主文
一 被告が原告の昭和六〇年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度の法人税について昭和六三年五月三一日付でした更正のうち所得金額を二五億六二二〇万七六一九円として計算した額を超える部分及び過少申告加算税賦課決定を取り消す。
二 被告が原告の昭和六一年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度の法人税について昭和六三年五月三一日付でした更正及び過少申告加算税賦課決定のうち、所得金額を二七億四六一九万六八〇二円として計算した額を超える部分を取り消す。
三 訴訟費用は被告の負担とする8。
○ 事実及び理由
第一 原告の請求
主文と同旨
第二 事案の概要
一 本件に関する法制の概要
1 探鉱費補助金
可燃性天然ガス資源開発法(以下「資源開発法」という。は、石油及び可燃性天然ガス資源を合理的に開発することによって公共の福祉の増進に寄与するため、石油及び可燃性天然ガスの特性に応ずる掘採の方法を定めるとともに、可燃性天然ガスの探鉱の促進を図ることを目的とするものであり(一条)、国はガスの探鉱を実施する鉱業権者又は租鉱権者(以下「鉱業権者等」という。)に対し、予算の範囲内において、その実施に必要な費用の一部を補助金として交付することができる旨定めるとともに(一四条)、右補助金を交付するための要件、手続等に関する規定を設けている(一五条ないし一八条、、以下、右補助金を「探鉱費補助金」という。)。もっとも、探鉱費補助金を交付すべきものと決定したガスの探鉱(掘削工事を伴うものに限る。)により発見された油層に属するものと通商産業大臣が認定した地下の部分からガスを採取する鉱業権者等は、その油層からガスの採取を開始した日以後の各一年間にその地下の部分から採取したガスが所定の最低量に達しない各年を除いて、ガスの採取を開始した日から五年を経過するまでの各一年間に、所定の金額を毎年国庫に納付すべきものとされている(一九条、以下、右金員を「納付金」という。)。
2 探鉱準備金
(一) 青色申告書を提出する法人で鉱業を営むものが、昭和四〇年四月一日から平成四年三月三一日までの期間(指定期間)内の日を含む事業年度において、可燃性天然ガスを含む特定の鉱物に係る新鉱床探絋費(その範囲については租税特別措置法(以下「措置法」という。)五八条の二第三項、同法施行令(以下「措置法施行令」という。
)三四条の二第八項が規定する。)の支出に備えるため、次の(1)及び(2)の金額のうちいずれか低い金額以下の金額を損金経理の方法により探鉱準備金として積み立てたときは、当該積み立てた金額は、当該事業年度の所得金額の計算上、損金の額に算入される(措置法五八条の二第一項)。
(1) 当該法人が採掘した鉱物の販売による当該事業年度の指定期間内における収入金額として措置法施行令三四条の二第一項の定める方法により算出される金額の一〇〇分の一三に相当する金額(同項一号)
(2) 右(1)の収入金額に係る採掘所得の金額として措置法施行令三四条の二第二項、三項の定める方法により算出される金額の一〇〇分の五〇に相当する金額(同項二号)
(二) 右(一)の法人の事業年度終了の日において、前事業年度から繰り越された探鉱準備金の金額のうちにその積立てをした事業年度終了の日の翌日から三年を経過したものがある場合には、その三年を経過した探鉱準備金の金額は、その三年を経過した日を含む事業年度の所得の計算上、益金の額に算入される(措置法五八条の二第四項)。
また、探鉱準備金を積み立てた法人が、探鉱準備金の金額を取り崩した場合においても、その取り崩した日における探鉱準備金の金額のうちその取り崩した金額に相当する金額が、その日を含む事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入される。この場合、探鉱準備金の金額は、その積立てをした事業年度別に区分した各金額のうち、その積立てをした事業年度が最も古いものから順次益金の額に算入される(措置法五八条の二第五項)。
3 新鉱床探鉱費の特別控除
探鉱準備金の金額を有する法人が、各事業年度において新鉱床探鉱費の支出を行った場合又は措置法施行令三四条の三第一項に定める探鉱用機械設備について償却をした場合には、当該事業年度の所得の金額の計算上、これらの支出又は償却に係る損金の額に算入される金額の外、次の(1)ないし(3)の金額のうち最も少ない金額に相当する金額が損金の額に算入される(新鉱床探鉱費の特別控除。措置法五八条の三第一項)。
(1) 当該事業年度において支出する当該新鉱床探鉱費の額に相当する金額と当該事業年度の当該探鉱用機械設備の償却額との合計額(同項一号)
(2) 当該事業年度において右の(二)の益金の額に算入された、又は算入されるべきこととなった探鉱準備金の金額に相当する金額(同項二号)
(3) 新鉱床探鉱費の特別控除等がないものとして計算した場合の当該事業年度の所得金額(同項三号、措置法施行令三四条の三第二項)
二 当事者間に争いのない事実
1 原告は、可燃性天然ガスの開発、採取、販売、ヨードの製造販売等を目的とし、その法人税につき被告から青色申告の承認を得ている株式会社である。2 (一) 原告の昭和六〇年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度8本件で問題となる原告の事業年度は、いずれも各暦年の一月一日から一二月三一日までであるので、以下当該事業年度に係る暦年(いずれも昭和であるので元号は省略する。)及び終了月に従って「六〇年一二月期」などのように表示する。)の法人税について、原告が青色の申告書でした確定申告、被告がした更生及び過少申告加算税賦課決定(以下、順次「六〇年一二月期申告」、「六〇年一二月期更正」、「六〇年一二月期賦課決定」という。)並びに原告がした不服申立て及びこれに対する応答の経緯は別表第一の一のとおりである。
(二) 原告の六一年一二月期(六〇年一二月期と併せて、以下「本件各事業年度」という。)の各法人税について、原告が青色の申告書でした確定申告、被告がした更正及び過少申告加算税賦課決定(以下、順次「六一年一二月期申告」、「六一年一二月期更正」、「六一年一二月期賦課決定」という、ご並びに原告がした不服申立て及びこれに対する応答の経緯は別表第一の二のとおりである。3 (一) 原告は、六〇年一二月期申告に係る所待金額の算出に当たり、六〇年一二月期に現実に支出した新鉱床探鉱費の額四億八四〇五万二三二三円を新鉱床探鉱費の特別控除額として損金に算入した。
(二) また、原告は、六一年一二月期申告に係る所得金額の算出に当たり、六一年一二月期に支出した新鉱床探鉱費の額を三億四三〇七万〇二一〇円とし、これを新鉱床探鉱費の特別控除額として損金に算入した。ただし、右三億四三〇七万〇二一〇円中に含まれる地元協力費及び神社参道整備費の額合計二〇四万六五七〇円は新鉱床探鉱費に該当しない。したがって、六一年一二月期に原告が現実に支出した新鉱床探鉱費はこれを控除した三億四一〇二万三六四〇円である。
4 原告は、通商産業大臣から、探鉱費補助金として、六〇年一二月期において一億一一五三万二〇〇〇円の、六一年一二月期において一億八五六一万一二七四円の各交付を受けた。
三 争点及び争点についての当事者の主張
1 争点
被告は、本件各事業年度の原告の所得金額の算出について新鉱床探鉱費の特別控除額を計算するに当たっては、措置法五八条の三第一項一号にいう「当該事業年度において支出する当該新鉱床探鉱費の額に相当する金額」(右一の3の(1))は、原告が現実に支出した新鉱床探鉱費の額から原告が交付を受けた探鉱費補助金の額を控除した金額とすべきであるとし、これを前提として「六一年一二月期については、更に地元協力費及び神社参道整備費の額合計二〇四万六五七〇円を新鉱床探鉱費の額から控除して)、別表第二のとおり算出した所得金額が原告の本件各事業年度の所得金額であって、六〇年一二月期更正及び六一年一二月期更正に係る各所得金額はそれぞれこれと同額であるから右各更正は適法であり、また、右各更正による増差税額を基に、それぞれ国税通則法六五条一項(昭和六二年法律第九六号による改正前のもの)、一一八条三項を適用して算出した過少申告加算税を賦課した六〇年一二月期賦課決定及び六一年一二月期賦課決定も適法であると主張する。これに対し、原告は、措置法五八条の三第一項一号の「当該事業年度において支出する当該新鉱床探鉱費の額に相当する金額」について、これは原告が現実に支出した新鉱床探鉱費の額であって、これから原告が交付を受けた探鉱費補助金の額を控除した金額ではないと主張する。
すなわち、本件の争点は、一般に、探鉱費補助金の交付を受けた法人について、その交付を受けた当該事業年度の新鉱床探鉱費の特別控除額を算出する場合に、その算出の基礎となる金額である「当該事業年度において支出する当該新鉱床探鉱費の額に相当する金額と当該事業年度の当該探鉱用機械設備の償却額との合計額」(措置法五八条の三第一項一号)のうちの「当該事業年度において支出する当該新鉱床探鉱費の額に相当する金額」は、当該法人が現実に支出した新鉱床探鉱費の額から当該探鉱費補助金の額を控除した金額であると解すべきか否かという点である。2 争点についての被告の主張
(一) 措置法五八条の三第一項一号その他法令の規定中に、同号の「当該事業年度において支出する当該新鉱床探鉱費の額に相当する金額」につき探鉱費補助金の額を控除した金額とする旨の明文の規定は存在しない。しかしながら、措置法も法の一である以上、その意味内容は解釈によって明らかにすべきである。そして、租税法の解釈は、租税法律主義の原則の外、その公共性と公平負担の原則及びそれに由来する実質課税の原則をも踏まえた上での総合的理解でなければならないから、右諸原則に則って法規の目的を的確に把握し、文言にとらわれることなく、その経済的、実質的意義を考慮し、かつ、立法技術をも勘案しながら、その意図するところを合理的、客観的に確定しなければならない。このように租税法規を解釈することは租税法律主義の原則に反するものではない。
そして、以下のとおり、鉱業所得の課税の特例制度の本質、同特例制度の概要、探鉱費補助金の趣旨及び目的、同特例制度に係る会計処理慣行を総合的に考慮した合理的解釈としては、措置法五八条の三第一項一号の「当該事業年度において支出する当該新鉱床探鉱費の額に相当する金額」との規定中の「支出」という文言は実質的に自己の負担において支出した場合に限定されるべきものであり、したがって、右規定中の「当該新鉱床探鉱費」という文言は交付を受けた探鉱費補助金の額を控除した金額と解すべきである。
(二) 鉱業所得の課税の特例制度の本質
鉱業は、採掘するにつれて枯渇する減耗性資産を対象として事業経営をしてあり、これを新たに取得するためには、自ら探鉱を行うことが必要であるが、鉱床は地下資源であり、その量に限りがあることからその探鉱費用は時の経過とともに必ず逓増していくと考えられる。したがって、鉱床については投下資本の回収のプロセスである通常の減価償却をするだけでは、鉱業の実質的資本価値を維持することができず、事業の継続は困難となる。そこで、投下資本の額を超え実質的資本再調達に要する費用にまで資本の回収を認める必要がある。
諸外国では、鉱業権等の鉱業用固定資産について、その取得価格とは無関係に、その鉱業権等に係る売上金額又は所得金額等の一定割合相当額の償却を行い、その鉱業権等の償却を終った後もなおその一定割合相当額を所得金額から控除する減耗控除制度という免税制度を設けている。わが国においては、鉱産物の自由化の下でわが国鉱業界が競争に耐え抜いていくためには、税制面において少なくとも諸外国と同じ競争条件にすることが必要であるという見地から、探鉱準備金制度及び新鉱床探鉱費の特別控除制度が創設された。
探鉱準備金及び新鉱床探鉱費の特別控除の両制度は、無条件免税制度である減耗控除制度をそのまま採用したものではなく、その理念を斟酌しつつ、減耗控除制度を採用している諸外国と価格関係で著しく不利となることを避け、わが国の鉱山資源開発促進という政策目的を達成するために、免税効果を新鉱床探鉱費の支出額に結びつけた次のような条件付免税制度である。
(1) 鉱物販売金額及びそれに係る所得金額を基準として探鉱準備金の積てを認め、積立て後三年を経過した事業年度まで課税を繰り延べる。
(2) 新鉱床探鉱費の支出を行ったときに、探鉱準備金の取り崩しをするとともに所得金額から特別控除を行うことによって、いわば探鉱準備金を課税の繰延べから免税に振り替える。
(3) 積立て後三年を経過した事業年度を超えて残っている探鉱準備金は免税目的のために使用されなかったものとして益金の額に算入する。
このように、新鉱床探鉱費の特別控除は、探鉱準備金の積立てと併せて一つの制度と理解すべきであり、したがって、探鉱費補助金の扱いについても、新鉱床探鉱費の特別控除額を計算する場合と、探鉱準備金の積立額の計算をする場合とで同様とすべきである。
(三) 鉱業所得の課税の特例制度の概要
1 探鉱準備金制度
探鉱準備金制度の概要は右一の2のとおりである。そして、探鉱準備金の積立限度額計算の基礎となる採掘所得金額(右一の2の(一)の(2))は、原則として、当該事業年度の鉱物若しくは選鉱後の鉱物の販売による収入金額又は鉱物を原材料として製造した物品等の販売による収入金額のうち鉱物又は選鉱後の鉱物の収入金額に相当する金額の合計額から、当該収入金額に係る損失の金額の合計額を控除した金額とされている(措置法施行令三四条の二第二項、一項)。したがって、採掘所得金額の計算上、右の収入金額には、探鉱費補助金等の国庫補助金による収入は含まれない(租税特別措置法通達(以下「措置法通達」という。)五八の二-六(1))。また、探鉱費補助金が右収入金額に含まれない以上、当該収入金額に係る損失の金額に含まれないことも理論上当然である。
2 新鉱床探鉱費の特別控除制度
新鉱床探鉱費の特別控除制度の概要は、右一の3のとおりであり、この制度は独立の所得控除と考えるべきものではなく、探鉱準備金の積立て等による課税の繰延べを探鉱準備金の取崩額と同額以下の範囲内で、新鉱床探鉱費の支出額に応じて所得控除(免税)に振り替えていくものである、、そして、その特別控除額の基準となる金額のうち、当該事業年度において支出する当該新鉱床探鉱費の額に相当する金額と当該事業年度の当該探鉱用機械設備の償却額との合計額(右一の3の(1))は、その事業年度に行った新鉱床の探鉱活動の量を示すものであり、当該事業年度において益金の額に算入されな、又は算入されるべきこととなった探鉱準備金の金額に相当する金額(同(2))は新鉱床探鉱費を支出しな場合において準備金の取崩しを行って免税を確定させるために必要な基準であり、新鉱床探鉱費の特別控除等がないものとして計算した場合の当該事業年度の所得金額(同(3))は免税を会社の所得金額の範囲に限定するものである。
(四) 探鉱費補助金の趣旨、目的
探鉱費補助金の制度の内容は右一の1のとおりであり、その支出の性格は、新鉱床探鉱費を補助することにより鉱業の維持発展を助成し、もって公共の福祉の増進に寄与するためのものである。
新しい鉱業資源を開発し、わが国の産業に役立てることは、国又は地方公共団体自身の義務であると考えられるが、国等が探鉱費補助金の支出を行うことは、国等が自己の責任において自ら新鉱床探鉱費の支出をしているものといえる。そうすると、国等による探鉱費補助金の支出は、実質的に、新鉱床探鉱費の支出が、補助金に名を借りて国そのものによって行われているのと同一視することができる。(五) 鉱業所得の課税の特例制度に係る会計慣行
資源開発法に基づく探鉱費補助金の交付は昭和二七年の同法施行時から実施されているが(なお、原告は、天然ガス業界が探鉱費補助金の交付の対象となったのは昭和五九年からであると主張するが、同業界に属する企業に対しても昭和二七年から交付されている。)、その交付を受けている原告と同業種の事業を営む法人は、新鉱床探鉱費の額から探鉱費補助金の額に相当する金額を控除して採掘所得金額を計算する会計処理をしている。
また、鉱業法に規定する鉱物を取り扱う企業者の団体である日本鉱業協会は、鉱業所得の課税の特例に係る税法の解釈に関して、「減耗控除ハンドブック」を編集し、同協会に加入する各企業に対して統一した処理方法を明示しているが、その中で、探鉱費補助金と同じ目的で交付される新鉱床探鉱費補助金(新鉱床探鉱費補助金交付規則(昭和三四年通商産業省告示三四〇号)によるもの)の取扱いについて、新鉱床探鉱費の額から当該補助金に相当する額を控除して経理するよう指示している。
したがって、右の経理処理は、業界における公正妥当な会計処理基準として定着しているとみるのが相当である。
(六) 右(二)のとおり、探鉱費補助金について、新鉱床探鉱費の特別控除額を計算する場合と探鉱準備金の積立額の計算をする場合とで同様の取扱いをすべきであるところ、右(三)の(1)のとおり、措置法及び措置法施行令は、探鉱準備金の積立限度額の計算の基礎となる採掘所得金額の算出をするに当たっては、その収入金額及び損失の金額から探鉱費補助金を控除すべき旨定めていると解されるのであるから、新鉱床探鉱費の特別控除額の計算の基礎となる措置法五八条の三第一項一号の「当該事業年度において支出する当該新鉱床探鉱費の額に相当する金額」も、探鉱費補助金の額を控除した金額であると解すべきであり、このことは、措置法の合理的解釈から導かれるものである。
右のように解することは、鉱業所得の課税の特例制度の本質及び探鉱費補助金の趣旨、目的に合致する。すなわち、右(二)のとおり、右特例制度は、減耗控除制度の理念を斟酌しつつ、わが国の鉱山資源開発促進という政策目的を達成するために、免税効果を新鉱床探鉱費の支出額に結びつけた条件付免税制度である。したがって、このような免税効果を得られるのは、自らの負担において実質的に新鉱未探鉱費を支出した場合に限られるべきであり、探鉱費補助金の額は当然免税の対象から控除されなければならない。また、探鉱費補助金の原資は国税であり、その国税を使用して新鉱床探鉱費を支払った場合に、当該新鉱床探鉱費について特別控除という免税効果を付与することは条理としてあり得ず、実質的にみても、右(四)のとおり、探鉱費補助金の支出は、補助金に名を借りて、新鉱床探鉱費の支出が国そのものによって行われているのと同一視できるのであるから、それに対して免税効果が与えられると解する余地はない。仮に探鉱費補助金の額を新鉱未探鉱費の額から控除しないものと解した場合、新鉱床探鉱費の支払額が探鉱費補助金相当額しかなかったとすれば、企業としては実質的な負担がなかったにもかかわらず、特別控除の恩典に浴するという効果をもたらすことになり、その不合理であることは明らかである。
更に、右のような措置法の解釈が適正であることは、右(五)の鉱業所得の課税の特例制度に係る会計慣行が裏付けており、原告に対してのみ、新鉱床探鉱費の額から探鉱費補助金の額を控除しないで新鉱床探鉱費の特別控除額を計算することを認めることは、他の鉱業事業者との間で課税の不公平が生じる。
(七) 原告は、措置法五八条の三第一項一号の「当該事業年度において支出する当該新鉱床探鉱費の額に相当する金額」の算出に当たり探鉱費補助金の額を控除すべきであるとする被告の主張に従えば、探鉱費補助金の交付を受けた方が、これを受けなかった場合よりも当期利益が減少して不利益を被るという現象が生じ、探鉱費補助金の制度趣旨が没却されてしまうと主張する。
確かに、原告の六〇年一二月期及び六一年一二月期については、探鉱費補助金の交付を受けた方がこれを受けなかった場合よりも、当期利益が減少するという結果が発生することになるが、以下のとおり、右の結果は、原告が鉱業所得の課税の特例制度の趣旨、仕組に関する誤った理解の下に不適正な経理処理をしていたことに起因するものであって、適正な経理処理をしていればかかる結果は生じなかったし、もとより探鉱費補助金の交付を受ければ常にこのような結果となるものでもないから、右主張は失当である。
(1) 右(二)のとおり、新鉱床探鉱費の特別控除制度は探鉱準備金等の積立てによる課税の繰延べと一体の制度であり、新鉱床探鉱費の支出額を探鉱準備金の取崩額と同額以下の範囲内で所得控除(免税)に振り替えていくものである。すなわち、予め、産出鉱物の販売高等に応じて一定額を探鉱準備金として損金算入し、現実に新鉱床探鉱費を支出する際には、その準備金を取り崩し、右支出に充て、その支出額を損金算入することにより特別控除額を確定して免税するものである。したがって、探鉱準備金の取崩額と新鉱床探鉱費の支出額とは同額となるのが当然であり、もしこれに反して、いずれかの金額が少ない場合には、右一の3のとおり、その少ない金額の範囲でしか特別控除(損金算入)は認められない。すなわち、探鉱準備金の取崩額が新鉱床探鉱費の支出額よりも少ない場合には、新鉱未探鉱費の特別控除は探鉱準備金として積み立てた金額が新鉱床探鉱費として支出された限度で確定的に損金算入し、免税する制度であるから、特別控除額は探鉱準備金の取崩額の限度となるし、また、新鉱床探鉱費の支出額が探鉱準備金の取崩額(任意取崩額及び積立てをした事業年度終了の日の翌日から三年を経過した日を含む事業年度において益金の額に算入される金額)よりも少ない場合は、新鉱床探鉱費として支出する目的で積み立てられた探鉱準備金の一部しかその目的のために支出されなかったことになるから、特別控除額はその限度となり、探鉱準備金から支出されなかった部分については特別控除は認められないのである。
(2) 原告は、五六年一二月期において探鉱準備金として六億一五〇〇万円を積み立てたが、五九年一二月期までの間にそのうち七二六七万九三〇一円が取り崩されて新鉱床探鉱費として支出されたのみで、残額五億四二三二万〇六九九円は積立てをした事業年度終了の日の翌日から三年を経過した日を含む事業年度である六〇年一二月期に益金の額に算入されることとなった。そして、六〇年一二月期において原告が現実に支出した新鉱床探鉱費の額四億八四〇五万二三二三円から原告が交付を受けた探鉱費補助金の額一億一一五三万二〇〇〇円を控除した三億七二五二万〇三二三円は、右の益金の額に算入されることとをった探鉱準備金五億四二三二万〇六九九円よりも少額であるので、新鉱床探鉱費の特別控除額として損金算入される額は右の三億七二五二万〇三二三円となった。すなわち、原告は、五六年一二月期に探鉱準備金を積み立てる際、当該事業年度終了の日の翌日から三年を経過するまでの間の予想される新鉱床探鉱費の支出金額よりも過大な六億一五〇〇万円の積立てをしたために、六〇年一二月期において五億四二三二万〇六九九円を益金に算入することになり、新鉱床探鉱費の支出額(探鉱費補助金を控除した額)がこれより少なくなって、そのため、主張のような、探鉱費補助金の交付を受けた方がこれを受けなかった場合よりも当期利益が減少するという結果となったのである。仮に、原告が、五六年一二月期において、探鉱準備金として五九年一二月期までの現実の取崩額七二六七万九三〇一円に近似する一億円を積み立てるに止めておれば、六〇年一二月期において益金に算入される額は二七三二万〇六九九円となるから、原告が六〇年一二月期に探鉱費補助金の交付を受けたと否とにかかわらず、新鉱床探鉱費の支出額(探鉱費補助金の交付を受けなかった場合は四億八四〇五万二三二三円、受けた場合にはこれを控除した三億七二五二万〇三二三円)よりも少額となって、新鉱床探鉱費の特別控除額は右二七三二万〇六九九円となるので、探鉱費補助金の交付を受けた方がこれを受けなかった場合よりも当期利益が減少するという結果は生じなかったのである。
(3) また、原告は、五七年一二月期において探鉱準備金として六億八一〇〇万円を積み立てたが、右探鉱準備金のうち六〇年一二月期までの間に取り崩されて新鉱床探鉱費として支出された金額はなく、その全額が積立てをした事業年度終了の日の翌日から三年を経過したとして、六一年一二月期に益金の額に算入されることとなった。そして、六一年一二月期において原告が現実に支出した新鉱床探鉱費の額三億四一〇二万三六四〇円から原告が交付を受けた探鉱費補助金の額一億八五六一万一二七四円を控除した一億五五四一万二三六六円は、右の益金の額に算入されることとなった探鉱準備金六億八一〇〇万円よりも少額であるので、新鉱床探鉱費の特別控除額として損金算入される額は右の一億五五四一万二三六六円となった。すなわち、原告は、五七年一二月期に探鉱準備金を積み立てる際、当該事業年度終了の日の翌日から三年を経過するまでの間の予想される新鉱床探鉱費の支出金額よりも過大な六億八一〇〇万円の積立てをしたために、六一年一二月期においてその全額を益金に算入することになり、新鉱床探鉱費の支出額(探鉱費補助金を控除した額)がこれより少なくなって、そのため、主張のような、探鉱費補助金の交付を受けた方がこれを受けなかった場合よりも当期利益が減少するという結果となったのである。
仮に、原告が、五七年一二月期において、探鉱準備金として六一年一二月期の新鉱床探鉱費の支出額(探鉱費補助金を控除した額)一億五五四一万二三六六円に近似する一億五七〇〇万円を積み立てるに止めておれば、六一年一二月期において益金に算入される額は右同額となるから、原告が六一年一二月期に探鉱費補助金の交付を受けたと否とにかかわらず、新鉱床探鉱費の支出額(探鉱費補助金の交付を受けなかった場合は三億四三〇七万〇二一〇円、受けた場合にはこれを控除した一億五七四五万八九三六円)よりも少額となって、新鉱床探鉱費の特別控除額は右一億五七〇〇万円となるので、探鉱費補助金の交付を受けた方がこれを受けなかった場合よりも当期利益が減少するという結果は生じなかったのである。
(4) 以上のように、原告は、鉱業所得の課税の特例制度の趣旨、仕組に反して、積み立てた事業年度終了の日の翌日から三年を経過する日を含む事業年度までに新鉱床探鉱費として支出する金額以上を積み立てたために不利益を被ったのであり、このような事情の下で探鉱費補助金の交付を受けた場合とこれを受けなかった場合の利益、不利益を論ずること自体が失当である。
3 争点についての原告の主張
(一) 内国法人に対して課される各事業年度の法人税の課税標準は、各事業年度の所得の金額であり(法人税法 二一条)、各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額である(同法二二条一項)。そして、益金の額は、法令により別段の定めのあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る収益の額をいい、また、損金の額とは、法令により別段の定めのあるものを除き、(1)収益に係る売上原価等の原価の額、(2)販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額、を損失の額で資本等取引以外の取引に係るものをいうとされており、更に、益金の額及び損金の額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとされている(同条二項ないし四項)。
このように、法人税法は、法人税の課税標準の計算に当たって、総額の原則に基づくこととし、これによらない場合は例外として法律に「別段の定め」を設け、会計処理方法を明記している。このことは、課税作用は国民の財産権への侵害であるから課税要件のすべてと租税の賦課、徴収の手続は法律によって明確に規定されなければならないとする租税法律主義の原則上、極めて当然のことである。そして、新鉱床探鉱費の特別控除について定めた措置法五八条の三第一項は、同項一号において「当該事業年度において支出する当該新鉱床探鉱費の額に相当する金額と当該事業年度の当該探鉱用機械設備償却額との合計額」を新鉱床探鉱費の特別控除額の基準の一として規定しており、右の「当該事業年度において支出する当該新鉱床探鉱費の額」を現実に支出した新鉱床探鉱費の額から探鉱費補助金の額を控除した金額とする旨の特別の規定は存在しない。したがって、本件各事業年度の原告の法人税の計算上、同号によって、新鉱床探鉱費の特別控除額を算出するに当たっては、同号に規定するとおり、原告が本件各事業年度に現実に支出した新鉱床探鉱費の額を特別控除額の基礎とすべきであり、原告が本件各事業年度において交付を受けた探鉱費補助金の額を控除した金額が右算出の基礎となるものではない。(二) 被告は、措置法五八条の三第一項一号の解釈上、同号の「当該事業年度において支出する当該新鉱床探鉱費の額に相当する金額」との規定中の「支出」という文言は実質的に自己の負担において支出した場合に限定されるべきものであり、したがって、右規定中の「当該新鉱床探鉱費」という文言は交付を受けた探鉱費補助金の額を控除した金額と解すべきであると主張するが、以下のとおり、右主張は失当である。
(1) そもそも申告納税制度が採用されている法人税について、各納税者がその納付すべき税額を計算する方法を明示しているのが税法である。かかる税額の計算法規である税法について、その文言によらない「解釈」という要因が混入するものとすれば、納税者はその納付すべき税額の計算をすることができなくなる。したがって、税法は、その文言によって解釈すべきものである。
なお、探鉱費補助金の制度は、昭和二七年の資源開発法制定当時から存在していた。他方、新鉱床探鉱費の特別控除は、昭和四〇年の措置法の改正によって設けられた制度である。したがって、仮に被告主張のように、同法五八条の三第一項一号の「当該事業年度において支出する当該新鉱床探鉱費の額に相当する金額」の計算上、探鉱費補助金の額を控除すべきものであるとすれば、その旨の明文の規定が設けられたはずであり、そのような明文の規定がない以上、たとえ探鉱費補助金の交付を受けていたとしても、同号の文言のとおり、新鉱床探鉱費として現実に支出された金額の総額が、右規定の「当該新鉱床探鉱費の額」として認められる趣旨であると解する外はない。
(2) 被告は、新鉱床探鉱費の特別控除は探鉱準備金の積立てと併せて一つの制度であるから、探鉱費補助金の扱いについても、新鉱床探鉱費の特別控除額を計算する場合と探鉱準備金の積立額の計算をする場合とで同様とすべきであるとした上で、探鉱準備金の積立限度額計算の基礎となる採掘所得金額の計算上、その収入金額には、探鉱費補助金等の国庫補助金による収入は含まれず、また、探鉱費補助金が右収入金額に含まれない以上、当該収入金額に係る損失の金額に含まれないことも理論上当然であると主張する。
しかし、採掘所得金額の計算に係る別段の定めである措置法五八条の二第一項、措置法施行令三四条の二第二項は、包括的概念的規定に止まり、細部にわたる計算方法については何ら明示していない。したがって、その計算は、法人税法の通則規定である同法二二条二ないし四項等に基づいて計算されることになる。そして、その場合に、探鉱費補助金を含む国庫補助金の扱いについて特に別段の定めはないから、法人税の課税標準である所得の計算の場合と同様、受領した補助金は無償の資産の受入金として収益(益金)に該当し(同条二項)、支出した新鉱床探鉱費はその総額が損金となる(同条三項。なお、採掘所得そのものが、鉱業を営む企業の総体的な企業利益(所得)の計算の中から部分的な鉱物等の採掘業務に係る事業部門の利益のみを抽出して計算するものであるから、特に別段の定めがない事項については、基本的には法人税の課税標準である所得(総体的な企業利益)の計算方法に従って計算されろものであることは当然である。)。新鉱床探鉱費の特別控除額を計算する場合も所得金額の計算と同様に扱うべきであるから、措置法五八条の三第一項一号の「当該事業年度において支出する当該新鉱床探鉱費の額に相当する金額」はその支出した総額を意味するもので、これを探鉱費補助金の額を控除した金額と解することはできない。
(3) 被告は、新しい鉱業資源を開発し、わが国の産業に役立てることは、国又は地方公共団体自身の義務であり、国等による探鉱費補助金の支出は、実質的に新鉱床探鉱費の支出が、補助金に名を借りて国そのものによって行われていると同一視することができると主張する。
しかし、新しい鉱業資源を開発し、わが国の産業に役立てろことは、国又は地方公共団体自身の義務であるとしても、既に鉱業法に基づいて、企業及び個人による鉱業権又は租鉱権が確立されている地域においては、国等が自ら新鉱床の探鉱等を行い得ないことは明らかであり、また、国等が鉱業権者等に対し、強制的に新鉱床の探鉱を行わせる権限を有しているものでもない。そこで、国は、鉱業権者等自身による積極的な新鉱床の探鉱の実施を奨励し、かつ、促進することにより、公共の福祉の増進に寄与させるための施策として、探鉱費補助金の交付を行うこととしているものである。
すなわち、探鉱費補助金の制度は、可燃性天然ガス資源の探鉱はわが国の石油等の安定的供給の確保という観点から必要不可欠なものであるが、右の探鉱は巨額の資金を必要とする上、多大のリスクを負う事業であって、高度の自己資本の蓄積とそれを生み出す経常的収益なくしては民間企業の事業としては成り立ち得ないところから、国が所要資金の相当部分を支援することにより、民間資金の探鉱事業への投資意欲を助長し、探鉱活動を促進して可燃性天然ガス資源の発見埋蔵量の拡大を図ろうとする趣旨のものと理解するのが相当である。
そして、探鉱費補助金の交付を受けてしたガスの探鉱により発見された油層に属するガスを採取する鉱業権者等に課せられる納付金の制度は、実質的には、探鉱によって一定量以上のガスが採取された場合には、探鉱費補助金を返還すべきことを意味する。
これらのことを考え併せれば、国が探鉱費補助金の交付を行っているからといって、実質的に国自らが新鉱床探鉱費の支出をし、新鉱床の探鉱を行っているものとは到底考えられない。
なお、仮に、措置法五八条の三第一項一号の「当該新鉱床探鉱費の額」の算出に当たり探鉱費補助金を控除して計算するものとすれば、企業は、探鉱費補助金の交付を受けたがために、一方において納付金(その最高額は受領した補助金の全部と同額に達する。)の納付の義務を課せられ、他方、法人税法上、新鉱床探鉱費の特別控除額が減少するという二重の不利益を被ることになるが、これでは企業の探鉱意欲を削ぐ結果となり、探鉱費補助金の制度趣旨が没却されてしまうことになる。(4) 被告は、探鉱費補助金の交付を受けている原告と同業種の事業を営む法人は新鉱床探鉱費の額から探鉱費補助金の額に相当する金額を控除して採掘所得金額を計算する会計処理をしていると主張する。しかし、天然ガス業界が探鉱費補助金の交付の対象となったのは昭和五九年からであり、原告の加盟する天然ガス鉱業会加盟の二四社のうち、探鉱費補助金の交付を受けているのは、原告を含めて三社に過ぎない。右のような天然ガス業界の探鉱費補助金の受領状況からして、天然ガス業界において、措置法五八条の三第一項一号の「当該事業年度において支出する当該新鉱床探鉱費の額に相当する金額」の算出に当たり探鉱費補助金の額を控除して計算する方法が公正妥当な会計処理基準として定着しているとは到底いい得ない。、のみならず、右の探鉱費補助金を受領している原告以外の二社については、当該事業年度において益金の額に算入された、又は算入されるべきこととなった探鉱準備金の金額に相当する金額(右一の3の(2))が、新鉱床探鉱費の額(及びこれから探鉱費補助金の額を控除した額)よりも少ないので、新鉱床探鉱費の特別控除額の計算上、右の探鉱準備金の益金算入額(取崩額)が特別控除限度額となって、同号の「当該事業年度において支出する当該新鉱床探鉱費の額に相当する金額」の算出に当たり探鉱費補助金の額の控除を要するかどうかを論ずる必要がない場合に当たるのであるから、原告の場合と事情を異にする。
また、被告は、日本鉱業協会編集の「減耗控除ハンドブック」が、新鉱床探鉱費補助金の取扱いについて、新鉱床探鉱費の額から当該補助金に相当する額を控除して経理するよう指示している旨主張するが、仮に、日本鉱業協会加盟の企業が)なお、原告及び原告の属する天然ガス鉱業会は日本鉱業協会に加盟していない。)、かかる会計処理基準にしたがって会計処理をしているとしても、それは誤った法解釈に基づくものであるから、公正妥当な会計処理基準として定着していることにはならない。
(三) (1) 本件各事業年度について、措置法五八条の三第一項一号の「当該事業年度において支出する当該新鉱床探鉱費の額に相当する金額」を、原告主張のように原告が現実に支出した新鉱床探鉱費の金額として原告の当期利益を算出した結果は別表第三の一及び二の各「原告主張額」欄記載のとおりとなり、被告主張のように原告が現実に支出した新鉱床探鉱費から探鉱費補助金の額を控除した額として原告の当期利益を算出した結果は別表第三の一及び二の各「被告主張額」欄記載のとおりとなり、更に、原告が探鉱費補助金の交付を受けなかったと仮定して(この場合には、原告が現実に支出した新鉱床探鉱費の全額が措置法五八条の三第一項一号の「当該事業年度において支出する当該新鉱床探鉱費の額に相当する金額」となる。)原告の当期利益を算出した結果は別表第三の一及び二の各「補助金不受領」欄記載のとおりとなる。
そして、右各衷のとおり、本件各事業年度とも、「被告主張額」欄の当期利益は、「原告主張額」欄の当期利益より少なくなることはもとより、「補助金不受領」欄の当期利益よりも少なくなる。すなわち、被告の主張に従えば、原告が探鉱費補助金の交付を受けた場合には、税負担のため、その交付を受けなかった場合よりも当期利益が少なくなるという極めて不合理な結果となるのである。そして、探鉱費補助金の交付を受けた場合には、更に、国に対する納付金の納付の義務を課せられるのであるから、その不合理さは倍加する。
このように、探鉱費補助金の交付を受けた方が、これを受けなかった場合よりも不利益を被るという現象が生ずるとすれば、探鉱費補助金の制度趣旨は没却されてしまい、かかる結果を招来するような被告の主張が不当であることは明らかである。(2) 被告は、本件各事業年度について、探鉱費補助金の交付を受けた方がこれを受けなかった場合よりも当期利益が減少するという結果が発生することを認めながら、右の結果は、原告が鉱業所得の課税の特例制度の趣旨、仕組に反して、積み立てた事業年度終了の日の翌日から三年を経過する日を含む事業年度までに新鉱床探鉱費として支出する金額以上を探鉱準備金として積み立てるという不適正な経理処理をしていたことに起因するものであって、適正な経理処理をしていればかかる結果は生じなかつなし、探鉱費補助金の交付を受ければ常にこのような結果となるものでもないと主張する。
しかしながら、一般に措置法により積立が認められる準備金は、特定の政策目的のために設けられろものであって、法の定める一定の限度内において損金の額に算入され、これに対する課税が留保されるのであるから、企業としては、同法の限度内において積立額を大きくすることは当然であり、かつ、許容されるところである。そして、探鉱準備金は、右一の2の(1)り、措置法五八条の二によって同(1)及び(2)のうちいずれか低い金額を限度として積み立てることが認められており、同条の規定上、被告の主張するような積み立てた事業年度終了の日の翌日から三年を経過する日を含む事業年度までに新鉱床探鉱費として支出する金額の予想などという要因は、積立限度額算定の基準とはされていない。原告は、同条に従い、その限度内で適法に探鉱準備金を積み立てたのであって、これをもって、不適正な経理処理であるとか、過大な積立てであるとかと非難する被告の主張は、準備金制度の趣旨を理解しないものという外はない。
更に、被告は、探鉱準備金の取崩額が、探鉱費補助金の額を控除した新鉱床探鉱費の支出額よりも少なくなるような例を設定して、新鉱床探鉱費の特別控除の限度額は探鉱準備金の取崩額となるから、探鉱費補助金の交付を受けた方がこれを受けなかった場合よりも当期利益が減少するという結果は生じなかったと主張する。しかし、右一の3のとおり、新鉱床探鉱費の特別控除の限度額は、同(1)の当該事業年度において支出する当該新鉱床探鉱費の額に相当する金額と当該事業年度の当該探鉱用機械設備の償却額との合計額、同(2)の探鉱準備金の取崩額及び同(3)の所得金額うちの最も少ない金額とされているのである。被告の右主張は、その一場合についてのみ成立するものであって当を得たものとはいえない。第三 争点に対する判断
一 租税法律主義の原則上、課税要件のすべては法律又は法律に基づく命令に規定されていなくてはならないが、課税要件を定めた法令の規定は、それが多様な解釈を許すような抽象的かつ多義的な文言で構成されると、租税法律主義の趣旨が実質的に損われることがあり得るので、できる限り一義的に明確なものであることが要請されるとともに、租税法律主義の原則は課税作用が国民の財産権に対する侵害であることに基づいて認められている建前であること、及び法人税のように申告納税制度を採用するものについては、課税要件を定めた法令の規定は納税者が課税標準及び納付すべき税額を算出する拠り所となるものであることからすれば、課税要件を定めた法令の規定が、経験上一定の具体的な意味内容を示すものとして用いられることが通常である文言や法令自身によってその内容が定義された文言を用いて課税要件を定めている場合においては、その課税要件は、原則的には当該文言の通常の用例に係る意味内容や法令によって定義された内容に即して文理的に解釈されなければならず、例外的にかかる文理解釈によっては明らかに不当な結果となるような場合において、はじめて当該文言の通常の用例に係る意味内容や法令によって定義された内容を拡大若しくは縮小し、又はこれに別異の意義を付与して解釈することができるものと解すべきである。このことは、当該法令の規定が一定の計算方法によって算出される金額につき、特別控除として損金に算入すべき旨を定めている場合であっても何ら変るところはない。
したがって、探鉱費補助金の交付を受けた法人について、その交付を受けた当該事業年度の新鉱床探鉱費の特別控除額を算出する場合に、その算出の基礎となる金額である措置法五八条の三第一項一号の一当該事業年度において支出する当該新鉱床探鉱費の額に相当する金額」が、当該法人が現実に支出した新鉱床探鉱費の額から当該探鉱費補助金の額を控除した金額であると解すべきか否かという点についても、かかる見地から検討することを要する。
この点について、被告は、措置法も法の一である以上、その意味内容は解釈によって明らかにすべきであるところ、租税法の解釈は、租税法律主義の原則の外、その公共性と公平負担の原則及びそれに由来する実質課税の原則をも踏まえた上での総合的理解でなければならないから、右諸原則に則って法規の目的を的確に把握し、文言にとらわれることなく、その経済的、実質的意義を考慮し、かつ、立法技術をも勘案しながら、その意図するところを合理的、客観的に確定しなければならないと主張する。しかし、右主張が、課税要件を定めた法令の規定が、社会的経済的事象の生成変化に応ずるためやむを得ず抽象的かつ多義的な文言で構成されている場合において、当該法規の目的、経済的、実質的意義等を考慮して、その抽象的かつ多義的な文言の意図するところを合理的、客観的に確定することを要するとする趣旨であるに止まらず、経験上一定の具体的な意味内容を示すものとして用いられることが通常である文言や法令自身によってその内容が定義された文言を用いて課税要件を定めている場合においても、常に当該規定の文言にとらわれることなく、その目的、経済的、実質的意義等を考慮した上、当該文言の通常の用例に係る意味内容や法令によって定義された内容を拡大若しくは縮小し、又はこれに別異の意義を付与して解釈することが許容されるとする趣旨であれば、右主張は採用することができない。
二 措置法五八条の三第一項一号の「当該事業年度において支出する当該新鉱床探鉱費の額に相当する金額」とは、同項柱書の規定中の「前条第一項の探鉱準備金の金額(同条第六項の規定の適用を受けるものを除く。)を有する法人が、各事業年度において、同条第一項に規定する新鉱床探鉱費の支出を行った場合」という規定に係る、その支出した新鉱床探鉱費の額に相当する金額を意味すること、及び右の「同条第一項に規定する新鉱床探鉱費」が、鉱業法第三条第一項に規定する鉱物に係る新鉱床探鉱費(同法五八条の二第一項)を意味することは、措置法の関係規定上明らかであるところ、同法五八条の二第三項、措置法施行令三四条の二第八項によれば、新鉱床探鉱費という用語は探鉱のための地質調査、ボーリング又は坑道の掘削に要する費用その他探鉱のために要する費用で政令で定めるもの、すなわち探鉱のための地質の調査、地震探鉱、重力探鉱その他これらに類する探鉱、探鉱のためのボーリング、鉱量が推定されていない鉱床につき鉱量を推定するための坑道の掘削(当該推定に必要な範囲内のものに限る。)の費用と定義されており、また、経験上、支出という用語は、通常金銭その他の財貨の支払という意味で用いられることが明らかである。そうすると、右「当該事業年度において支出する当該新鉱床探鉱費の額に相当する金額」という規定は、経験上一定の具体的な意味内容を示すものとして用いられることが通常である文言や法令自身によってその内容が定義された文言を用いて課税要件(特別控除の限度となる額)が定められている場合に該当し、その文言に即して解すれば、右規定に係る金額は、当該法人が当該事業年度において右の新鉱床探鉱費に該当する費用として現実に支払った金額に相当する金額の全部を指し、右金額から当該法人が交付を受けた探鉱費補助金の額を控除した金額と解すべきものとする被告の主張は、右規定の文言をその意味するところを越えて縮小して解釈するものといわざるを得ない。
三 そこで、以下、措置法五八条の三第一項一号の「当該事業年度において支出する当該新鉱床探鉱費の額に相当する金額」という規定について、その文言に即し、当該法人が当該事業年度において現実に支払った新鉱床探鉱費に該当する費用の全額であって、当該法人が交付を受けた探鉱費補助金の額を控除した金額ではないと解した場合に、明らかに不当な結果となるか否かについて検討する、.1 右第二の一の2のとおり、探鉱準備金は、可燃性天然ガスを含む特定の鉱物に係る新鉱床探鉱費の支出に備えるため、措置法五八条の二第一項一号及び二号の金額のうちいずれか低い金額以下の金額を損金経理の方法により積み立てることにより、当該積み立てた金額が当該事業年度の所得金額の計算上、損金の額に算入されるものであるが、その後これを任意に取り崩した場合には、その取り崩した金額に相当する金額がその日を含む事業年度において、また、取り崩すことなくその積立てをした事業年度終了の日の翌日から三年を経過したものがある場合には、その三年を経過した探鉱準備金の金額がその三年を経過した日を含む事業年度において、それぞれ所得の計算上、益金の額に算入されるものであるから、探鉱準備金の制度そのものは単に課税の繰延べを内容とするに過ぎない。
しかし、右第二の一の3のとおり、探鉱準備金の金額を有する法人が、各事業年度において新鉱床探鉱費の支出を行った場合又は所定の探鉱用機械設備について償却をした場合には、新鉱床探鉱費の特別控除として、(1)当該事業年度において支出する当該新鉱床探鉱費の額に相当する金額と当該事業年度の当該探鉱用機械設備の償却額との合計額、(2)当該事業年度において益金の額に算入された、又は算入されるべきこととなった探鉱準備金の金額に相当する金額、(3)新鉱床探鉱費の特別控除等がないものとして計算した場合の当該事業年度の所得金額のうちの最も少ない金額に相当する金額は確定的に損金の額に算入されることとなるのであるから、探鉱準備金のうち当該事業年度に益金の額に算入され、又は算入されるべきこととなった金額に相当する金額は、当該事業年度の所得金額(新鉱床探鉱費の特別控除等がないものとした金額)の範囲内で、かつ当該事業年度において新鉱床探鉱費として支出された額及び探鉱用機械設備についての償却額の合計額に相当する金額を限度として、結局は課税されないこととなる。
そうすると、探鉱準備金の制度と新鉱床探鉱費の特別控除の制度は、両者あいまって、一定の基準によって算出される金額に対する課税を一時繰り延べた上、その後の一定の期間内の各事業年度ごとに支出される新鉱床探鉱費及び償却される探鉱用機械設備の償却額の合計額と当該事業年度の所得金額とのうちの低い金額を限度として、右の課税の繰延べを所得控除(免税)に振り替えていくものということができ、かかる意味で、互いに密接な関連を有する制度であるということができる。2 (一) ところで、被告は、探鉱準備金と新鉱床探鉱費とが一体の制度であるとし、探鉱費補助金の扱いについても、新鉱宋探鉱費の特別控除額を計算する場合と探鉱準備金の積立額の計算をする場合とで同様とすべきであるとした上、措置法及び措置法施行令は、探鉱準備金の積立限度額の計算の基礎となる採掘所得金額の算出をするに当たっては、その収入金額及び損失の金額から探鉱費補助金を控除すべき旨定めていると解されるのであるから、措置法五八条の三第一項一号の「当該事業年度において支出する当該新鉱床探鉱費の額に相当する金額」も探鉱費補助金に相当する金額を控除した金額であると解すべきであると主張する。そして、右第二の一の2の(一)のとおり、措置法五八条の二第一項は、探鉱準備金の積立限度額を、(1)当該法人が採掘した鉱物の販売による当該事業年度の指定期間内における収入金額として措置法施行令三四条の二第一項の定める方法により算出される金額の一〇〇分の一三に相当する金額(同項一号)、(2)右(1)の収入金額に係る採掘所得の金額として措置法施行令三四条の二第二項、三項の定める方法により算出される金額の一〇〇分の五〇に相当する金額(同項二号)のうち、いずれか低い金額としているところ、措置法施行令三四条の二第二項、一項によれば、右(2)の採掘所得金額は、原則として、当該事業年度の鉱物若しくは選鉱後の鉱物の販売による収入金額及び鉱物を原材料として製造した物品等の販売による収入金額のうち鉱物又は選鉱後の鉱物の収入金額に相当する金額に係る所得の金額の合計額から、当該収入金額に係る損失の金額の合計額を控除した金額とされているのであるから、鉱物若しくは選鉱後の鉱物の販売による収入金額又は鉱物を原材科として製造した物品等の販売による収入金額のいずれにも当たらないことが明らかである探鉱費補助金の受入れによる収入が、採掘所得金額の計算上、収入金額に含まれないことは明らかであり、そうであるとしたら、支出した新鉱床探鉱費のうち交付を受けた探鉱費補助金の額に相当する金額も当該収入金額に係る損失の金額に当たらないこととなるから、採掘所得の金額の計算上控除されるべき当該収入金額に係る損失の金額に含まれないものと解すべきである(原告は、採掘所得金額の計算上、探鉱費補助金を含む国庫補助金の額は右収入金額及び右損失の額のいずれにも含まれると主張するが、以上のとおり、右主張は採用し得ない。)。しかしながら、右1のとおり、探鉱準備金と新鉱床探鉱費の特別控除とが、互いに密接な関連性を有する制度であるとしても、措置法上、探鉱準備金の積立限度額と新鉱床探鉱費の特別控除の限度額とは、それぞれの制度の趣旨に則り独自の立場で設定されており、右各限度額の算出の過程に格別の関連性ないし共通性が見出せる訳ではない.、そうすると、探鉱準備金の積立限度額算出の基準の一であるに過ぎない採掘所得金額の計算上、控除されるべき損失の額のうちの新鉱床探鉱費には探鉱費補助金の額に相当する金額が含まれないからといって、そのことが新鉱床探鉱費の特別控除の限度額算出の基準の一である「当該事業年度において支出する当該新鉱床探鉱費の額に相当する金額」についても探鉱費補助金の額を控除すべきであるとする理論上の根拠とはなり得ないし、まして、現実に支出した新鉱床探鉱費の額から探鉱費補助金の額を控除しなければ実際上明らかに不当であるともいえない。
(二) また、被告は、探鉱準備金及び新鉱床探鉱費の特別控除の制度が、減耗控除制度の理念を斟酌しつつ、わが国の鉱山資源開発促進という政策目的を達成するために、免税効果を新鉱床探鉱費の支出額に結びつけた条件付免税制度であるから、免税効果を得られるのは自らの負担において実質的に新鉱床探鉱費を支出した場合に限られるべきであり、探鉱費補助金の額は当然免税の対象から控除されなければならないとか、国税を原資とする探鉱費補助金によって新鉱床探鉱費を支払った場合に、当該新鉱床探鉱費について特別控除という免税効果を付与することは条理としてあり得ないとか主張する。
そして、探鉱準備金及び新鉱床探鉱費の特別控除の制度を通じ、最終的に特別控除の対象となって免税の効果を受け得るのは、探鉱準備金として積立てられた金額のうち、積立て後一定期間内の各事業年度における、当該事業年度の所得金額(新鉱床探鉱費の特別控除等がないものとした金額)の範囲内で、かつ当該事業年度において新鉱床探鉱費として支出された額及び探鉱用機械設備についての償却額の合計額に相当する金額を限度とすることは、右1のとおりである。
しかしながら、証拠(乙第二号証)及び弁論の全趣旨によれば、探鉱準備金及び新鉱床探鉱費の特別控除の制度によって、新鉱床探鉱費の支出が税制上の優遇措置を受けるのは、有限の地下資源である鉱床の探鉱費用は時の経過とともに必ず逓増していくと考えられることから、鉱業の実質的資本価値を維持するためには、投下資本の額を超え実質的資本再調達に要する費用にまで資本の回収を認める必要があるということに根拠を置くものであることが認められるところ、新鉱床探鉱費の支出額によって示される新鉱床探鉱の活動量とその結果として新たに獲得される鉱床の資本価値とは正比例する関係にあると一応考えられるから、当該鉱床の実質的再調達を可能とするまでに資本蓄積をすることを容認するためには、自らの負担においで支出したか否かを問わず、当該新鉱床探鉱費の支出額そのものを税制上の優遇措置の基準に据えることとしても必ずしも不当とはいえない。
のみならず、右第二の一の1のとおり、探鉱費補助金を交付すべきものと決定したガスの探鉱により発見された油層に属するものと通商産業大臣が認定した地下の部分からガスを採取する鉱業権者等は、その油層からガスの採取を開始した日以後の各一年間にその地下の部分から採取したガスが所定の最低量に達しない各年を除いて、ガスの採取を開始した日から五年を経過するまでの各一年間に、所定の額の納付金を毎年国庫に納付すべきものとされている。そして、資源開発法一九条、同法施行令一条、同法施行規則二〇条によれば、右の最低量は、その地下の部分からガスを採取した坑井ごとに二四〇〇立方メートル(溶解ガスの採取に係る坑井にあっては一四〇〇立方メートル)にその深度を乗じて得た量の合計とされており、また、右の納付金の額は、各年ごとに、その地下の部分から採取したガスの量(一万カロリーのガスに換算)一〇〇〇立方メートルについて、二万三〇〇〇円に、その地下の部分から採取したガスの量の右最低量に対する割合に一〇〇分の一を乗じて得た割合(この割合が一〇〇分の三を超えるときは一〇〇分の三)を乗じて得た金額とされている。証拠(乙第四号証)及び弁論の全趣旨によれば、この納付金の納付は、実質的には、探鉱費補助金の返還としての意義を有するものと認められるから、探鉱費補助金の交付を受けてした新鉱床探鉱費の支出が、常に自己の負担において支出したものではないということもできない。
したがって、被告の右主張は必ずしも正鵠を射るものとはいえず、この点においても、措置法五八条の三第一項一号の「当該事業年度において支出する当該新鉱床探鉱費の額に相当する金額」について探鉱費補助金を控除しない金額とすることが明らかに不当であるとはいい得ない。
(三) 更に、被告は、探鉱費補助金の支出は、補助金に名を借りて、新鉱床探鉱費の支出が国そのものによって行われていると同一視できるのであるから、それに対して免税効果が与えられると解する余地はないとも主張する。
しかし、国がガスの探鉱を実施する鉱業権者等に対して探鉱費補助金を交付しているからといって、実質的に、当該鉱業権者等ではなく、国自身が新鉱床探鉱費を支出して新鉱床の探鉱をしているものと解することはできないから、右主張は、その前提において失当である。
(四) そうすると、措置法五八条の三第一項一号の「当該事業年度において支出する当該新鉱床探鉱費の額に相当する金額」という規定について、その文言に即し、当該法人が当該事業年度において現実に支払った新鉱床探鉱費に該当する費用の全額であって、当該法人が交付を受けた探鉱費補助金の額を控除した金額ではないと解したとしても、そのことによって、明らかに不当な結果がもたらされるということはできない。
したがって、右規定に係る金額は、当該法人が当該事業年度において現実に支払った新鉱床探鉱費に該当する費用の全額を意味するものであると解すべきであって、これから当該法人が交付を受けた探鉱費補助金の額を控除した金額であると解すべきではない。
(五) なお、被告は、鉱業法に規定する鉱物を取り扱う企業者の団体である日本鉱業協会は、鉱業所得の課税の特例に係る税法の解釈に関して、「減耗控除ハンドブック」を編集し、同協会に加入する各企業に対して統一した処理方法を明示しているが、その中で、探鉱費補助金と同じ目的で交付される新鉱床探鉱費補助金の取扱いについて、新鉱床探鉱費の額から当該補助金に相当する額を控除して経理するよう指示しているとして、右の経理処理は業界における公正妥当な会計処理基準として定着しているとみるのが相当であると主張する。
しかし、仮に右「減耗控除ハンドブック」に主張の記載があるとしても、それだけでは右の経理処理が原告の属する天然ガス業界を含む鉱業界において公正妥当な会計処理基準として定着しているとはいえないし、また、措置法五八条の三第一項一号の「当該事業年度において支出する当該新鉱床探鉱費の額に相当する金額」の解釈を左右するに足りるものということもできない。
第四 結語
以上によれば、原告の本件請求は理由がある。
(裁判官 中込秀樹 石原直樹 長屋文裕)
別表(省略)
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