主文
一 原告Aに対し,
1 被告B,被告Cは,別紙第1物件目録(1)ないし(6)記載の各土地につき,岡山地方法務局倉敷支局平成9年8月6日受付第○○○○○号をもってした各持分2分の1の共有とする所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。
 2 被告Dは,別紙第1物件目録(6)記載の土地につき,岡山地方法務局倉 敷支局平成10年5月7日受付第○○○○○号をもってした共有者全員持分全部移転登記の抹消登記手続をせよ。
3 被告Bは,別紙第2物件目録(1)ないし(5)記載の各土地につき,岡山地方法務局倉敷支局平成10年4月20日受付第○○○○○号をもってした所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。
 二 原告Eに対し,被告Bは,1 別紙第3物件目録(1),(2)記載の各土地につき,岡山地方法務局倉敷支 局平成10年4月20日受付第○○○○○号をもってした所有権移転登記 の抹消登記手続をせよ。2 金1956万7139円及びこれに対する平成12年10月26日から 支払済まで年5分の割合による金員を支払え。三 原告Aの被告F,被告G,被告Hに対する請求並びに原告らの被告Bに対 するその余の請求をいずれも棄却する。四 訴訟費用はこれを10分し,その3を原告らの負担とし,その5を被告B の負担とし,その1を被告Cの負担とし,その1を被告Dの負担とする。五 この判決は,二の2項につき,仮に執行することができる。 事実及び理由第一 請求の趣旨
一 原告Aに対し,
1 被告B,被告Cは,別紙第1物件目録(1)ないし(6)記載の各土地につき,第二 一
岡山地方法務局倉敷支局平成9年8月6日受付第○○○○○号をもってした各持分2分の1の共有とする所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。
 2 被告Dは,別紙第1物件目録(6)記載の土地につき,岡山地方法務局倉 敷支局平成10年5月7日受付第○○○○○号をもってした共有者全員持分全部移転登記の抹消登記手続をせよ。
3 被告Bは,別紙第2物件目録(1)ないし(5)記載の各土地につき,岡山地方法務局倉敷支局平成10年4月20日受付第○○○○○号をもってした所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。
4 被告F,被告G,被告Hは,別紙第2物件目録(5)記載の土地につき,岡山地方法務局倉敷支局平成11年11月22日受付第○○○○○号をもってした所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。
5 被告Bは,別紙動産目録(一)記載の各動産を引き渡せ。
二 原告Eに対し,被告Bは,
1 別紙第3物件目録(1),(2)記載の各土地につき,岡山地方法務局倉敷支局平成10年4月20日受付第○○○○○号をもってした所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。
2 金2212万5139円及びこれに対する平成12年10月26日から支払済まで年5分の割合による金員を支払え。
 3 別紙動産目録(二)記載の各動産を引き渡せ。三 訴訟費用は被告らの負担とする。
四 一の5項並びに二の2及び3項につき,仮執行宣言
事案の概要
前提事実(当事者間に争いがないか,弁論の全趣旨により明らかな事実)
 1 別紙第1及び第2物件目録記載の各土地は,いずれも,Iが所有していた が,同人は昭和36年5月2日死亡し,その養子である原告Aがその所有権を相続承継した。
別紙第3及び第4物件目録記載の各土地は,いずれも,Jが所有していた が,同人は平成4年5月20日死亡し,その長女である原告Eがその所有権 を相続承継した(以下上記各土地につき,単に「第1の(1)土地」等という)。原告両名は昭和42年婚姻した夫婦であり,原告Aは,「K建設」の屋号 で,重機・ダンプカーを使用して土木請負事業を営んでいた。2 第1各土地には,被告B,被告Cを各持分2分の1の共有者とし,平成9 年8月6日売買を原因として,岡山地方法務局倉敷支局平成9年8月6日受 付第○○○○○号をもって,所有権移転登記(以下「本件共有登記」という) が経由され,そのうち第1の(6)土地には,さらに,平成10年5月7日売 買を原因として,同支局平成10年5月7日受付第○○○○○号をもって, 被告Dに対し,共有者全員持分全部移転登記(以下「本件持分全部移転登記」 という)が経由されている。第2各土地には,同支局平成10年4月20日受付第○○○○○号をもっ て,被告Bに対し,平成10年4月20日売買を原因として,所有権移転登 記(以下「本件第2土地B移転登記」という)が経由され,そのうち第2の (5)土地には,さらに,平成11年11月22日売買を原因として,同支局 平成11年11月22日受付第48219号をもって,Lに対し,所有権移 転登記(以下「本件L移転登記」という)が経由されている。第3各土地には,同支局平成10年4月20日受付第○○○○○号をもっ て,平成10年4月20日売買を原因として,被告Bに対し,所有権移転登 記(以下「本件第3土地B移転登記」という)が経由されている。3 Lは,平成12年8月8日死亡し,妻である被告F,子である被告G及び 被告Hが同人の権利義務を相続承継した。二 本件請求
1 原告Aは,所有権に基づき,第1各土地につき,被告B,被告Cに対し,本件共有登記の抹消登記手続きを,被告Dに対し,第1の(6)土地につき,本件持分全部移転登記の抹消登記手続きを求め,第2各土地につき,被告B に対し,本件第2土地B移転登記の抹消登記手続きを,第2の(5)土地につ き,被告F,被告G,被告H(以下「被告F等」という)に対し,本件L移 転登記の抹消登記手続きを求め,被告Bに対し,寄託終了に基づき,別紙動 産目録(一)記載の各動産(以下「本件動産(一)」という)の返還引渡しを求 めた。2 原告Eは,被告Bに対し,第3,第4各土地の処分及び債務清算の委任終 了に基づき,あるいは不当利得返還請求権に基づき,第3各土地につき,本 件第3土地B移転登記の抹消登記手続きを求め,別紙清算書修正欄記載の返 還債務金2215万5139円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平 成12年10月26日から支払済まで民法所定年5分の割合による遅延損害 金の支払いを求め,所有権に基づき,別紙動産目録(二)記載の各動産(以下 「本件動産(二)」という)の引渡しを求めた。三 争点
1 第1,第2各土地についての被告らへの本件各登記の登記原因
(一) 被告ら主張の登記原因(抗弁) (1) 被告B,被告C
1 被告B及び被告Cは,原告両名から,平成9年8月5日,第1ない し第3土地全部を,代金合計2565万円とし,設定されている抵当 権の被担保債務は被告両名において引き受け負担する旨の約定で,買 い受け,第1各土地については,被告両名の共有名義に,第2土地に ついては被告B名義に所有権移転登記を経由したものである。2 被告両名は,原告両名に対し,上記代金合計2565万円につき, 次のとおり支払った。i 平成9年6月30日 500万円 ii 同 年7月 4日 200万円iii 同 年7月11日 iv 同 年7月18日 v 同 年7月21日 vi 同 年7月31日 vii同 年8月4日 viii同 年8月5日150万円 500万円 35万円 250万円 130万円 800万円3 被告両名は,本件各土地の所有権を全うするため,次のとおり,本 件各土地上の抵当権の被担保債務の弁済をした。ァ 平成9年8月28日(株)M商店に290万円
ィ 同 年9月 8日(株)M本店に336万8760円
ゥ 平成10年1月6日 O信用金庫P支店に662万4953円 ェ 同日 Q信用保証協会に476万2276円(2) 被告D
1 被告Dは,原告A代理人Rと被告B及び被告Cから,第1の(2),(3),(6)土地につき,登記名義上は被告両名の共有となっているが, その所有権は原告Aにあると説明され,原告Aから上記各土地を買い 受けるが,形式上は,中間省略登記をして,被告両名から買い受ける 旨,原告A代理人Rと被告B及び被告Cとの間で合意し,平成9年1 2月12日,被告B及び被告Cを売主,被告Dを買主とし,売買代金 800万円とする売買契約を締結し,手付金100万円を原告代理人 Rに支払った。2 ところが,その後,第1の(2)及び(3)土地につき株式会社Sから処 分禁止の仮処分を受けたことから,移転登記手続きの履行がなされな いままとなり,平成10年5月になって,上記仮処分がなされていな い第1の(6)土地についてのみ,原告代理人R及び被告B,被告Cに おいて,本件持分全部移転登記手続きを履行してきたものである。(3) 被告F等
1 第2の(5)土地の被告Bへの所有権移転
(あ)(主位的主張)(なお,被告F等訴訟代理人は,後記3の再々抗 弁をもって主位的主張とし,本主張を予備的主張とする旨主張変更 をしたが,本抗弁事由を再々抗弁事由の予備的主張とすることには 論理的に無理があるから,上記変更がないものとして,主張整理す るほかない。)(1)と同じ (い)(予備的主張1)
原告両名は,被告B及び被告Cから,平成9年8月6日,300 0万円を借り受け,上記借受債務を被担保債務として,第2各土地 につき,抵当権を設定し,抵当権設定仮登記を経た。原告Aは,同日,上記借受債務の一部弁済として,第2の(5)土 地をもって被告Bに代物弁済し,同日付売買を原因とする所有権移 転仮登記(農地法5条の許可を条件とする)を経た。原告Aは,平成10年4月20日,第2の(5)土地につき,前記 抵当権設定登記の抹消登記を経た上,被告Bに対し,上記仮登記の 本登記に代えて,同日付売買に基づく本件第2土地B移転登記をな した。(う)(予備的主張2) 本件第2土地B移転登記の登記原因である平成10年4月20日付売買は,原告Aが自己の債権者を害する目的で財産隠しのために 行われたもので,民法708条所定の不法原因給付に当たる。したがって,その反射的効果として,第2の(5)土地の所有権は 被告Bにいったん帰属していたこととなる。2 第2の(5)土地のLへの所有権移転
被告Bは,Lに対し,平成10年5月29日,同人の使者である被 告Fを通して,代金1622万円(手付金200万円)で,第2の(5) 土地を売り渡した。(二) 原告らの反論
(1) 被告B,被告Cの登記原因主張について
1 原告らは被告B,被告Cに対し,土地を売り渡したことはなく,原 告らの債務の整理を委任するに伴い登記名義を移転したに過ぎない。
 2 被告B,被告Cの代金支払いの主張についてivないしviiの現金交付 を受けたことは認めるが,上記合計915万円は,原告らが被告B, 被告Cから借り受けたものである。その余の現金授受がなされた事実はない。
(2) 被告Dの主張について
否認する。
(3) 被告F等の主張について
1 (い)の予備的主張のうち抵当権設定の事実及び各登記がなされたこ とは認めるが,その余の事実は否認する。(う)の予備的主張のうち不法原因給付に当たることや法的効果につ いては争う。2 2の事実は不知
2 第1及び第2各土地の登記原因についての無効事由(再抗弁)
(一) 原告らの主張
(1) 原告両名は,原告A経営の土木請負事業の経営状態が悪化し,金融業者等からの4000万円以上の借金を抱えて窮し,所有土地売却の 相談をするうちに,平成9年7月18日から31日までに合計785 万の金銭の借り入れをすることとなった被告Bとの間で,同年8月4 日ころ次のとおり合意した上,さらに,被告Bから130万円の手形決済資金を借り受けた。
1 原告E所有の第3,第4土地は,被告Bが所有名義の移転を受けた上,不動産業者として売却し,売得金によって,各土地に設定されて いる抵当権の被担保債務及び被告Bからの原告両名の借入金等を返済 する。2 被告Bは,上記返済後の余剰金(被告Bの予想では3000万円程 度)を原告Eに支払う。3 原告A所有の第1,第2土地につき,同原告の債権者からの差押え 等を免れるため,被告Bに売買を仮装して架空の所有権移転をし,登 記名義を被告Bに移す。4 原告Aの倉敷市a町所在の事務所及び原告Eの実家にある動産類は 被告Bが保管し,将来返還する。5 原告両名は倉敷市bから離れて身を隠し,居住家屋の賃料及び生活 費(1ヶ月30万円)を被告Bが負担する。(2) 原告両名は被告Bに対し,上記合意に基づき,登記及び農地法上の 許可申請の必要書類を交付し,被告Bは,上記必要書類により,第1 土地については被告B,被告Cの各持分2分の1とする共有名義の所 有権移転登記を,第2及び第3土地については被告B名義の所有権移 転仮登記を,第4土地については株式会社Tへの所有権移転登記(中 間省略登記)をなした。(3) したがって,第1,第2土地の移転登記にかかる登記原因は通謀虚 偽表示に当たるものとして無効である。(二) 被告B,被告Cの反論 原告ら主張の仮装売買を含む合意は被告Bに協力を動機づけるメリットがないのみならず,原告らにとっても,必要性のない不自然なものである 上,原告らが,児島簡裁に提起していた当初の訴えにおいて,処分信託契約の主張をしていたこととも矛盾する。
 3 被告F等の善意主張(再々抗弁)(一) 被告F等 仮に,第2の(5)土地についての前記所有権移転仮登記及び第2土地B移転登記にかかる登記原因事実が通謀虚偽表示に当たるとしても,Lは,上記土地買い受けに際して,善意であった。 (二) 原告Aの反論原告Aは,平成10年7月から10月にかけて,第2の(5)土地に重機 を無断で置いていたU建設経営者のLに対し,電話で,第2の(5)土地は 原告Aの所有であり,被告Bの登記名義は虚偽のものであるから,被告B から買わないようにと,数度に亘り,申し入れていたものであり,Lは, 被告Bに対する移転行為が通謀虚偽表示であることを知っていた。また,原告Aは,平成11年2月,第2の(5)土地を含む各土地につき, 被告Bらに対し,本件所有権移転登記抹消登記手続請求訴訟を児島簡易裁 判所に提起し,登記抹消の予告登記がなされたが,原告ら代理人に訴訟委 任することに伴い,上記訴訟の訴え取下げ(欠席による取り下げ擬制)を して,岡山地方裁判所に本件訴訟を提起し直した。ところが,Lは,上記 予告登記が抹消となった間の平成11年11月22日に本件L移転登記を 経由したものであり,予告登記がなされこれが抹消された経緯について原 告Aに確認を怠った過失がある。そして,本件の被告BとL間の売買契約日は平成10年5月24日,県 知事の許可がなされたのが平成11年6月30日,所有権移転登記が経由 されたのが同年11月22日,代金完済がなされたのが同月29日である ところ,農地法上の県知事の許可がない以上は未だ所有権の移転はなく, また,Lは,売買契約完了時点までは,売主たる被告Bに所有権がないこ とを理由として,売買契約を解除し得たものであるから,民法94条2項所定の善意か否かの判断の基準時は,少なくとも,農地法上の許可時から, 売買契約完了時点までとすべきである。したがって,Lは,民法94条2項の善意の第三者には当たらない。4 第3,第4各土地の処分及び債務清算の委任契約の終了若しくは不当利得に基づく返還債務 (一) 原告Eの主張
(1) 前記2(一),(1)のとおり,平成9年8月4日ころ,原告両名は,被 告Bに対し,原告E所有の第3,第4各土地につき,被告Bにおいて その所有名義に移転登記を経た上,不動産業者として売却し,売得金 によって,各土地に設定されている抵当権の被担保債務及び被告Bか らの原告両名の借入金等を返済する旨の土地売買委託と債務清算の委 任をなした。(2) 被告Bは,平成10年12月8日までの間に,第4各土地を整地, 分筆するなどして売り出し,V外3名にそれぞれ売却し,売却金総額 は6984万9000円となり,第3各土地について売却するまでも なく,抵当権の被担保債務及び原告両名の被告Bに対する債務はすべ て,上記売得金によって支払われ,上記委任事務は終了した。(3) 平成11年2月17日,被告Bは,Rを通じて,原告両名に売却金 総額は6553万円である旨過少報告し,また,別紙清算書の報告欄 記載のとおり上記売却による清算の結果を報告し,原告Eに返還すべ き金額は437万4847円である旨通知した。(4) しかしながら,同欄記載の工事代金,経費,手数料,人件費,利息 は控除されるべきではなく,上記清算書の修正欄記載の2212万5 139円が原告Eに返還されるべきであり,また,委任が終了した以 上,第3各土地の登記名義は,これを被告Bに留保しておく根拠はな く,原告Eに回復されるべきである。(二) 被告Bの反論 被告Bは原告両名から、第3,第4土地を含む土地を代金2565万円とし,被担保債務をすべて被告Bにおいて引き受け負担する約定にて買い受けたものであり,土地売買委託や債務清算の委任を受けた事実はない。
 5 本件動産(一)の寄託(一) 原告Aの主張 前記2(一)(1)のとおり,平成9年8月4日ころ,原告両名は,被告Bに対し,原告Aの倉敷市a町所在の事務所等にある動産類を寄託し,同月 5日,被告Bは上記事務所にあった本件動産(一)を同被告管理のガレージ に運搬して占有下に置いた。(二) 被告Bの認否 否認する。
6 本件動産(二)の存在及びその所有権並びに被告Bの占有 (一) 原告Eの主張被告Bは,倉敷市a町c-d-e所在の建物内にあった原告E所有の本 件動産(二)を持ち出して,占有している。(二) 被告Bの認否 否認する。
第三 争点についての判断
一 本件の各登記原因について
 1 被告B及び被告Cの登記
(一) 原告Aを売主,被告B,被告Cを買主,代金2565万円とし,売買 物件として,第1ないし第3各土地を表示し,特約事項として,既に買 主において,i平成9年6月30日500万円,ii同年7月4日200 万円,iii同年7月11日150万円,iv同年7月18日500万円,v 同年7月21日35万円,vi同年7月31日250万円,vii同年8月4日130万円,viii同年8月5日800万円を支払って売買代金を完済し ている旨記載した平成9年8月5日付け不動産売買契約書(乙イ第1号 証),及び同日付けで原告Aが農地についての移転手続責任を負う旨の 「土地について確約書」が提出されており,原告A本人尋問の結果によ ると,原告Aがその売主欄に署名し,被告Bに預けた実印によって,同 原告名下の捺印,契印,捨印がなされていることが認められる。
 また,上記代金支払いに沿う原告A,原告E名の署名,捺印のある領収 証(乙イ2ないし9号証)が提出されており,原告両名の本人尋問結果 によれば,原告両名のいずれかがこれに署名したことが認められる。(二) そして,被告B本人は,被告B及び被告Cにおいて,原告両名から, 平成9年8月5日,第1ないし第3土地全部を,代金合計2565万円 とし,設定されている抵当権の被担保債務は被告両名において引き受け 負担する旨の約定で,買い受けた旨供述する(同被告本人尋問結果)。 これに対し,原告両名は,陳述書(甲第5,第17号証)及び原告ら各 本人尋問において,概ね次のとおり供述する。(1) 平成9年当時,原告両名は,K建設の経営の悪化に伴って,多額の 借財をするに至り,抵当権被担保債務として,株式会社N本店に約4 00万円,株式会社M商店に約300万円,O信用金庫に約700万 円,Q信用保証協会に約500万円の借入金があり,さらに,株式会 社Sに約500万円,Rに約1300万円の借入債務があったほか, システム金融等にも相当額の借入をしており,手形決済資金の準備に 窮していた。(2) 原告両名は,その所有する不動産を売却して,返済資金を得ようと し,不動産業者である被告Bに所有土地売却の相談をするうちに,平 成9年7月18日から31日までに合計785万の金銭の借り入れを することとなった。これが,前記ivないしviの現金受領である。(3) そして,原告両名は,被告Bに全幅の信頼を寄せるようになり,同 年8月4日ころ次のとおり合意した上,さらに,被告Bから130万 円の手形決済資金を借り受けた(これが前記viiの現金受領)。1 原告E所有の第3,第4の(2),(3)土地(a町の土地)は,被告B が所有名義の移転を受けた上,不動産業者として売却し,売得金によ って,各土地に設定されている抵当権の被担保債務及び被告Bからの 原告両名の借入金等を返済する。2 被告Bは,上記返済後の余剰金(被告Bの予想では3000万円程 度)を原告Eに支払う。3 原告A所有の第1,第2土地(fの土地)につき,同原告の債権者 からの差押え等を免れるため,被告Bに売買を仮装して架空の所有権 移転をし,登記名義を被告Bに移す。4 原告Aの倉敷市a町所在の事務所及び原告Eの実家にある動産類は 被告Bが保管し,将来返還する。5 原告両名は倉敷市bから離れて身を隠し,居住家屋の賃料及び生活 費(1ヶ月30万円)を被告Bが負担する。(4) 原告両名は被告Bに対し,上記合意に基づき,登記及び農地法上の 許可申請の必要書類を交付し,実印を預けた。原告A署名時には,乙 イ第1号証の売買物件の表示,代金額,特約事項については,記載さ れておらず,乙イ第10号証の本文の記載もなかった。(5) 前記iないしiii,viiiの金銭受領はしていないが,原告両名は被告B から,債権者に見せるために必要であると言われ,売買代金として受 領した旨の架空領収証(乙イ第2ないし第4,第9号証)を作成した。 その際原告Eは,架空の領収証である目印にするため,自己が作成し た乙第2ないし第4号証の領収証の左上にボールペンで丸印をつけた が,原告Aが司法書士方で作成した乙第9号証の領収証には,目印をつける余裕がなかった。
(三) そうすると,その実質はともかく,法形式上は,原告A所有のf所在の第1,第2土地について,原告Aと,被告Bあるいは被告Bの指定す る者(被告C)の間に売買契約が成立し,原告E所有のa町所在の第3 土地について原告Eと被告Bの間に売買契約が成立したこととなる。2 被告Dの登記 本件持分全部移転登記につき,被告D主張の登記原因,即ち,第1の(6)土地を第1の(3),(6)土地とともに,被告Dは原告Aから買い受けたが,登 記名義人が被告B及び被告Cとなっていたため,三者で合意して中間省略登 記をしたことを認めるに足る証拠はない。3 Lの登記 乙ア第3号証,第4号証の1ないし5,第5,第11,第12号証,被告B本人被告F本人尋問の結果によれば,被告Bは,Lに対し,平成10年5 月29日,同人の使者である被告Fを通して,代金1622万円(手付金2 00万円)で,第2の(5)土地を売り渡し,平成11年5月19日県知事の 転用許可がなされた後,同年11月22日,被告Bにおいて改めて同日付け 売渡証書を作成して,本件L移転登記が経由され,同月29日,代金が完済 されたことが認められる。二 第1ないし第4各土地を原告両名が被告Bらに移転した実体について1 甲第2号証の1ないし5,第3号証の1,2,第4号証の1ないし3及び 被告B本人尋問結果によれば,第2,第3の各土地は農地であるところ,平 成9年8月6日,被告B,被告Cを権利者として,同日付け条件付所有権移 転仮登記(農地法第5条の許可を条件),同日付け3000万円の貸金を被担保債務とする抵当権設定仮登記,条件付賃借権設定仮登記がなされたこと, 第4の(1)土地については,既に平成9年7月7日,原告EからWに売り渡さ れ,同月17日所有権移転登記が経由されていたこと,第4の(2)及び(3)の土地については,被告Bにおいて,その関係する株式会社Tに平成9年8月 6日売買を原因として,同月7日所有権移転登記を経由したことが認められ る。2 甲第5ないし第9号証,第11ないし第15,第17号証,証人Rの証言, 原告両名,被告B各本人尋問の結果によれば,平成9年8月6日,原告両名 は,被告Bに原告A事務所にあった動産類を被告Bの管理倉庫に運び込んだ 後,被告Bが準備してくれた笠岡市内のアパートに移転し,債権者から隠れ るようにして生活するようになり,被告Bにおいて,当初は,賃料を含む生 活費を原告両名に渡してくれた。しかし,原告両名は,被告Bが,間もなく 生活費等を渡してくれなくなり,また,原告両名所有の備前焼を株式会社T の社長に譲渡するなどしたことから,被告Bに不審を抱くようになり,平成 10年1月末ころ,原告Aの幼友達で,債権者であるRに連絡をとり,「被 告Bに第3,第4土地を売却してもらって売得金を渡してもらうことになっ ている。原告Eの医療費がいるので,300万円程,売得金の先払いをして もらうよう頼んで欲しい。第1,第2土地は被告Bの登記名義にしてもらっ ているが,信用できないので,R名義にするよう頼んで欲しい。」等と依頼 した。Rは,上記依頼に基づき,被告Bと交渉した結果,平成10年4月10日 ころ,被告Bは200万円を原告両名に支払った。その後,被告Bは,Rの 協力を得て,同年12月8日までの間に,整地,分筆するなどして売り出し, V外3名にそれぞれ売却し,売却金総額は6984万9000円となったが, 平成11年2月17日,Rを通じて,原告両名に売却金総額は6553万円 であり,別紙清算書の報告欄記載のとおり上記売却による余剰金は437万 4847円である旨の報告書を交付した。3 以上認定したところと,一の1に記載の前記売買契約書には,売主におい て,設定されている抵当権の抹消義務を負担する旨の印刷文言があるにもかかわらず,これと反対趣旨である被担保債務の買受人負担についての記載は なされないままとなっている上,被告B及び被告Cにおいて主張するところ によると,最も取引価値の高い第4の(2),(3)土地について,被告Bにおい て売却した根拠が見出せず,また,売買代金が定められた根拠も判然とせず, 売買に至った経緯も具体性がないことなどに照らして,一に摘示した双方の 陳述を吟味すると,被告Bの供述はにわかに措信できないのに対し,原告ら の供述するところは排斥すべき根拠を見出せない。4 そうすると,原告両名は,被告Bに全幅の信頼を寄せるようになり,同年 8月4日ころ次のとおり合意した上,さらに,被告Bから130万円の手形 決済資金を借り受けたことを認定すべきこととなる。1 原告E所有の第3,第4の(2),(3)土地(aの土地)は,被告Bが所有名義の移転を受けた上,不動産業者として売却し,売得金によって,各土 地に設定されている抵当権の被担保債務及び被告Bからの原告両名の借入 金等を返済する。2 被告Bは,上記返済後の余剰金を原告Eに支払う。
3 原告A所有の第1,第2土地(fの土地)につき,同原告の債権者からの差押え等を免れるため,被告Bに売買を仮装して架空の所有権移転をし,登記名義を被告Bに移す。
4 原告Aの倉敷市a町所在の事務所及び原告Eの実家にある動産類は被告Bが保管し,将来返還する。
5 原告両名は倉敷市bから離れて身を隠し,居住家屋の賃料及び生活費(1ヶ月30万円)を被告Bが負担する。
5 なお,被告Bらは,上記認定のような約定では,被告Bには何らメリットはなかった旨主張するが,被告B,原告E各本人尋問の結果並びに弁論の全 趣旨によれば,被告Bは,土地売却により不動産業者としての手数料等を得 るメリットはあったことが認められるから,上記主張は採用できないし,また,児島簡裁における訴状記載と矛盾があるとしても,原告らにおいて司法 書士に依頼する際の表現によっては,必ずしも,原告らの説明どおりの訴状 が作成されるものとは限らないこと等に照らして考えると,このことによっ て,上記認定に消長を来すものとはいえない。6 してみれば,第1及び第2土地についての被告Bあるいは被告Cへの所有権 移転は通謀虚偽表示に基づくものとして無効事由を有することとなる。三 Lの登記原因に係る民法94条2項の適用について 乙ア第1号証の1ないし10,第2,第9,第10号証,証人Xの証言及び被告F,被告B,原告A各本人尋問結果によれば,平成9年7月ころ,原告A は第2の(5)土地につき,Xを通じて売却しようとし,Lにも買取り方を依頼 したが,同人は買い受けの意思表示を留保したままにしていたこと,その後, Lは被告Bから売却の申し入れを受け,不動産業者が入って来たことで安心し て,何ら法律的にも問題ないものと確信して,上記土地買受けの意思を確定し, 平成10年5月29日,同人の使者である被告Fを通して,代金1622万円 (手付金200万円)で,第2の(5)土地を買い受けたことが認められる。上記証拠によれば,原告Aが,平成10年7月から10月にかけて,Lに対 し,第2の(5)土地に重機を置いていることにつき,電話で,抗議したことが 認められるが,これによって,Lが通謀虚偽表示であることを認識し得たとも いえず,また,平成11年2月,第2の(5)土地を含む各土地につき,被告B らに対し,本件所有権移転登記抹消登記手続請求訴訟を児島簡易裁判所に提起 され,登記抹消の予告登記がなされた後,予告登記が抹消されたことを認識し たとしても,これによって,Lが善意者でなくなるものとはいえないし,原告 Aに確認を怠った過失があるとしても,民法94条2項の善意者に該当する妨 げとはならない。四 本件第3土地B移転登記の抹消登記手続請求権並びに第4各土地売却に伴う 清算金返還請求権について1 前記認定したところからすると,平成9年8月4日ころ,原告両名は,被 告Bに対し,原告E所有の第3各土地及び第4の(2)及び(3)土地につき,被 告Bにおいてその所有名義に移転登記を経た上,不動産業者として売却し, 売得金によって,各土地に設定されている抵当権の被担保債務及び被告Bか らの原告両名の借入金等を返済する旨の土地売買委託と債務清算の委任をな したことが認められる。2 甲第6,第7,第9,第11ないし第15,第17号証,証人Rの証言, 原告両名,被告B各本人尋問結果並びに弁論の全趣旨によると,次のとおり 認定できる。1 前記認定のとおり,被告Bは,Rの協力を得て,平成10年12月8日までの間に,整地,分筆するなどして売り出し,V外3名にそれぞれ売却 し,売却金総額は6984万9000円となり,第3各土地について売却 するまでもなく,抵当権の被担保債務及び原告両名の被告Bに対する債務 はすべて,上記売得金によって支払われ,被告Bの前記委任事務は終了し た。2 平成11年2月17日,被告Bは,Rを通じて,原告両名に売却金総額 は6553万円である旨過少報告し,また,別紙清算書の報告欄記載のと おり上記売却による清算の結果を報告し,原告Eに返還すべき金額は43 7万4847円である旨通知した。3 同欄記載の工事代金,経費,人件費,利息はその趣旨あるいは根拠が判 然とせず,売得金から控除すべきものとはにわかに認められないが,被告 Bが本件の委任を実質的に無償で受けたものでなく,不動産業者として売 却するに伴う手数料を受け取ることは双方間で予定されていたものという べく,手数料として計上されている合計255万8000円は被告Bが取 得するのが不合理なものともいえない。3 そして,上記認定したところによると,別紙清算書の修正欄記載の2212万5130円からさらに手数料名目の255万8000円を控除した19 56万7130円が原告Eに返還されるべきであり,また,委任が終了した 以上,第3各土地の登記名義は,これを被告Bに留保しておく根拠はないか ら,原告Eに回復すべく,その方法として,被告Bは,本件第3土地B移転 登記の抹消登記手続きをなすべきこととなる。五 本件動産(一)及び本件動産(二)の引渡請求について 甲第5,第8,第17号証,原告両名の本人尋問結果並びに弁論の全趣旨によると,原告両名が転居するに際し,原告Aの倉敷市a町所在の事務所等にあ った動産類を被告B管理のガレージに運び込んだこと,被告Bが,同町所在の 原告Eの母方建物の取り壊しに際し,動産類を持ち出したことは認められるけ れども,上記寄託にかかる動産類が本件動産(一)であること,被告Bが本件動 産(二)を持ち出し,現に占有していることをそれぞれ裏付けあるいは特定しう る資料は見出せない。そうすると,本件動産(一)及び(二)の引渡請求は理由がないものというほか ない。第四 結語 以上の次第で,原告Aの本件請求は,第1各土地の所有権に基づき,被告B,被告Cに対し,本件共有登記の抹消登記手続きを,被告Dに対し,第1の(6)土 地につき,本件持分全部移転登記の抹消登記手続きを求め,第2各土地の所有権 に基づき,被告Bに対し,本件第2土地B移転登記の抹消登記手続きを求める請 求はいずれも理由があるから認容すべきであるが,第2の(5)土地につき,被告 F等に対し,本件L移転登記の抹消登記手続きを求め,被告Bに対し,本件動産 (一)の返還引渡しを求める請求はいずれも失当として棄却すべく,原告Eの本件 請求は,被告Bに対し,第3,第4各土地の処分及び債務清算の委任終了に基づ き,本件第3土地B移転登記の抹消登記手続きを求め,清算後の返還債務金19 56万7139円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成12年10月26日から支払済まで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める限 度で理由があるから認容すべきであるが,被告Bに対する,その余の返還債務金 の支払請求部分と本件動産(二)の返還引渡しを求める請求は失当として棄却すべ きである。よって,訴訟費用の負担につき民訴法61条,64条,65条一項本 文を適用し,総費用につき主文のとおり按分して各敗訴被告に負担させることと し,仮執行宣言につき同法259条1項を適用して,主文のとおり判決する。岡山地方裁判所第1民事部
裁判官 金馬健二
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