平成13年12月21日判決言渡 平成10年(ワ)第324号土地明渡等請求事件(以下「第1事件」という。) 平成12年(ワ)第53号土地明渡等請求事件(以下「第2事件」という。) 同年(ワ)第416号損害賠償請求事件(以下「第3事件」という。)主 文
 1 被告は,第1事件原告A株式会社に対し,金1366万6206円を,第1ないし第3事件原告B株式会社に対し,金729万1950円を,それぞれ支払え。
 2 第1事件原告A株式会社の被告に対する,平成13年10月23日から別紙 物件目録1記載の各土地明渡済みまで1か月金202万7709円の割合によ る金員の支払を求める訴え,並びに,第1ないし第3事件原告B株式会社の被 告に対する,平成13年10月23日から別紙物件目録1記載の各土地明渡済 みまで1か月金101万3854円の割合による金員の支払を求める訴え及び平成13年10月23日から別紙物件目録2記載の土地のうち別紙図面2のカ, オ,エ,ウ,カの各点を順次直線で結んだ範囲の土地明渡済みまで1か月金6 万8081円の割合による金員の支払を求める訴えを,いずれも却下する。3 被告は,第1ないし第3事件原告B株式会社に対し,別紙物件目録2記載の 土地のうち別紙図面2のク,ケ,コ,サ,ウ,カ,キ,ア,クの各点を順次直 線で結んだ範囲の土地を明け渡せ。4 被告は,第1ないし第3事件原告B株式会社に対し,平成13年4月1日か ら前項の土地明渡済みに至るまで1か月金34万5539円の割合による金員 を支払え。5 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
 6 訴訟費用はこれを10分し,その1を被告の負担とし,その余を原告らの負担とする。
第1 請求
 1 第1事件
事実
及 び 理 由
(1) 第1ないし第3事件被告(以下「被告」という。)は,原告らに対し,別 紙物件目録1記載の各土地を明け渡せ。
 (2) 被告は,平成10年4月1日から前項の土地明渡済みに至るまで,第1 事件原告A株式会社(以下「原告A」という。)に対し,1か月202万7 709円の,第1ないし第3事件原告B株式会社(以下「原告B」という。) に対し,1か月101万3854円の各割合による金員を,それぞれ支払え。2 第2事件 (1) 被告は,原告Bに対し,別紙物件目録2記載の土地を明け渡せ。(2) 被告は,原告Bに対し,平成11年4月1日から前項の土地明渡済みに至るまで1か月41万3619円の割合による金員を支払え。
 3 第3事件 被告は,原告Bに対し,8万3628円及びこれに対する平成12年6月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 1 本件第1事件は,原告らが,第2事件は,原告Bが,それぞれ,被告に賃貸した土地につき,各賃貸借契約が期間満了あるいは債務不履行解除に基づき終 了したとして,目的物である各土地の明渡しと明渡済みまでの各賃料相当損害 金の支払を求めた事案,第3事件は,原告Bが,上記とは別の賃貸借契約終了 後も被告が原告Bの管理する土地を無権原で占有あるいは使用したとして,こ れに対する賃料相当損害金とその事由が止んだ日の翌日から支払済みまで民法 所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。2 争いのない事実等(証拠によって認定した事実については,認定に要した証 拠を末尾括弧内に掲記した。)(1) 第1事件について
ア 被告は,昭和63年3月4日,秋田市議会に対し,道路法8条により, 別紙物件目録1記載部分の土地(総面積2987平方メートル,以下「本 件土地1」という。)から空中占有部分50平方メートルを控除した残地 を敷地として含む道路を秋田駅東線(以下「本件道路」という。)として 市道に認定するよう議決を求め,同議会は,同月25日,これを可決した (乙4)。被告は,同月30日,道路法8条に基づき,本件道路を秋田市の市道に認定し,同年4月2日,供用を開始した(乙5)。
 イ C,D及びE(以下「Cら」という。)は,被告との間で,供用開始 の前日である同月1日,「土地賃貸借契約書(道路)」と題する書面(甲1 5)を作成して,以下の内容の土地賃貸借契約を締結した(争いがない。以 下「本件契約1」という。) (ア) 目的物 本件土地1。うち50平方メートルは上空占有のみとする。 (イ) 使用目的 秋田市市道用地
(ウ) 賃貸借期間 昭和63年4月1日から平成10年3月31日ま で。賃貸借期間の契約満了後延長については,協議す るものとする。
(エ) 賃料 1年当たりの賃料を1平方メートル当たり以下の 算式で算出する。
 地価公示価額×地域要因格差×0.06 ただし,上空占有部分は,同式の算出額の50パーセント。 (オ) 賃料支払方法 昭和64年度以降の賃貸料は,当該年度予算議決後,賃貸人の請求により支払う。 (カ) 原状回復義務 被告は,土地を返還すると きは,賃貸人の指示により原状に回復するものとす る。ウ 被告,Cら,当時の本件土地1所有者ら及び原告Aは,平成9年1月2 7日,本件契約1の賃貸人を原告Aに変更する旨合意した。また,被告と 原告A及び原告Bは,平成9年4月1日,本件契約1の賃貸人に,原告B を追加し,原告Aが賃料の3分の2を,原告Bがその3分の1をそれぞれ 受領する旨合意した(いずれも争いがない。)。エ 被告は,本件契約1の期間満了日の翌日である平成10年4月1日以降, 本件土地1の占有を継続している(争いがない。)。オ 原告らは,被告に対し,遅くとも第1事件の訴状をもって,本件契約1 の更新を拒絶する旨,及び,賃料不払を理由として本件契約1を解除する 旨をそれぞれ通知し,同訴状は,平成10年11月24日,被告に到達し た(争いがない。)。 カ 本件土地1の賃料相当額は,平成10年4月1日時点で,年額3649 万8770円である(争いがない。)。 キ 被告は,本件契約1にかかる賃料として,本訴提起後,平成10年4月1日から平成11年3月31日分につき,平成11年3月23日,平 成11年4月1日から平成12年3月31日分につき,平成12年1月1 8日,平成12年4月1日から平成13年3月31日分につき,平成13 年2月27日,原告Aに対し,各2433万2513円を,原告Bに対し, 各1216万6257円を,それぞれ秋田法務局に供託した(乙7,8, 18,19,42,43)。(2) 第2事件について ア Cらは,被告に対し,昭和61年6月26日,秋田市a字bc番dのうち297.51平方メートルを,排水路敷地として,被告が排水路を廃止する日まで年額89万9967円の賃料で,貸し渡していた(乙21)。 イ Cらは,被告との間で,昭和63年4月18日,以下の内容の土地賃貸借契約を締結した(争いがない。)(以下「本件契約2」という。) (ア) 目的物 別紙物件目録2記載の土地(以下「本件土地2」という。)のうち297.51平方メートル(別紙 図面2のア,イ,ウ,エ,オ,カ,キ,アを順次直 線で結んだ範囲の部分)(イ) 使用目的 排水路敷地
(ウ) 賃貸借期間 昭和63年4月18日から平成10年3月31日 まで。
 賃貸借期間の契約満了後延長については,協議す るものとする。(エ) 賃料 1年当たりの賃料を1平方メートル当たり以下の
 算式で算出する。
 地価公示価額×地域要因格差×0.06 (オ) 賃料支払方法 昭和64年度以降の賃貸料は,当該年度予算議決後,賃貸人の請求により支払う。 (カ) 原状回復義務 被告は,土地を返還するときは,賃貸人の指示に より原状に回復するものとする。 ウ 被告,Cら,当時の本件土地2所有者ら及び原告Bは,平成9年1月27日,本件契約2の賃貸人を原告Bに変更する旨合意した(争いがない。)。 エ 原告Bと被告は,平成11年2月ころ,本件契約2の目的物の範囲を本件土地2の全部(なお,本件土地1とは重ならない。乙32)に変更することに合意した(甲43,44,弁論の全趣旨)。 オ 被告は,本件契約2の期間満了日の翌日である平成10年4月1日以降, 本件土地2の占有を継続している(争いがない。)。 カ 被告は,その後,原告Bに対して,本件契約2の更新を申し入れていたが,原告Bは,平成11年2月15日,平成10年4月1日から平成11 年3月31日までの1年間に限り賃貸借することは認めるが,その後の延 長は認めない旨,被告に通知した(争いがない。)。キ 原告Bは,被告に対し,第2事件の訴状をもって本件契約2の更新を拒 絶する旨通知し,同訴状は,平成12年2月7日,被告に到達した(争い がない)。ク 本件土地2の賃料相当額は,平成10年4月1日時点で,年額496万 3438円である(甲43,44)。ケ 被告は,本件土地2の賃料として,平成11年4月1日から平成12年 3月31日分につき,平成12年3月10日,平成12年4月1日から平 成13年3月31日分につき,平成13年2月27日,それぞれ496万 3438円を秋田法務局に供託した(乙13,41)。(3) 第3事件について ア C外2名は,秋田市ef字fg番のhの土地を所有していた(争いがない。)。 イ C外2名は,Fを管理人とし,被告との間で,昭和55年4月1日,以下の内容の土地賃貸借契約を締結した(争いがない。)(以下「本件契約 3」という。) (ア) 目的物 前記土地のうち62平方メートル(以下「本件土地3」という) (イ) 使用目的 水路敷
(ウ) 賃貸借期間 昭和55年4月1日から昭和56年3月31日ま で。
 期間満了の1か月前まで,契約当事者から契約内容の変更または解約の申出のないときは更に1年
間継続することができる。以後の満了の場合におい ても同様とする。(エ) 賃料 1年当たり14万円 ウ 管理人Fは,被告との間で,昭和56年4月1日,本件契約3につき,賃料を1年当たり22万5480円とし,賃貸借期間を昭和57年3月31日までと改める旨合意した(争いがない。)。
 エ 被告は,昭和63年4月1日,本件契約1を締結したが,同契約の賃貸 借目的物である本件土地1内には,本件土地3のうち別紙図面3の第1工 区の部分(以下「第1工区部分」という。)が含まれていた。被告は,昭 和63年4月2日,第1工区部分の土地を道路敷地として含む本件道路を, 市道秋田駅東線として,供用を開始した(いずれも争いがない)。オ 被告は,C及び管理人Fに対し,平成11年1月20日,本件契約3を 本年度をもって終了させる旨通知した(争いがない。)。カ 被告は,第1工区部分に平成11年4月1日以降も下水道施設を有して いたが,平成12年6月6日から同月8日までの間,工事を行い,これを 撤去した(争いがない。)。3 争点 本件の主要な争点は,
(1) 本件土地1及び2は,道路法4条の適用を受け,私権の行使を制限される か。(2) 本件土地1及び2にかかる原告らの明渡請求は,権利の濫用に当たるか。
 (3) 本件土地1及び2の賃料相当損害金発生の有無。 (4) 第3事件について,原告Bに損害が発生しているか。の各点である。
4 各争点に関する当事者の主張 (1) 争点(1)(道路法4条の適用の有無)について ア 被告の主張(ア) 本件契約1は,本件土地1を50平方メートルを上空占有のみとし, その余の部分の土地を秋田市市道用地として使用するものとして,締結 されたものであるところ,被告は,争いのない事実等記載のとおり,本 件道路を道路法の道路として供用を開始したものである。したがって, 原告らとの賃貸借期間が満了したとしても,道路法上の道路の廃止がな されない限り,本件土地1の道路部分に関する原告らの私権の行使は道 路法4条の制限を受け,原告らは,明渡しを請求できない。(イ) 本件道路の市道認定手続に瑕疵はない。
 a 秋田市市道路線認定基準は,現に一般に供されている私道を市道路線に認定するための基準であり,新たに築造を要する道路については この基準は適用されないところ,本件道路は,昭和62年12月15 日から昭和63年3月26日までの期間に被告が築造工事を行い,同 月30日に完了検査し,同年4月2日,秋田駅の東西を架橋する通路 (以下同通路の呼称に従って「ウィロード」という。)とともに供用 を開始したもので,新たに築造した道路であるから,同基準違反の問 題は生じない。b 秋田市市道認定基準要綱も,現に一般に供用されている私道を市道 路線に認定するための基準要綱であるところ,本件道路は,新たに築 造された道路であるから,同基準要綱違反の問題は生じない。c 被告は,昭和63年4月1日,本件契約1により道路の敷地につい て権原を取得した。また,昭和63年4月2日の供用開始前に道路の 工事が完成し,道路としての物的施設が一般交通の用に供して差し支 えなく備わっていた。したがって,道路法18条に照らし,供用開始 処分に瑕疵があるとする原告らの主張は失当である。(ウ) 被告には,本件道路の供用廃止処分をした上で土地を原告らに明け 渡すべき義務はない。 a 本件道路を廃止すれば,付近の道路(市道明田山崎線)の交通の混雑に拍車がかかり,市民生活に重大な悪影響を及ぼす。 b 本件道路は,秋田駅東西連絡自由通路やウィロード等と接続して いるが,1日当たり,前者は2万から3万人程度の,後者は2000 から3000人程度の人々が利用する通路であり,今後も利用者の増 大も見込まれる重要な通路につながる道路であるから,供用を廃止す ることはできない。c 以上にように,本件道路には,市道路線としての高度の公共性・公 益性が存するから,これを一般交通の用に供する必要がある。したが って,道路法10条に規定する路線廃止の要件を欠く。d 路線の廃止手続には市議会の議決を必要とするところ,以上の交通 事情に照らし,市議会が賛同するとは考えられない。(エ) 信義則違反について a 期間満了・更新拒絶による本件契約1及び2の終了について 本件契約1及び2は,本件土地1及び2を,上空占有部分及び非道 路部分を除き,秋田市市道用地として使用するため締結されたもので ある。本件契約1では,賃貸借期間の契約満了後延長については協議 するものとするとされており,したがって,賃貸借期間が満了した後 も,道路法上の道路の廃止がなされない限り,原告らと被告との間に おいて,期間満了後の賃貸借期間や賃料を協議の上決定すべきものと 解される。したがって,本件契約1は終了していない。なお,本件契 約2は本件契約1に準じるものとして締結されたものであるから,本 件土地2にも同趣旨が妥当する。b 賃料不払による本件契約1及び2の解除について 被告は,平成10年3月末日の本件契約1及び2の期間満了にあたり,原告らに本件各契約の更新と賃料の確定を申し入れたが,原告ら は,この申入れを拒否し,現在に至っている。しかし,被告は,本件 土地1及び2に関して,前記争いのない事実等記載のとおり,賃料の 供託をした。本件契約1及び2によれば,本件契約1及び2にかかる 賃料は,原告らの請求により支払うものと規定されるところ,原告ら の被告に対する請求は,秋田市財務規則によれば請求書によって行わ れることを要するが,原告らは,この請求を行っていない。したがっ て,本件契約1及び2の賃貸借目的物件が土地であることに照らし, 本件契約1及び2にかかる賃料を各年度末までに供託すれば,被告に は債務不履行は生じないというべきである。また,被告は,原告らの 請求があれば,いつでも支払が可能な態勢にある。したがって,被告 には本件契約1及び2にかかる賃料不払の債務不履行はないから,原 告らは本件契約1及び2を解除ないし更新拒絶はできず,原告らの解 除ないし更新拒絶の意思表示は無効である。c 以上によれば,本件契約1及び2は,終了せず,解除もなされてい ない。よって,被告は,何ら原告らの主張するような信義則違反に相 当する行為を行っているものではない。イ 原告の主張 (ア) 本件土地1は道路法上の道路であるが,被告が本件道路を市道に認定した手続には,以下の瑕疵があるから,被告の供用開始処分は無効であり,本件土地1及び2は道路法4条の適用を受けない。 a 本件土地1が市道に認定された昭和63年3月30日当時の秋田市市道路線認定基準には,個人または共有の道路敷地または道路に付属 する施設もしくは工作物は,所有者から寄付により市に所有権移転で きるものであることを要する旨の条件があるところ,本件土地1は, 賃借されたものであるから,同条件に反していたという瑕疵がある。b 平成8年1月1日施行の秋田市市道認定基準要綱によれば,市道と して認定する道路は現に一般交通の用に供されている道路であること を要する旨の条件があるところ,昭和63年3月30日当時,本件土 地1は,原告Aの工場敷地で,周囲を柵で囲われ,構内に鉄道レール の跡が残り,同社の資材置き場になっており,現に一般交通の用に供 されてはいなかったから,同条件に反していたという瑕疵がある。c 前記bの事情によれば,本件道路は,供用開始時には,道路として 物的施設が一般交通の用に供して差し支えない程度に備わっていなか ったものであるから,被告の供用開始処分は,道路法18条にも反し ていたという瑕疵がある。(イ) 被告には,契約上,本件土地1の供用廃止処分をして原告らに本件 土地1を返還すべき義務がある。 被告は,本件契約1において,原告らに対し,期間満了後本件土地 1を原状回復の上原告らに明け渡すことを約したものである。そして, 被告は,市道認定した上で,本件土地1につき原告らと賃貸借契約を締 結したのであるから,明渡時に本件土地1の供用廃止処分をすることが 契約の内容になっていたものである。(ウ) 信義則違反(被告の道路法に基づく土地明渡拒否について) a 私人の土地を道路として供用を開始するには,その前提として権原の取得が必要である。その後,道路管理者がこの権原を喪失し,かつ, その喪失の原因につき道路管理者自身に帰責事由があり,しかも,自 ら供用廃止処分できる立場にある場合は,信義則上,道路管理者には 土地につき供用廃止処分をして権利者に返還する義務があり,かかる 道路管理者が道路法4条を根拠として返還を拒絶することは許されな いというべきである。b 本件契約1は,契約が終了し,被告は本件土地1に関する権原を喪 失したものであるところ,その権原喪失を生じたのは,被告が,原告 らに対し,本件土地1に対する代替地を提供せず,賃料を支払わなか ったことによるのであり,かつ,被告は,道路管理者として,自ら本 件土地1の供用廃止処分をなし得る立場にある。c したがって,被告が道路法を根拠として本件土地1の返還を拒絶す ることは,信義則上,許されない。(エ) 本件土地2が道路法4条の適用を受けないことについては,前記(ア) ないし(ウ)と同旨である。(2) 争点(2)(権利濫用)について ア 被告の主張
(ア) 本件土地1及び2のうち道路部分について 以下の諸点に照らすと,原告らによる第1及び第2事件の道路部分の 明渡請求は,いずれも権利の濫用である。
 a 被告は,昭和63年5月2日,土地所有者代理人としてのCとの間で,本件契約1にかかる市道用地内に設置された広告板について,設 置料金を支払うことを約した。同契約によれば,当該広告板の設置期 間及び期間の延長について,本件契約1に基づくものとされている。 そして,当該権利義務を承継した原告Bは,平成10年4月以降も, 広告板設置料金について,支払の請求をし,被告から設置料を受領し ている。 このように,一方で契約期間の延長を認める行為をしておきなが ら,他方でこれを否定する主張をすることは,矛盾する行為として許 されない。原告ら自身,本件契約1及び2の契約期間を賃料の据置期 間と認識しているにすぎないともいえる。b Cは,平成12年2月,本件道路に面する自己所有地に,屋外広告 物法に基づく秋田市屋外広告物条例による許可を得ない違法な2枚の 看板を設置した。同人は,その看板の一つに,本件訴訟と同じ内容の 主張を記載し,裁判以外の場で違法な手段を使って自己の主張を訴え ている。この看板の設置は,正当な権利行使の範囲を逸脱しているも のである。また,もう一つの看板には,「秋田市の不公平な土地区画 整理事業は絶対反対」と題した記載があるが,同人が秋田都市計画秋 田駅東拠点地区土地区画整理事業における土地区画整理審議会委員と いう公的立場にあるにも関わらずとられた行動であり,遺憾である。c Cは,前記審議会の委員を選挙する選挙人名簿を作成する平成8年 4月4日の直前の同年3月26日,親族に自己所有土地面積のうちわ ずかの割合を贈与し,投票権を1票から実質13票として,委員の定 数10名のところ,親族3名及び原告Bとともに,自らも審議会委員 に選出させた。加えて,この贈与によって複雑な共有関係が生じたた め,被告は,換地設計上,困難な作業を強いられている。d Cは,平成9年12月の審議会招集以来,12回にわたり会を欠席 し,審議会を流会させ,これにより,換地計画,仮換地の指定等に関 する事項についての話合いの場がことごとく奪われている。このよう に,Cは,地権者としての地位を濫用している。e 前記土地区画整理事業によれば,本件土地1及び2は平成13年度 中に仮換地の指定が行われる予定であり,また,本件道路の代替機能 を有する道路の築造も予定されている。被告としては,迂回道路が整 備される平成15年度ころまでは本件道路を存続させるために敷地部 分の賃貸借を継続する必要がある。他方,原告らは,同土地の自身に よる使用について何ら主張するところがない。f 本件土地1及び2の道路部分の明渡しは,実質的に多くの市民の日 常生活に多大な迷惑がかかる事態を招来することが明らかで,原告ら の本件各土地明渡請求は公共の利益に反する。(イ) 本件土地1の非道路部分について 本件土地1には本件道路の敷地でない部分が存在するが,同部分は, ウィロードの東側階段部分を占めている。被告は,同部分をウィロード の東側階段を設置するために秋田駅東線の路線と一体的なものとして借 り受けたものであって,ウィロードが存続する限り,その上空占有等を 継続する必要がある。したがって,同部分に対する原告らの明渡請求は, ウィロードの構造等を勘案すると,著しく公共の利益に反し,権利の濫 用に当たる。イ 原告らの主張 以下の事情によれば,原告らの本件各土地明渡請求は,権利の濫用とはならない。 (ア) 被告は,Cとの間で,昭和59年12月25日及び昭和62年2月23日,被告が,本件土地1所有者らに対し代替地を提供することを条 件に,本件土地1を市道用地として提供する旨に合意し,当面の措置と して,本件契約1が締結された。しかるに,被告は,本件契約1の賃貸 借期間が満了した後も代替地を提供せず,本件土地1の明渡しも拒絶し, かつ,賃料も支払わないものである。(イ) 被告は,Cとの間で,昭和62年2月23日,「秋田駅東地区の整 備に関する覚書」を交わし,本件土地1とは別の本件土地1所有者らの 土地についても,秋田駅東地区において被告が実施する「公共事業を実 施するにあたり,必要とする公共用地の取得等については買入もしくは 代替地の提供,交換または有償借用をもって対処するものとする。また, 土地区画整理事業に伴う減歩及び清算金の請求は行わないものとする」 旨,及び,「詳細については,事業実施時において別途協議し,両者の 文書による合意の上施行するものとする」旨を約した。 その後,平成6年2月ころまでは,被告は,同覚書の履行について具 体的な話合いをしてきたが,同年9月2日,Cに対し,突如一方的に, 本件土地1所有者らの土地は土地区画整理事業の対象となるとして,同 覚書の破棄を通告し,Cの抗議に耳を貸さずに土地区画整理事業を進行 させた。(ウ) 被告は,Cとの間で,昭和63年4月1日,秋田駅東西歩道橋取付 道路のうち,Cの所有地に隣接する区間について,道路位置の変更をし ないこと,仮称東口駅前広場内に今後含まれるCの所有地については所 権の移転変更をしない,ただし,Cは,広場としての使用に際し,協力 するものとすることを,覚書として取り交わした。 しかし,被告は,同覚書についても,平成6年9月2日,突如一方的 に破棄を通知し,実際に前記覚書に反する行為を計画している。(エ) 被告は,当初から,代替地の提供,減歩・清算金を行わないこと, 所有権の移転変更を行わないこと等という甘言をもって,本件土地1所 有者らに被告の事業に協力させた上,いったん道路用地を確保したあか つきには,永久にこれを返還せず,かつ,約束を反故にして土地区画整 事業を強行するとの意図の下,前記各覚書を交わしたものである。 同各覚書の内容及びその後の経過に鑑みれば,被告と本件土地1所有 者らとの間には,各覚書の履行について強度の信頼関係が生じていたも のであり,被告がこの信頼関係を覆すことは,信義則・禁反言の法理に 照らし許されないところ,被告は,一方的に各覚書を破棄したものであ って,原告らと被告との間の信頼関係を破壊した。このことにより,原 告らは,被告に本件土地1の明渡しを求めるものであり,したがって, 原告らの本件各請求が権利の濫用に当たることはない。(オ) 本件土地1所有者らが,秋田駅東地区の開発に賛同し,多大な貢献 をしてきた点に照らせば,本件各請求が権利の濫用に当たることはない。(カ) 本件土地1の北側に続いて延びている市道は,被告が,昭和63年 3月13日,営林局から買収により取得した土地である。被告は,営林 局からは土地を買収し,本件土地1については,買収もせず,代替地も 提供せず,さらに,土地の返還もしないものであるが,あまりにも不公 平な扱いというべきである。(キ) 被告が本件土地1を返還して本件道路を廃止しても,別の道路が存 在するから,交通への影響は少ない。また,本件道路が返還されたとし ても,平成9年4月,秋田駅新駅舎竣工に伴い,秋田駅東西連絡自由通 路が開設され,駅東西間の通行は主に同通路が利用されているから,歩 行者への影響は少ない。(ク) 本件土地2については,本件道路敷地部分に関しては,前記(ア)な いし(キ)と同旨であり,それ以外の部分については,同土地は排水路自 体必要か疑わしいほか,必要としても,本件土地2が必須の土地ではな いから,その明渡しは権利の濫用に当たらない。(3) 争点(3)(賃料相当損害金発生の有無)について ア 原告らの主張 本件土地1の賃料相当損害金は,原告秋田につき,1か月202万77 09円,原告Bにつき,1か月101万3854円である。また,本件土 地2の賃料相当損害金は,1か月41万3619円である。イ 被告の主張 前記のとおり,本件契約1及び2は存続している。また,被告は,前記のとおり,本件土地1及び2の賃料を供託している。 (4) 争点(4)(第3事件における原告Bの損害)についてア 原告Bの主張 (ア) 本件契約3は,平成11年3月31日をもって終了したものである。また,被告は,原告Bに対し,同日までに,下水道施設の撤去工事を完 了させることを約していた。したがって,被告による第1工区部分の占 有は,同年4月1日以降,不法なものであり,原告には賃料相当の損害 が発生している。(イ) 被告は,第1工区部分を同年4月1日から平成12年6月5日まで, 無断で下水道施設を埋設して使用していたが,同期間の賃料相当損害金 額は6万8710円である。また,被告は,同月6日から同月8日まで, 第1工区部分を埋設物を撤去するに際し無断で使用したが,同期間の無 断使用料相当額は1万4208円である。(ウ) よって,原告Bは,被告に対し,8万3628円及びこれに対する 平成12年6月9日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延 損害金の支払を求める。イ 被告の主張 第1工区部分は,被告が昭和63年4月2日から道路法上の道路として 供用を開始した本件道路の一部であるから,無断使用には当たらない。第3 判断
1 争点1(道路法4条の適用の有無)及び2(権利濫用)について (1) 原告らは,本件契約1及び2の終了又は解除による本件土地1及び2の明渡しを求め,被告は,道路法による私権行使の制限又は権利の濫用を主張するので,まず,この点について判断する。
 (2) 証拠(甲1ないし20,22の2,23ないし25,28,29,34ないし44,47ないし53,63,65,68ないし84,乙1ないし3の各1及び2,4ないし6,17, 22,24の1及び2,30の1及び2,31,32,34ないし37,39,44の1ないし 3,証人G及び同H,原告ら代表者本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下 の事実が認められる。 ア 被告は,秋田駅東地区の人口増加に連れ,秋田駅の東側を改札口のある秋田駅の西側と連絡させる必要が生じたため,秋田駅東西連絡地下道,そ れに接続する市道及び駐車場整備の検討を行い,同付近土地の所有者であ るCらと交渉するようになった。イ 被告は,当初,同人らとの間に,秋田駅東西連絡地下道に関し,地下道 等と接続する道路の用地提供につき代替地を提供する旨の昭和59年12 月25日付け覚書を取り交わしたが,その後,当時の国鉄の関係者らとの 協議により,秋田駅の東西を,地下道ではなく,地上連絡路によって連絡 することとなったことから,昭和62年2月23日,その変更に沿って覚 書の変更を行った。被告の担当者は,道路用地として土地の買収も申し出 たが,C側は,土地を売るつもりはないが,開発には協力したいから道路 とすることは構わない旨返答した。ウ 被告は,本件にかかる土地所有者らの同意を得たことから,本件道路の 築造にかかり,昭和62年12月ころから昭和63年3月26日ころまで に道路を完成し,同月30日までにその検査を済ませた。エ 被告は,昭和63年4月1日,本件契約1を締結した上で,翌2日,本 件道路を市道と認定した。なお,被告の担当者は,本件契約1の締結に際 し,代替地問題等については,賃貸借期間が満了する10年後までに,再 度,原告らと協議することを想定していた。オ 被告は,土地所有者代表兼土地管理者代表としてのCとの間で,本件道 路とは別に,その所有地にかかる秋田駅東地区の整備に関して,いくつか の覚書を交わしており,昭和62年2月23日には,被告が行う土地区画 整理事業につき,減歩や清算金の請求は行わない旨の覚書を交わした。被 告も,当初は,これらの覚書に則る形で秋田駅東地区の拠点整備事業を検 討していたが,その後,平成6年9月2日付けで,Cに対し,土地区画整 理法に基づき事業を実施するため,従前の覚書に関連する事項が履行でき なくなった旨を告知し,実際にも,換地計画等を進展させている。カ Cらは,秋田駅東地区の区画整理事業における土地区画整理審議会の委 員の選任に当たり,関連する土地の所有権の一部を親族に贈与して当該委 員選任の選挙における投票権を確保し,原告B,親族3名及びC個人を同 審議会の委員に当選させた。その後,同人らは,開催される審議会を欠席 し,審議会は流会を重ねている。キ Cは,平成10年5月7日,被告に対し,被告による覚書の不履行を問 題として,同人らと被告との間の土地賃貸借契約の更新を拒絶する場合が ある旨を告知した。ク 平成11年7月に実施された市内主要商業地通行量調査によると,ウィ ロードの通行量は,日曜で3000人,月曜で2000人を数え,秋田駅 東西連絡自由通路(秋田駅の南側の東西駅前をつなぐ地上通路で,東側で 本件道路と接続している。)の通行量は,1日当たり2万人を越えている。 また,本件道路は,路線バスが運行され,その他の車両の通行量も少なく なく,その近辺には,駐輪場,駐車場が設けられ,多数の車両が駐車され ている。ケ 原告らないしは土地所有者らは,本件土地1及び2の明渡しを受けた後 の各土地の利用方法について,今のところ特に考えてはいない。(3)ア 前記争いのない事実等と以上の認定事実によれば,本件道路は,秋田駅 北側の東西駅前を結ぶウィロード及び同駅南側の高架式連絡通路である秋 田駅東西連絡自由通路と接続し,かつ,秋田駅東側の開発の進展に伴って, 被告及び秋田市民にとって重要な道路となったものであり,その存続の要 請は非常に高いものと認められる。また,本件土地1の非道路部分は,ウ ィロードの昇降部分が存立するための敷地であって,ウィロードと接続す るという本件道路の存在意義において不可欠な土地であり,本件道路と機 能的に一体をなす部分といえ,その公共性は高いものといえる。さらに, 被告は,本件土地1及び2に対して,原告らとの合意に基づく賃料を支払 ってきたものであり,かつ,本件契約1及び2の期間満了後も,従前の賃 料額と同額の金員を供託し続けており,かつ,今後も支払の意思及び能力 を有していると認められ,原告らは,相当額の補償を受けられる立場にあ る。イ 他方,前記によれば,原告らは,本件土地1について,現段階では特段 これを使用する差し迫った必要性がなく,また,原告らは,当初,本件契 約1の代替地問題に関してではなく,主として秋田駅東側周辺の整備事業 に関する覚書の不履行についての不満を持ち,これに関連して,本件契約 1及び2の更新を拒否したものと認められる。ウ(ア) さらに,本件道路の市道認定手続について考察するに,平成8年1 月1日に実施された秋田市市道認定基準要綱(甲29)は,市道として認 定する道路が現に一般交通の用に供されている道路である場合に適用さ れる規定と認められ,また,同要綱によって,従前の秋田市市道認定基 準(甲28)が廃止されていることに照らし,同基準も同要綱と同旨の規 定であると推認されるところ,前記認定事実によれば,本件道路は,被 告が必要と判断して被告自らが築造した道路であって,現に使用されて いる道路を市道と認定したものではないと認められるから,同基準及び 同要綱は本件道路には適用とならない。よって,本件道路を市道と認定 した手続につき,同基準及び同要綱違反の問題は生じないものというべ きである。(イ) また,一般に,道路法18条2項にいう道路の供用を開始するには, 道路の管理者が所有権等の権原を取得し,かつ,道路としての物的施設 が一般交通の用に供しうる程度に備わっていることを要すると解される ところ,前記認定事実及び争いのない事実等によれば,本件道路の道路 管理者となる被告は,本件契約1及び2の前身の契約により,本件土地 1及び2のうちの本件道路敷地部分につき賃借権を取得しているほか, 本件道路は,昭和63年3月30日までに道路の検査を受け,同年4月 2日,道路として供された際に実際に通行が開始されたものと認められ る。この点,原告らは,同年3月30日当時,本件土地1は工場の資材 置き場であった旨主張し,これに沿う証拠として図面(甲30)を提出す るが,前記認定を覆すに足る証拠とは認められない。以上によれば,本 件道路が道路法18条に反して道路として供用されたとも認められない。(ウ) 加えて,被告は,少なくとも本件契約1及び2当初は,代替地提供 を実際に念頭に置いて行動していたものであるし,秋田駅東側周辺の整 備事業に関する覚書についても,平成6年ころまでは,その履行に向け て真摯に対処しようとしていたというのであるから,本件契約1及び2 が,原告らが主張するように詐欺的に締結されたものでないことは明ら かである。さらに,原告らは,営林局の土地が買収されたこととの不均 衡を主張するが,原告らあるいは本件土地1及び2の各所有者らは,そ もそも本件各土地を売却する意思はなかったものであるから,両者の均 衡を考える余地はない。(エ) 以上によれば,道路管理者となる被告は,権原に基づき,議会の議 決という手続(道路法8条2項)を経て,本件道路を市道として認定し, 用に供したものと認められ,その手続内に瑕疵は認められない。エ 以上に照らせば,本件土地1及び2についての賃貸借契約は,これを更 新する旨の合意が成立していない以上,期間満了によって終了したものと 認めざるを得ない。被告としては,本件道路の市道認定に際して,道路用 地部分の所有権を取得できずに,10年の賃借権という永続性のない権利 設定しかなし得なかったものであるから,約定の10年以内に,道路用地 部分を買い受けるなり,代替地を提供するなどして,道路用地部分の所有 権を取得するか,少なくとも賃貸借契約を更新する旨の合意を取り付ける などして,無権原による道路用地占有の状態を招来しないための努力を尽 くすべきであって,これが成就しないために最終的には道路廃止のやむな きに至ることも当然に覚悟すべきものではある。 しかしながら,前記のような本件道路の高度の公共性や市道認定に際 しての経緯に加えて,本件契約1及び2には賃貸借期間の契約満了後延長 については当事者間において協議すべき旨が合意されていたのであるから, 賃貸借期間の契約満了に際しては,原告らにおいても,被告との間で,そ の解決に向けて誠実に協議すべき義務があるというべきであって,現段階 では特段これを使用する差し迫った必要性がないにも拘わらず,主として 秋田駅東側周辺の整備事業に関する覚書の不履行に対する不満から,直ち に本件土地1,及び本件土地2の道路部分の明渡しを求めていることに鑑 みると,これは権利の濫用として許されないものといわなければならない。 原告らが縷々反論する点は,いずれも前記認定,判断を覆すに足りるもの とは解し得ない。(4) 他方,前記争いのない事実等によれば,本件土地2の非道路部分について は,原告Bが,本件契約2の期間満了後の平成11年2月15日,同年3 月31日までの本件契約2の延長には応じるが,その後の期間延長に応じ ない旨を被告に通知したことが認められるから,本件契約2は,同日で終 了したものと認められ,その明渡しが権利の濫用と認められるような事情 もない。2 争点3(賃料相当損害金発生の有無)について (1) 原告らの本件土地1及び2の道路部分の明渡しが認められないことは判示のとおりであるが,被告は原告らの被った賃料相当損害金については,これ を支払う義務がある。 そして,被告は,前記のとおり,本訴提起後,本件土地1及び2につき, 平成13年3月31日までの賃料の供託を済ませている。 本来,賃料と賃料相当損害金とはその性質を異にするから,賃料として の供託によってただちに賃料相当損害金の支払義務が免除されるものではな く,ただ,賃貸人が,黙示の更新と評価されないよう賃借人にその旨告知し た上で,供託金の還付を受けていたような場合には,賃料相当損害金の支払 に充当される(還付時に,賃料相当損害金として受領する旨の留保を付すこ とは,供託金還付行政を混乱させるもととなるものであり,仮に,供託官が このような申し出を却下したとしても,止むを得ないところであろう。)こ とがありうるというに止まるはずである。しかしながら,本件のごとく,賃 貸借契約の終了が争われ,裁判上,終了が認定されたにもかかわらず土地明 渡請求が権利の濫用として許されないと判示されるような例外的な場合で, かつ,賃借人たる被告が,本件訴訟において,賃貸借の継続を前提とする主 張のみを維持している関係上,同訴訟において「賃料又は賃料相当損害金」 との名目で供託することができず,単に「賃料」として供託されたような場合には,これを賃料相当損害金の趣旨で賃貸人が受領したとしても,黙示の 更新と評価されることはなく,また,供託した賃借人としても,賃貸借契約 の存続が認められなかった場合には,賃料相当損害金として支払う意思であ ったことも裁判上明らかであるから,本件の各供託をもって,平成13年3 月31日までの賃料相当損害金の支払義務は免除されたものというべきであ る。ただし,被告は,同年4月1日から口頭弁論終結日である同年10月2 2日まで(205日間)の賃料相当損害金として,原告Aに対し,本件土地 1につき1366万6206円,原告Bに対し,本件土地1につき683万 3103円及び本件土地2の道路部分(66.3平方メートル。甲43,乙32 及び弁論の全趣旨)につき45万8847円の合計729万1950円の各 支払義務を負っているものというべきである。 なお,その後の賃料相当損害金の支払義務に関しては,権利の濫用とし て現在の明渡請求が棄却された以上,明渡期限が定かではなく,かつ,他方 で被告にはその支払意思及び能力とがある以上,将来の給付の訴えとしては, その必要性を欠き,訴えの利益がないから不適法である。(2) 本件土地2の非道路部分については,前記のように,被告は,本件契約 2の終了に基づき明渡義務があるから,契約終了の翌日である平成11年4 月1日から当該非道路部分の明渡済みまで,原告Bに対して当該部分に応じ た賃料相当損害金を支払う義務があるものと認められる。 そして,証拠(甲43,乙32)及び弁論の全趣旨によれば,本件土地2の 非道路部分の土地の面積は336.50平方メートルと認められるから,1 か月あたりの賃料相当損害金は34万5539円であると認められる。なお, 前記と同趣旨により本件各供託が充当されるので,支払請求の始期は平成1 3年4月1日となる。3 争点(4)(第3事件における原告Bの損害)について 第1工区部分は本件土地1内の本件道路の敷地部分に当たることは当事者間 に争いがないところ,被告が占有ないし使用したとされる平成11年4月1日 から平成12年6月8日までの間の賃料相当損害金は前記のとおり既に供託済 みである。また,この間,この部分が道路法の道路として供用されたことには 争いがなく,下水道施設の撤去工事に本件道路を使用することも,道路管理権 に基づく占有使用にすぎないから,その余の事情を判断するまでもなく,原告 Bには,突然土地を無断で使用されたとする実害が生じていないことが明らか である。第4 結論 以上の次第で,本訴第1事件は,原告らの賃料相当損害金の支払請求は,本 件口頭弁論終結日である平成13年10月22日までの分については,原告A につき1366万6206円,原告Bにつき683万3103円の限度で理由 があるから認容し,その余は失当として棄却し,同月23日以降の将来請求分 は不適法として却下し,土地明渡請求は理由がないから棄却し,本訴第2事件 は,土地明渡請求は,本件土地2の非道路部分の土地(前記336.5平方メ ートル。主文掲記の部分)については理由があるから認容し,その余は失当と して棄却し,賃料相当損害金の支払請求は,道路部分(前記66.3平方メー トル)につき,本件口頭弁論終結日である同月22日までの分については45 万8847円の限度で理由があるから認容し,その余は失当として棄却し,同 月23日以降の将来請求分(面積比により金額を按分すると1か月6万808 1円の割合による金員の支払を求めている。)は不適法として却下し,非道路 部分につき,平成13年4月1日から同部分の土地明渡済みまで,1か月34 万5539円の割合による金員の支払を求める限度で理由があるから認容し, その余は失当として棄却し,本訴第3事件は,理由がないから棄却することと して,主文のとおり判決する(なお,事案に鑑み,仮執行宣言は付さないこと とする。)。(別紙物件目録,同図面の添付省略)
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