長さ約35センチメートルないし約60センチメートルの数本の 筋が付いたものである が,これは,走行している本件車両の箱型の荷台部 分の左側面に数本の何らかの棒状のものが押し付けられたことにより 生じ た損傷であるということができ,本件車両の箱型の荷台部分が比較的柔らかい 素材であるアルミ製であることを考慮すると,本件車両が進行中に本件樹 木の枝と接触して生じたものであると考えても 矛盾しないことを考慮すれ ば,本件損傷は,本件車両が本件道路において対向車とすれ違い進行した際に,本 件道路に約 1メートル張り出していた本件樹木の枝と接触したために生じ たものであると認められる。 イ 上記アの認定に対し,被控訴人は,本件道路に張り出している本件樹木 の枝の高さが約3.5メートルであることを前 提として,本件車両の高さ がそれ以下であるから,本件車両が本件樹木の枝に接触したことにより本件損傷が生じるはず がない旨主張する。しかし,上記アで認定したとおり,本件樹 木の枝が本件道路部分に張り出している高さは,約3.5 メートルよりも 低いと推認できるから,この点での被控訴人の主張は,前提を欠き採用することが できない。 また,被控訴人は,控訴人が,本件事故の日時,場所について主張を変 遷させており,本件車両が本件樹木の枝と接触 して本件損傷を被った旨の 控訴人の主張には重大な疑念が存する旨主張する。確かに,控訴人は,本件調停を 申し立てる に当たり,本件事故発生の日を平成12年4月中ころと主張し ていたところ,本訴においてはそれが同年5月下旬ころと 主張して本件事 故発生の日についてその主張を変遷させていることが認められる。しかし,これ は,前記1,(3),ウの とおり,控訴人が本件調停を申し立てるに当たり, 申立書を作成してもらった司法書士に本件事故の内容を十分説明をし なか ったため,司法書士が本件事故発生の日を誤解して記載したものと認められるので あり,これを除くと,控訴人の主 張は,本件事故が同年5月下旬ころに発 生したということで一貫しているのであって,本件事故発生日に関する控訴人の 主張に上記のような変遷があるからといって,控訴人の本件事故発生に関す る主張に重大な疑念があるということはでき ない。また,本件事故は,本 件車両が本件道路を進行中に対向車とすれ違い,その結果,本件車両の箱型の荷台 の左側面 が本件樹木の枝と接触したというものであり,控訴人代表者が接 触した場所を正確に把握できなかったとしても無理から ぬ面があり,控訴 人代表者が,大筋として,A宅角から約20メートルの地点で本件車両が本件樹木 の枝に接触した旨供 述していることに照らすと,上記接触位置について控 訴人代表者の供述が多少変遷していることをもって,直ちに,控訴 人代表 者の供述が信用できないということはできない。したがって,この点での被控訴人 の主張は,採用することができ ない。 さらに,被控訴人は,控訴人が,本件事故発生後の平成12年6月2日 に,被控訴人道路管理課に電話をかけた際,本 件事故につき話をしなかっ たのは不自然であり,本件事故が発生した旨の控訴人の主張には重大な疑念が存す る旨主張す る。しかし,前記1,(3),アのとおり,控訴人代表者は,当 時,本件樹木の枝を剪定してもらい,本件道路の通行の安 全を確保するの が第一であると考え,被控訴人道路管理課のZにその旨を伝えなかったと認められ るから,この点での被 控訴人の主張は,採用することができない。 最後に,被控訴人は,最初に本件損傷を写したといわれる写真(甲2の 3ないし8)とその後に本件損傷を写したとい われる写真(甲12の1) を比べると,本件車両のボディデザインの凹凸のつぶれが前者になく,後者にある ので,後者 の写真に写されているボディデザインの凹凸のつぶれは,前者 の写真が撮影された後に生じたものである旨主張する。確 かに,前者の写 真には本件車両のボディデザインの凹凸のつぶれが明瞭には写っていないが,これ は,写真を撮影する際 の光の当たり加減や撮影の角度によるものであっ て,前者の写真にボディデザインの凹凸のつぶれが明瞭に写っていない か らといって,前者の写真撮影当時,ボディデザインの凹凸のつぶれがなかったと断 定することはできないのであり,し たがって,この点での被控訴人の主張 をもって,上記アの認定を覆すことはできないものである。その他,被控訴人は, 本件事故発生に関する控訴人の主張には疑問がある旨るる主張するが,認 定事実に照らし,いずれも採用することができ ない。(2) 争点2(被控訴人に本件道路の管理の瑕疵があったか。)について 控訴人は,被控訴人に本件道路の管理の瑕疵があったと主張し,被控訴人 はこれを争うので,この点について判断する。 ア 前記第2,1,(3)記載の前提事実のとおり,本件道路は,幅員約4.5 メートル(なお,路肩として通行可能な右側 側溝の蓋部分の幅約0.5メ ートルを含めると約5メートルである。)であることが認められ,これによれば, 本件道路 は,よほどの大型車でない限りすれ違って進行することが可能な 道路であるということができる。そして,本件道路に は,進入禁止や一 方通行等の標識が立てられている形跡がないこと(乙3,弁論の全趣旨)からすれ ば,道路管理者であ る被控訴人としては,本件道路につき,車両がすれ違 って進行することを当然に予定していたと認められる。 イ 前記第2,1,(3)記載の前提事実のとおり,本件道路は,その通行が許 される車両の幅,高さ,長さの最高限度は, それぞれ,幅2.5メートル,高さ3.8メートル,長さ12メートルであり,本件車両は,幅2.19メー トル,高さ 3.43メートル,長さ8.35メートルであるから,本件道 路の通行を当然に許されていたところ,上記(1)のとお り,本件事故当 時,本件道路の道路面から約3.5メートルよりも低い位置,すなわち,本件車両 を含めて本件道路を通 行することが許されていた車両に接触する位置に, 本件樹木の枝が左側側溝の右端から約1メートル本件道路に張り出し てい たことからすれば,本件道路は,本件車両のような車両が対向車とすれ違い進行す る場合,客観的にみて,本件樹木 の枝と接触する危険性が極めて高い状態 にあったということができる。 したがって,本件道路は,本件事故発生当時,本件樹木の枝が本件道路 に張り出していたため,本件車両が対向車とす れ違い進行する場合には, 本件樹木の枝と接触し,車体に損傷を受ける危険性が極めて高い状態にあり,道路 として通常 有すべき安全性を欠く状態になっていたと認められる。 ウ また,認定事実によれば,控訴人代表者は,本件事故が発生する前であ る平成12年5月12日及び同月23日,本件 道路を管理している被控訴 人道路管理課に電話をかけ,同課担当者Yに対し,本件樹木の枝が本件道路の通行 の障害とな っている旨説明し,本件樹木の枝の本件道路に張り出した部分 の剪定を依頼したというのであるから,被控訴人は,本件 道路及び本件樹 木の枝の状態を把握し,通行車両と本件樹木の枝との接触事故が発生する可能性を 予見して,直ちにAを 説得して本件樹木の枝を剪定させ,又は,直ちに本 件樹木の枝を剪定することが無理であれば,本件樹木の枝が張り出し てい る部分を通行禁止にするなどして車両が本件樹木の枝と接触する事故が発生するの を防止する措置を講じることが十 分可能であったということができる。し かしながら,認定事実によれば,被控訴人は,その道路管理課担当者であるYに おいて,Aの家人に本件樹木の枝の剪定を依頼したものの,それ以上の措置 を講じず,約半月間にわたり,車両が本件樹 木の枝に接触する危険性が高 い状態をそのままにして放置したものである。すなわち,その後,状況の把握のた め本件道 路に赴いた被控訴人道路管理課担当者Xは,目測により,既にA により本件道路に張り出した部分の本件樹木の枝は剪定 されたものであ り,本件樹木の枝は本件道路の通行の障害とはなっていないと速断し,それ以上の 措置は講じなかったも のである。 エ 以上のとおり,本件道路は,本件事故発生時において,道路として通常 有すべき安全性を欠くに至っており,本件道路 の管理につき瑕疵があった と認められるところ,被控訴人は,これを知りながら,約半月間にわたり,本件道 路を通行す る車両が本件樹木の枝と接触する事故を防止するための有効な 対策をとらなかったというべきであるから,本件道路の管 理の瑕疵に基づ き控訴人が被った損害を賠償する責任を免れるいわれはない。 オ なお,被控訴人は,被控訴人には本件道路においてすべての車両がすれ 違い進行できるように道路を整備しなければな らない義務はないと主張す るが,本件では,被控訴人に,本件道路上に現に存在する障害物を除去するなどの 何らかの措 置を講じるべき義務があったか否かが問題となっているのであ り,道路自体の整備の義務があるかの問題とは次元を異に しているから, 被控訴人の上記主張は当を得ないものというべきである。(3) 争点3(損害額)について 証拠(甲3,12の1,2)及び弁論の全趣旨によれば,本件車両は,本 件事故により箱型の荷台の左側面に長さ約35 センチメートルないし約60 センチメートルの数本の筋が付くという本件損傷が発生し,これを修理するために は,部品 代,技術料及び消費税を含めて合計25万6725円を要すると 認められるから,控訴人は,本件事故により,これと同額 の損害を被ったと いうことができる。(4) 争点4(過失相殺)について ア 認定事実によると,本件事故の発生については,控訴人代表者にも,1 本件事故の際,本件樹木の枝が本件道路に張り 出しており,本件車両の通 行の障害となっているという道路状況を十分に認識していながら本件道路に進入し て本件事故 にあったこと,2本件車両を本件道路に進入させた上,対向車 との接触を避けるためとはいえ,本件樹木の枝に接触する 可能性があるこ とを認識していながら,本件車両を左側のA宅側に寄せて,対向車とすれ違い進行 させ,本件事故にあっ たこと,3本件車両を一時停止させたり,本件車両を後退させたり,対向車の運転者に後退を求めるなど,本件車両と本 件樹木の枝との接触を避けるための方策をとることが不可能ではなかったにもかかわらず,これらの方策をとらず,あえ て本件車両を左側のA宅側に寄せて,対向車とすれ違い進行させ,本件事故に遭遇したことなどの点で過失があるという べきところ,その過失割合は,本件事故の態様,被控訴人の本件道路の管理状況等に照らすと,4割とするのが相当であ るから,控訴人の損害額の算定に当たっては,これを過失相殺として斟酌すべきである。
 したがって,控訴人の損害は,15万4035円となる。
 25万6725円×(1-0.4)=15万4035円
イ また,控訴人は,Aから,本件調停条項に基づき,本件事故の損害賠償として5万円を受領しているから過失相殺後の 控訴人の損害額である15万4035円からこれを控除すべきである。そうすると,本件事故による控訴人の損害は,1 0万4035円となる。
3 結論
 よって,控訴人の請求は,国家賠償法2条に基づき,損害賠償金10万4035円の支払を求める限度で理由があるからこ の限度でこれを認容すべきであり,その余の部分は理由がないので棄却すべきところ,これと結論を一部異にする原判決は一 部不当であるからこれを上記のとおり変更することとし,訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを2分し,その1を控訴人の 負担とし,その余を被控訴人の負担とすることとして,主文のとおり判決する。
 千葉地方裁判所民事第1部
 裁判長裁判官 小 林 正
裁判官 瀬 木 比 呂 志
裁判官 深 野 英 一
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