主文
一 被告が平成七年二月一四日付けで原告に対してなした平成三年分、同四年分及び同五年分の所得税についての更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取消す。
二 訴訟費用は被告の負担とする。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
主文と同旨
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 本件各処分
(一) 原告は、被告に対し、平成三年ないし同五年(以下「本件係争各年」という。)分の所得について、いずれも法定申告期限までに、別表一「課税の経過一覧表」(以下「別表一」という。)の各年分の1のとおりである旨申告した(以下「本件申告」という。)。
(二) 被告は、原告に対し、平成七年二月一四日付けで、本件申告にかかる原告の所得が別表一の各年分の2のとおりであるとして、更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分(以下、それぞれ「本件更正処分」、「本件賦課決定処分」といい、これらを併せて「本件各処分」という。)をした。
(三) 原告は、本件各処分について、同年四月一四日に被告に異議申立てをしたが、同年七月七日付けで異議申立てを棄却する決定を受け、同年八月三日に国税不服審判所長に審査請求をしたが、平成九年六月二三日付けで審査請求を棄却する裁決を受けた。
2 本件各処分の違法性
(一) 原告は、平成元年一一月一三日、岩手観光ホテル株式会社(以下「岩手観光ホテル」という。)から、岩手県二戸郡α所在のホテル安比グランドタワー○号室(以下「本件物件」という。)を取得し、同日、これを岩手観光ホテルに賃貸したところ、この賃貸により生じた損失の金額(以下「本件損失金額」という。)を、所得税法(以下「法」という。)六九条一項に基づき、それぞれ各年分の他の各種所得の金額から控除して(以下、同条同項に基づく控除を「損益通算」という。)、本件申告を行った。
(二) 被告は、原告が主として保養の目的で本件物件を所有しているので、本件物件は法六二条一項及び同法施行令(以下「施行令」という。)一七八条一項二号に規定する資産に該当するから、同法六九条二項により、本件損失金額を損益通算の対象とすることは認められないとして本件各処分を行った。
(三) しかし、被告が、本件物件を保養の目的で
所有しているとしたのは、事実を誤認したものであり、本件損失金額については損益通算が認められるべきである。
 したがって、本件更正処分は違法であり、また、本件賦課決定処分もその前提を欠き違法である。
3 よって、原告は、被告に対し、本件各処分の取消しを求める。
二 請求原因に対する認否
 請求原因1、同2(一)(二)は認め、同(三)は争う。
三 抗弁(本件各処分の適法性)
1 本件損失金額の損益通算について
 本件物件は、以下に述べるとおり、法六二条一項の「生活に通常必要でない資産」に該当するため、本件損失金額は法六九条二項により生じなかったものとみなされ、損益通算の対象とはならないと解すべきである。
(一) 法六九条二項の趣旨と施行令一七八条一項二号の解釈について(1) 法六九条一項は、不動産所得等の金額の計算上生じた損失は、当該収入獲得に寄与したものであることから、右収入の金額を超える損失が生じた場合は、それを他の各種所得の減殺要素として控除(損益通算)することが相当であるとの趣旨に基づくものであるが、同じく所得の計算上生じた損失であっても、個人消費ないし余剰所得の処分的な色彩の強いものは、収入獲得に寄与したものとは評価し得ないことから、収入を超える損失が生じた場合であっても、これを他の各種所得から控除するのは相当でない。そこで、法六九条二項は、生活に通常必要でない資産に係る所得の金額の計算上生じた損失の金額については損益通算の対象としないこととしている。
 これを不動産についていえば、不動産には、その取得、維持・管理、処分のための支出を伴うのが通常であるが、その不動産の主たる所有目的が趣味、娯楽、保養又は鑑賞である場合には、その取得、維持管理、処分等に要する支出も、主としてこれらの所有目的を達するためのものというべきであって、収入獲得の目的に供される面があるとしてもそれはあくまで副次的なものであるため、損益通算の対象から除外されているのである。
(2) そして、施行令一七八条一項二号は、法六二条一項にいう「生活に通常必要でない資産」に該当するものとして、「通常自己及び自己と生計を一にする親族が居住の用に供しない家屋で主として趣味、娯楽又は保養の用に供する目的で所有するものその他主として趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有する不動産」を挙げている。
 ところで、本件物件が、施行令一七八
条一項二号の「通常自己及び自己と生計を一にする親族が居住の用に供しない家屋」であることは明らかであるから、問題は、本件物件が、同号の「主として趣味、娯楽又は保養の用に供する目的で所有するものその他主として趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有する不動産」という要件(以下「本件要件」という。)に該当するかどうかという点にある。そして、法六九条二項についての(1)のような理解を前提にすれば、本件要件は、主たる所有目的が支出の基本的な経済的性質を決することを前提に設けられたものというべきであるところ、本件要件の該当性の判断に当たっては、当該不動産に係る支出及び負担の経済的性質を重視し、所有者の主観的な意図によることなく、当該不動産の立地状況及び設備、当該不動産により所有者が受け又は受け取ることができた利益及び負担の性質、内容、程度など諸般の事情を総合し、客観的にその主たる所有目的を判断すべきである。
 個人が不動産を所有する目的は様々であって、個人の主観を基準とすれば、個々の具体的事例における損益通算の可否がまちまちとなり、租税負担公平の原則にも反する結果となり相当でない。
(二) 本件物件について
(1) 立地状況及び設備等
 本件物件の所在地は、岩手県北部の安比高原に位置するが、同所は十和田八幡平国立公園のうち八幡平地区に隣接したリゾート地として、別荘の分譲、企業保養所用地の分譲などが行われており、また、同所には、スキー場、ゴルフ場、テニスクラブ、ペンション村等が散在し、特にスキー場は全国的に知られている。そして、本件物件は、地下一階、地上一九階建てのホテル安比グランドタワー(以下「本件ホテル」という。)の一室で、ホテル用施設として建築され、隣接するホテル安比グランドと一体の施設として、岩手観光ホテルによりリゾートホテルの営業に供されている。なお、客室にはAからJまでの八タイプがあり、タイプに応じて分譲価格、宿泊料金、管理費が定められているところ、本件物件は、本件ホテルの一一階に位置するIタイプの客室で、その専有面積は四九・一六平方メートルであり、専有部分には家具、備品が付属している。
 なお、本件物件は、原告の自宅から車で四〇分程度の距離にある。(2) 本件物件による原告の利用上の利益
 本件物件の分譲案内書の「ホテル安比グランド・タワーオーナー特典」及び賃貸借契約書によれば、オ
ーナーには、客室の無料宿泊、スキーリフトやゴルフ、本件ホテル内のスポーツ施設、オーナーズラウンジやオーナー専用ロッカーの優待利用等の利益が与えられている。
(3) 本件物件による原告の金銭的利益
ア 本件物件についての売買契約書によれば、本件ホテルは、隣接するホテル安比グランドと一体運営するホテル施設として建築したものを岩手観光ホテルが分譲するものであり、原告は、売買契約の締結と同時に、「ホテル安比グランドタワー管理規約」、管理委託契約書及び賃貸借契約書のそれぞれを岩手観光ホテルと交わし、その内容を遵守することとされている。そして、本件物件の賃貸借契約書によれば、岩手観光ホテルが原告に賃借料を年一回支払うものとし、右賃借料の算出方法は、本件物件を含む同タイプの全客室に係る一般客の利用に伴う年間支払料金の合計額をA、同客室数をBとし、AをBで除して、同タイプの客室一部屋当たりの年間額を求め、他方、同タイプの全客室に係る全利用回数をEとし、EをBで除して同タイプの客室一部屋当たりの平均利用回数を求めてこれをCとし、更にEのうちオーナー等の本件物件の利用回数をDとして、CからDを減算した数をCで除することにより一般客の利用割合を求め、先に求められた同タイプの客室一部屋当たりの年間額に一般客の利用割合を乗じた金額に五〇パーセントを乗じることとされている。なお、この賃借料は、原告が岩手観光ホテルに対して支払う管理費と相殺することができるものとされている。
イ 右算式によれば、原告は、本件物件を年間を通じて賃貸しているにもかかわらず、本件物件と同タイプの客室について一般客の利用者が全くなければ反対給付である賃貸料の支払を受けられないことになり、他方、本件物件について一般客の利用がなくてもこれと同タイプの他の客室について一般客の利用があれば賃貸料の支払を受けることができるということになる。また、リゾートホテルとしての性格上、一般客の利用は必然的に夏場やスキーシーズンに偏り、年間を通じて安定的な料金収入を得ることは見込めない。このように、原告の得る賃料収入は、反対給付との経済的な対応関係に乏しい偶発的なものということができる。
(4) 本件物件による原告の負担の内容、程度
 本件物件による原告の負担としては、本件物件の売買代金三八三一万円のほか、以下のものがある。
ア 管理費
 管理委託契約書に
よれば、オーナーは、管理費として年額一三八万四三二〇円を支払うこととされており、右管理費は、平成四年一月に増額改定され、平成四年、同五年の各年分は一七九万九六一六円である。
 右管理費の六割は人件費が占める。
イ その他の経費
 租税公課、損害保険料、減価償却費、借入金利子がある。
(三) その他の事情について
(1) 他の物件の取得と本件物件の取得との差異
 原告は、後記するとおり、本件物件以外に取得した他の各物件と同様に、本件物件についても、長期的に不動産貸付業の用に供し、賃料収入を得る目的で取得したものである旨主張するが、本件物件と原告の主張する他の物件とは、立地条件、オーナーの各種特典の有無、賃料収入の仕組み、管理費の内容、程度等が全く異なっており、これら他の物件と本件物件の所有目的が同一であると見ることはできない。
(2) 原告の融資申込みの際の事情
 原告は、本件物件の購入に際して、岩手銀行一戸支店に融資の申込みを行っているところ、同支店の貸出稟議書によれば、その際、原告は、「当地より高速道を利用し至近距離にあること、別荘を購入し維持するよりもはるかに安いメンテナンス費用にて賄えることから家族及び医院職員の福利厚生に供するを目的として買得するものである。」旨述べていることが認められ(貸出稟議書の重要性及びその公的性格に照らしても、またその内容の具体性に照らしても、融資担当者が貸出稟議書に勝手な思い込みでこのような記載をするとは到底考えられない。)、この点からも、原告の所有目的が趣味、娯楽、保養の用に供することにあったことは明らかである。
(3) 原告の利用実績について
 原告は、後記するとおり、原告の家族がスキーをしない旨主張するが、前記(二)(1)のとおり、本件物件の所在地は、スキー以外にも季節を問わず保養、行楽が出来る地域として開発されており、スキーをしないことは何ら保養性を否定するものではない。また、原告の親族の居住地が遠方であることや職員の保養に利用させたことがないことも、原告の所有目的の客観的な判断要素たり得ないものである。さらに、利用実績は取得後に顕在化するものであるから、取得の際の判断要素たり得ないものであるし、原告は、岩手観光ホテルに本件物件の管理を委託しているのであるから、本件物件の管理ないしその確認のために宿泊する必要はないはずである。
(四) 評価(本件
物件の主たる所有目的について)
 本件物件は、著名なリゾート地に位置し、充実した設備を有するリゾートホテルの客室の一つであり、その利用についてはオーナーに各種の特典が与えられ、客室の宿泊はもとより各種付属施設についてオーナーに優先的な利用権が与えられていることに照らすと、原告の本件物件による負担は、いわば別荘に係る負担に類似するものといえる。
 また、原告は、本件物件につき、岩手観光ホテルとの間で賃貸借契約を締結し、これにより賃貸料収入を得ているものの、前記(二)(3)イのとおり、右収入は、不安定な上に反対給付との経済的な対応関係に乏しい偶発的なものである。これに対し、本件物件にかかる管理費は、前記(二)(4)アのとおり高額なものであって、オーナー自らの保養目的を充足するための維持・管理費とみるべきである。
 そして、原告の賃貸料収入は、本件係争各年において、原告が負担した費用全体の二割ないし一割五分程度の金額にすぎず、原告が負担した管理費にも達しておらず、本件係争各年を通じて大きな損失が生じている上、近い将来利益が生じることは見込めない。
 むしろ、右賃貸料収入は、前記のような巨額な負担が生じることを前提として、右賃貸料収入によりこれをいくばくかでも低減するとともに、「合理的な節税対策」の名の下に、右負担の中に右賃貸料収入に対応する必要経費部分を観念することを可能にすることを目的としたものにすぎないというべきである。
 以上のとおり、本件物件の立地状況及び設備、本件物件により原告が受け又は受け取ることができた利益及び負担の性質、内容、程度など諸般の事情を総合すると、原告の本件物件の所有目的は、主として趣味、娯楽、保養の用に供するためのものであると認めるのが合理的である。したがって、本件物件は、法六二条一項の「生活に通常必要でない不動産」に該当することになる。
2 本件更正処分の数字的根拠
(一) 原告の総所得金額
(1) 原告の本件係争各年分の不動産所得の損失以外の各種所得金額は、別表二「不動産所得の損失以外の所得金額の内訳」(以下「別表二」という。)のとおりである。
(2) 原告の本件係争各年分の不動産所得の損失は、前記1のとおり、本件損失金額はこれが生じなかったものと見るべきであるから、このことを前提にして算定すると、以下のとおりである。
平成三年分 八五四万六五六七円

成四年分 七三九万一一四四円
平成五年分 六〇九万九六二一円
(3) 右(1)(2)から、原告の本件係争各年分の総所得金額は、以下のとおりとなる。
平成三年分 一億七八三九万八一七七円
平成四年分 一億三四二四万〇七九〇円
平成五年分 四五七二万二八四九円
(二) 本件更正処分及び本件第二次更正処分
 被告は、平成七年二月一四日付けで、本件係争各年について、原告の所得金額、納付すべき税額、過少申告加算税額を別表一の各年分の2記載のとおりであるとして、本件更正処分及び本件賦課決定処分を行い、さらに、その後、平成一〇年一月一九日付けで、平成五年分の所得税につき、原告の所得金額、納付すべき税額、過少申告加算税額を別表一の平成五年分の7のとおりであるとして、減額更正処分(以下「本件第二次更正処分」という。)を行うとともに、過少申告加算税を減額する賦課決定処分を行った。
 なお、本件第二次更正処分後の本件更正処分における、原告の本件係争各年分の総所得金額(平成三年及び同四年分については別表一の2、平成五年分については別表一の7)と前記(一)(3)の金額とを比較すれば、平成三年分及び同五年分については同額、同四年分については、右金額が前記(一)(3)の金額の範囲内である。
3 まとめ
 以上により、本件更正処分は適法であり、また、本件更正処分(平成五年分については第二次更正処分後のもの)により納付すべき税額の基礎となった事実が、更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法六五条四項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条一項の規定に基づき、本件過少申告加算税賦課決定処分は適法である。
四 抗弁に対する認否
1 抗弁1の頭書部分は争う。
(一)(1) 同(一)(1)は認める。
(2) 同(2)は争う。
(二) 同(二)(1)、(2)、(3)ア及び(4)は認め、同(3)イは争う。
(三) 同(三)は否認し争う。
2 同2のうち、(一)(2)の本件損失金額はこれが生じなかったものと見るべきであるとの点は争い、その余は認める。
3 同3は争う。
五 原告の反論
1 本件物件についての原告の所有目的
 原告は、以下のとおり、保養目的ではなく、不動産所得を目的として本件物件を取得し、これを賃貸しているのであるから、賃貸による損失は損益通算の対象となるとい
うべきである。
(一)原告の他の物件の取得状況について
 原告は、健康上の理由などで将来稼働し得なくなる場合に備えて、預貯金のほかに不動産収入で家族の生活を維持することを考え、平成元年九月二三日、札幌市β号所在のホテルアーサー札幌○号室をライベックス株式会社(以下「ライベックス」という。)から六一五七万三〇〇〇円で買い受け、同日、売買契約に付随して右客室の賃貸借契約を売主との間で締結し、売主がホテルアーサー札幌の客室として他客室と一体として使用し、原告に月額一五万円の賃貸料を支払うことになった。
 また、原告は、同年一一月八日、盛岡γ所在のトーカンマンション上の橋○号室を地産トーカン株式会社から二八七六万六五〇〇円で買い受け、同年一二月二九日に月額一〇万円で藤沢薬品工業株式会社に社宅として賃貸した。
 さらに、原告は、平成七年一〇月九日、盛岡δ六五番四所在の宅地五八〇・〇七平方メートルを妻のaと共同で七四五七万四七五〇円で取得し、駐車場として賃貸している。
 なお、aは、平成元年八月七日に盛岡δ六五番一一所在の宅地二三七・九三平方メートルを二二五〇万円で取得した上駐車場として賃貸している。
 原告は、このようにいくつかの不動産を取得していく過程で、他の取得した各物件と同様に、本件物件についても、長期的に不動産貸付業の用に供し、賃料収入を得る目的で取得したものである。
(二) 本件ホテルの利用状況について
 本件ホテルは、スキー場につくられたものであり一二月上旬から五月上句にかけてのスキーシーズンに宿泊者が多いが、原告の家族はスキーをしないので右期間に利用することはほとんどなく、原告が経営するa内科医院の職員の保養に利用させたこともないし、親族も四国在住者が大半で、岩手県内には全くいないので、親族が利用することも稀である。
 原告の本件ホテルの利用状況は、取得した最初の年が〇回、平成三年は一回、平成四年は三回、平成五年は二回宿泊しているが、これらは主に本件物件の状態、保守、管理などを確認するために宿泊したものであり、この他に原告の両親が二泊、義弟が二泊しており、平成六年は三回、平成七年は二回、平成八年は二回、平成九年は一回しか利用していず、大部分は一般宿泊者が宿泊しているのであって、右のような利用実績からみても、主として保養を目的としているとはいえない。(三
) 本件物件の販売目的について
 本件物件の売主である岩手観光ホテルは、事業用資産としての不動産投資として売り出しており、原告ら購入者もそのような動機で取得している。
2 被告の主張に対する反論
(一) 施行令の解釈について
 被告は、施行令一七八条一項二号の解釈にあたり、所有する不動産が主として事業用か保養等の用かの判断にあたっては、所有者の主観によるものではなく、種々の要素を社会通念に照らし合わせて判断されるべきであるとするが、かかる解釈は、同号の「目的」文言を全く無視するものである。同号は「主として趣味、娯楽又は保養の用に供する目的で所有するものその他主として趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有する不動産」と規定し、色々ありうる不動産所有の目的のうち保養等に限定して損益通算の対象としないことを明定しているのであるから、所有者がその不動産を所有する意志、意欲という主観的要素を無視して解釈することが許されないことは明らかである。かかる被告の解釈は税法によらずに課税することになり、租税法律主義や財産権不侵害という憲法原則に違反するものである。(二) 被告の主張する諸事情について
(1) 本件物件の立地条件について
 本件物件がリゾート地にあるリゾートホテルであることは、これを保養の目的で所有することもあれば、一般宿泊者が通年期待しうるため貸付の目的で所有することもあり得るし、また、両方の目的で所有し、両目的に主従の差をつけられない場合などがあり得るので、主たる所有目的の判断にあたり決め手にはなり得ない。リゾート地だから保養が主目的であり、不動産貸付は成り立たないとするのは誤りである。
(2) 本件物件の事実上の優先的利用権について
 被告は、原告に本件物件を事実上優先的に利用する権利がある旨主張するが、事実上の権利とは何を意味するのか不明であるうえ、事実上の優先的利用権を根拠に、本件物件の主たる所有目的が保養にあるとすることはできない。仮に事実上の優先的利用が可能であったとしても、原告の利用実績から見て従としての保養目的を認めうる程度のことである。
(3) 本件物件の利用上の利益について
 被告は、原告が本件物件につき利用上の利益を有する旨主張するが、以下のとおり、右利用上の利益は、原告が本件物件を所有する上で意味を持たない。ア オーナーズルームの無料使用について
 オーナーは、客室利用
料金を支払う必要はないが、自己利用すれば、その分だけ支払を受ける賃貸料が減ることになるので、単純に無料で使用し得るというものではなく、実質的には利用料金が一般宿泊者に比べて割引になるシステムである。また、利用実績からみても多くの利益を原告に与えていない。
イ リフト料について
 スキー場に併設されているホテルでは、宿泊者に無料リフト券を交付するのが普通であるし、本件ホテルでも同様でオーナーの特典ではない。なお、原告の家族はスキーを楽しまないので無料リフト券に利益性はない。
ウ 安比高原ゴルフ場の割引利用について
 原告は、同ゴルフ場の会員権を昭和六二年八月二八日に取得しており、この点も利益性はない。なお、原告は、本件係争各年ころは多忙でゴルフをすることがほとんどなかった。
エ スポーツ施設の割引利用について
 原告の家族は、スカッシュやテニスはやらず、スポーツ施設の利用としてはプール程度で、それも二〇〇〇円から五〇〇円割引になる程度で、特典といえる程のものではない。
オ オーナーズラウンジ・オーナー専用ロッカーの利用について
 オーナーズラウンジは、ホール的なスペースのところにテーブルと椅子が置いてあるだけで、特別のサービスが提供されることもなく、一般宿泊者も利用している。また、ロッカーは、宿泊する部屋番号毎に利用が指定されており、当該番号の部屋に宿泊する一般宿泊者にもキーが貸与されるので、オーナーのみが使用するものではないし、オーナーも宿泊しない以上はロッカーを利用できない。(4) 金銭的収入について
ア 本件物件の売買及び賃貸の性格
 本件物件の売買契約は、賃貸借契約を抜きには成り立たない契約であるから、オーナーは、ホテルの一室を所有するけれども、その一室を一般的・全般的に利用することが期待し得ないもので、自らは僅かにホテルの客室として宿泊用に利用し得るのみである(その結果として賃貸人としての賃貸料の取得額が減少する。)。また、オーナーの所有権は、恒久性を有するけれども、ホテル経営が続けられる限り賃借人の権利が継続する制約付のものであり、しかもオーナーはホテル運営に関与する権限もないから、その所有権は極めて特殊なものである。このシステムの基本的特徴は、所有と賃貸が一体化し、賃貸することによって利益を生み出すところにあるから、主たる所有目的が保養にあるとは到底いえないものである。
 ま
た、原告は、本件物件について、三八三一万円も支出していながら、年に二、三回しか利用せず、残余の日数は賃借人が自由にホテルの客室として利用する権利を有してホテルとして営業の用に供している。即ち、本件ホテルの本件係争各年の客室稼働率は、各タイプの客室の平均で約三四パーセント前後であり、宿泊回数は年間で一二四日位、三年間で三七二日位になる。そのうち原告及び原告の指定した者の利用日数は一〇日で、大部分の三六二日位は原告に収入をもたらす一般宿泊者であり、これらの数字からみても原告の主たる所有目的が保養にあると見ることはできない。
イ 本件物件の収益について
 被告は、原告が岩手観光ホテルから支払を受けた賃貸料が必要経費を大巾に下回っていることを、所有目的が保養にあったことの根拠としているが、これは短期的かつ収益性が低い時期の現象を理由にするものであって誤った見方である。原告が数十年にわたって本件物件を所有し、かつ、賃貸を継続していくシステムを長期的に見るべきである。
 原告は、本件物件の取得当初は損失を免れないが、長期的にみれば宿泊客も増加し、賃貸料が順次増加し、一方、必要経費のうち租税公課、減価償却費、借入金利子は年々減少していくのであるから、相当期間経過後には利益を生み出すものとして本件物件を購入したものであり、現実に、本件係争各年分についてみても、減価償却費、借入金利子が順次減少し、損失金額も減少している。また原告は、本件係争各年について、もっと賃貸料が支払われるものと考えていたが、バブル経済の破綻によりリゾート客が減少し、スキー愛好者も減少傾向にあることなどから、ホテルの客室稼働率が三四パーセント前後に終始し、賃貸料の支払が少なくなり、他方、管理費は契約額より大幅に増額され、その結果として予想以上の損失が生じてしまったものである。
ウ 本件物件の提供と賃貸料の経済的対応関係について
 被告は、本件物件と同タイプの客室について一般客の利用が全くなければ原告が賃貸料を受けられず、本件物件について一般客の利用がなくてもこれと同タイプの他の客室について一般客の利用があれば賃貸料の支払を受けることができるから、原告が支払を受ける賃貸料が、反対給付との経済的な対応関係に乏しい偶発的なものである旨主張するが、原告と岩手観光ホテルは、相当数の宿泊客があることを当然の前提に賃貸借契約を結び、賃貸
料の算出方法も合意しているのであり、現実に年間を通して宿泊者が皆無であるなどということは考えられないし、また、本件物件のみ宿泊者が皆無ということは、ホテルの運営上からも、契約条項からしても考えられず、被告の右主張はあたらない。右賃貸料は、宿泊者数とオーナーの利用回数という偶然的事実によって左右されるけれども、リゾートホテルの経営という見地から金額の算出方法が合意されており、賃貸料と本件物件の提供との間には合理的対応関係がある。
エ 融資申込みの際の事情について
 原告は、本件物件取得のための融資の申込みに際し、岩手銀行一戸支店に取得目的を説明したことはない。むしろ、同支店においては、本件ホテルの客室の購入者の多くが事業用資産として不動産投資を目的としていると判断していた。第三 証拠
 本件記録中の証拠関係目録に記載のとおりであるから、これを引用する。理 由
一 請求原因1、同2(一)(二)、抗弁1(一)(1)、同(二)(1)、(2)、(3)ア及び(4)の各事実は、いずれも当事者間に争いがない。二 被告は、本件物件は法六二条一項の「生活に通常必要でない資産」に当たるから、本件損失金額は法六九条二項によって損益通算の対象にならない旨主張する。
 そこで、以下、本件物件が右「生活に必要でない資産」に当たるか否か、すなわち、同項を受けた施行令一七八条一項二号の「通常自己及び自己と生計を一にする親族が居住の用に供しない家屋で主として趣味、娯楽又は保養の用に供する目的で所有するものその他主として趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有する不動産」に当たるか否かについて判断する。
1 前記一の当事者間に争いのない事実並びに証拠(甲一ないし八、一〇の1、2、一一ないし一七、乙一、二の1ないし22、三ないし一一、一三、一六、一八、一九、二〇の1、2ないし4の各1、2、証人b、同a、原告、調査嘱託)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(一) 当事者等
 原告は、内科医師であり、昭和五九年四月から住所地である岩手県二戸郡εにa内科医院を開設している。
 同医院は、一九床の診療所で、常勤の医師は原告のみであり、一週間に約九〇〇人から一〇〇〇人程度の外来患者が来院するほか、入院患者が常時一七、八人おり、原告が勤務できない場合は代診の医師を依頼するが、そのような場合は年に一、二回程
度である。
 原告の家族は、妻のほか昭和五七年生まれの長女を頭に三人の娘がおり、妻であるaは薬剤師として同医院に勤務し、平成元年四月一〇日に三女を出産している。(二) 原告の他の不動産取得状況
(1) 原告は、平成元年九月二三日、札幌市β所在のホテルアーサー札幌○号室をライベックスから六一五七万三〇〇〇円で買い受け(買受資金はオリックス株式会社からの借入れによった。)、同日、ライベックスとの間で、右物件につき、賃料を月額一五万円でホテルの客室として賃貸する契約を締結した。
(2) 原告は、同年一一月八日、盛岡γ所在のトーカンマンション上の橋○号室を地産トーカン株式会社から二八七六万六五〇〇円で買い受け(買受資金のうち二〇〇〇万円は岩手銀行一戸支店からの借入れによった。)、同年一二月二九日、月額一〇万円で藤沢薬品工業株式会社に社宅として賃貸した。
 なお、原告は、平成六年三月、右物件につき、右藤沢薬品工業との賃貸借契約を解約し、以後は原告の妻及び娘がこれを使用している。
(3) 原告の妻aは、平成元年八月七日、盛岡δ六五番一一所在の宅地二三七・九三平方メートルを二二五〇万円で買い受け(買受資金の一部は銀行借入れによった。)、同年九月三〇日、右土地を駐車場一二台分として、月額六万円で株式会社川徳ストアに賃貸した。
 また、原告及びaは、平成七年一〇月九日、盛岡市δ六五番四所在の宅地五八〇・〇七平方メートルを七四五七万四七五〇円で買い受け(買受資金は自己資金によった。)、平成八年五月七日、これを管理会社に委託し、二六台分の月極駐車場として一台分月額五〇〇〇円で賃貸している。
(三) 本件物件の立地状況及び設備等
(1) 本件物件の存在する場所は、岩手県北部の安比高原に位置し、同所は十和田八幡平国立公園のうち八幡平地区に隣接したリゾート地として、別荘の分譲、企業保養所用地の分譲などが行われており、また、同所には、スキー場、ゴルフ場、テニスクラブ、ペンション村等が散在し、特にスキー場は大型のものであり全国的に知られている。そして、本件物件は、地下一階、地上一九階建ての本件ホテルの一室で、ホテル用施設として建築され、隣接するホテル安比グランドと一体の施設として、岩手観光ホテルによりリゾートホテルの営業に供されている。なお、客室にはAからD、GからJの八タイプがあり
、タイプに応じて分譲価格、宿泊料金、管理費が定められているところ、本件物件は、本件ホテルの一一階に位置するIタイプの客室で、その専有面積は四九・一六平方メートルであり、専有部分には家具、備品が付属しており、ゲレンデ側ではなく駐車場側を向く形になっている。
 なお、本件物件は、原告の医院から車で四〇分程度の距離にある。(2) 岩手観光ホテルでは、安比高原ではスキー客が増加傾向にあったにもかかわらず宿泊施設が充実していなかったことに対応する高品質の宿泊施設として、ホテル安比グランド及び本件ホテルを建築して客室を分譲することとした。なお、本件ホテルの建設に先行して建設され営業を開始していたホテル安比グランドの営業実績では、二、三名定員の客室において賃借料が管理費を上回っていた。(四) 本件物件の取得時の経緯
 原告は、平成元年八月に家族と安比高原にドライブに行った際、本件ホテルが分譲中である旨の広告を見て岩手観光ホテルに問い合わせ、同月一六日ころ、岩手観光ホテルの担当者であるbの訪問を受け、本件物件についての説明を受けた。
 bは、右説明の中で、原告に対し、安比高原スキー場について、スキー来場者数が九五万人から一〇〇万人程度で本州では一、二を争い、将来的には一三〇ないし一四〇万人を目指していること、このようなスキー客の増加傾向にもかかわらず宿泊施設が充実していなかったことに対応する高品質の宿泊施設としてホテル安比グランド及び本件ホテルを建築し分譲することとなったことなどを話し、「ホテル安比グランドタワー・分譲のご案内」と題する書面(乙二の1ないし22、以下「本件分譲案内書」という。)を示してその内容を説明した。その際、原告は、タイプ別の利用率や賃借料、定員等について質問し、bが、本件物件の室料が五万円程度であること、ホテル安比グランドの稼働率が当時二〇パーセント程度であり、本件ホテルの稼働率は三年ほどで四〇パーセント程度になると予想されることなどを述べた。
 また、原告は、先に営業を開始していたホテル安比グランドの値上がり状況についても尋ね、bは、二〇〇〇万円の物件が二四〇〇万円で売却された実績があることを話した。そして、原告は、分譲中の物件のうち比較的価格の低いJタイプやIタイプの客室の中で最も高い階層のものを尋ねたが、Jタイプは階層の低いものしか残っていなかったため、将来転売
する際には高い階層の方がよいと考えて、Iタイプの中で高い階層のものを購入することにしたが、部屋の眺望等については触れなかった。
 原告は、bの説明から、室料が一日五万円、稼働率が将来四〇パーセント程度になるのであれば、賃料から、管理費、固定資産税、保険料及び借入金利と預金金利の差額分を差し引くと年間一五〇万円程度の収入が見込まれるものと考え(なお、金利について、原告は、当時岩手銀行一戸支店に一億円以上の預金を有しており、その預金金利が年六・三パーセントであったのに対し、同支店からの借入金利が年六・六パーセントであったため、税引後の金利の差額分が年間五〇万円弱程度となるものと計算した。)、また、岩手観光ホテルが株式会社リクルートの関連会社であることから、本件ホテルの所在地はリゾート地として将来性が十分あるものと考え、本件物件を購入することとし、同年一一月一三日、岩手観光ホテルとの間で本件物件を三七二〇万円で購入する売買契約を締結した(乙一)。そして、同日、これを岩手観光ホテルに賃貸するとともに(乙三)、同社との間で本件物件の管理委託契約を締結した(乙四)。
 原告は、本件物件の購入資金として、岩手銀行一戸支店から、借入利子を年六.六パーセントとして三〇〇〇万円を借り入れた。
 なお、右借入れの際に岩手銀行一戸支店において作成された貸付稟議書には、「融資物件は、安比高原スキー場に平成元年一二月オープンの分譲型ホテルであり、オーナーは、自ら無料で利用する外、分譲に際して結んだ賃貸契約のもとに一般客にユースしそのペイバックを得られるシステムとなっている。購入者の多くは事業用資産として不動産投資を目的とするもの乍ら、申込人(原告)は、当地より高速道を利用し至近距離にあること、別荘を購入し維持するよりもはるかに安いメンテナンス費用にて賄えることから家族及び医院職員の福利厚生に供するを目的として買得するものである。」との記載があったが(乙一三)、この記載は、銀行の担当者が本件物件のパンフレットを参考にして、そのような目的であろうと判断して記述したものであった。
(五) 「ホテル安比グランド・オーナー特典」の内容等
 本件分譲案内書のうち、「ホテル安比グランド・タワーオーナー特典」と題する書面(乙二の8)には、以下のような記載がある。
「1オーナーズルームの客室利用料金は、何回お使いいただいて
も無料です。
2オーナーズルームにお泊まりになるとリフト乗り放題で、スキーライフを十二分に満喫できます。
3オーナーは、安比高原ゴルフクラブにおいて、会員料金でゴルフプレーをお楽しみいただけます。
4オーナーズルームをご使用にならない日は、一般客にユースして、その分ペイバックを受けられます。
 分譲に際してオーナーと岩手観光ホテルは客室の賃貸契約を結び、オーナーのご使用にならない日を一般のお客様ヘホテルユースし、その客室料金の五〇%をオーナーへペイバックいたします。そのペイバックを所定の管理費にあてることができます。
 オーナーがご利用にならない日数が多いほどペイバックが増えていく可能性がありますので、マンションによる賃貸とは違って、「使用しながら貸す」という、資産活用と「マイホテル」というリッチなオーナー気分を同時にお楽しみいただけます。
5別荘を持つよりも、はるかに安いメンテナンス費用で快適なリゾートライフを提供いたします。
 別荘というハードウエアを購入しても、実際には室内の冷暖房や行き届いた清掃などのメンテナンスはたいへんな労力がかかりますし、別荘の保存や補修にかかる費用は相当な額にのぼるものです。その点ホテルコンドミニアムは、所定の管理費をお支払いいただくだけで、メンテナンスにかかる全てのサービス、ホテルの維持管理をお引き受けいたしますので、別荘と比較して、メンテナンスコストが安くて済むことも見逃すことのできないメリットといえます。また、旅の疲れをいやして快適なリゾートライフを楽しむためには、各種のサービスを親身になってお世話する人的サービスも大切な要素となりますが、別荘ライフでは、管理人を雇うなど、それ相応のコストをかけない限り満たすことのできないサービスも、ホテル安比グランドでは十二分に受けることができます。
6事業用資産としての不動産投資ですから、利用上のメリットの他に、合理的な節税対策ともなります。
 オーナーズルームを事業用資産としていただくことにより、ホテル所有のための費用や管理費、減価償却などの経費は必要経費として処理されることになります(ただし、利用形態により異なる場合があります。)。
 不動産としての所有ですから贈与や相続上など、数々のメリツトもあります。7ホテル内各種スポーツ施設割引利用特典
 ホテル内には、リゾートライフには欠かせない各種スポーツ施設が整っております。オーナーの方には充分お楽しみいただくため、各種割引特典をご準備しております。
 割引対象施設(室内温泉プール、トレーニングルーム、スカッシュコート、テニスコート)
8オーナー専用ラウンジ及びオーナー専用ロッカー
 オーナーの方専用のVIPルームを設けました。一般ホテルユースのお客様はご利用いただけませんので、選ばれた方だけの選ばれた時間を気ままにお過ごし下さい。また、スキーやゴルフクラブなど、お持ち帰りがたいへんなものをいつでもご収納いただけるオーナー専用ロッカーをご準備いたしました。」
 オーナーには、右のような各種特典が認められているが、本件ホテルにオーナーが宿泊を希望する場合には、一般の予約客を他の空室に、オーナーを自己の所有する客室に宿泊するよう手配されることになってはいるものの、空室のない場合にまでオーナーが優先的に宿泊することはできないことになっている。また、オーナーが自己の所有する部屋に私物を置くことは禁じられている。
 なお、原告は、本件物件購入以前の昭和六二年八月二八日に、既に安比高原ゴルフ場の会員権を取得していた。
(六) 本件物件の売買契約及び賃貸借契約の内容
(1) 本件物件の売買契約書(乙一)によれば、本件ホテルは、隣接施設であるホテル安比グランドと一体運営するホテル施設として建築されたものを岩手観光ホテルが分譲するものであり、原告は、売買契約の締結と同時に、「ホテル安比グランドタワー管理規約」、「ホテル安比グランドタワー管理委託契約書」(乙四)「ホテル安比グランドタワー土地付区分建物賃貸借契約書」(乙三)のそれぞれを岩手観光ホテルと取り交わし、その内容を遵守することとされている。(2) 本件物件の賃貸借契約書によれば、その賃貸借の内容は、次のようなものである。
 岩手観光ホテルは、本件ホテルと隣接のホテル安比グランドとを一体としてホテル運営する目的で、原告から本件物件を賃借し、原告は同目的のもとにこれを岩手観光ホテルに賃貸すること、岩手観光ホテルは原告のために同社の定める範囲において、関連する諸施設を利用できるように図ることとする。
 そして、岩手観光ホテルは、原告に賃借料を年一回支払うものとし、右賃借料の算出方法は、本件物件を含む同タイプの全客室に係る一般客の利用に伴う年間支払料金の合計額をA、同客室数をBとし、AをBで除して、同タイプの客室一部屋当たりの年間額を求め、他方、同タイプの全客室に係る全利用回数をEとし、EをBで除して同タイプの客室一部屋当たりの平均利用回数を求めてこれをCとし、更にEのうちオーナー等の本件物件の利用回数をDとして、CからDを減算した数をCで除することにより一般客の利用割合を求め、先に求められた同タイプの客室一部屋当たりの年間額に一般客の利用割合を乗じた金額に五〇パーセントを乗じることとされている。
 右賃借料の支払方法は、一月一日より同年一二月三一日までの一年間をもって計算し、賃貸借契約締結と同時に岩手観光ホテルと別途締結する「ホテル安比グランドタワー管理委託契約書」に定める管理費と相殺の上、翌年の二月末日までに差額を原告の指定する銀行口座に振り込む方法で支払うものとされている。(3) また、本件物件の管理委託契約書(乙四)によれば、原告は、管理会社である岩手観光ホテルに対し、管理費として年額一三八万四三二〇円を支払うこととされている。
 右管理費については、平成四年一月三一日に、岩手観光ホテル側から原告に対し、管理費の収支が赤字であることを理由にこれを改定する旨の通知があり、平成四年、同五年の各年分は一七九万九六一六円に増額された。
 右増額通知に示された管理費からの支出総額が合計三億四三一六万三三六八円となっており、その内訳として、人件費二億〇四五六万円、客室清掃外注費二六五五万〇二六四円のほか、ボイラー等運営外注費、光熱費、保守料(エレベーター、浄化槽、環境水質検査等、電話設備、フロント会計機、消防設備、ボイラータンク管理、温泉施設管理、ゴンドラ設備、中央監視室制御装置、発電機装置)等が挙げられている。
(七) 本件物件の収支状況
 本件物件にかかる本件係争各年の収入及び各種経費の金額は、以下のとおりである。
(1) 平成三年度
ア 賃料収入 一一二万八六七五円
イ 固定資産税 二〇万二二六七円
ウ 損害保険料 二万七九九九円
工 減価償却費 三三九万八三二六円
オ 借入金利子 二〇五万九七〇二円
カ 管理費 一三八万四三二〇円
(2) 平成四年度
ア 賃料収入 一〇〇万八五四二円
イ 固定資産税 二〇万二二七四円
ウ 損害保険料 二万〇九〇四円
工 減価償却費 二九五万九七九四円
オ 借入金利子
 一五六万七〇九四円
カ 管理費 一七九万九六一六円
(3) 平成五年度
ア 賃料収入 一一三万〇八二四円
イ 固定資産税 二〇万二二七四円
ウ 損害保険料 二万〇九〇四円
工 減価償却費 二五九万〇一〇三円
オ 借入金利子 一一五万四一八八円
カ 管理費 一七九万九六一六円
(八) 原告の本件物件の利用状況
 原告の本件物件の利用回数は、平成二年及び同三年には利用なし、平成四年にはショートステイ(宿泊をしない日中の利用)二回と宿泊一回(一泊)、平成五年には宿泊四回(一泊が三回と二泊が一回)、平成六年には宿泊三回(各一泊)、平成七年には宿泊二回(各一泊)、平成八年には宿泊二回(二泊が一回と一泊が一回)とオーバータイム利用一回、平成九年には宿泊一回(一泊)、平成一〇年には宿泊一回(一泊)、オーバータイム利用一回である。
2 前記1認定の事実によれば、本件物件が「通常自己及び自己と生計を一にする親族が居住の用に供しない家屋」に該当することは明らかである。そこで、右認定事実に基づき、本件物件が「主として趣味、娯楽又は保養の用に供する目的で所有するもの」に該当するか否かを検討する。
(一) 被告は、本件物件が「保養の用に供する目的で所有するもの」に該当すると見るべき事情として、本件物件が保養地内にあることを挙げる。
 確かに、本件物件は、全国的に知られたリゾート地に所在するホテルの一室であるが、リゾート地に所在するホテルの客室であるからといって、取得者がこれを自ら利用することを目的とすることもあれば、自ら利用することなく保養に来る一般客の利用に供し賃料を得ることを目的とすることもあり得るのであって、この点から原告の取得目的が保養にあったと断じることはできない。そして、本件分譲案内書及び賃貸借契約書には、本件物件をオーナーが使用しない日には一般客にホテルとして供し、客室料金の五〇パーセントを受けられるといった点で資産活用ができ、事業用不動産として不動産投資の対象とすることが可能なことも記載されているのであるから、本件物件の売買に際しては、取得者が自ら利用することだけでなく賃貸目的で取得することも想定されていたというべきである。
(二) 被告は、本件物件には原告に利用上の特典があることを挙げる。
 確かに、本件物件について、本件分譲案内
書及び賃貸借契約書には、オーナーが宿泊した場合に宿泊料及びリフトが無料となること、ゴルフ場・各種スポーツ施設の利用割引、オーナー専用のラウンジやロッカー等が用意されていることが記載されているが、右のような利用上の特典は、取得者が自ら本件物件を年間多数回にわたり利用する場合には大いに魅力的なものとなるとしても、現実に年間わずかな回数しか利用せず、また、既に安比高原ゴルフ場の会員権を有していた原告にとって、こうした特典のあることがそれほど大きな意味を持つとは考え難く、このようなわずかな利用上の利益を享受することを主たる目的として、原告が年間一三〇万円を超える高額の管理費その他の経費を支払っていると見ることのほうがはるかに不合理であるといわざるを得ない。(三) 被告は、本件物件の収益性がないこと、とりわけ本件物件にかかる管理費が高額であり、賃貸料が管理費に満たない状況である点を挙げる。
 確かに、本件物件の係争各年の賃料収入が管理費にも満たない状況となってはいるが、他方、原告は、本件物件取得の際、bとの間で収益性を中心とする質問をし、その上で本件物件を購入することとしたものであり、その際、bから本件物件の室料が五万円であって将来四〇パーセントの稼働率となることが予想される旨の説明を受けてその旨信じ、管理費、固定資産税、保険料及び借入金利と預金金利の差額の合計額を大幅に超える賃料収入が見込まれると計算したものであり、その計算が特別不合理なものであるとも考えられず、また当時の経済状況を考えたとき、原告がbの説明を信じて、本件物件の稼働率を高く見込んだのもやむを得ないところであって、その後経済状況が悪化し、稼働率の低迷や管理費の値上げ等により、収益状況が悪化し、結果的に大幅な赤字になっているからといって、原告の本件物件の購入目的が賃料収入の獲得にあったことを覆す理由となるとは考え難い。(四) 被告は、原告の得る賃料収入が、反対給付との経済的な対応関係に乏しい偶発的なものである旨主張する。
 確かに、原告と岩手観光ホテルとの間の賃料の算出方法は固定的なものではなく、一般客が本件物件と同タイプの客室を年間を通じどの程度利用したかに左右されるものではあるが(なお、右賃料は年一回、一年分が支払われるものであるから、季節によって一般客の利用に偏りがあることは賃料の安定性と無関係である。)、賃
料収入の一定しないことが直ちに原告が自らの保養の目的で本件物件を取得したことにつながるものではない。
(五) 以上のとおり、被告の主張は採用できないものであるほか、本件物件は、岩手観光ホテルにホテル客室として賃貸することを前提として分譲された物件であること、原告の本件物件の利用状況は、平成三年は利用なし、平成四年には日中の利用二回と宿泊一回、平成五年には宿泊四回と少ない回数であったこと、原告は、本件物件の取得と同時期に、他にも不動産を順次取得し、いずれもこれを他に賃貸して賃料収入を得る事業を開始しており、本件物件についても、bからその収益や値上がり状況についての説明を受けた上でその購入に至っている経緯があり、本件物件についてのみ他の物件と異なる目的をもって購入したという事情は窮われないこと等の諸事情をも併せ考慮すれば、原告の本件物件の主たる所有目的が保養にあったと解することはできないというべきである。
3 以上によれば、本件物件が施行令一七八条一項二号の「通常自己及び自己と生計を一にする親族が居住の用に供しない家屋で主として趣味、娯楽又は保養の用に供する目的で所有するものその他主として趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有する不動産」に該当するということはできないから、法六二条一項の「生活に通常必要でない資産」に該当せず、原告の本件物件を岩手観光ホテルに賃貸したことによって生じた本件損失金額は、同法六九条一項により損益通算の対象となるというべきであり、これが損益通算の対象とならないとしてなされた本件更正処分は、その余の点について判断するまでもなく違法であってその取消しを免れず、また、右更正処分を前提としてなされた本件賦課決定処分も違法であるから、その取消しを免れないというべきである。
三 よって、原告の本訴請求はいずれも理由があるから認容し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六一条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
盛岡地方裁判所第二民事部
裁判長裁判官 栗栖勲
裁判官 大竹優子
裁判官 大澤知子
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