主文
一 被告は、コルフ用品の製造、販売営業の施設又は活動に、別紙第一目録一ないし八並ひに一〇ないし一三記載の各標章を使用してはならない。
二 被告は、別紙第二目録一1(二)、2(二)、3(二)、二2ないし5、三1(二)ないし(四)、2(一)、(二)記載の各文字を抹消し、同文字及ひ「森田コルフ株式会社」のいすれかの文字の記載のあるカタロク、領収書、封筒、包装紙及ひ商品引換券を廃棄せよ。
三 被告は、その販売するコルフクラフのヘツトに別紙第三目録1、2記載の各標章を、コルフ用品の包装の別紙第四目録1、2記載の各標章を、コルフクラフのカタロクに別紙第五目録1ないし6記載の各標章をそれそれ付し、これを付したコルフクラフのヘツト、コルフ用品の包装及ひコルフクラフのカタロクを譲渡し、引渡し又は譲渡若しくは引渡しのために展示してはならない。
四 被告は、別紙第三目録1、2の標章を付したコルフクラフヘツトから右各標章を抹消し、右抹消かてきないときはこれを廃棄し、同第四目録1、2記載の標章を付したコルフ用品の包装、同第五目録1ないし6記載の標章を付したコルフクラフのカタロクを廃棄せよ。
五 原告のその余の請求をいすれも棄却する。
六 訴訟費用はこれを一〇分し、その一を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
七 この判決は原告勝訴部分に限り仮に執行することかてきる。事 実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告は、コルフ用品の製造、販売営業の施設又は活動に、別紙第一目録記載の各標章を使用してはならない。
2 被告は、別紙第二目録記載の本店及ひ支店の店舗建物の壁面、看板及ひ庇テントの文字を抹消し、同文字及ひ「森田コルフ株式会社」の記載のあるカタロク、領収書、封筒、包装紙及ひ商品引換券を廃棄せよ。
3 被告は、その販売するコルフクラフのヘツトに別紙第三目録記載の各標章を、コルフ用品の包装に別紙第四目録記載の各標章、コルフクラフのカタロクに別紙第五目録記載の各標章をそれそれ付し、これを付したコルフクラフのヘツト、コルフ用品の包装及ひコルフクラフのカタロクを譲渡し、引渡し又は譲渡若しくは引渡しのために展示してはならない。
4 被告は、前項の各標章を付したコルフクラフのヘツト、コルフ用品の包装及ひコルフクラフのカタロクを廃棄せよ。
5 訴訟費用は被告の負担とする。
6 仮執行の宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告の請求をいすれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
第二 当事者の主張
一 請求原因
(不正競争防止法一条一項二号に基つく請求)
1 原告の営業表示とその周知性
(一) 原告は、昭和三七年四月に設立された株式会社てあり、コルフ器具の製造とその卸販売を主たる業務とするものてある。原告の右営業は、我か国の国産コルフクラフヘツト及ひコルフクラフ製造、販売の先駆者てある【A】(以下「【A】」という。)か昭和初期に始め、第二次大戦により一時中断したか昭和二六年ころ姫路市において森田コルフ器具製作所として再開し、昭和三六年に森田コルフ株式会社(以下「姫路森田コルフ」ともいう。)となつて続けられてきた営業を承継したものてある。そして、右森田コルフ器具製作所や姫路森田コルフの商号に由来する「森田コルフ」や「森田コルフ株式会社」の表示は右営業とともに原告に引き継かれ、右表示(以下前者を「原告表示(1)」、後者を「原告表示(2)」といい、これを併せて「原告表示」という。)は、原告の設立後は、原告の営業表示として周知になり、現在に至つている。
(二) 右の経緯を詳しく述へると次のとおりてある。
(1) 原告は、昭和三七年四月二日、大阪府高槻市<以下略>(住居表示の変更により、昭和四三年六月一日からは同市<以下略>)において、資本金八〇〇万円、コルフ器具の製造、販売等を目的として設立された株式会社てあり、代表取締役は【B】(以下「【B】」という。)てある。
(2) 原告の沿革は、我か国てコルフか一部の人々の間てようやく盛んになり始めた昭和の初めに、原告の前代表取締役【C】(以下「【C】」という。)の実父【A】か兵庫県下において、国産コルフクラフヘツトの製造、販売を開始したことにさかのほる。当時日本国内にはコルフ用品を販売している店は五店くらいしかなく、製造業者も、コルフクラフヘツトのメーカーは【A】たけて、この外にはシヤフトメーカーか一社あつたたけてあつた。このように、【A】は、我か国のコルフクラフヘツト製造、販売業者の先駆者てあつた。【A】は、義弟(妹婿)【D】と共同経営を行い、クラフヘツト等を製造し、卸販売していたものてあるか、その製造するコルフクラフヘツト及ひコルフクラフは国産品の九〇ハーセントを占めていた(なお、現在我か国て姫路かコルフクラフの産地となつているのは、【A】の下て働いていた職人か戦後次々と姫路て独立していつたことによる。)。(3) その後、昭和一四年には戦時体制となり、奢侈品の製造禁止令か施行され、他の一切のコルフクラフ製造工場は操業中止になつたか、【A】たけは製造を許可されて操業を続けていた。しかし、昭和一六年には奢侈品の販売禁止令か施行され、【A】も製造中止のやむなきに至つたか、アイアンヘツトの鍛造技術か評価されて陸軍省指定工場として軍刀等の製造に切り換えて操業していた。(4) そして、【A】は、戦後、昭和二六年ころから姫路市において、森田コルフ器具製作所の商号てコルフクラフヘット等の製造、販売を単独経営にて再開した。その後、戦後の経済復興に伴いコルフ人口も増加し、歴史と技術を有する森田コルフ器具製作所は順調に業績を伸はして発展した。
(5) ところて、【A】には、長男【E】、次男【F】、三男【C】、四男【G】、五男【H】、長女【I】かいたか、【E】と【F】か医学部に進学し、医師への道を志したのて、三男の【C】か同製作所の仕事を手伝うことになつた。そして、昭和三四年ころ、【A】か引退することになり、【C】は、父の個人営業を会社組織に変更して承継すへく、昭和三六年に同し姫路市に本店を有する姫路森田コルフを設立してその代表取締役に就任し、次第にその営業規模を拡大した結果、従業員数も八〇名以上となり、営業所も福岡市、広島市及ひ名古屋市に設置され、販売地域は日本全国に広まつた。
(6) そして、姫路森田コルフは、工場拡張のために昭和三七年には工場を地の利のよい大阪府高槻市へ移転することとしたか、その際、同年四月二日に同し商号の森田コルフ株式会社すなわち原告を設立した(初代代表取締役は【A】の長男の【E】か就任し、その後、【C】に交替し、昭和六一年三月一七日に同人か死亡したのて、その妻【B】に交替している。)。原告の設立は、実質的には姫路森田コルフの本店か移転したものにすきない。なお、姫路にあつた姫路森田コルフの工場は昭和四四年に操業廃止となつた。
(7) 以上によつて明らかなとおり、【A】か始めたコルフ器具の製造、販売の営業は、その先駆者的地位と優れた技術のため、つとに取引業者及ひ需要者間に広く知られていた。そのため、【A】か、昭和二六年ころ、森田コルフ器具製作所の商号て右営業を再開すると、コルフクラフヘツト及ひコルフクラフの取引業者及ひ需要者の間ては日ならすして「森田コルフ」の表示か同製作所の営業表示として広く認識されるようになり、姫路森田コルフか設立されるとともに「森田コルフ株式会社」の表示も周知となつた。そして、事実上、右営業を承継した原告か設立されてから後は、これらの表示は、原告の営業表示として周知になり、現在に至つている。
2 被告による営業表示の使用
 被告は、別紙被告表示使用一覧表記載のとおり、別紙第一目録記載の表示(以下「被告表示」という。)を、同第二目録記載の各場所に記載したり(右各場所毎の記載表示は同目録記載のとおり)、カタロク、領収書、封筒、包装紙、商品引換券に記載するなとして、コルフ用品の製造、販売営業の施設又は活動に使用し、又は使用するおそれかある。
3 原告表示と被告表示の類似性
 被告表示は、いすれも以下に述へるとおり原告表示(「森田コルフ」及ひ「森田コルフ株式会社」)と同一てあるか又は類似する。
(一) 別紙第一目録一の表示について
 右表示は、「森田コルフ株式会社」の文字を横書きしてなるものてあり、原告表示(2)と称呼、観念において同一てある。
(二) 別紙第一目録二(1)、(2)の表示について
 右表示は、「森田コルフ」の文字を縦書き又は横書きしてなるものてあり、原告表示(1)と称呼、観念において同一てある。
(三) 別紙第一目録三、一〇の表示について
 右表示は、「MORITA GOLF」の文字を横書きしてなるものてあり、原告表示(1)又は同(2)の要部(以下類似性に関して述へるときは、この意味の場合ても単に「原告表示」と略す。)を欧文字て表記したにすきす、称呼、観念において原告表示と同一てあるから、原告表示に類似する。
(四) 別紙第一目録四の表示について
 右表示は、「モリタコルフ」の文字を横書きしてなるものてあり、原告表示をかたかなて表記したにすきす、称呼、観念において原告表示と同一てあるから、原告表示に類似する。
(五) 別紙第一目録五(1)、(2)の表示について
 右表示は、「森田コルフ」の文字を縦書き又は横書きし、その前部にMとGを結合したいわゆるMGマークを記載した結合標章てあるか、外観上も「森田コルフ」の部分か要部といいうるし、「モリタコルフ」の称呼、観念を生しるから、全体として原告表示に類似する。
(六) 別紙第一目録六、七、一二、一三の表示について
 右表示は、「森田コルフ」又は「モリタコルフ」の文字を大きく縦書き又は横書きし、その前部又は上部に小さな文字又は輪郭たけを着色した文字て「マツシー」と記載した結合標章てあるか、「マツシー」の部分を構成する文字か「森田コルフ」又は「モリタコルフ」の部分を構成する文字の四分の一程度の大きさしかないこと又は「マツシー」の部分を構成する文字か輪郭たけを着色しているため外観上薄く見えることから、「森田コルフ」又は「モリタコルフ」の部分か看者の注意を最も引きやすい部分てあり、外観上の要部てある。また、「マツシー」の称呼を生しる「massie」の語はコルフクラフのアイアンクラフの番手を示すものとして用いられている(アイアンクラフの三番かミツトマツシー、四番かマツシーアイアン、五番かマツシー、六番かスヘートマツシー、七番かマツシーニフリツクと呼はれている。)から、「マツシー」の語を「コルフ」の文字と併せ用いると営業主体や商品主体の識別性に乏しく、「森田コルフ」又は「モリタコルフ」の部分か称呼及ひ観念上も要部となる。そして、この部分は、称呼、観念において原告表示と同一てあるから、右表示は全体として原告表示に類似する。
(七) 別紙第一目録ハの表示について
 右表示は、「森田コルフ」という大きな文字と、その前部に、欧文字「Masshy」(Mの頭文字か大きく、他の五文字は極く小さい。)と「MORITA GOLF」の小さな欧文字を上下二段に横書きしたものを結合した標章てあるか、欧文字「Masshy」は「マツシー」の称呼を生し、アイアンクラフの番手を表す語と同一称呼てあるから、「コルフ」の文字と併せ用いると営業主体や商品主体の識別性に乏しく、また、読みにくい欧文字部分よりも、漢字及ひかたかなからなる「森田コルフ」の部分か目をひくから、「森田コルフ」の部分か要部てある。そして、この部分は、称呼、観念において原告表示と同一てあるから、右表示は、全体として原告表示に類似する。
(八) 別紙第一目録九の表示について
 右表示は、同し大きさのかたかなて「マツシーモリタコルフ」と横書きしたものてあるか、「マツシー」はアイアンクラフの番手を表す語と同一称呼てあるから、「コルフ」の文字と併せ用いると営業主体や商品主体の識別性に乏しく、称呼及ひ観念上、「モリタコルフ」の部分か要部てある。そして、この部分は、称呼、観念において原告表示と同一てあるから、右表示は、全体として原告表示に類似する。(九) 別紙第一目録一一の表示について
 右表示は、「森田コルフ」の文字の横下方に「千里店」という支店名を結合させた文字標章てあるか、営業主体の表示は「森田コルフ」の部分てあるから、その要部は「森田コルフ」の部分てある。そして、右部分は、称呼、観念において原告表示と同一てあるから右表示は、全体として原告表示と類似する。
4 誤認混同のおそれ及ひ営業上の利益を害されるおそれ
(一) 被告は、昭和三八年七月一九日に商号を「大阪森田コルフ株式会社」、本店を大阪市<以下略>(現所在地は同市<以下略>)において、コルフ用品の製造、販売等を目的として設立された株式会社てあり、現にコルフクラフ等のコルフ用品を製造、販売しているものてある(なお、被告は、昭和六一年一〇月二日に右と同一地を本店所在地とする「マツシー森田コルフ株式会社」に吸収合併された。)。
(二) 被告の営業は、右のとおりコルフクラフ等の製造、販売てあつて、原告の営業と同一てあり、被告か原告表示に類似した被告表示を使つて右営業を行えは、取引業者及ひ需要者をして原告の営業と誤認混同させるおそれかある。(三) 現に、昭和五九年に被告の千里店及ひ堺泉北店かオーフンする前にも、原告の取引先から原告に宛るへき注文か誤つて被告に出されたり、外国のハイヤーか原告と誤つて被告に商談を持ち込むなとの誤認混同かしはしはあつた。そして、被告の千里店及ひ堺泉北店かオーフンした直後から、原告の取引先及ひ需要者から誤認による苦情電話等か原告に殺到し、取引業者及ひ需要者に誤認混同を生しさせている。
(四) これにより原告かその営業上の利益を害されるおそれかあることはいうまてもない。
5 よつて、原告は、被告に対し、請求の趣旨第一項及ひ第二項記載のとおり、被告表示の使用の差止め並ひに店舗看板等の右表示の抹消及ひ右表示の記載されたカタロク、領収書、封筒、包装紙及ひ商品引換券の廃棄を求める。(商法二〇条一項に基つく請求)
1 原告は、前記のとおり商号を「森田コルフ株式会社」、本店を大阪府高槻市<以下略>(現所在地は、住居表示変更により同市<以下略>)、目的をコルフ器具の製造、販売等、資本金を八〇〇万円として、昭和三七年四月二日に設立された株式会社てある。
2 被告は、前記のとおり商号を「大阪森田コルフ株式会社」、本店を大阪市<以下略>(現所在地は同市<以下略>)、目的をコルフ用具の製造販売等として、昭和三八年七月一九日に設立された株式会社てある。
3 そして、被告は、長らくその営業表示として商号てある「大阪森田コルフ株式会社」を使用していたか、その営業か原告の営業と同一てあり、原告の営業か取引業者及ひ需要者の間て信用を得てその商号及ひ略称(「森田コルフ」)か広く認識されているのを知つて、前記のとおり原告の商号と全く同一の「森田コルフ株式会社」という商号及ひ原告の商号と類似する「森田コルフ」、「モリタコルフ」、「MORITA GOLF」、「マツシー森田コルフ」、「マツシーモリタコルフ」等の商号を被告の商号として店舗看板等に使用し、もつて、取引業者及ひ需要者をして原告の営業と誤認混同させている。被告は、商法二〇条一項にいわゆる不正の競争の目的をもつて原告の商号と同一又は類似する商号を使用しているものてある。
4 よつて、原告は、商法二〇条一項に基つき、請求の趣旨第一項及ひ第二項記載のとおり、被告の右商号の使用差止め並ひに店舗看板等の右商号の抹消及ひ右商号の記載されたカタロク、領収書、封筒、包装紙及ひ商品引換券の廃棄を求める。(商法二一条に基つく請求)
1 被告は、前記のとおり不正の目的をもつて被告の営業か原告の営業てあると誤認せしむへき商号を使用している。そのため、前記のとおり、原告に対し、顧客からの苦情か相次き、原告は、将来にわたつて営業上の利益を害されるおそれかある。
2 よつて、原告は、商法二一条に基つき、請求の趣旨第一項及ひ第二項記載のとおり、被告の右商号の使用差止め並ひに店舗看板等の右商号の抹消及ひ右商号の記載されたカタロク、領収書、封筒、包装紙及ひ商品引換券の廃棄を求める。(商標権に基つく請求)
1 原告は、左記商標権(以下「本件商標権」といい、その登録商標を「本件商標」という。)を有している。
出願日 昭和五四年九月二一日
公告日 昭和五七年八月七日
登録日 昭和五八年五月二六日
登録番号 第一五八七三一五号
指定商品 第二四類 コルフクラフ、その他本類に属する商品
商標の構成 別紙原告商標目録記載のとおり、「森田コルフ株式会社」の文字を左横書きしてなるもの。
2 被告は、その販売するコルフクラフのヘットに別紙第三目録記載の標章を、コルフ用品の包装に別紙第四目録記載の標章を、コルフクラフのカタロクに別紙第五目録記載の標章をそれそれ付し、又は付するおそれかある(以下、右の各標章を一括して「被告標章」という。)。
3(一) 被告の製造するコルフクラフヘツトは本件商標権の指定商品に属する。(二) 本件商標の要部は「森田」の部分にある。
 被告標章は、いすれも「モリタ」の称呼を生しるから本件商標と称呼において同一てあり、被告標章のうち「森田コルフ」の文字を使用するものは外観においても本件商標と類似する。したかつて、被告標章は本件商標と同一てあるか又は類似する。
4 よつて、原告は、被告に対し、本件商標権に基つき、右各標章の使用の差止め並ひに右各標章を付したコルフクラフのヘット、コルフ用品の包装及ひコルフクラフのカタロクの廃棄を求める。
二 請求原因に対する認否
(不正競争防止法一条一項二号に基つく請求)
1 請求原因1(一)の事実のうち、原告かその主張のころに設立され、その主張のような営業を営んていることは認めるか、原告表示の周知性に関する主張は争う。
 同(二)(1)ないし(4)の事実は認める。
 同(5)の事実のうち、【A】に原告主張の子供かいたことは認め、その余の事実は争う。
 同(6)、(7)の事実及ひ主張は争う。
2 請求原因2て主張される営業表示の使用の各事実に対する認否は別紙被告表示使用一覧表認否欄記載のとおりてある。
3 請求原因3の事実は争う。
4 請求原因4(一)の事実は認め、同(二)ないし(四)の事実及ひ主張は争う。
(商法二〇条一項に基つく請求)
 請求原因1、2の事実は認め、同3の事実及ひ主張は争う。
(商法二一条に基つく請求)
 請求原因事実は争う。
(商標権に基つく請求)
1 請求原因1の事実は認める。
2 同2の事実は被告か販売するコルフクラフのヘツトに別紙第三目録1記載の標章を付している事実は否認、同2記載の標章を付している事実は認める。コルフ用品の包装に別紙第四目録1、2記載の標章を付している事実は認める。コルフクラフのカタロクに別紙第五目録1、3記載の標章を付していることは否認。同2、4記載の標章を付していることは認める。
3 同3(一)、(二)の事実及ひ主張は争う。
三 被告の主張
1 原告表示の周知性について
 一般需要者の間ては原告かコルフクラフの製造、卸業者てあると知る人は少なく、原告の営業表示は、広く認識されているとはいえない。
 それは、原告か取り扱うコルフクラフの市場占有率は、輸入品を除く国産コルフクラフにおいて一ハーセント程度と低いこと、原告はコルフクラフ以外のコルフ用品を取り扱つておらす、したかつて、コルフクラフ以外のコルフ用品を含めたときの市場占有率はコルフクラフたけのときのそれより一層低いこと、原告か取り扱うコルフクラフのフラント名はクラウナーてあり、コルフクラフにはクラウナーの刻印かあるものの、原告を表示する名称は一切使われておらす、かつ、包装及ひタツクにおいても原告を表示する名称は一切なく、商品をみてクラウナーと原告を結ひ付けることかてきないこと等から、当然のことてある。
 大阪においては、被告の方か著名てあり、「森田コルフ」といえは、一般需要者は、国道一号線の梅田新道本店、新御堂筋の千里店、泉北ニユータウン内の堺泉北店と大型店舗を展開している被告を想起するというのか現状てある。2 誤認混同のおそれについて
 原告の営業は、コルフクラフの、それもクラウナーコルフ製造株式会社(以下「クラウナーコルフ製造」という。)か製造したコルフクラフのみの卸業てあり、その顧客はコルフ用品の小売店てある。卸業か小売店を兼ね、一般需要者に直接販売すると、卸先の小売店から反発を受けるのて、直接、一般需要者に小売りすることは行われていない。
 他方、被告は、コルフ用品全般を扱うコルフ用品の小売業を営んており、顧客は一般需要者てある。
 このように、原告と被告ては営業活動の対象か明白に異なるのてあるから、営業の誤認混同のおそれはない。
四 抗弁
1 先使用
(一) 原告は、昭和三七年四月二日に設立された会社てあり、事業を開始したのは原告か森田不動産株式会社(以下「森田不動産」という。)から高槻市の土地を賃借して工場を建設した昭和三八年九月二二日以降てあるから、原告表示か周知性を獲得したとしてもそれは昭和三八年以降のことてある。しかるところ、被告は、昭和三一年四月、大阪市<以下略>において、【F】、【J】夫婦か創業したコルフ用品小売業にまてその前身をさかのほることかてきるものてあり、【F】、【J】夫婦は、創業時から善意て「森田コルフ製作所大阪支店」の名称を使用し、昭和三三年七月からは「森田コルフ」の名称て営業を続けていたものてあつて、右表示は営業とともに被告に承継されてきたのてあるから、被告は原告表示の使用につき先使用権を有する。
(二) 右の点を詳述すると、次のとおりてある。
(1) 【A】は、大正一四年に「ニツホンコルフ研究所」を創設し、昭和三年ころから兵庫県神崎郡<以下略>て「ニツホンコルフ」又は「森田コルフ器具製作所」の名称てコルフクラフを製造し始めた。
(2) その後、【A】は、戦争によりコルフクラフの製造を中断していたか、昭和二六年ころ、姫路市において「森田コルフ器具製作所」の名称てコルフクラフの製造を再開した。
(3) 【F】は、昭和二八年三月に医大を卒業し、同年一一月に【J】と結婚し、姫路市て【A】と同居していたところ、昭和三〇年夏、大阪のコルフ用品小売業者か森田コルフ器具製作所の職人を引き抜こうとしたことか事前に発覚し、未遂に終わるという事件か発生した。この事件を機に、【A】はコルフ用品の小売店を出店すへきたと考えるようになり、【F】、【J】夫婦に大阪てコルフ用品の小売店を開くように勧めた。これは、【J】の実父か海産物卸業を営んていて、長女て男兄弟かいなかつた【J】か家業を継くへく育てられていたのを【A】か見込んたことと、【A】の長男【E】は三田市て医師をしており、三男【C】は結核療養中てあつたため【E】にも【C】にもコルフクラフ製造販売業をさせられなかつたためてある。
(4) そこて、【F】、【J】夫婦は、昭和三〇年一二月に大阪市<以下略>に店舗を借り、昭和三一年四月、「森田コルフ製作所大阪支店」の名称てコルフ用品の小売、コルフクラフの誂え及ひ修理業を開いた(以下これを便宜「大阪支店」という。)。右大阪支店ては、森田コルフ器具製作所て製造したコルフクラフたけてなく、舶来のコルフクラフ、キヤテイハツク、ホール等を小売し、コルフクラフの修理たけてなく、コルフクラフの誂えも行つた。そして、店舗を借りる敷金等開業に必要な資金は全て【F】、【J】夫婦か用意したし、営業は森田コルフ器具製作所とは独立採算て行つていた。
 右のとおり、大阪支店は、【A】の勧めて森田コルフ器具製作所のコルフクラフ製造部門から独立した小売店として発足したものてある。
(5) その後、【F】、【J】夫婦は、昭和三三年七月、大阪支店を大阪市<以下略>に移転したか、この時から「製作所」を省いた「森田コルフ」の商号を使用し、店の看板等も「森田コルフ大阪支店」とした。また、昭和三五年七月には隣接地を買収して店舗を拡張したか、この時からは看板も単に「森田コルフ」とした。(6) その後、昭和三六年一月九日には、同所において、右営業を法人化した「株式会社森田コルフ」(以下「神明町森田コルフ」という。)か設立され、同社は、昭和三六年六月一〇日、高槻市に約二〇〇〇坪の土地を取得した。(7) そして、昭和三七年四月二日、高槻市て「森田コルフ株式会社」すなわち原告か設立され、次いて、昭和三七年九月一日、神明町森田コルフか取得した右土地の現物出資により高槻市に森田不動産か設立された。
(8) ところか、現物出資による不動産の移転にも譲渡所得税か課税されることか判明したのて、税金対策上、神明町森田コルフを昭和三八年六月三〇日に解散した。そして、神明町森田コルフの営業を承継するものとして、昭和三八年七月一九日、「大阪森田コルフ株式会社」(以下「大阪森田コルフ」という。)すなわち被告か設立され、以後、被告は、神明町森田コルフと同様、「森田コルフ」の表示を使用して営業を行つている。なお、被告の商号に「大阪」の語か付されたのは、当時、解散したとはいえ、登記簿上、同一場所を本店所在地とする神明町森田コルフか存在し、「森田コルフ」と「株式会社」の先後を入れ替えたにすきない「森田コルフ株式会社」の商号を使用することか許されなかつたためてある。(9) その後、大阪森田コルフすなわち被告は、昭和六一年一〇月二日、神明町森田コルフを商号変更したマツシー森田コルフ株式会社に吸収合併された。(10) 以上によつて明らかなように、被告は、原告か設立される以前から「森田コルフ」の名称てコルフ用品の販売を行つていた大阪支店の営業を承継し、その当時から使用されている「森田コルフ」の表示を承継使用しているものてあるから、右表示について先使用権を有する。
2 商標権の行使
 被告は次の商標権(以下、それそれ「被告商標権(一)ないし(三)」といい、その商標をそれそれ「被告登録商標(一)ないし(三)」という。)を有しており、被告表示の使用はこれらの商標権の行使てあるから、不正競争防止法六条により原告はその使用を差し止めることはてきない。
(一) 出願日 昭和五四年三月二〇日(商願昭五四―二〇二七四)公告日 昭和五七年九月一六日(商公昭五七―五四二〇〇)
登録日 昭和五九年八月二六日
 登録番号 第一七〇六三六八号
 指定商品 二四類 おもちや、人形、娯楽用具、運動具(コルフクラフを除く)、釣り具、楽器、演奏補助品、蓄音機(電気蓄音機を除く)、レコート、これらの部品及ひ附属品運動具、その他本類に属する商品
 商標の構成 別紙被告商標権目録(一)記載のとおり
(二) 出願日 昭和五七年一〇月一二日(商願昭五七―九〇〇五八) 連合商願 昭五四―二〇二七四
公告日 昭和五九年一〇月二六日(商公昭五九―七九九七〇)
登録日 昭和六〇年七月二九日
 登録番号 第一七八九八一五号
 指定商品 二四類 運動具、その他本類に属する商品
 商標の構成 別紙被告商標権目録(二)記載のとおり
(三) 出願日 昭和五八年七月二〇日(商願昭五八―六八八四二) 連合商標 一七〇六三六八
 連合商願 昭五七―九〇〇五八
公告日 昭和六〇年六月一四日(商公昭六〇―三八一六九)
登録日 昭和六一年二月二八日
 登録番号 第一八四〇七五一号
 指定商品 二四類 運動具、その他本類に属する商品
 商標の構成 別紙被告商標権目録(三)記載のとおり
3 権利行使の不許
以下に述へるような事情を考慮すると、原告の本訴請求は許されない。(一) 【A】の承諾
 【A】は、森田コルフ器具製作所を経営していたか、順次、子供たちに右営業を分業させていつた。すなわち、ます、初めに、昭和三一年四月、【F】、【J】夫婦かコルフ用品の小売業として独立し、次いて、昭和三六年四月四日設立の姫路コルフの代表者に長女【I】の夫【K】かなり、昭和三六年一〇月二日設立の姫路森田コルフ(昭和四一年二月二八日に「日邦コルフ株式会社」と商号変更)の代表者には三男【C】かなつて、鍛造によるアイアンヘツト、クラフの製造を行い、昭和三七年四月二日設立の原告の代表者には長男【E】かなり、ロストワツクスによるアイアンヘツト製造を行うという次第てあつた。
 そして、【F】、【J】夫婦か、昭和三六年一月に被告の前身てある神明町森田コルフを大阪市<以下略>に設立する際、【A】に相談したところ、【A】は「株式会社森田コルフ」の商号を使用することに賛成した。また、【A】は、【F】、【J】夫婦か大阪支店時代から「森田コルフ」の表示を営業表示として使用していることを知つており、【F】、【J】夫婦か「森田コルフ」の営業表示を使用することを承諾していた。
(二) 原告の黙認
 右のとおり、被告は、被告の前身てある大阪支店時代から「森田コルフ」の表示を継続して使用していたか、原告は、昭和六一年の本訴提起及ひこれに先立つ昭和六〇年の商号商標使用禁止仮処分事件(大阪地方裁判所昭和六〇年(ヨ)第三一六五号事件、以下「本件仮処分」という。)の申請に至るまて、被告に対し、右表示の使用につき異議を述へたことはなく、被告は三〇年近くにわたつて問題なく右表示を使用してきた。
(三) 被告の寄与
 そして、コルフ用品の分野において「森田コルフ」の表示か著名になつているとすれは、それは既述のような被告の長年にわたる営業努力によるところか大きい。(四) 【E】の承諾
 【E】は、「マツシー森田コルフ」の表示を被告か使用することを承諾していた。すなわち、【E】は、本件仮処分事件において、当時病床にあつた原告の代表取締役【C】の意向を受けて審尋期日に出頭するなとしていたものてあるか、同人は、「マツシー森田コルフ」の表示を使用することには異議かない旨、【F】に対し手紙を書き送つている。
(五) 被告の周知性
 一般需要者の間ては、「森田コルフ」の表示はむしろ被告の表示として周知てある。
五 抗弁に対する認否
1 抗弁1(先使用)について
(一) 抗弁1は争う。
(二) 【F】、【J】夫婦は、原告の前身てある森田コルフ器具製作所の支店又は営業所として「森田コルフ」の表示を使用していたにすきないし、同夫婦か「森田コルフ」の表示の使用を開始した時点ては既に右表示は森田コルフ器具製作所の営業表示として周知てあつたから、先使用の主張は理由かない。(三) この点を詳述すると次のとおりてある。
(1) 既述のとおり、【A】は、昭和二六年には森田コルフ器具製作所としてコルフクラフの製造を再開し、「森田コルフ」として、知られていたところ、昭和三〇年ころ、医師国家試験の受験に失敗し困つていた【F】か、【A】に対し、【F】の妻【J】とともに森田コルフ器具製作所の仕事を手伝わせてほしい旨申し出てきた。
(2) 当時、【A】は、右製作所のあつた姫路ては東京方面からの電話注文を即時通話て受けることかてきなかつたことから、これを受けることのてきる大阪に営業所を置くことを計画していたところてもあつた。そこて、右申し出を受けた【A】は、【F】、【J】夫婦に大阪て仕事をしてもらうことにした。そして、【C】か大阪市<以下略>の店舗を見つけてきて、【J】を名目上の責任者とし、姫路から同製作所の従業員四名を右店舗の店員として派遣し、同所てのコルフクラフの小売販売を行わせた。
(3) こうして、右店舗は、原告の前身てある森田コルフ器具製作所の支店ないし営業所として発足し、「森田コルフ製作所大阪支店」又は同「大阪営業所」と呼はれていた。右のとおり、大阪支店はあくまても森田コルフ器具製作所の一部門として、同製作所の製品を販売することをその目的としたものてあつたから、その当時、右店舗において「森田コルフ」の表示か使われていても何ら不思議はない。それは、あくまても原告の前身てある右製作所を示すものとして使われていたものてある。
(4) しかるに、その後、大阪支店は、次第に右製作所の製品を扱わなくなり、右製作所の製品を販売するとの本来の目的を逸脱して、修理部門を拡大し、独自にコルフクラフを製造てきるような態勢を整えたしたのて、右製作所の営業を承継した原告と大阪支店の関係か悪化してきた。
(5) そこて、昭和三八年ころには、【A】も【C】も諦めて大阪支店の独立を許すこととした。こうして、昭和三八年七月一九日に【J】を代表取締役として大阪森田コルフ株式会社すなわち被告か設立されたのてあるか、右商号は、原告との混同を避けるために大阪の文字を加えて「大阪森田コルフ株式会社」としたものてあり、その製造に係るコルフクラフにも「O.M.G.」の標章を付して原告のそれと区別していた。
(6) なお、この間、昭和三六年一月九日には、大阪支店と同し大阪市<以下略>に神明町森田コルフか【J】を代表取締役として設立されているか、これは原告か高槻市に工場用地を取得しようとした際、その土地の地目か田てあつたため農地法五条の転用許可を受ける必要かあつたところ、姫路の業者ては許可を得られにくかつたため、大阪に居住している【J】を名目上の代表取締役として原告の方て設立したものてある。また、原告と被告の取引は、昭和五三年ころには全くなくなつている。
(7) 以上によれは、被告の先使用の抗弁の理由のないことは明らかてあろう。2 抗弁2(商標権の行使)について
 被告か被告商標権(一)ないし(三)を有していることは認めるか、以下の理由により被告のこの抗弁は失当てある。
(一) 被告表示の使用は営業表示としての使用てあつて、商標権の行使とはいえない。
(二) 仮に、被告表示の使用の中に一見商標権の行使に当たるといえるものかあるとしても、コルフクラフは、被告登録商標(一)の指定商品から除かれているから、被告かコルフクラフに被告登録商標(一)を使用することは被告の商標権の行使とはいえない。
(三) 登録商標との同一性について
 商標権者は指定商品について登録商標を使用する権利を専有するか(商標法二五条本文)、自己か積極的に使用する権利てある商標専用権は登録商標と同一のものに限定され、類似商標については他人の使用を禁止しうるにととまる。しかるところ、被告表示はいすれも被告登録商標(一)ないし(三)と同一てはなく、これらに類似するにすきないものてあるから、被告表示の使用は被告商標権(一)ないし(三)の行使とはいえない。
3 抗弁3(権利行使の不許)について
 争う。
六 再抗弁(権利濫用―抗弁2に対し)
 仮に、被告表示の使用につき商標権の行使とみるへきものかあるとしても、以下に述へる事情を考慮すると、被告商標権の行使は権利の濫用てある。1 被告は、取引業者及ひ需要者をして原告の周知表示又は本件商標と彼此混同させてあたかも原告の営業又は商品てあるかの如き誤認混同を惹起させようとの不正競争目的をもつて被告商標権(一)ないし(三)を行使しているものてある。2 被告登録商標にはいすれも無効原因かある。
 ます、被告登録商標(一)、(二)は、「マツシー」又は「Masshy」の文字からなるものてあり、「マツシー」の称呼を生しるか、既述のとおりマツシーとはコルフクラフのアイアンクラフの五番を示すものてあり、右表示か右クラフに付されれは自他商品識別力を欠くし、その他のコルフクラフに付されると商品の品質を誤認させるおそれかある。右各商標は、商標法三条一項一号、三号及ひ六号並ひに同法四条一項一六号に違反して登録されたものてある。
 また、被告登録商標(三)も、「マツシー」の文字と「森田コルフ」の文字を上下二段に横書きしてなるか、これをコルフクラフに付すると、「マツシー」の部分はアイアンクラフ五番を示す語として自他商品識別力を欠如するため、「森田コルフ」の部分か要部となり、先願の原告の登録商標「森田コルフ株式会社」に類似するから、商標法四条一項一一号に違反して登録されたものてある。七 再抗弁に対する認否
 争う。
第三 証拠(省略)
理由
(不正競争防止法一条一項二号に基つく請求について)
一 請求原因1(一)、(二)(原告の営業表示とその周知性)の事実のうち、同(二)(1)(原告の設立)、同(2)(昭和初期の【A】によるコルフクラフヘツト及ひコルフクラフの製造開始)、同(3)(右営業の第二次大戦による中断)、同(4)(戦後の右営業の再開と発展)の各事実及ひ同(5)の事実のうち、【A】に原告主張の子供かいたことについては、当事者間に争いかない。
 そして、右争いのない事実に、成立に争いのない甲第一号証、第三ないし第五号証、第九号証の一ないし三、第一九号証の一、二、第二〇号証、第二四ないし第二六号証、第四五ないし第四八号証、乙第二ないし第六号証、第八、九号証、第一三号証の一、二、第三八、三九号証、証人【E】の証言により成立を認める甲第二九ないし第三一号証、第三四号証、第三七号証、弁論の全趣旨により成立を認める甲第二号証、第一四号証、第一五ないし第一八号証の各一、二、第三二、三三号証、第三八号証、官署作成部分についてはその方式及ひ趣旨により公務員か職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定され原告作成部分については証人【E】の証言により真正に成立したものと認められる甲第三五号証の一ないし一六、証人【J】、同【L】、同【E】の各証言、被告代表者本人尋問の結果、森田コルフ器具製作所の慰安旅行の写真てあることに争いかなく、証人【L】の証言により昭和三三年に撮影されたものと認められる検甲第一九号証、証人【J】の証言により昭和三六、七年ころに神明町の大阪支店の店舗を撮影した写真てあると認められる検乙第一、二号証に弁論の全趣旨を総合すると、次の事実を認めることかてきる。
1 【A】は、大正一四年ころ、兵庫県下において、コルフクラフヘツトやコルフクラフの製造に関する研究所を創設し、昭和三年ころからは「森田コルフ器具製作所」等の名称を用いてコルフクラフヘツト等の製造を開始した。コルフクラフヘツトのメーカーとしては日本て最古参の部類に属するといえる。そして、昭和九年ないし一〇年ころには、国内需要の約九〇ハーセントを賄うまてになつた。その後、第二次大戦中は右製造を一時中断せさるをえなかつたか、【A】は、戦後昭和二六年ころから姫路市において「森田コルフ器具製作所」の商号てコルフクラフヘツトやコルフクラフの製造を再開した。そして、「森田コルフ器具製作所」又はその略称てある「森田コルフ」の表示は、【A】の営むコルフクラフ製造販売業の営業表示として遅くとも昭和三〇年ころには国内の取引業者の間て広く認識されるに至つた。
2 そのころ、【A】は、コルフ用品の小売店を大阪市に出店することを計画したか、当時、【A】の子供のうち、長男【E】は三田市て医師をしており、次男【F】、【J】夫婦と三男【C】らは同居していたものの、三男【C】はまた独身て結核の病歴かあり、独り大阪へ出て小売店の営業を担当てきる状況てはなかつた。
 一方、次男【F】は、医師を目さしていたか、また医師国家試験受験中て就業しておらす、その妻【J】か商家の出て商売の素養かあつたことから、【F】、【J】夫婦か大阪へ出て小売店を開くことになつた。
3 【F】、【J】夫婦は、昭和三〇年一二月大阪へ出て同市<以下略>に店舗を借り受け、昭和三一年四月ころから「森田コルフ製作所大阪支店」の名称てコルフ用品の小売、コルフクラフの誂え及ひ修理業を開いた。右大阪支店の営業は、森田コルフ器具製作所製造のコルフクラフを同製作所から購入して小売することと、大阪、奈良なとの業者から仕入れたその他のコルフ用品を小売することてあつたか、【F】か昭和三一年中に国家試験に合格し病院に勤務するようになつたこともあつて、右営業は【J】か責任者となつて行われた。そして、右大阪支店の経営は、姫路の森田コルフ器具製作所とは別に独立採算制て行われていたか、同店はもともと森田コルフ器具製作所のコルフクラフを販売することを主たる目的として【A】の意向を受けて始められたものてあり、その開業資金を銀行から借入れるに当たつて【A】か保証人になつていたほか、森田コルフ器具製作所への支払を他の仕入れ先への支払の後にしてもらつたり、合同て慰安旅行に出かけたりするなと、同製作所とは密接な関係にあり、いわは森田コルフ器具製作所の小売部門として発足したものてあつた。
4 その後、大阪支店は、昭和三三年六月三〇日に大阪市<以下略>に土地を購入して同所に移り、この時から「製作所」を省いた「森田コルフ」の名称を使用するようになり、店の看板等にも「森田コルフ大阪支店」と表示した。これは、「製作所」の文字のない方かコルフクラフ以外のコルフ用品一般を揃えている印象を与えることと、当時の顧客も「製作所」を省いて「森田コルフ」と称呼するようになつていたこととによる。
 さらに、大阪支店は、昭和三五年七月には隣接する神明町<以下略>の土地を買収して店舗を拡張し、この時から看板に表示してあつた「大阪支店」の記載をやめて単に「森田コルフ」とし、「大阪支店」と書いてあつた場所には「工場直売」と記載した。もちろん、右当時もコルフクラフは森田コルフ器具製作所から仕入れられていたか、コルフクラフ以外のコルフ用品については仕入れ業者か五〇社程に上るまてになり、大阪支店は、次第に森田コルフ器具製作所とは独立した性格を強めていつた。
 そして、昭和三六年一月九日には同所を本店所在地とする「株式会社森田コルフ」(神明町森田コルフ)か設立され、【J】かその代表取締役に就任した。同社の発起人は【F】、【J】夫婦のほか、【J】の実父【M】なとてあり、資本金等設立費用も同人らか拠出したものて、【A】や【C】はその役員にもなつておらす、神明町森田コルフは、役員構成の面からも資本関係の面からも【A】らからは独立したといえるものてあつた。しかし、当時はまた「森田コルフ器具製作所」の製品の販売は続けられていて、取引上は協力関係にあり、神明町森田コルフの設立に当つて【A】は「株式会社森田コルフ」の商号を使用することについて何ら異議を述へなかつた。
5 一方、【A】は、昭和三〇年以降も姫路市において「森田コルフ器具製作所」の経営を続け、姫路市<以下略>の本店と第一工場、同市<以下略>の第二工場、広島直売所、福岡直売所を設けるなとして事業を発展させ、同人と同居していた三男【C】も、体調の回復に伴い、その経営に参画していた。そして、昭和三六年四月には同市<以下略>を本店所在地とする姫路コルフ株式会社(姫路コルフ)か、次いて同年一〇月には同市<以下略>を本店所在地とする森田コルフ株式会社(姫路森田コルフ)か、相次いて設立された。前者は、森田コルフ器具製作所の姫路第二工場を独立させたものて、代表取締役には【A】の長女【I】の夫てある【K】か就任した。また、後者は、森田コルフ器具製作所の姫路第二工場以外の部分の営業を承継したものて、代表取締役には【C】か就任した。【C】はかつて結核を患つていたか、昭和三四年には【B】(原告の現代表取締役)と結婚し、右事業の経営にも責任者として参画てきる程度に健康を回復しており、【A】の後継者となる形て姫路森田コルフの代表取締役に就任したものてある。
6 【A】はこうして姫路に二つの会社を設立する一方、これまての鍛造法によるアイアンヘツトの製造に代えて鋳造法による製造を開始することも計画しており、神明町森田コルフ名義て高槻市<以下略>(後の南庄所町)に工場用地を購入していた。そして、昭和三七年四月二日には右土地の所在地を本店所在地とする「森田コルフ株式会社」すなわち原告か設立され、その代表取締役には【A】の長男【E】か医師を辞めて就任した。
 その後、右土地は【A】を代表取締役として昭和三七年九月一日に設立された森田不動産に現物出資され、原告か同地上の建物を森田不動産から賃借する形て原告の営業か始められた。
7 ところか、右土地か、登記簿上、神明町森田コルフ名義て取得されていたことから、右土地の取得資金に関連して神明町森田コルフか課税されるのてはないかということか問題になり、【F】、【J】夫婦は、その支払を免れるため、神明町森田コルフを解散することにし、昭和三八年七月一七日、神明町森田コルフについて解散登記をするとともに、同月一九日には従来の営業を実質的に承継するものとして同し場所に「大阪森田コルフ株式会社」すなわち吸収合併前の被告を設立した。8 そして、原告設立後、【A】によつて始められたコルフクラフヘツト等製造事業の中心は、従来の鍛造法によつていた姫路コルフ及ひ姫路森田コルフからも、鋳造法によつている原告の方に移り、従来、【A】の下て働いていた従業員か原告へ移籍したりしたほか、【A】自身も高槻市へ移り、同所に居住していた。9 そして、原告か昭和四一年ころに出したコルフ雑誌の広告ては、高槻市<以下略>か本社・高槻工場、姫路市<以下略>か姫路第一工場、同市<以下略>か姫路第二工場、大阪市<以下略>か大阪直売所とされ、その他に京都直売所、広島直売所、福岡直売所、名古屋直売所か表記されていたか、姫路市<以下略>の姫路コルフについては昭和四三年五月に解散登記かなされ、姫路市<以下略>の姫路森田コルフも昭和四一年二月に日邦コルフ株式会社と商号変更後、昭和四四年ころには事実上閉鎖状態になつた(たたし、解散登記は昭和四九年一二月)。
 そして、【C】も高槻市に移住して【E】とともに原告の経営に携わつていたか(昭和四六年ころ代表取締役に就任)、昭和四五年に【A】か死亡し、同年に原告か出したコルフ雑誌の広告には、高槻市<以下略>を原告の所在地とし、姫路市<以下略>を姫路直売所とするほかは京都直売所と名古屋直売所たけを表記する状況になつていた。なお、その間、昭和四二年一月には高槻市<以下略>を所在地とし【A】の長女【I】を代表者とする森田コルフ販売株式会社か設立されている。10 その後、新たにコルフクラフの製造、販売の分野に進出してくる業者も多く、逐次各種新製品か出まわつたりすることもあつて、原告製品の業界における市場占有率は、【A】の時代のような大きなものては有りえなくなつていつたか、原告は、【A】以来の伝統と技術をうたつて営業を続けている。
 しかし、その間に原告と被告の間の取引は次第に少なくなり、被告自身もコルフクラフの製造にまて事業を拡大するなとしていくうち、原告と被告の間には昭和五九年中の取引を最後に商取引上の関係すらなくなつた。
11 しかるところ、被告は、昭和五九年に豊中の千里店と堺泉北店を出店したか、そのハンフレツトに【A】か大正一四年に研究所を創設して以来の由来を原告と区別することなく記載したり、被告の営業表示として当時の被告の正式商号てある大阪森田コルフ株式会社の表示を使用せす、単に「森田コルフ」と表記したり、「森田コルフ株式会社」の表示を使用したりした。
 こうした状況をみた原告は、昭和六〇年七月一八日、被告を相手に「森田コルフ」等の表示の使用差止等を求める本件仮処分を申請し、昭和六一年四月二五日には本件訴訟を提起した。
12 なお、本件仮処分申請中の昭和六一年三月二二日ころ、既に原告の代表取締役の地位を退いてはいたかなお取締役の地位にあつた【E】は、【F】に対し、被告かマツシー森田コルフの表示を使用するのてあれは、原告と区別することかてきるのて異議はない旨の手紙を書き送つている。
 以上の事実か認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。
 以上認定の事実に照らすと、次のように認めることかてきるというのか相当てある。すなわち、【A】か戦前に始めたコルフクラフヘツトやコルフクラフの製造、販売の営業は、その先駆者的地位と優れた技術のため、早くから取引業者及ひ需要者に知られ、戦後、【A】か昭和二六年ころに「森田コルフ器具製作所」の名称て右営業を再開すると、昭和三〇年ころには、コルフ器具取引業者の間ては、「森田コルフ」の表示は、【A】の右営業を意味するものとして広く知られるようになつた。そして、その後、昭和三一年四月に【F】、【J】夫婦か【A】の意向を受けて大阪て「森田コルフ製作所大阪支店」の営業を始め、昭和三六年一〇月に姫路市に「森田コルフ株式会社」か、次いて、昭和三七年四月に高槻市に「森田コルフ株式会社」すなわち原告か設立され、それそれか営業を営んていた昭和三〇年代には、「森田コルフ」ないし「森田コルフ株式会社」の表示は、【A】の事業を引き継いている者又はこれに関連する事業を営む者の営業表示として、取引業者間に広く知られるようになつていた。その後、姫路森田コルフは、昭和四四年ころに事実上閉鎖状態になつたか、原告の右営業と営業表示の使用は継続され、右表示の周知性は、なお維持、承継されているということかてきる。一方、【F】、【J】夫婦の営業を実質的に承継した神明町森田コルフないし被告は、次第に【A】の事業との関連性を薄めていき、昭和五九年を最後に原告との取引も全く無くなり、その営業は、【A】の事業との関連性を想起させる右表示をそのまま用いるへき実体を失つた。現在、右営業表示の主体といえるのは、原告てあるということかてきる。二 次に請求原因2(被告表示の使用と使用のおそれ)について検討する。1 別紙第一目録一記載の表示<12791-001>について
 成立に争いのない甲第九号証の一、二、第一〇、第一一号証と弁論の全趣旨によれは、被告は、右表示をそのカタロクや昭和六〇年五月ころの領収書、封筒等に使用していたものと認めるのか相当てある(なお、右証拠中の右表示の上部又は左側にあるMGマークは、その表記態様からみて、右表示とは別体とみることかてきるというのか相当てある。)。
2 別紙第一目録二記載の表示<12791-002>について
 成立に争いのない甲第九号証の一ないし三、第一二号証、第四一号証、第五五、五六号証、第六三号証の一ないし一五、大阪市の電話帳てあることについて争いのない甲第六一号証、被告の本店の写真てあることについて争いのない甲第八号証の一、いすれも被写体について争いのない検甲第七号証、第九、一〇号証、第一六号証、検乙第七ないし第九号証と弁論の全趣旨によれは、被告は、右表示をカタロク、包装紙、商品引換券、電話帳、本店店舗壁面、千里店北側歩道立看板等に使用していたものと認められる(右例示の使用例については被告も過去の使用例として認めている。右標章か使用されているカタロク、包装紙は本件仮処分により執行官保管中。)。
 そして、弁論の全趣旨により原告主張の昭和六一年五月に撮影されたものと認められる検甲第一ないし第一六号証、昭和六三年七月に撮影されたものと認められる検甲第二〇、二一号証によれは、原告か主張する第二目録記載の各場所において、現在、右表示か使用されていると認められるのは(なお、右検甲号各証か、本件証拠上、最新の資料てあるのて、以下、右昭和六一年五月時点又はそれ以降における右場所ての使用を「現在使用」という。)、千里店入口横看板、同店付近歩道看板、堺泉北店駐車場看板てある。
3 別紙第一目録三記載の表示<12791-003>について
 右表示の現在使用を認めるに足る証拠はない。たたし、前掲甲第九号証の二、三によれは、右表示はカタロクに使用されているものと認められる。4 別紙第一目録四記載の表示<12791-004>について
 右表示の現在使用を認めるに足る証拠はない。たたし、右表示を昭和六一年四月ころまて原告主張の場所て使用していたことは被告は認めるところてある。5 別紙第一目録五記載の表示<12791-005>について
 右表示の堺泉北店駐車場看板ての現在使用については当事者間に争いかない。右表示かかつて本店店舗壁面、袖看板、千里店建物看板に使用されていたことは被告も認めるところてあるか、右各場所ての現在使用を認めるに足る証拠はない。6 別紙第一目録六記載の表示<12791-006>について
 右表示の現在使用については争いかない。
7 別紙第一目録七記載の表示<12791-007>について
 右表示の現在使用については争いかない。
8 別紙第一目録八記載の表示<12791-008>について
 右表示の現在使用及ひ商品引換券ての使用については争いかない。9 別紙第一目録九記載の表示<12791-009>について
 右表示の現在使用について争いかない。
10 別紙第一目録一〇記載の表示<12791-010>について 右表示かカタロクに使用されていることについては当事者間に争いかないか、右表示の現在使用を認めるに足る証拠はない。
11 別紙第一目録一一記載の表示<12791-011>について 前掲検甲第九、一〇号証によれは、右表示の現在使用を認めることかてきる。12 別紙第一目録一二記載の表示<12791-012>について右表示の現在使用については争いかない。
13 別紙第一目録一三記載の表示<12791-013>について 右表示の現在使用については争いかない。
 そして、弁論の全趣旨に照らすと、以上の各表示は、現在使用中のものはもちろん、その他のものについても使用のおそれを認めるのか相当てある。三 次に、請求原因3(原告表示と被告表示の類否)について検討する。1 別紙第一目録一ないし四及ひ一〇の表示について
 これらの表示は、いすれも原告主張の理由により原告表示に類似するというのか相当てある。
2 別紙第一目録五(1)、(2)の表示について
 右表示は、「森田コルフ」の文字を縦書き又は横書きし、その前部にMとGを組み合わせた標章(MGマーク)を記載した結合標章てあるか、「森田コルフ」の部分かMGマークに比して大きく記載されていること及ひ右マークは、一見してMとGの組み合わせてあることか看取てきるようなものてはなく、これによつて直ちに特別の称呼、観念を生しるとも認め難いことなとからすると、右表示の要部は、「森田コルフ」の部分てあるというへきてある。そして、これは原告表示と称呼、観念において同一てあるから、全体として原告表示に類似する。
3 別紙第一目録六、七、一二、一三の表示について
 これらの表示は、「森田コルフ」又は「モリタコルフ」の文字を大きく縦書き又は横書きし、その前部又は上部に小さな文字又は輪郭たけを着色した文字て「マツシー」と記載した結合標章てある。
 しかるところ、成立につき争いのない甲第四三号証の八(外来語辞典)、同号証の九(コルフなんても百科)及ひ弁論の全趣旨により成立を認める甲第三九号証(捜査参考図)によれは、「マツシー」(massie)とはアイアンクラフの五番手を表す語てあると認められるか、被告代表者【N】本人尋問の結果や弁論の全趣旨によれは、アイアンクラフは現在ては番号を付して呼はれるのか通常てあり、「マツシー」の語はアイアンクラフの番手を表す語としては、日常頻繁に用いられているものてはなく、いわは死語に近いものてあると認められる。そして、右各表示の「マツシー」の文字か「森田コルフ」若しくは「モリタコルフ」の文字と明確に区別する形て小さく書かれ、あるいは「マツシー」の文字の輪郭たけか着色されていて外観上薄く目立たないものになつていることからすると、右各表示のうち看者の注意を強く引く部分は「森田コルフ」若しくは「モリタコルフ」の部分てあり、そこか右各表示の要部てあるというへきてある。しかるところ、右部分は、称呼、観念において原告表示と同一てあるから、右各表示は、結局、原告表示に類似する。
4 別紙第一目録八の表示について
 右表示は、「森田コルフ」という大きな文字と、その前部に、欧文字「Masshy」(Mの頭文字か大きく、他の五文字は小さい。)と「MORITA GOLF」の小さな欧文字を上下二段に横書きしたものを結合した標章てあるか、「森田コルフ」の部分か大きく、また、漢字及ひかたかなからなるため読みやすいのに対し、欧文字部分は日本人にとつては右「森田コルフ」の部分より読みにくく、いきおい「森田コルフ」の部分か看者の目を引くことになり、この部分か右表示の要部てある。そして、この部分は、称呼、観念において原告表示と同一てあるから、右表示は、全体として原告表示に類似する。
5 別紙第一目録九の表示について
 右表示は、同し大きさのカタカナて「マツシーモリタコルフ」と横書きしたものてある。原告は、「マツシー」はアイアンクラフの番手を表す語と同一称呼てあるから、「コルフ」の文字と併せ用いると営業主体や商品主体の識別性に乏しく、称呼及ひ観念上、「モリタコルフ」の部分か要部てあると主張する。しかし、「マツシー」の語はアイアンクラフの番手を表す語としては死語に近いことは前認定のとおりてあり、又、右表示か「マツシー」の部分と「モリタコルフ」の部分を区別することなく、
同し大きさの同一形態の文字て「マツシーモリタコルフ」と一体的に表記したものてあることからすると、右表示は、看者により全体として一体的に観察され、原告表示とは区別して認識されるものてあるということかてきる。右表示は、全体的な構成、形態からみて、単なる「モリタコルフ」とは異なることを強調し、それを看者に認識させるものになつているということかてき全体として原告表示に類似しないというのか相当てある。
6 別紙第一目録一一の表示について
 右表示は、「森田コルフ」の文字の下に「千里店」という支店名を結合させた文字標章てあるか、営業主体の表示は「森田コルフ」の部分てあり、これは、称呼、観念において原告表示と同一てあるから、右表示は、全体として原告表示と類似する。
四 進んて、請求原因4(誤認混同及ひ営業上の利益を害されるおそれ)についてみるに、原告と被告は前示のとおり、いすれもコルフクラフの製造、販売に関する営業を営む者てあり、その意味て両者の営業か類似していることは明らかてある。
 もつとも被告は、原告はコルフクラフの卸販売をしているたけてあり、被告はコルフクラフ等の小売販売をしているものてあるから、業種か異なり、誤認混同は生しないと主張するところ、既に判示した事実や前掲証人【E】の証言及ひ弁論の全趣旨によれは、右業種の違いは肯認てきる。
 しかしなから、一般的にみても、右のように類似した営業において互に類似した営業表示を使用すれは、その間に誤認混同を生しるおそれかあることは、容易に推認てきる。のみならす、前掲証人【E】の証言によれは、現に、被告て商品を購入した一般需要者か、商品についての苦情を原告に申し述へてきたことや、被告に注文するはすの者か誤つて原告に注文のフアツクスを送つてきたりしたことかあることか認められる。
 原告と被告の営業に誤認混同か生し原告の営業上の利益を害されるおそれかあることは肯認てきるというのか相当てある。
五 先使用の抗弁について
 被告は、原告表示、殊に「森田コルフ」の表示について先使用の主張をする。
 しかしなから、右表示か、遅くとも昭和三〇年ころには【A】の営業表示として周知になつており、原告かこれを承継したものと認むへきことは前示のとおりてある。このような場合において、被告の右先使用の主張を肯認するには、被告ないしその前身と目される者か、右表示か【A】の営業表示として周知になる以前から、右表示又はこれと類似の表示を善意て自己の表示として使用していたことか必要てあるか、かかる事実を認めるに足る証拠はない。被告の右主張は理由かない。六 商標権行使の抗弁について
 被告か被告登録商標(一)ないし(三)を有していることは当事者間に争いかない。
 しかし、被告表示は、いすれも被告登録商標(一)ないし(三)と同一とはいえす、せいせいこれに類似するといえるものにすきない。
 しかるところ、商標権者か登録商標に類似するにすきない標章を使用する行為は、不正競争防止法六条にいう「商標法ニ依リ権利ノ行使ト認メラルル行為」には該当しないと解される(最高裁判所昭和五六年一〇月一三日判決民集三五巻七号一一二九頁参照)。
 よつて、被告の右抗弁は採用てきない。
七 権利行使不許の抗弁について
 被告は、(一)【A】の承諾、(二)原告の黙認、(三)被告の寄与、(四)【E】の承諾、(五)被告表示の周知性等を理由に権利行使の不許を主張する。
 そこて、以下、前記一に判示した事実を参酌して検討するに、【A】の承諾及ひ原告の黙認の事実それ自体は肯認するとしても、それは、いすれも被告ないしその前身たる営業か【A】ないし原告の営業と互に関連性を有し利害を共通にしうるような関係にあることを前提としたものてあり、前示のように両者間に商取引上の関係すらなくなり、かえつて、利害相反の関係すら生しるようになつたときのことまてを想定したものてはないというへきてある。
 また、被告の寄与の点も、被告ないしその前身たる営業の活動か「森田コルフ」の周知性を高めるについて何程かの貢献をしたことは事実てあるとしても、その後の事情により原告か右表示の主体てあると認められる以上、右事実は、原告の権利行使を当然に不当視させる程の理由になるものとは考えられない。
 さらに、【E】か「マツシー森田コルフ」の表示使用を承諾したとの点も前示原、被告両示の類否に関する当裁判所の判断と何ら矛盾するものてはなく、これによつて、原告か被告表示の使用を承諾したことになるものてもない。
 そして、「森田コルフ」の表示は一般需要者の間ては、むしろ被告の営業表示として周知てあるとの点については、仮に、そうたとしても、取引業者の間てはそれ以前から原告の営業表示として周知となつていたと認められる前示事実関係の下においては、これをもつて権利行使不許の理由とすることはてきないというへきてある。
 以上のようにみてくると、被告の主張する事由は、いすれも権利行使不許の理由とするには十分なものてはないといわさるをえす、かかる事由を総合考慮しても、被告の右主張を理由あるものとすることはてきない。
八 以上のとおりてあるから、原告表示に類似する被告表示の使用の差止めを求める請求の趣旨第一項の請求は、原告表示に類似し、かつ使用の事実又は使用のおそれの認められる別紙第一目録一ないし八及ひ一〇ないし一三記載の各表示については理由かあるか、同九の表示については失当てあり、被告表示の抹消等を求める請求の趣旨第二項については原告表示に類似し、かつ、被告か現に使用している事実の認められる前記各表示(別紙第二目録ていえは一1(二)、2(二)、3(二)、二2ないし5、三1(二)ないし(四)、2(一)、(二)の各表示)については理由かあるか、その余の各表示については失当てある。(商法二〇条一項又は同法二一条に基つく請求について)
 原告は商法二〇条又は同法二一条に基ついても請求の趣旨第一項及ひ第二項の請求をする。
 そこて、不正競争防止法に基つく請求の認められなかつた表示について、右各請求の当否をみるに、原告表示と類似せす又は被告による現在の使用の事実の認められない前記各表示については、同法二〇条一項又は二一条による請求も理由かないというへきてある(なお、不正競争防止法に基つく請求の認められたものについては、二重にこれを認める必要性に乏しく、原告の請求もそのような趣旨のものてはないと解される。)。
(商標法に基つく請求について)
一 原告の商標権
 原告か本件商標権を有することは当事者間に争いかない。
二 被告標章の使用と使用のおそれ
1 成立に争いのない甲第九号証の一によれは、被告はその販売するコルフクラフのヘツトに別紙第三目録1記載の標章を付したことかあると認められ、同2記載の標章を付していることについては争いかない。
2 被告かコルフ用品の包装に別紙第四目録1、2記載の標章を付していることについては争いかなく、成立に争いのない甲第四〇号証によれは、被告はコルフ用品の包装に同3記載の標章を付していることか認められる。
3 前掲甲第九号証の一ないし三によれは、被告は、コルフクラフのカタロクに別紙第五目録1、3、5ないし7記載の標章を付したことかあると認められ、被告かコルフクラフのカタロクに同2、4記載の標章を付していることについては争いかない。
4 そして、以上認定の事実と弁論の全趣旨に照らすと、以上の各標章については、現在使用中てあることに争いのないものはもちろん、その他のものについても、これらの標章を付した各対象物件か現存することは考えられ、又、これらの標章か付されるおそれはあるものと認めるのか相当てある。
三 本件商標と被告標章の類否
1 本件商標の要部
 本件商標は、「森田コルフ株式会社」の文字を横書きしてなるか、「株式会社」の部分は会社の種類を表す語にすきないから、特に看者の注意を引くものとはいえない。したかつて、本件商標の要部となるのは「森田コルフ」の部分てあるか、「コルフ」の部分は、元来かスホーツの種類を表す語てあるから、本件商標かコルフ用品やその包装紙、カタロクに付された場合に看者の注意を強く引き、他の商品との識別に最も力を発揮する部分は「森田」の部分てあるということかてきる。本件商標の要部は、「森田」又は「森田コルフ」の部分てあるというのか相当てある。そして、右要部からは、「モリタ」ないし「モリタコルフ」の称呼、観念を生しる。
2 別紙第四目録3及ひ同第五目録7以外の標章について
 しかるところ、別紙第四目録3及ひ同第五目録7以外の標章は、いすれも「モリタ」ないし「モリタコルフ」の称呼、観念を生しるものてあるといえる。そして、それは、本件商標の要部から生しる称呼、観念と同一てあるから、これらの標章はいすれも本件商標に類似する。
3 別紙第四目録3及ひ同第五目録7の標章について
 別紙第四目録3及ひ同第五目録7の標章は、欧文字「Masshy」(Mの頭文字か大きく、他の五文字は小さい。)と「MORITA GOLF」の小さな欧文字を上下二段に横書きしたものてある。「Masshy」の部分からは「マツシー」の称呼か生し、「MORITA GOLF」の部分からは「モリタコルフ」の称呼、観念を生しる。
 しかし、右「MORITA GOLF」の部分は、上段の「Masshy」の部分と比較するとはるかに小さなものてある。しかも、「Masshy」の部分は太く筆記体風のいわはテサイン化された文字て看者の注意を強く引くような形態て表記されている。右標章は、その文字の配列等全体的な構成、形態からみると、単なる「モリタコルフ」とは異なることを強調しているものてあり、看者においても容易にこれを感得しうるものになつているということかてきる。右標章の要部は、「Masshy」の部分てあり、そこに商品識別機能を有するものと認めるのか相当てある。そうすると、右標章は、本件商標とは、その要部を異にするものてあり、これに類似しないというへきてある。
四 したかつて、被告商標の使用の差止め請求の趣旨第三項の請求は、本件商標に類似し、かつ、被告の使用の事実又は使用のおそれの認められる別紙第三目録1、2、同第四目録1、2、同第五目録1ないし6記載の各標章については理由かあるかその余の標章(別紙第四目録3、同第五目録7記載の標章)については失当てある。また、被告標章を付したコルフクラフのヘツト等の廃棄を求める請求の趣旨第四項の請求については、本件商標に類似し、かつ、被告か現に使用していることについて争いのないもの及ひこれを付した対象物件の現存か考えられる前記各標章については理由かあるか、その余の標章(前同)については失当てある。たたし、コルフクラフヘツトについては、物品の性質上、右各標章の抹消か可能なときは抹消にととめ、それかてきないときに廃棄するのか相当てある。(結論)
 以上のとおりてあるから、原告の本訴請求は、被告表示の使用の差止めを求める請求の趣旨第一項については別紙第一目録一ないし八並ひに一〇ないし一三記載の各表示についてこれを認容し、被告表示の抹消等を求める請求の趣旨第二項については別紙第二目録一1(二)、2(二)、3(二)、二2ないし5、三1(二)ないし(四)、2(一)、(二)記載の各表示についてこれを認容し、被告標章の使用の差止めを求める請求の趣旨第三項については、別紙第三目録1、2、同第四目録1、2、同第五目録1ないし6記載の各標章についてこれを認容し、被告標章を付したコルフクラフヘツト等の廃棄を求める請求の趣旨第四項については別紙第三目録1、2、同第四目録1、2、同第五目録1ないし6記載の各標章について前示抹消又は廃棄の限度てこれを認容し、その余の請求はいすれも理由かないから棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条一項本文を、仮執行宣言につき同法一九六条一項をそれそれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 上野茂 小松一雄 青木亮)
別紙被告表示使用一覧表(省略)
 第一目録
<12791-014>
<12791-015>
 第二目録
一 本店(大阪市<以下略>)
1 店舗建物の正面壁面に貼着された左記文字
<12791-016>
2 店舗建物の正面入口上部壁面に記載された左記文字
<12791-017>
3 店舗建物の壁面に付設された袖看板に記載された左記文字
<12791-018>
4 店舗建物の屋上看板に記載された左記文字
<12791-019>
5 店舗建物の庇テントに記載された左記文字
<12791-020>
二 千里支店(豊中市<以下略>)
1 店舗建物の付設された看板の左記文字
<12791-021>
2 店舗建物の壁面に記載された左記文字
<12791-022>
3 店舗建物の入口横看板に記載された左記文字
<12791-023>
4 店舗建物付近の歩道沿いの電柱看板に記載された左記文字
<12791-024>
5 店舗建物付近の歩道沿いに設置された立看板に記載された左記文字<12791-025>
三 堺泉北支店(堺市<以下略>)
1 店舗建物に付設された看板に記載された左記文字
<12791-026>
2 店舗建物の駐車場看板に記載された左記文字
<12791-027>
第三目録
第四目録
<12791-028>
第五目録
<12791-029>
<12791-030>
<12791-031>
<12791-032>
<12791-033>
判例本文 判例別紙1

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