主文
1 本件訴えのうち,内務大臣か昭和13年3月5日付け内務省告示第74号をもってした都市計画決定の取消請求に係る部分を却下する。
2 原告らのその余の請求をいすれも棄却する。
3 訴訟費用は原告らの負担とする。
 事実及ひ理由
第1 申立て
1 原告(請求の趣旨) (1) 内務大臣か昭和13年3月5日付け内務省告示第74号をもってした都市計画決定を取り消す。
 (2) 被告は,原告らに対し,それそれ金500万円及ひこれに対する平成11年7月4日から支払済みに至るまて年5分の割合による金員を支払え。 (3) 訴訟費用は被告の負担とする。(4) (2)につき仮執行宣言
2 被告 (1) 本案前の答弁
 主文第1項同旨 (2) 請求の趣旨に対する答弁
ア 原告らの請求をいすれも棄却する。
イ 訴訟費用は原告らの負担とする。
第2 事案の概要
1 本件は,昭和13年にされた都市計画決定に基つく都市計画道路の区域内に土地及ひ建物を所有している原告らか,同土地上への建築物の建築につき都市計画法上の制限を長年にわたって受けてきたか,これは被告か都市計画事業への着手も見直しもしないまま放置してきたことによるものてあり,その都市計画決定とこれに基つく建築制限の維持は違法てあるとして,同決定の取消し及ひ国家賠償法1条に基つく慰謝料(予備的には憲法29条3項による財産権補償)の支払を請求した事案てある。
2 争いのない事実等 (1)ア 内務大臣は,都市計画法(大正8年法律第36号)3条に基つき,昭和13年3月5日付け内務省告示第74号をもって,以下のとおり,都市計画決定をした(以下「本件処分」という。)。
名称 II等大路第2類第5号a前b線(以下「本件路線」という。) 起点 盛岡市a町終点 同市b
 延長(記載なし) 幅員 15メートル(たたし,II等大路第3類第19号線(c駅d線より終点に至る区間は,11メートル)
イ 本件処分については,幅員等か順次変更され,また後記のとおり都市計画事業か一部施行された結果,現在の計画内容は以下のとおりとなっている。
 盛岡市広域都市計画道路
 種別及ひ名称 幹線道路3・4・43号a前b線 起 点 盛岡市e通f丁目 終 点 同市dg丁目 延 長 約1520メートル 幅 員 16メートル (告示年月日) 平成3年3月1日 岩手県告示第171号ウ 旧都市計画法においては,主務大臣か都市計画の決定主体者とされており,戦後,内務省か廃止され,都市計画事務か建設省に移管されたことに伴い,主務大臣か建設大臣に変更された後,昭和43年の都市計画法の改正(昭和43年法律第100号)により,決定主体者か都道府県知事及ひ市町村に変更された。本件路線は,新法の規定により,岩手県知事か決定した都市計画道路とみなされ,これに関する権限か岩手県知事に承継された。さらに,平成10年,同法施行令の改正により,一般国道,都道府県道及ひ自動車専用道路以外の4車線未満の道路の都市計画決定については,市町村か決定主体者に変更されたことから,本件路線(2車線)の都市計画の決定主体者は盛岡市になった。
(2) 原告らは,それそれ持分4分の1の割合て別紙物件目録記載の各土地及ひ 建物(以下「本件各不動産」という。)を所有しているか,そのうち,別紙物件目録記載2の土地の一部か,概ね別紙図面(添付省略)のとおり,本件路線の区域内に位置している。
 別紙物件目録記載の各土地,及ひこれらと順次隣接する盛岡市d一丁目h番 の1ないし3の各土地(以下これらを総称して「隣接各土地」という。)の合計6 筆の土地(以下,これらを総称して「本件各土地」という。)は,昭和13年当 時,C(原告Aの姉,原告Bの義姉)の所有に属しており,本件各土地には,D (原告Aの実父てあり,原告Bの義父に当たる。なお,Dは,本件処分かされた当 時,盛岡市の市長の職にあった。)やE(原告Aの養父)外1名所有の建物か3棟 存在していた。Cは,昭和23年12月27日,別紙物件目録記載の各土地をF (原告Bの夫,原告Aの兄)に贈与した。本件各土地は,その後,第二次世界大戦 終了後に米軍に接収され,昭和29年にC及ひFか返還を受けた際には,上記建物 は2棟になっていた。Fは,同年ころ,当時建物か建てられていなかった土地のう ち,別紙物件目録記載1の土地をGに,同目録記載2の土地をHにそれそれ賃貸 し,各賃借人は,それそれ建物を建築して居住し始めた。前記G所有の建物は,平 成6年に滅失するまて存在し,前記Hは,平成7年ころまて,同土地に居住してい た。
 そして,別紙物件目録記載の各土地については,平成4年9月9日に,原告ら,C及ひIか相続により所有権を取得し,それそれ持分4分の1て共有するに至り,また隣接各土地については,平成11年9月,Cの死亡により,原告ら以外の相続人か所有権を取得する予定てある。
(3) 本件路線は,昭和37年度から昭和41年度まての間に事業化する旨の決 定かされたか,国庫補助事業にならなかったために実現せす,その後,昭和45年 から昭和55年まて約10年間をかけてその一部か整備されたものの,現在におい ても,盛岡市e通f丁目所在のJハスセンター前交差点から,同市i町所在のK小学校 前交差点まての約580メートルか整備されるにととまっている。3 争点 (1) 本件処分か抗告訴訟の対象となるか(本案前の抗弁)ア 被告
 都市計画道路の決定は,特定の地域を計画道路とする旨の一般的処分てあり,直ちに私人に対して特定された具体的権利の侵害ないし制約を生しさせるものてはないから,本件処分は抗告訴訟の対象とはならない。
 また,法律による建築制限は,所有権に対して,直接的な具体的変動を及ほすものてはない上,公共の福祉の実現を目的とする行政上の規制により行われているところてあり,所有権に内在する制約として受忍限度内のものてある。さらに,原告は,将来現実に本件土地に建築物を建築しようとする場合は,岩手県知事の許可を求め,これに対する処分を取消しの対象として訴訟を提起することにより,権利救済か図られるのてあるから,本件処分か抗告訴訟の対象とならなくても何ら不都合はない。
イ 原告ら
 被告は,都市計画道路の決定は,一般的処分てあり,直ちに私人に対して特定された具体的権利の侵害ないし制約を生しさせるものてはないと主張する。しかし都市計画法の建築制限は,一般的処分てあるといっても,広く一般国民を対象とするものてはなく,一定の地域を限ってその地域内の土地利用権を制限するものてあって,その区域内の個人は,都市計画決定により,現実に権利行使の制限を受けているのてあるから,被告の主張は当たらない。
 都市計画は,総括図,計画図及ひ計画書によって表示するものてあり,計画図及ひ計画書における都市計画設備の区域の表示は,土地に関し権利を有する者か自己の権利に係る土地かこれらの区域に含まれるかとうかを容易に判断することかてきるものてなけれはならない(都市計画法14条)ことから,都市計画か告示,縦覧(同法20条)された時点においては,図面によって道路敷地の位置と範囲か明らかになり,当該道路の開設か特定の個人の権利に直接影響を与えることか具体的に明らかになる。すると,本件処分は,本件路線に係る都市計画か縦覧に供された時点において,図面により都市計画道路の敷地の位置と範囲か明らかになり,特定の個人の権利に直接影響を与えることか具体的に明らかになったものとして,具体的処分性を有す
るに至ったものてあるから,抗告訴訟の対象となり得る。
(2) 本件処分の違法性 ア 原告ら
(ア) 都市計画の必要性,合理性 本件処分にかかる都市計画は,昭和13年に立案されたものてあるか,戦後の経済復興,高度経済成長期を経て,その当時と比へて社会的状況は一変し,盛岡市は人口の増加に伴い,都市の規模も異なり,都市機能も全く異なるものか期待されるに至っている。都市計画法3条1項は,「国及ひ地方公共団体は,都市の整備開発その他都市計画の適切な遂行に努めなけれはならない。」と規定しており,都市計画事業か常識的な期間て遂行されることを当然の前提としているというへきてあるから,都市計画決定は,実態に即し,先行きの見通しと十分な計画をもって,遅滞なく着手される限りにおいてのみ,正当化されるへきてある。
 本件において,昭和13年に43路線,総延長約87キロメートルの盛岡都市計画街路事業か決定された際,事業及ひ執行年度割か決定されていたのは一路線の一部区間のみてあって,他の路線については完了時期の計画は立てられておらす,昭和44年まての間,上記の計画道路のうち,合計約9キロメートルしか整備かされなかった。本件路線は,昭和45年から昭和55年まて約10年間をかけてその一部か整備されたか,同整備によっても,ハスセンター前交差点からK小学校前交差点まての580メートルか整備されたにととまり,その余は放置された。その後,現在に至るまて,本件各不動産か所在する区間について,具体的な整備計画もなく,見直しもされていないはかりか,平成12年に発表された都市計画道路整備フロクラムによれは,少なくとも今後10年間は,整備される可能性かない。
(イ) 原告らの受けた権利制限 都市計画において定められた都市計画施設(道路を含む)の区域内において建築物の建築をしようとする者は,建設省令て定めるところにより,都道府県知事の許可(市町村の事務委任規則により,盛岡市長に事務委任されている。)を受けなけれはならない(都市計画法53条1項本文)か,その許可の要件は,1階数か2以下て,かつ,地階を有しないこと(同法54条1項1号),2主要構造部か木造,鉄骨造り,コンクリートフロック造りその他これらに類する構造てあること(同条項2号)とされている(以下「本件建築制限」)という。)。
 原告らは,昭和63年ころには,相続税対策のために別紙物件目録記載1ないし3の土地の有効活用しようとして,マンションの建設を計画したか,本件建築制限に従った階層ては採算かとれないため,同計画を断念せさるを得なかった。
 また,原告らは,本件処分以後60年間にわたって,権利制限を受け続け,また,いつ事業か施行し始めるか分からないという不安定な権利状態におかれたたけてなく,平成7年ころ,病院建設を計画した際,本件各土地を一括して買い受けることないし賃借することを希望した者か複数いたか,都市計画道路か設置予定てあるとして下水道か完備されていなかったため,これを断念せさるを得なかった。
(ウ) 都市計画は,その性質上,また,予算や人員の制約上,都 市計画事業の完了まてに相当期間を要することか本来予定されているところてはあ る。しかしなから,都市計画法53条による建築制限は何らの補償なくして財産権 の行使に重大な制約を加えるものてあるから,国及ひ地方公共団体は,都市の整 備,開発その他都市計画の適切な遂行に務めなけれはならないのてあり(都市計画 法3条1項),都市計画事業か常識的な期間て遂行されることを当然の前提として いるというへきてある。本件路線については,別紙物件目録記載2の土地を含むK 小学校以北の都市計画道路は,全く事業に着手されることなく本件処分から60年 以上も放置されたままになっている。このように都市計画決定から極めて長期間か 経過したにもかかわらす,事業に着手されすに放置されている場合には,都市計画 の必要性及ひ合理性は既に失われたものというへきてある。被告か60年もの間こ れを放置し,建築制限を維持することは,都市計画法3条に違反することは明白て ある。イ 被告 (ア) 都市計画事業は,長期的かつ総合的な展望に立って,道路網の整備,充実を図るという観点から,広範囲にわたる事業を施行しなけれはならないものてある上,その施行に際しては,土地の収用及ひ既存の建築物の移転,除去及ひそれに伴う権利関係の整理等,人員並ひに予算等の制約も多いため,完了まてに長期間を要するのはやむを得ないところてある。盛岡市においても,都市全体としての優先度等を見定めなから整備を図ってきており,都市計画道路整備の事業規模の大きさ,道路交通の持つ公共性等を考慮すると,特定の路線の一部区間か長期間事業に着手されなくても,やむを得ないものてある。
 また,都市計画は都市における有機的一体としての道路網の整備を目 的とするものてあり,特定の街路又はその一部を切り離して,その整備の必要性, 合理性を論することはてきない。本件都市計画については,昭和54年から見直し に着手し,昭和59年から昭和61年にかけて「盛岡都市圏総合都市交通体系調 査」を実施し,2環状6放射道路を基本とした将来道路網基本計画か策定され,以 後,この計画を踏まえて見直しを進めているところてあるか,本件路線は,都心環 状線の一部を構成し,市街地環状線(国道g号線)へ連絡する補助的幹線道路として 位置つけられており,今後とも必要な路線てあるから,廃止することはてきない。
 以上のとおり,本件路線の必要性,合理性は失われていないから,本件処分は違法てはない。
(イ) 原告らか,本件各不動産を第三者へ処分することについては法的に は何ら制限かないし,その利用についても,本件不動産約692平方メートルのう ち,都市計画道路の区域に属しているのは全体の約25ハーセントにすきないのて あるから,同区域外の範囲の土地上に法定建坪率(60ハーセント)及ひ容積率 (200ハーセント)の限度て建築物を建築することは可能てあるし,同区域内て あっても,都市計画法54条に定める基準の範囲内て,許可を得て,建築物を建築 することは可能てある。
 また,本件各土地は,昭和47年度以降下水道の利用か可能となり,同年7月17日,F及ひIから下水道使用開始届か被告市長あてに提出されていたものてあるし,マンション建築に関する階層制限も,都市計画法のほか,建築基準法の日照規制なとの制限もあることから,原告らか主張する具体的な制約と本件路線に指定されたこととの間に因果関係かあるとは限らない。
(3) 国家賠償法1条に基つく慰謝料請求 ア 原告ら
 原告らは,前記(2)のとおり,権利制限を受け,被告の不作為により,法 律上受忍するいわれのない精神的苦痛を被ってきたものてあるから,被告に対し, 国家賠償法1条に基つき,慰謝料としてそれそれ500万円及ひこれに対する訴状 送達の日の翌日てある平成11年7月4日から支払済みまて民法所定の年5分の割 合による遅延損害金の支払を求める。イ 被告
 本件処分後,原告らか権利制限を受けてきたことか国家賠償法1条の違法性を有するとの主張は争う。
 (4) 憲法29条3項に基つく財産権補償ア 原告ら
 都市計画法における建築制限は土地所有権に対する内在的制約てはなく,特定地域内の特定個人に対する権利制限てあるところ,前記のとおり原告らか 60年を超えてその制限を受けている本件においては,被告は,本件各土地の利用 権を収用しているに等しい。したかって,原告らは,被告に対し,予備的に憲法2 9条3項に基つき,それそれ前記(3)アと同額の損失補償を求める。イ 被告 原告らか受けている都市計画法53条の建築制限は,前記(1)のとおり,財産権に本来内在する制約てあり,関係法令に基ついて財産権に対し一般的に加えられた内在的制約てあって,特定の者の財産権の行使の自由に対する特別の制限てはないから,憲法29条3項に基つく補償を要しない。
第3 当裁判所の判断
1 争点(1)(本案前の抗弁)について (1) 原告らは,請求の趣旨において,本件処分の取消しを求めているか,被告 はその具体的処分性を否定し,本件処分か抗告訴訟の対象とはならないと主張する のて,この点について以下検討する。
 (2) 行政庁の処分か,行政事件訴訟法3条2項に規定する処分の取消しの訴え の対象となるためには,当該処分か個人の権利ないし法律上の利益に直接の影響を 及ほす法的効果を有するものてあることか必要てあると解される。ア 都市施設としての道路についてされる都市計画は,1道路の種類,名称,位置,区域,道路の種別及ひ構造か定められ,計画図,計画書なとによってこれか表示された(都市計画決定)後,2市町村か,施行を開始し,事業主体,手法等を確定して,都道府県知事の認可を受けて,これを告示し(都市計画事業の認可等),3区域内の土地,建物の先買い,買い取り請求及ひ収用等の個別的処置かされる(都市計画事業の施行),という順序て進行するものてある。この都市計画の手続からすると,都市計画決定は,その後に続く道路計画事業の認可,施行に関する基本的指針を定めた一般的,抽象的な性質のものにすきないのてあり,それ自体か,個人の権利ないし法律上の利益に直接の影響を及ほす性質のものてはないというへきてある。
イ また,都市計画決定に付随して生しる建築制限や譲渡制限(都市計画法53条ないし同56条)も,区域内の土地を所有する不特定多数の者に対し,法か付与した一般的,抽象的な効果として生しるものてあって,個人の権利ないし法律上の利益に直接の影響を及ほす性質のものてはないと解される。ウ そして,アの場合には,都市計画事業の施行に際して土地収用等かなされた際に,イの場合には,建築物の建築許可等か不許可となった際に,それそれの具体的処分によって,当該個人の権利ないし法律上の利益に直接の影響か及ほされるに至り,その個人は,当該処分を抗告訴訟の対象として訴えを提起することによって,権利救済の目的を達することかてきるものというへきてある。(3) 以上によれは,都市計画決定に当たる本件処分を抗告訴訟の対象とするこ とはてきないと解すへきてあるから,本件処分の取消しを求める原告らの訴えは, 不適法なものとして却下を免れない。
 2 争点(3)(国家賠償法1条に基つく慰謝料請求)について(1) 国家賠償法1条1項か適用されるための要件として,公務員の行為か違法 てあるというためには,公務員かその職務上の法的義務に違反することか必要てあ ると解するのか相当てあるか,その義務違反の有無は,当該公務員か職務上の権限 を付与された趣旨・目的,その法令上の制度か保護しようとしている法益との関連 において判断されるへきてあり,これを前提として,原告らの慰謝料の請求の当否 について検討する。(2)ア 都市計画事業は,長期的かつ総合的な展望に立って,道路網の整備,充 実をも含めた広範囲にわたる事業を施行しなけれはならないのてあり,一般的に長 期間を要するものてある上,その施行に際しては,土地の収用,既存の建築物の移 転・除去及ひそれに伴う権利関係の整理等を実施しなけれはならないため,人員並 ひに予算等の制約も少なくない。また,都市計画は,都市における有機的一体とし ての道路網の整備をその重要な目的の一つとするものてあるから,おのすと都市全 体に対する当該道路の優先度を見定めなから整備を進めさるを得ないか,社会環境 の進展により,いかなる形て道路網を整備していくへきかの判断についても,従前 と異なった考え方を採るへき場合も生してくるのてある。そうすると,結果的に特 定の路線の一部区間か長期間事業に着手されないとしても,そのことから直ちに都 市計画決定権者かその有する法的義務に違反しているとはいえないのてあり,それ を超えて,正当な理由かないにもかかわらす,都市計画事業自体か長期間全く進行 していないとか,当該特定路線の必要性か見直されるへきてあるのに,これか長期 間放置されているとかという特別の事情かない限り,都市計画決定権者てある市町 村の下した判断は,許された裁量権の範囲内のものとして,違反になることはない と解するのか相当てある。イ 前記アを前提として本件につき検討するに,証拠(甲26,乙22の1ないし5及ひ23の1ないし4)及ひ弁論の全趣旨によれは,以下の事実か認められる。
(ア) 本件路線は,昭和37年度から昭和41年度まての間に事業化する 旨の決定かされたか,国庫補助事業にならなかったために実現せす,昭和45年か ら昭和55年まて約10年間をかけて,盛岡市e通f丁目所在のJハスセンター前交 差点から,同市i町所在のK小学校前交差点まての約580メートルか整備されるに ととまった。その後,本件路線について,都市計画事業は認可,施行されておら す,今後も具体的な予定は立っていない。(イ) 被告は,県の策定した盛岡広域都市計画市街化区域及ひ市街化調整 区域計画書を踏まえ,昭和48年3月に盛岡市市勢発展総合計画,昭和61年3月 に盛岡市新総合計画,平成7年3月に第3次盛岡市総合計画を策定した。(ウ) 被告における都市計画道路の整備状況は以下のとおりてある。
 昭和44年 19・4ハーセント(東北主要都市平均上) 同 50年 21・9ハーセント 同 55年 27・9ハーセント 同 59年 29・0ハーセント同 60年 30・4ハーセント
平成 2年 41・2ハーセント
平成 5年 42・5ハーセント
 平成12年
 48 ハーセント
(エ) 被告は,都市計画について,昭和54年から見直しに着手し,昭和 59年から昭和61年にかけて「盛岡都市圏総合都市交通体系調査」を実施して, 2環状6放射道路を基本とした将来道路網基本計画を策定した。以後,被告は,同 計画を踏まえて見直しを進めており,平成5年4月末現在において,見直し対象路 線40路線のうち18路線か変更済みとなっている。しかし,本件路線は,都心環 状線の一部を構成し,かつ,上記2環状線道路を連絡する補助的幹線道路として位 置つけられていて,その重要性か高いことから,見直しの対象とはされていない。ウ 以上のとおり,本件路線は,都市計画道路の一部として決定されてから既に60年以上か経過している上,今後直ちに事業化される見込みはないものの,被告は,都市計画道路全体について,見直しを漸次実施した結果,本件路線の重要性をも検討し,その必要性を確認した上て,変更を行わなかったこと,都市計画事業を全体としてみれは,被告は,漸次整備を進行させてきていることの各事実か認められる。
(2) 以上の諸事情を総合考慮すると,都市計画か60年以上の長期間にわたっ て事業化されるに至っていないことを考慮に入れても,その状態は未た被告に認め られる裁量権の範囲内に止まっているというへきてあり,本件都市計画の実施又は 変更について権限を有している公務員かその職務上の法的義務に違反したものと認 めることはてきない。
 したかって,原告らの国家賠償法1条に基つく請求は理由かない。
 3 争点(4)(財産権補償)について 公共のためにする財産権の制限か,社会生活上一般に受忍すへきものとされる限度を超え,特定の個人に対し特別の財産上の犠牲を強いるものてある場合には,その個人は,憲法29条3項を根拠としてその補償請求をすることかてきるものと解するのか相当てある。
 一般に都市計画法53条の建築制限は,都市内に位置する不動産の所有権を有する者か同然に負担すへき内在的制約の範疇に属するものと解すへきところ,原告らか別紙物件目録記載1ないし3の土地を第三者へ処分することは,法的に何ら制限かない上,都市計画道路の区域に属している土地てあっても,都市計画法54条に定める基準の範囲内て,都道府県知事の許可を得て,建築物を建築することは可能てあることからすると,本件処分による権利制限の程度か収用等の場合と同視すへき程に強度なものてあるということはてきない。そうすると,本件各不動産に対する建築制限は,公共の福祉の実現のために社会生活上一般に受忍すへきものとされる限度を未た超えるものてはないというへきてある。
 よって,この点に関する原告らの主張も理由かない。
4 以上のとおりてあるから,本件訴えのうち,本件処分の取消しを求める部分は不適法てあるから,これを却下することとし,その余の請求については,いすれも理由かないのて,これを棄却することとし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
 盛岡地方裁判所第2民事部
 裁判長裁判官 髙 橋 譲
裁判官 細 島 秀 勝
 裁判官菊池浩也は,出張中につき署名・押印することかてきない。
 裁判長裁判官 髙 橋 譲・ (別紙)
物 件 目 録
1 所 在 盛岡市df丁目 地 番 j番j
地 目 宅地
地 積 198.34平方メートル
 2 所 在 盛岡市d一丁目 地 番 j番k地 目 宅地
地 積 265.45平方メートル
3 所 在 盛岡市d一丁目
地 番 j番l
地 目 宅地
地 積 228.53平方メートル
 4 所 在 盛岡市df丁目j番地のl 家屋番号 j番l
種 類 居 宅
構 造 木造瓦葺平家建
床面積 77.68平方メートル
以 上
判例本文

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