主文 被告人を懲役3年6月及び判示第5の番号1ないし9の各罪についていずれも拘留10日に処する。
 未決勾留日数中120日をその懲役刑に算入する。 訴訟費用は被告人の負担とする。理由
(罪となるべき事実) 被告人は,
第1 強姦する目的で,平成14年6月8日午前4時30分ころ,岡山県新見市a -b番地のc所在のXアパートd号室A女(当時20歳)方に,無施錠の居間 西側掃き出し窓から侵入し,同女方寝室において,同女に対し,「騒がなかっ たら助けてあげる。」などと申し向け,同女に馬乗りになったり,両手に手錠 を掛けたり,ネクタイで猿ぐつわをしたり,タオルで目隠しをしたりするなど の暴行,脅迫を加え,その反抗を抑圧した上,強いて同女を姦淫し,その際, 上記暴行により,同女に全治期間不明の左橈骨神経浅枝麻痺の傷害を負わせ,第2 平成13年7月1日ころ,前記Xアパートe号室B女方において,軒先に干 してあった同女所有のパンティ3枚及びブラジャー1枚(時価合計1300円 相当)を窃取し,第3 平成14年3月14日ころ,前記A女方に,前記第1と同様の方法で侵入し, 同女方において,同女所有のアルバム2冊(時価合計600円相当)を窃取し,第4 同月下旬ころ,前記Xアパートf号室C女方に,玄関口から施錠を外して侵 入し,同女方において,同女所有のパンティ3枚,ブラジャー3枚及び写真1 0枚(時価合計1万5000円相当)を窃取し,第5 正当な理由がないのに,別紙記載のとおり,同年4月25日から同年6月2 2日までの間,前後9回にわたり,前記Xアパートにおいて,カーテンの隙間 等から,前記Xアパートg号室D女(当時19歳)方室内又は前記Xアパートh号室E女(当時19歳)方室内をデジタルビデオカメラで撮影録画し,人の住居をひそかにのぞき見た ものである。
(証拠の標目)
省略(ただし,以下,事実認定の補足説明。)。
 なお,弁護人は,判示第1の事実につき,「騒がなければ助けてやる。」とは言っていない旨主張し,被告人もこれに沿う供述をするが,被告人が「騒がなかった ら助けてあげる。」と言ったと供述する被害者A女の検察官調書(8)は,その内 容が押収された物的証拠と符合し(22,23等),同女には虚偽を述べる動機も なく,内容も具体的かつ迫真的で自然なものであること等の点から信用でき,これ に反する被告人の供述は信用できず,弁護人の主張は採用できない。 (法令の適用)被告人の判示第1の所為のうち,住居侵入の点は刑法130条前段に,強姦して 傷害を負わせた点は同法181条(177条前段)に,判示第2の所為は同法23 5条に,判示第3及び第4の各所為のうち,住居侵入の点はいずれも同法130条 前段に,窃盗の点はいずれも同法235条に,判示第5の別紙番号1ないし9の各 所為はいずれも軽犯罪法1条23号にそれぞれ該当するところ,判示第1の住居侵 入と強姦致傷との間,第3及び第4の各住居侵入と各窃盗との間はいずれも手段結 果の関係があるので,刑法54条1項後段,10条によりいずれも1罪として判示 第1の罪については重い強姦致傷罪の,判示第3及び第4の各罪についてはいずれ も重い窃盗罪の刑でそれぞれ処断することとし,各所定刑中判示第1の罪について は有期懲役刑を,判示第5の別紙番号1ないし9の各罪についてはいずれも拘留を それぞれ選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,懲役刑については同 法47条本文,10条により最も重い判示第1の罪の刑に同法14条の制限内で法 定の加重をし,各拘留刑についてはいずれも同法53条1項,2項によりその懲役 刑及びその他の各拘留刑とをそれぞれ併科することとし,各所定の刑期の範囲内で被告人を懲役3年6月及び判示第5の別紙番号1ないし9の各罪についていずれも 拘留10日に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中120日をその懲役刑に 算入することとし,訴訟費用については,刑訴法181条1項本文により全部これ を被告人に負担させることとする。(量刑の理由) 本件は,犯行時に現役の高校教諭であった被告人が敢行した,同一集合住宅に居住する一人暮らしの若い女性を狙った侵入強姦致傷1件(判示第1),侵入下着盗 など2件(判示第3,第4),下着盗1件(判示第2),のぞきによる軽犯罪法違 反9件(判示第5)の事案である。被告人は,いずれも全く面識のない女性に対し, 判示ののぞきや下着盗を繰り返すうち,ついには強姦を敢行するまでに犯行をエス カレートさせたものである。まず,侵入強姦致傷につき検討するに,その犯行態様は,明け方,被害者方をの ぞいているうち,窓の鍵が開いていることに気付き,予め被害女性が熟睡している ことを確認した上で,わざわざ,いったん自宅に戻って,強姦に使用する目的で, タオル,ネクタイ,手錠,バイブレーター及びローション等を携え,同女方に侵入 し,熟睡中の同女に対し,突如馬乗りになって襲いかかり,タオルやネクタイで緊 縛したばかりか,金属製の手錠まで用いてその抵抗を封じたこと,約2時間もの長 時間にわたり,複数回,執拗に姦淫するだけでなく,指を陰部に入れたり,嫌がる 同女の陰部や肛門にバイブレーターを挿入したりする等蹂躙の限りを尽くしている こと等からすると実に悪質である。その結果,被害者は,しびれと感覚麻痺が残る 判示の傷害を負ったもので,その心身を深く傷つけた結果は重大であり,被害者は 厳重な処罰を望んでいる。また,その他の下着盗やのぞきに関しても,常習的に敢行していたことが認めら れ,被告人の性的欲望に対する自制心の欠如は顕著である。なお,これら各犯行の動機について,弁護人は,学生時代に,男性の書道の師か ら複数回,わいせつ行為を受けたことや,勤務先でのストレス等が遠因にある旨主張し,被告人もこれに沿う供述をするが,前記わいせつ行為の事実の有無はさてお き,仮にかかる事実があったとしても,その精神的負荷のはけ口を無関係の女性ら に向けることは到底許されるものではないし,そもそも被告人方に置かれていた多 数のいわゆるアダルトビデオ,わいせつな写真,使用済み女性下着等からすると, 被告人は女性に対する性的関心が著しく高いことが認められ,これと各犯行の態様, 性質からすれば,被告人が各犯行において,専ら自己の性欲の満足を図っていたこ とは明らかであるから,弁護人の主張は採用できない。このほか,被告人には,公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関 する条例違反(痴漢行為)による罰金前科があること,事件の原因を第三者に求め る傾向もあり,自己の判断で敢行した犯行であって,自己の責任であることを未だ 直視していない点も窺われること,高校内の自己が専属的に使用する書道準備室を 散らかし放題にし,判示第4の被害品の写真やアダルトビデオ等の私物も持ち込む 等周囲を顧みない行動傾向があること等の事実も認められる。以上の点からすると,犯情は実に悪く,被告人の刑責は重い。
しかしながら,被告人なりに反省していること,両親が判示第1の事件について 被害弁償の一部として300万円を支払う等被害弁償として各被害者に対し合計3 16万円を支払ったこと,本件は現役高校教諭の性犯罪としてマスコミで広く報道 され社会的反響も大きく,被告人は,高校教諭を懲戒免職となる等社会的制裁を受 けたこと,母親が更生に協力することを約束していること,書道家としては一定の 評価を受けてきたこと等被告人に有利に斟酌すべき事情もある。以上の点を総合考慮して,主文の刑が相当であると判断した。
 平成15年1月8日岡山地方裁判所第2刑事部
裁判長裁判官 榎 本 巧
裁判官 中 川 綾 子
裁判官 足 立 堅 太
別 紙(省略)
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