主文
一 被告が、原告らに対して、それぞれ平成六年二月二一日付けでした各遺族給付不支給決定処分を取り消す。
二 訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第一 請求
 主文同旨
第二 事案の概要
 本件は、原告らの夫が交通事故で死亡したのは通勤災害に該当するとして、原告らが被告に対して遺族給付請求をしたところ、被告は不支給決定処分をしたため、原告らが、右処分は違法であると主張して、その取消を求めたものである。一 争いのない事実
1 原告Aの夫であった亡B、原告Cの夫であった亡D、原告Eの夫であった亡F(以下「被災者ら」という。)は、いずれも新潟市〈以下略〉所在の日動建設株式会社(以下「日動建設」という。)に雇用され、鳶職として稼働していたものである。
 日動建設は、平成四年八月一八日から、秋田県能代市〈以下略〉の海岸部において東北電力株式会社能代火力発電所第二号ボイラ建設工事(以下「本件工事」という。)を施工することとなり、被災者らは、日動建設の業務命令によって、同日から、本件工事に従事していた。
2 被災者らは、新潟県新発田市又は同県岩船郡〈以下略〉にそれぞれ自宅を有するものであるが、本件工事期間中、それぞれの自宅に家族を残し、日動建設が宿舎として契約していた秋田県能代市〈以下略〉所在の藤和東能代寮(以下「本件寮」という。)に単身赴任していた。
 なお、本件寮は、本件工事現場から約九キロメートルの距離にあり、自動車を用いた場合には約一〇分の時間を要する位置にあった。
3 平成五年三月八日、本件工事現場において使用していたクレーンが倒壊し、その修理のために工事を中止せざるを得なくなったことから、日動建設は、所定の休日であった同月一四日に振り替えて、同月一二日及び一三日を休日とした。
 そこで、被災者らは、同僚のGと共に、同月一一日の午後、本件工事現場から日動建設の所有するワゴン車に同乗して、新潟県内の自宅に帰省し、Gを除く被災者ら三名は、同月一四日からの就業に備えるため、同月一三日の夕刻、右のワゴン車に同乗してそれぞれの自宅を出発し、本件寮に向かったが、同日午後一〇時四〇分ころ、秋田県男鹿市所在の県道秋田男鹿線の男鹿大橋上を走行中、路面が凍結していたため車がスリップし、対向車線の欄干を破って一〇メートル下のβ水道に転落し、被災者ら三名は全員死亡した(以下「
本件事故」という。)。
 なお、本件工事現場は海岸沿いの交通手段が乏しい場所にあるため、電車やバス等を乗り継いで移動するのは相当に不便で時間もかかるため、自動車を利用して、本件工事現場から国道七号線でγまで行き、県道でδ、男鹿大橋、εを経て秋田市に出て、再び国道七号線に入り、酒田市、村上市、α経由で新発田市に向かう経路をとるのが最短であり、本件寮に戻るときは右の経路を逆にたどるのが、合理的な経路及び方法である。そして、被災者らは、右の経路によって自動車移動していたものである。
4 被災者らの妻である原告らは、それぞれ、平成五年四月一九日、被災者らの死亡は、「労働者が、就業に関し、住居と就業の場所との間を、合理的な経路及び方法により往復する」途中の事故により生じた通勤災害(労働者災害補償保険法(以下「法」という。)七条一項二号、二項)によるものであるとして、遺族給付(法二二条の四)の請求をしたが、被告は、平成六年二月二一日付けで、被災者らの死亡は通勤災害によるものではないとして、遺族給付を支給しない旨の決定(以下「本件処分」という。)をした。
 原告らは、本件処分を不服として、秋田労働者災害補償保険審査官に対し、本件事故は、業務災害(法七条一項一号)に該当するか、そうでないとしても通勤災害には該当するとして、それぞれ審査請求をしたが、同審査官は、平成七年三月二二日付けで、原告らの審査請求をいずれも棄却する旨の決定をした。
 そこで、原告らは、同年五月二九日、それぞれ労働保険審査会に対して再審査請求をしたが、この再審査請求についても、平成一〇年八月四日付けの裁決でいずれも棄却され、右裁決は、原告らに対し、いずれも同年九月一四日に送達された。二 争点及び当事者の主張
1 本件事故は通勤災害に該当するか(争点1)。
(一) 原告らの主張
(1) 単身赴任者などが、主として休日を利用して週末等に「就業の場所」から家族の住む自宅に帰り、週初め等に自宅から「就業の場所」へ出勤する行為(以下「週末帰宅型通勤」という。)を行う場合には、右の自宅も法七条二項にいう「住居」に該当するところ、本件における被災者らは、右の週末帰宅型通勤を行っていたのであるから、被災者らの新潟県内の自宅も右の「住居」に該当する。
 また、本件の被災者らは、自宅から遠隔地にあって、交通の便の悪い有期の事業所である本件工事現場に
おいて、出稼ぎ労働をしていたものであるが、このような僻地における工事を支障なく行うためには、工事現場に付帯する場所に仮の宿舎を設けることが、事業の運営上必要不可欠であり、また、被災者らは、鳶職として、危険を伴う高所作業を行うため、従業員間の連携と協力が強く求められる結果、集団生活を余儀なくされるので、居住地を自由に選択することはできず、家族を同行する自由もないまま、日動建設の指定する宿舎である本件寮において、規則に則った集団生活をしなければならなかったのであるから、本件寮は、本件工事現場と一体となって業務を遂行するための付帯施設であるというべきである。さらに、本件寮における被災者らの生活は、日動建設の管理・監督下にあり、本件寮において安全研修会や作業分担等に関するミーティング、翌日の作業のための準備行為などもなされていたのであるから、本件寮は、「就業の場所」又はこれと同視されるべき場所であるというべきである。
 次に、被災者らは、本件工事現場に直接出勤するのではなく、翌日の作業再開に備えて、仮眠をとって十分に体調を整えるため、本件寮に向かって帰任する途中に本件事故に遭ったものであるが、これは、労働者の安全や健康管理に配慮していた日動建設が、就労日の前日に帰任して仮眠をとるように指示していたことに基づくものであって、翌日の安全な作業に備えるための必然的な行動であるというべきであるから、本件のような場合にも、「就業に関して」自宅との間を往復する週末帰宅型通勤の途上にあったものというべきである。
(2) なお、仮に、本件寮が「就業の場所」又はこれと同視されるべき場所には該当しないとしても、被災者らは本件寮において仮眠をとってから就労するように命ぜられていたのであるから、本件寮に向かって帰任するのは、「就業の場所」における就労のための合理的な順路に当たり、「住居」と「就業の場所」との間を往復するものといえ、本件寮において、洗濯物を置いたり着替えをしたりするなどの日常生活上の必要を満たすためでもあったから、本件寮に向かう途上における本件事故は、通勤災害であるというべきである。
(3) 以上のとおりであり、本件事故は通勤災害に該当するものであるから、これに該当しないとした本件処分は違法であり、取り消されるべきである。(二) 被告の主張
(1) 法七条二項にいう「住居」は、労働者が居住し
て日常生活の用に供している家屋等の場所で、就業のための拠点となる場所をいい、「就業の場所」とは、業務を開始し又は終了する場所をいうが、本件においては、被災者らが鳶職として業務を行っていたのは本件工事現場であるから、本件工事現場が「就業の場所」であり、本件寮は、被災者らが日常の起臥寝食の場所としているところであって、日常生活を営む上で支障のない設備を有するところであるから、本件寮が被災者らの「住居」となる。そして、被災者らは、本件寮においては業務を行っていないから、本件寮が「就業の場所」となることはあり得ない。また、本件寮が、日動建設の事業運営上の必要から設けられたもので、その事業に付属するものであっても、使用者は労働者の私生活を侵してはならず(労働基準法九四条)、ここにおける生活は、事業主の束縛を受けないものであって、業務との関連性はないから、本件寮が「就業の場所」となることはあり得ない。
 なお、仮に、原告らの主張するように、本件寮において、業務のためのミーティングや作業の準備が行われたことがあったとしても、それは、本来の「就業の場所」以外の公共の施設などを業務に利用した場合と同じく、一時的なものにすぎず、そのミーティング等が行われている時間帯に限り、「就業の場所」に該当し得るにすぎないところ、本件においては、被災者らは本件寮で睡眠をとるために移動していたのであり、本件寮においてミーティング等を行うことが予定されていたのではないから、右の事情があったとしても、本件寮が「就業の場所」となることはない。
 右によれば、被災者らは、新潟県内の自宅から法七条二項にいう「住居」に向かって移動していたものであり、これを通勤ということはできない。
(2) また、週末帰宅型通勤と認められる場合は、被災者らの新潟県内の自宅も法七条二項にいう「住居」に該当するが、本件事故のあった平成五年当時の行政解釈によれば、週末帰宅型通勤と認められるためには、「就業の場所」と自宅との間の往復に、原則として毎週一回以上の反復・継続性があること、「就業の場所」と自宅との間の所要時間及び距離が、原則として片道三時間以内及び二〇〇キロメートル以内であることが必要とされていたところ、被災者らの新潟県内の自宅と本件工事現場との間の距離は約二八二キロメートルであり、その所要時間は約五時間三〇分であるから、新潟県内の自
宅が就業の拠点であるということはできず、これを法七条二項にいう「住居」とすることもできない。
 なお、本件事故後の平成七年に認定基準が変更され、「就業の場所」と自宅との間の往復行為に反復・継続性があれば、右の自宅を法七条二項にいう「住居」と取り扱うこととされたが、処分取消訴訟の違法性判断の基準時は、当該処分時であるから、右の変更された認定基準によって、被災者らの新潟県内の自宅を法七条二項にいう「住居」であるとすることもできない。
(3) さらに、法七条二項にいう通勤と認められるためには、往復行為が「就業に関して」行われる必要があるが、週末帰宅型通勤の場合であっても、業務と密接な関連をもって行われる通勤に際する事故に対して保護を与えようとする法の趣旨に照らし、「就業の場所」と「住居」とを直接往復すること(いわゆる「直行直帰」)を必須の要件とすべきであり、就業場所付近にある「住居」で長時間にわたって自由に過ごすことが予定されている場合には、自宅から右の「住居」に向かうことまでを通勤ということはできない。本件においては、被災者らは、本件寮において長時間の睡眠をとることを予定していたのであり、「就業に関して」移動していたものということはできない。
 また、右のように直行直帰を必要とし、本件寮が「就業の場所」ではない以上、被災者らの移動は、週末帰宅型通勤にも該当しない。
(4) 次に、法七条三項によれば、通勤を逸脱し又は中断した場合であっても、例外的に、その逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であって労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合には、通勤と認められることとされており、原告らは、本件寮が「就業の場所」でないとしても、この規定が適用されるべきことを主張するものと理解されるが、本件において、被災者らは、本件寮で長時間の睡眠をとることを予定していたのであるから、これを右の日常生活上必要な最小限度の行為ということはできず、結局、被災者らは、移動の初めから中断することを予定していたのであって、「就業に関して」移動していたものということはできない。
(5) なお、原告らは、被災者らが鳶職として出稼ぎ労働をしていたことの特殊性を強調するが、労災保険制度においては、業務災害に対する給付の財源となる保険料について、業種や事業所ごとに異なる業務災害発生の危険
性の程度に即し、保険料算定のための保険率を災害率に応じて定めることとしているのとは異なり、通勤災害に対する給付の財源となる保険料については、すべての業種、事業所に対して同率の保険率をもって算定することとなっているのであって、これは、法が、通勤災害の生じる危険性については業種や事業所を問わず等しいものとする前提をとっていることを示すから、通勤災害に該当するか否かの判断に当たっては、その労働者の勤務先の業種や事業内容等についての特性や個別的事情を考慮することは許されず、画一的、統一的に判断すべきである。したがって、原告らの主張は到底受け容れられない。
2 本件事故は業務災害に該当するか(争点2)。
(一) 原告らの主張
(1) 被災者らは、クレーンの倒壊という不測の事態のため、日動建設の都合によって振替休日とされた日に、日動建設の指示によって集団で帰省することとなったものであり、また、日常の就労日に本件寮と本件工事現場との間を往復するため、業務上必要とされている日動建設所有のワゴン車を提供され、これを用いて集団で本件工事現場の所在地に赴く途中で本件事故に遭ったのであるから、本件事故は、日動建設の物的施設の管理下において、日動建設の業務上の必要に基づき、その指示により集団で行動している際に発生したものであり、また、日動建設の業務に必要なワゴン車を就業場所に持ち込む際に発生したものでもあるというべきである。
 したがって、本件事故は業務災害に該当するというべきであり、法に基づく保険給付をしないとする本件処分は違法であるから、取り消されるべきである。(2) なお、法に基づく保険給付の不支給決定処分の取消を求める訴訟の対象は、被災者の法による保険給付請求権の有無であるから、その請求を受けた労働基準監督署長は、通勤災害を理由とする請求を受けた場合であっても、業務災害を含めた法に基づく保険給付の要件を判断すべきであり、また、秋田労働者災害補償保険審査官も労働保険審査会も、審査請求ないし再審査請求を受けて、通勤災害についてのみならず、業務災害についても、その該当性の判断を示しているから、本訴以前において、業務災害の該当性についての行政庁の第一次的判断権は行使されているものというべきである。
 したがって、本訴において、本件処分の違法事由として、業務災害に該当する旨の主張をすることも許されるもの
というべきである。
(二) 被告の主張
(1) 労災保険制度における通勤災害と業務災害については、これに基づく損害を補償しようとする趣旨、給付財源となる保険料の負担のあり方、請求の手続等が本質的に異なるものであり、通勤災害による給付請求権と業務災害による給付請求権とが同一の請求権であると理解することはできない。
 そして、本件において、原告らは、通勤災害に基づく遺族給付請求をしたのみであって、業務災害に基づく遺族補償給付請求はしていない。したがって、業務災害に関する被告の第一次的判断権は行使されておらず、本訴において、本件処分の違法事由として、業務災害に該当する旨の主張をすることは許されない。
 なお、審査請求ないし再審査請求の段階において、業務災害に関する判断がなされているとしても、これは、原処分庁たる被告の判断ではないから、被告の第一次的判断権が行使されたものと評価することはできない。
(2) 念のため付言すれば、原告らは、被災者らが帰省したのは日動建設による業務命令に基づくものと主張するところ、本件においては、その主張するような業務命令はなく、被災者らの自由意思によって帰省したものである。また、日動建設は、その通勤規則において単身赴任者の帰省のための移動を業務範囲と定め、車両を貸与するなどしているが、これらは、従業員の福利厚生、利便のための措置とみるべきであり、これをもって被災者らが日動建設の支配下にあったものということはできない。
第三 争点に対する判断
一 事実経過
1 甲四ないし一一、一四ないし一六号証、乙一ないし五、一三ないし一五号証と弁論の全趣旨によれば、次の事実を認めることができる。(一) 被災者らが単身赴任していた本件寮は、もと結婚披露宴等の各種宴会場として営業していた建物を不動産業者が借り受け、内部を改造して、平成三年六月ころから、能代火力発電所建設工事に従事する者を対象とする民宿として営業を始めたものであるが、朝食及び夕食を提供し、浴場、洗濯機、乾燥機等を備えた施設であり、入寮者が日常生活を営むのに支障はなかった。
 日動建設では、平成四年八月ころから本件寮を利用していたが、本件工事に従事していた日動建設の従業員二六名のうち、地元採用者二名を除き、新潟県出身者一八名、仙台市出身者五名、地元採用者一名の合計二四名が本件寮において生活しており、ここから日動建設所有
のワゴン車などに分乗して本件工事現場に向かい、就労していた。
 なお、本件寮には、日動建設以外の会社の従業員も宿泊しており、右の工事の最盛期には、その関係従業員が八〇名近く宿泊していた。
(二) 日動建設は、平成四年八月二〇日から平成六年四月三〇日までを工期として、本件工事を請け負ったものであるが、本件工事現場が従業員の自宅から遠隔地にあり、本件工事現場付近に右の従業員らの宿泊施設を確保する必要があったため、本件寮を借り上げていたのであって、これに伴って生ずる費用については、従業員らの食事代を含めて、日動建設が一切を負担していた。
 そして、右のとおり、本件寮には、地元採用者二名を除くその余の従業員全員が入寮しており、右の従業員らは、一部屋につき三名ないし四名が割り当てられて、集団生活をしていた。そこで、このような集団生活上の規律を維持するため、日動建設においては、寄宿舎規則を定め、食事の時間や入浴時間を指定し、他の入寮者や地元住民に迷惑をかける行動をしないように注意を喚起するなどしていた。
 さらに、本件寮における生活が右のような実情にあるため、本件寮に家族を同伴することはできず、また、日動建設においては、本件寮には、他人はもとより家族を招くことも許されないものとしていた。
 そして、このような規律の維持のため、日動建設では、本件現場の責任者である現場所長も本件寮において宿泊しており、従業員の生活態度に注意を与えていた。(三) 日動建設は、能代火力発電所建設工事の孫請け会社として、そのボイラ建設工事の鳶職の作業を請け負っていたが、その勤務時間は午前八時から午後五時までであり、工事の進捗状況に応じて一時間ないし二時間の残業が行われることがあった。
 また、毎週日曜日が所定の休日とされており、日動建設が本件工事に携わるようになった当初は、これが守られていたが、平成五年になってからは、工事の進捗状況や天候に左右されやすい鳶職の特殊性などから、概ね二週間に一度の日曜日が休日とされ、土曜日と日曜日を連続して休日とする場合もあった。
(四) 日動建設の従業員の中では、右の休日の際には、新潟ないし仙台の自宅に帰省する者が多かったが、必ずしも全員が一斉に帰省していたわけではなく、本件寮にとどまっている者もあった。但し、休日にも食事が提供される関係などから、帰省するかしないかは申告されていた。
被災者らの帰省の状況に関しては、亡B及び亡Dは本件事故発生日を含む週以前の一二週間のうち六週間の週において、亡Fは同じく五週間の週において、いずれも週一回以上自宅に帰っていた。
 なお、日動建設においては、従業員が帰省する場合には、休日の前日の午後には作業を切り上げて、本件工事現場から自宅に向かい、就労日の前日の夕食前までに本件寮に戻って、夕食や休憩、睡眠をとり、翌日の就労に備えるのが一般的であったが、従業員が帰省のために勤務時間を切り上げて自宅に移動する場合であっても欠勤扱いにはしないこととされており、また、就労日の午前中に自宅から本件現場に移動し、午後から就労することが許される場合もあり、この場合に勤務時間中に移動していても欠勤扱いにはしないこととされていた。
 そして、日動建設としては、鳶職という危険を伴う職種であることを重視し、災害防止のために、従業員が睡眠不足などで体調不良のまま作業に従事することのないように教育しており、休日に帰省した場合にも、
就労日の前日には本件寮に戻り、十分な睡眠をとった上で就労するように指示していた。
(五) さらに、新潟県内に自宅のある従業員については、申し出れば日動建設所有のワゴン車が貸与されることとなっており、相当数の者が、自宅の近い者同士でグループを作り、右のワゴン車に同乗して帰省していた。
 この場合には、現場責任者である現場所長がワゴン車の使用を許可し、運転者を指定することとされていたが、反面、ワゴン車の使用は無償であり、ガソリン代も日動建設が負担することとされていた。
 ところで、被災者らの自宅がある新潟県新発田市ないしαと本件工事現場までの距離は、約二六〇キロメートルないし約二九〇キロメートルであり、右のように自動車を用いて移動する場合には、片道約六時間以上を必要とした。
(六) 本件事故の際には、クレーンの倒壊に伴って、所定の休日であった平成五年三月一四日に振り替えて、同月一二日及び一三日が休日となったため、被災者らは、同月一一日の午後、同僚のGと共に本件工事現場から日動建設の所有するワゴン車に同乗して新潟県内の自宅に帰省したものであり、同月一三日に本件寮に帰任しようとしていたものであるが、通常であれば、同日の昼過ぎに自宅を出発するところ、被災者の一人である亡Fに個人的な所用があったため、その旨を現場所長に報告して了解を得た上
、同日の夕刻に新潟を出発し、本件寮に向かうことになったものであり、その途上で本件事故に遭うこととなった。
 なお、本件事故については、被災者ら三名が共同運行供用者になるため、三人とも自動車損害賠償保障法三条の他人ではないとする理由により、同法に基づく保険金は支払われなかった。
(七) 被告は、原告らからの遺族給付の請求に対して、週末帰宅型通勤の要件を満たさないので通勤災害には該当しないと判断し、本件処分をしたが、本件事故のあった平成五年三月一三日当時には、労働省労働基準局長の平成三年二月一日付け基発第七四号の通達により、週末帰宅型通勤として認定する場合の基準が定められており、これによれば、「就業の場所」と自宅との間の往復に、原則として、毎週一回以上の反復・継続性が認められ、「就業の場所」と自宅との間の所要時間及び距離が、原則として片道三時間以内及び二〇〇キロメートル以内であるという要件をすべて満たした場合に、右の自宅を法七条二項にいう「住居」とするものとし、これと「就業の場所」を往復する行為を同項の通勤と取り扱うものとされていた。
 そこで、被告は、本件については、「就業の場所」と自宅との間の所要時間及び距離の要件に適合しないことと、本件寮への移動は「就業の場所」へ向かう行為ではなく、就業との関連性がないことを理由に本件処分をしたものである。 なお、右の通達は、平成七年二月一日付け基発第三九号の通達により改められて、要件が緩和され、「就業の場所」と自宅との間の往復行為に反復・継続性が認められる場合には、右の自宅を法七条二項にいう「住居」として取り扱うものとされることとなった。
2(一) ところで、甲一五、一六号証中には、日動建設では、本件寮における従業員の食事時間、入浴時間、就寝時間等を定め、現場所長が従業員らの生活を管理しているから、本件寮における従業員の生活は、
日動建設の指揮監督と無関係な自由なものではなく、日動建設の労務管理下にあるものであるとする部分がある。
 確かに、既に認定したところによれば、本件寮における生活は、同一の部屋に複数の者が寝起きするなど、集団生活にならざるを得ないところから、その集団生活の規律を維持するために、日動建設は食事時間等に関する一定の規則を定めてはいるが、このような集団生活上の規律の維持に必要な制約を超えて、従業員らが日動建設の労務管理下に
あるのと同様の制約を受けているものとすべき具体的な事実を認めるに足りる証拠はない。そして、右の甲一五、一六号証は、日動建設の現場所長であったH及び同社の現代表取締役Iの陳述書であって、本件事故について遺族給付の支給を求める立場で記載されたものであることが明らかであり、右部分は、その立場から右Hらの意見を表明したものにすぎないといわざるを得ず、これを採用することはできない。
(二) また、甲一〇、一一、一五号証中には、日動建設は、従業員に対し、できるだけ連続して休日をとらせ、休日には新潟県内の自宅に帰省するように指示しており、また、業務が集団作業であることから従業員を確保する必要があり、このような労務管理上の必要に基づいて、帰省の際には、日動建設所有のワゴン車を利用して集団で行動することを命じていたとする部分があり、本件事故のあった平成五年三月一三日にも、当日中に集団で帰任して翌日からの就労に備えるように命じていたとする部分がある。そして、前記認定によれば、新潟県出身者の相当数の者が、日動建設所有のワゴン車の貸与を受けて、集団的に帰省していた実情があるから、日動建設が、従業員の福利厚生を図るため、従業員に対して、休日に帰省することや、その際に右の便宜供与を受けることを勧めていたことは推認し得るところであり、また、鳶職という危険な職務に従事することから、日動建設が従業員に対して、自宅に帰省した場合には、就労日の前日には本件寮に帰任し、十分な睡眠をとるなどして体調を整えた上で就労するように教育し、指示していたことも前記認定のとおりである。
 しかし、乙一ないし五、一五号証によれば、日動建設は、必ずしも全員一斉に帰省するように指示していたのではなく、帰省する者も寮にとどまっている者もいたこと、新潟県出身者には、帰省のために、現場所長の許可を得て、日動建設所有のワゴン車が提供されていたものの、必ず全員が集団でこれを利用するように指示されていたものではなかったこと、平成四年八月から平成五年三月までの被災者らの出勤状況をみても、必ずしも連続した休日を取得していたわけではなく、その帰省の状況も必ずしも一致しないことが認められ、また、右の甲一〇、一一、一五号証は、いずれも現場所長であった前記Hらの陳述書であり、右(一)において説示したように、遺族給付の支給を求める立場からの意見が反映され
ているものであるから、これらに照らすと、日動建設が、従業員に対して、集団的に帰省、帰任すべきことをあたかも業務命令の如く命じていたとする前記部分は、採用できないというほかない。
(三) さらに、甲二一号証中には、日動建設は、本件寮において、工程の確認や工事の進捗状況の検討のためのミーティングや、安全衛生懇談会などを行っており、これには地元採用者で本件寮に入寮していなかった二名の従業員も参加していたほか、翌日の作業の準備なども行っていたとする部分がある。
 しかしながら、仮に、右のようなミーティング等が本件寮において行われることがあったとしても、既に認定したところによれば、本件事故の際には、被災者らは深夜に本件寮に帰任することとなるのであるから、本件事故当日に、右のミーティング等が予定されていたということはできず、したがって、被災者らが、右のミーティング等に参加するために本件寮に向かっていたということはできない。二 本件における被災者らの「就業の場所」及び「住居」についての判断1 既に認定したところによれば、本件において、被災者らは、本件工事現場における鳶職としての作業に従事していたものであるから、本来的には、本件工事現場が、業務を行う場所としての「就業の場所」となることは明らかである。
 そして、被災者らは、本件工事に従事するための拠点として、本件寮に居住し、ここで日常生活を営んでいたのであるから、本件寮が被災者らの「住居」となることもまた疑いを入れないところである。
 なお、原告らは、本件寮も「就業の場所」となると主張し、右一2のとおり、これに沿う証拠もあるが、既に認定したところによれば、本件寮は、被災者らが本件工事に従事する期間の宿舎として日動建設が借り上げたものであり、宿舎としての設備を有するにすぎないものであるから、特段の事情がない限り、本件寮を「就業の場所」とみることはできないところ、本件寮における生活が日動建設の労務管理下にあるとする右の証拠は、既に説示したとおり、採用することができない。また、本件寮において、業務となるミーティング等を行っていたとする証拠もあるが、仮にそのとおりであったとしても、これによって本件寮が「就業の場所」となるのは、右のミーティング等を行っている時間帯に限った一時的なものであるというべきであり、既に認定したとおり、本件事故当日には、本件寮において右のミーティング等が予定されていたのではなかったから、本件寮に向かっていた被災者らは、ミーティング等の行われる「就業の場所」に向かっていたものということはできず、したがって、この点においても、本件寮を「就業の場所」ということはできない。
 結局、本件寮を本来の「就業の場所」ということは困難である。
2 次に、被災者らが週末帰宅型通勤を行っていたものと認められる場合には、新潟県内にある被災者らのそれぞれの自宅もまた「住居」になるというべきであるので、以下、検討する。
 この点については、既に認定したとおり、本件事故当時の行政解釈によっても、一定の要件を満たして週末帰宅型通勤と認められる場合には、被災者らの自宅もまた「住居」と取り扱われてきたものであるが、法七条二項が、通勤について、「就業に関し、住居と就業の場所との間を、合理的な経路及び方法により往復すること」と定めていることに照らすと、本来、単身赴任者らの生活の本拠は家族らの住むそれぞれの自宅であるから、単身赴任者らが、日常的には自宅を離れた「就業の場所」の近辺の「住居」から通勤しているとしても、休日等を利用して「就業の場所」と家族らの住む自宅との間を往復しているとすれば、これが反復・継続するものと認められる限り、法の定める右の通勤の定義に該当し得るとするのに妨げはないというべきであって、右の自宅もまた「住居」になるというべきである。
 したがって、被災者らについても、週末帰宅型通勤を行っていたものと認められる場合には、被災者らの新潟県内の自宅もまた「住居」に該当することとなる。三 被災者らが週末帰宅型通勤をしていたものといい得るか否かについての判断1 右二2において説示したように、単身赴任者らが、休日等を利用して「就業の場所」と家族らの住む自宅との間を往復しているとすれば、これが反復・継続するものと認められる限り、法七条二項にいう通勤に該当し得るところである。 この点について、被告は、処分取消訴訟の違法性判断の基準時は当該処分時であることを理由に、週末帰宅型通勤に該当するか否かは本件事故当時の通達に基づく認定基準によって判断されるべきだと主張するが、既に認定したとおり、右の通達は、労働省労働基準局長の発した行政内部の運用基準にとどまるものであり、その通達に変更があったとしても法令が改廃された場合と同視することはできないから、被告の右主張は採用できない。
 そして、本件事故のあった平成五年当時の単身赴任者の状況や交通機関の発達の程度等に照らすと、週末帰宅型通勤であるとするために、毎週一回以上の反復・継続を必要としたり、「就業の場所」と自宅との間の所要時間及び距離について、片道三時間以内及び二〇〇キロメートル以内であることを必要とすることに格別の合理性があるとすべき事情を窺うことはできず、この点についての被告の主張・立証もない。
 そうすると、「就業の場所」と自宅との間の往復行為に反復・継続性があると認められる限り、右の行為は週末帰宅型通勤に該当するものというべきである。2 そして、既に認定したところによれば、被災者らは、休日の前日の午後に本件工事現場を出発して自宅に戻り、就労日の前日の昼ころ自宅を出て本件寮に向かう型で帰省をしていたものであるが、被災者のうち亡B及び亡Dは本件事故発生日を含む週以前の一二週間のうち六週間の週において、亡Fは同じく五週間の週において、いずれも週一回以上自宅に帰っていたのであるから、右の帰省は反復・継続して行われていたものということができる。
 したがって、原告らの主張するように、本件寮に向かって帰任する行為が、「就業の場所」に向かう行為と同視し得るとすれば、被災者らも週末帰宅型通勤をしていたものということができる。
四 本件寮を「就業の場所」と同視することができるか否かについての判断1 本件寮を本来の「就業の場所」であるということができないのは既に説示したとおりであるが、そうだとしても、週末帰宅型通勤に該当するか否かの判断に関して、本件寮に向かう行為を「就業の場所」に向かう行為と同視し得るか否か、即ち、週末帰宅型通勤との関連において、本件寮を「就業の場所」と同視し得るか否かは、別に考慮されるべきであるから、以下、この点について検討する。2(一) 既に認定したところによれば、本件寮は、日動建設が請け負った本件工事を支障なく遂行するために、本件工事現場が従業員の自宅とは遠隔地にあることから、従業員の宿舎を確保する必要に基づいて、本件工事の期間中に限り、日動建設が借り上げたものであって、本件寮に関わる費用については、日動建設が一切負担していたのであるから、本件寮は、日動建設の事業の運営上の必要から設けられたものであるということができる。
 したがって、本件寮は、
日動建設の業務の必要に基づいて設けられたもので、本件工事現場と一体となって業務を遂行するための付帯施設であるというべきである。
(二) そして、既に認定したところと右(一)の事情に照らすと、日動建設の従業員は、地元採用者を除き、全員が本件寮における集団的な単身赴任生活を余儀なくされることとなるから、右の従業員らには、事実上、住居選択の自由はなかったものというべきであり、また、家族を同伴する自由もなかったといわざるを得ず、このような状況の下で、集団生活に伴う規制をも受けながら、生活をしなければならなかったということができる。
 そうすると、本件寮は、従業員らが日動建設の業務から離れて自由な時間を過ごすことができるべき「住居」ではあるものの、その生活の実態は相当に制約されたものといわざるを得ず、従業員らの新潟県内などの自宅における生活とは、その質において相当に異なるものというべきであるほか、転勤に伴って単身赴任をする他の一般の職種の労働者が、住居を自由に選択し、時に家族を招いて自由な時間を過ごし得る生活を営むのと比較しても、相当に異なった状況にあるものというべきである。(三) 右のような実情に照らすと、日動建設の従業員らが真に自由な生活を営み得るのはそれぞれの自宅であるというべきであるから、このような従業員の帰省の必要性には、他の一般の単身赴任者とは異なった重い意味があるというべきであり、このような生活状況にある従業員らが、帰省を終えて、自宅から本件工事現場と一体となった付帯施設である本件寮に向かう行為は、まさに「就業の場所」に向かうのと質的に異なるところがないというべきである。
 なお、工事現場に付帯する宿舎が工事現場と同じ場所に設けられている場合には、週末帰宅型通勤において、その宿舎に向かう行為は「就業の場所」に向かうことと同一であるが、本件のように、右の宿舎が工事現場から若干離れた場所に設けられている場合であっても、工事現場と宿舎の関係は機能的に同一であるから、本件寮と本件工事現場が若干離れていることを理由に、週末帰宅型通勤において、本件寮に向かう行為を「就業の場所」たる本件工事現場に向かう行為とは異なるとするのは、余りにも形式的であり、このことに照らしても、本件寮に向かう行為は「就業の場所」に向かうのと質的に異ならないというべきである。
3 被告は、労災保険制度における
通勤災害に対する保険給付と業務災害に対する保険給付が、保険料の負担のあり方などにおいて、本質的に異なることから、その制度趣旨に照らし、通勤災害に該当するか否かの判断に当たっては、その労働者の勤務先の業種や事業内容等についての特性や個別的事情を考慮せず、画一的、統一的に判断すべきであると主張するが、例えば、外勤業務に従事する労働者が、事業所ではなく、用務先に赴く場合であれば、右の用務先が「就業の場所」となることは明らかであるが、このような判断は、外勤業務を要する業種か否か、外勤業務に従事しているのか内勤業務に従事しているのかといった、業種や事業内容の個別性を考慮して行われているものというほかなく、具体的な業務の内容を離れて「就業の場所」等を判断することはそもそもできないのであるから、被告の右主張は採用できない。
 また、被告は、本件寮を「就業の場所」と同視することとなれば、日常的に本件寮と本件工事現場を往復する行為を通勤と評価することができなくなり、実質的にも不当であると主張するが、しかし、週末帰宅型通勤に該当するか否かの判断に関して、本件寮に向かう行為を「就業の場所」に向かう行為と同視し得るか否かを問題としているのであるから、遠距離の移動を前提とする週末帰宅型通勤に関して、本件寮を「就業の場所」と同視したからといって、日常的な本件寮と本件工事現場との往復について通勤と評価し得なくなるものではないと解すべきであって、被告の主張するような不当な事態にはならないというべきである。
4 以上のとおりであるから、本件においては、本件事故当時、被災者らが、その自宅から本件寮に向かって移動していたのは、「就業の場所」に向かっていたものと同視し得るものというべきである。
 したがって、右三において説示したとおり、被災者らは、週末帰宅型通勤を行っていたものというべきである。
 なお、被災者らが、「住居」である右の自宅と「就業の場所」と同視される本件寮との間の往復を、合理的な経路及び方法により行っていたことは、前記のとおり、争いがない。
五 被災者らの移動が「就業に関して」行われていたものか否かについての判断1 法七条二項にいう通勤に該当するためには、往復行為が「就業に関して」行われていたことが必要であるが、既に認定したところによれば、被災者らは、通常の帰省の場合には、就労日の前日の夕刻までに本
件寮に帰任し、夕食や休憩、睡眠をとって翌日の就労に備えていたのであって、本件事故の際にも、本件寮において十分な睡眠をとろうとしていたのであり、翌日の勤務開始時刻である午前八時までには相当の時間的間隔があったものである。
 そこで、被告は、被災者らの移動は就業開始時刻とはかけ離れた時間に行われており、本件寮において長時間の睡眠をとることを予定していたのであるから、「就業に関して」行われていた移動ということはできないとし、週末帰宅型通勤の場合にも業務との密接な関連性を求める右の要件を緩和することはできないと主張する。
 確かに、通勤災害に対して保護を与えようとする法の趣旨は、通勤が業務と密接に関連して行われるものであることから、これに内在する危険から労働者を保護しようとするところにあるものと解されるから、その移動が業務と密接に関連して行われていることを要するものであり、日常的に日々反復して行われる通勤に関しては、就業を開始する時刻ないしは就業を終えた時刻からかけ離れた時間に移動するのは、一般的には業務との密接な関連性を失わせるものというべきである。
 しかしながら、法は、その往復行為が「就業に関して」行われることを求めているのであって、右のような業務との密接な関連性が認められれば足りるというべきであるから、時間的に相当な間隔があるか否か、被告が主張する直行直帰であるか否かという形式的な面のみから、右の関連性を判断しなければならないものではないと解すべきである。
 特に、週末帰宅型通勤と認められる場合には、日常的に日々反復して行われる通勤の場合とは異なり、長時間にわたる遠距離の通勤が前提となっているのであるから、時間的な間隔などの形式的な面のみにおいて業務との密接な関連性を判断することはできないというべきであり、その週末帰宅型通勤の実態に即して、右の関連性を検討する必要があると解すべきである。
2 既に認定したところによれば、本件において、被災者らは、鳶職という危険な業務に、翌日の午前八時から従事することを目的として、十分な睡眠をとって体調を整えるために、前日から本件寮に向かっていたものであり、既に説示したとおり、前日の夕刻までに本件寮に帰任せよという業務命令があったものとまではいえないとしても、日動建設においては、災害防止などのために、休日に帰省した場合にも、就労日の前日には本件寮に戻り、十分な睡眠をとった上で就労するように、常日頃から従業員を教育していたところであるから、被災者らは、まさに、就業に不可欠な行動として、就労日の前日に移動していたものというべきこととなる。
 そして、被災者らが、本件事故当時、翌日の就労とは全く関係のない目的で移動していたことなどを窺わせる事情はなく、そのような事情の主張・立証もないから、少なくとも本件のように、週末帰宅型通勤をするに際し、鳶職という危険な業務に従事することに備えて、十分に体調を整えるため、就労日の前日に本件寮に帰任しようとしていた場合には、その移動は、業務に密接に関連するというべきであって、「就業に関して」行われるものという要件を満たすと解すべきである。六 以上のとおりであるから、本件事故は、被災者らが就業に関して週末帰宅型通勤を行っていた途上において発生したものというべきであり、通勤災害に該当するものであるから、これを通勤災害には該当しないとした本件処分は違法であり、取り消されるべきである。
 よって、その余の点について判断するまでもなく、原告らの請求にはいずれも理由があるから、これを認容することとし、主文のとおり判決する。
秋田地方裁判所民事第一部
裁判長裁判官 杉本正樹
裁判官 貝原信之
裁判官 永井綾子
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